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休暇を公爵家で、後編

宜しくお願い致します。

第五十四話


  

   休暇を公爵家で後編




 モルズが休憩室で遅い昼食を摂っている所に休憩時間なのか中居頭役のスミが入って来て、

 「お疲れ様です料理長、今お昼ですか?」

「お疲れ様女官長、我等は何時もこんなものだよ、女官長もこれからお昼かな、」

 「いいえ、私も女官達も既に頂いていますわ、

その賄いのカツサンドと言う揚げた肉を挟んだパン美味しいですよね、

 料理長ちゃんと此処の賄いのレシピを覚えて城の食堂でも出して下さいよ、

 特にカレーをお願いします、」

 「ああ、カレーは美味しいからな、

 エルル様の話しでは何でもカレーには種類があるそうだ、

 しかもカレーの食べ方にもこのカツが入ったカツカレーや、パンの中身にカレーが入ったカレーパンと言う物もあるそうだよ、

 ただギルドから紹介されているレシピで私が作ったカレーは確かにカレーなのだがエルル様のカレーに比べてしまうと別物の様でね、

 私が納得出来るカレーが作れる様になったら城の食堂で出す事にするよ、」

 「料理長頑張ってエルル様の料理を覚えて下さいね、あとデザートもお願いしますよ、」

モルズが女官長の言葉に苦笑いをしていると休憩室にマリーが盆を持ちながら入って来て、

 「お疲れ様ですわ、男爵様女官長様、」

 「お疲れ様ですな公爵夫人、」

「料理長此処では女将ですよ、

 それに私の事は中居頭でお願いします、」

マリーは盆を机の上に置きながら、

 「そうでしたわね、今エルルの所でお菓子を貰って来たので一緒にお茶でも如何かしら、」

スミは目を輝かせ、

 「女将是非ご一緒させて頂きますわ、」

とスミは休憩室に置いてあるお茶の準備を始め、

 マリーは盆から皿に乗ったシュークリームをテーブルに並べる、

 「今エルルの所で貰って来たシュークリームと言うお菓子ですわ、」

モルズは興味深くシュークリームを見ながら、

 「女将私も頂いても?」

「ええ、エルルの所に行ったら、お二人が休憩に入っているからと、」

「パンの様ですわね、って!これは!」

とスミがシュークリームを齧れば中から濃厚なカスタードが溢れ、

 カスタードが溢れ無い様に夢中で吸っている、

 「ほう!これは妃様や姫にも気に入って頂けそうですな、早速エルル様にレシピを教えて頂かなくては、」

「私は女将が羨ましいですわ、

 何時もエルル様や先生が側にいらっしゃるなんて、」

「先生とはイオの事ですわね、

 イオは義母様付きで普段は居ませんわ、

 それに家族や使用人の中でもエルルは取り合いなんですよ、」

「羨ましい悩みですよ女将、

 そう言えば先生のお店を廊下から覗かせて頂きましたが大盛況でしたよ、」

「此処に来る前にロビーでカナリザ様にお会いしましたわ、

 雰囲気が変わられて最初は何方か分かりませんでした、

 エルフの方達は最初から美しいのに、イオの手で反則級の美しさになっていらっしゃいますの、」

「私も王城で先生に綺麗にして頂いた事がありまして、

 本当に女将が羨ましいですよ!」



 エルルは夕食の下拵えを済ませるとロビーに出て来て、

 ソファーに座り談笑しているエルフ達に、

 「皆様お茶やお菓子などは如何ですか?」

「おお!童戻っていたのか、彼方は如何であった?」

エルルはテーブルにお茶と涼しげなガラスの器に乗せたニッキの寒天を出しながら、

 「はい、彼方でシーア様に登録して頂きました、」

「うむ、これで儂らは何時でもこちらに来れるぞ、」

「エルル!このお菓子はゼリーかしら?」

エルルは声をかけられた方を見て少し驚き、

 「妃様ですか?雰囲気が変わられて気付きませんでした、

これはゼリーと同じ様な物ですが味に癖が有りまして気に入って頂ける方と、苦手な方に分かれますので苦手な方は仰って下さいね、

 ゼリーに変えますので、」

 「ふふふ、如何かしらイオが綺麗にしてくれたの、

 ねえエルル私の側使え達をイオに指導して貰いたいのだけど、」

「分かりました、イオは母付きなので一度母に話しておきますね、」

「これは美味い!味付けは香辛料であるな、

 うーむこれはニッケイじゃな!」

「お見事でございます陛下!

 実家の森で採れたニッケイを使っています、」

他の方達もニッキの寒天を気に入って頂けたみたいで綺麗に完食している、

 そこにイオの店で美しくなってご機嫌な女性エルフ達が、

 「あら、貴方達だけ何を食べたのかしら、」

と声をかけ、かけられた長老達が、

 「これはまた見事に化けたな、」

とボソボソ小声で話す、

 聞こえてるよ!聞こえちゃってるよ!綺麗なエルル女性達から怒りで魔力が漏れ出しちゃってるって!

 「みっ、皆さんも寒天如何ですか?

 冷えていて美味しいですよ、」

 カナリザも美味しそうに寒天を食べながら、

「姐様達テュカは?」

「テュカはこれからよ、

 それにしてもあの娘の店といい、この宿は最高だわ!」

「さあさあ姐様達こちらに座ってお菓子を頂きましょう、

 陛下が絶賛するお菓子ですわよ、」

 


 エステサロンイオでアロママッサージの終わったテュレイカが大きな鏡の前の椅子に座り、

 「イオ、貴女が渡してくれたこの胸当て、確かブラだったかしら、

 これ最高ね、私達みたいに少し胸の大きい者は凄く助かるわね、

 言われたイオは内心私の胸はそんなに大きくないですよ!っと心で突っ込みながら、

 「はい、この下着を着けたら今までの下着は着けられませんよ、

 オーライドでは最近新しい下着が沢山売り出されているみたいですが、 こちらの姿絵の様な下着はまだ無いみたいです、」

 「こんな見事な姿絵初めて見たわ、

 描いてある女の子達はオーライド人ではないわね、異国の本かしら、

 でもこの姿絵殿方には見せられないわね、」

 イオはエルルの艶本話しを思い出し思わずぷっ、と吹き出してしまう、

 「あらイオ、如何したの?」

イオはエルルさんには絶対内緒ですよと水着の姿絵の話しをテュレイカに話す、

 話しを聞いたテュレイカも笑いながら、

 「エルルも男の子なのね、あの容姿だからか他の殿方から感じる様な下賤な視線は全く感じないけれど、」

「テュカ様エルルさんは大きいおっぱいが大好きなんですよ、

 何時も恥ずかしがりながらも、ちゃっかり見てるのが可愛くって、」

テュカは益々笑いながら、

 「ふふふ、一度見せてあげようかしら、

 でもイオその水着と水泳の話しには興味有るわね、

話を聞くに殆ど下着姿で泳ぐのよね?」

イオはアイテムボックスから水着のカタログと身体のラインを美しくする水泳ダイエットの本を渡す、

 「えっ!泳ぐと身体のラインが美しくなるの!?

 それにこれが水着?」

 「はい、私が今お使えしていますナタリア様は水泳を初めてから腰周りや足が細くなったって喜んでいらっしゃいますよ、」

「イオやカレンも泳いでいるの?」

「はい、エルルさんの自宅にあるプールで泳いでいます、

 あっ!テュカ様他の方々には内緒にして下さい、」

「分かってるわ、だからエルルの家に行った時は私にも水泳を教えて頂戴、

「はい分かりました、

 それでは髪のカットを始めさせて頂きますテュカ様、」



 アルクの執務室でアルクに紅茶を給仕する侍女長が、

 「主人様彼方の様子は如何でしたか、」

アルクは読んでいた書類をロバートに渡しながら、

 「彼方はマリーに任せっぱなしだよ、何故だかとても張り切っていてね、

 お客様達から働き者のご婦人ですななどと言われて喜んでいたぞ、

まあマリーだけでなくお手伝い下さる城使えの方々も、嬉々として仕事をしていてね、」

 侍女長は少しふくれ、

 「私達だけでもお客様のお世話位出来ますのに、」

 アルクは肩をすくめ自身の斜め後ろに立つペレスに、

 「ペレス下の本部は如何なっている?」

「何も問題になる様な事は無いかと、

 別邸もエルルが戻りお客様方々も今はそれぞれくつろいでいらっしゃるようです、」

「分かった、私も仕事に切りが付いたらエルル主催の夕食会に行って来る、

 マリーも夕食会の時は私と共に客人として参加するからな、」

マチルダはため息を吐く様な小さな声で、

 羨ましいと囁いた。


 エステサロンイオでイオとカレンがお茶とお菓子を食べながら休憩しているとマリーがスミを連れて入ってきて、

 「あらイオ休憩中だったのごめんなさい、」

「いえ、大丈夫ですよ、お客様方々の施術は終わっています、

 奥様、彼方の更衣室でお着替えになって下さい、」

「分かったわ、

 あら、貴女は確かアニーの、」

「はい、お久しぶりでございます奥様、

 アニーの姉のカレンでございます、」

 とカレンは頭を下げる、

「奥様今日カレンさんには此方を手伝って貰っています、」

と言うイオにマリーは改めて二人を見直し、

 「ねえ貴女達はその衣装で恥ずかしくないの?

 その格好で殿方の前に出ちゃ駄目よ、」

 イオは苦笑しながら、

「先程妃様方にもその様にお言葉を頂きました、」

「まあこのお店は女性専用だから問題はないと思うけど、

 じゃあ着替えて来るわね、」

とマリーが更衣室に入って行く、

 スミがイオに、

 「あの先生、施術を見学させて頂いても宜しいでしょうか?、

少しでも先生の技術を会得する事が出来れば妃様に喜んで頂けると思いまして、」

 「分かりました、奥様が許可して下さいましたら大丈夫ですよ、」

「ありがとうございます!先生!」

「あの、その先生と言うのは、」

「駄目です、私達の師なのです、先生とお呼びするのは当然でございます、」

そしてスミは心の中で強く決意する、

 妃様のため!でも一番は想い人のために自身を美しくするためにと。


 

 エルルは森の間に低めのテーブルをコの字形に並べ座布団を並べていき、コの字のテーブルの中には天ぷらを揚げる場所を二つ作り中居と共に食材を運んで来たモルズに、

 「モルズ様はこちらで天ぷらを揚げて下さい、

 僕は彼方で揚げますので、」

 「分かりましたエルル様こちらはお任せください、」

 と揚げ台の隣に瑞々しい野菜を並べる、

 「お願いします、今晩は揚げ物の他は僕とイオが用意した料理を出すだけですので、

 中居さん達は空いた皿やグラスを下げて下さい、」

 と中居達に声をかければ、

テーブルの上にメニュー表と押し花の入った紙のマットを並べ、取り皿と調味料が入った小皿や箸などを置いていた中居達が笑顔で、

 「お任せ下さいませ、」

と一斉に頭を下げた。

 

 そこに着替えて前掛けを付けたイオが入って来て、

 「お疲れ様ですエルルさん、カレンさんを送って来ましたよ、」

「お疲れ様ですイオさん、奥様は?」

「奥様はロビーで大使様と主人様とお話しされていましたよ、」

「了解です、じゃあそろそろ油を温めようかな、」




公爵屋敷のホールでは騎士団長ウッディが近衛隊長に、

 「隊長殿今晩くらいは我々に警備を任せて、料理長が用意した賄いを皆さんで召し上がって下さい、

 エルル先生がお酒も用意して下さったと聞いていますよ、」

 近衛隊長は横に首を振り、

「我々は警備に来ているのです、それでは我々が外国旅行に来た様ですよ、」

「隊長殿、主人の許可は取って有りますそれに、

 うちの団員に剣の指導をして頂いたお礼です、」

 「それは剣姫がした事、

 ただでさえ至高の料理を食べさせて頂いているのにこれ以上は、」

と言う近衛隊長の背後にウッディが目を移せばそこには期待に目を輝かせた美男美女のエルフの隊員達が見える、

 その場にホール奥の厨房から指を舐めながらランが出て来るのを見た近衛隊長は呆れ、

 「剣姫!貴女は護衛隊長なのですよ!

 その様に自身の家の如く振る舞うのはどうかと、」

「なに近衛隊長、此処の料理人達とは懇意にしておりましてな、」

呆れる近衛隊長にランは続け、

 「まあ儂が名だけではあるが護衛隊長ですからな、

 此処は酒を好まぬ儂が護衛を引き受けましょう、

 方々は此処でしか食べられない料理や酒を楽しんで下され、」

 名目上とは言え責任者からの許可に歓声を上げる隊員達に近衛隊長が、

 「いくら護衛隊長の言葉であっても我等は任務中、

 食事は良いが酒は一人一杯までとせよ、」

そしてこの近衛隊長はこの後、自身の言葉を激しく後悔する事になる。



 ロビーで話すアルク達の所にドビッシュとカナリザが中居に案内されながら階段を降りて来る、

 気付いたアルク達が膝をつく前にドビッシュが手で制し、

 「これは奥方、女将姿も美しくあったがその衣装もお似合いですな、」

 カナリザも、

 「マリーさん素敵な衣装だわ、」

「ありがとうございます陛下、カナリザ様、

 こちらは義弟が用意してくれました、」

衣装で盛り上がる夫人達の隣でラドナスが、

 「陛下、姪御より今宵は自身と公爵家の者で警備に当たる故、

 随行して来た者達に休みを与えて欲しいと申し出があり、

 私の判断で許可いたしました、

 勝手な振る舞い罰はどの様にも、」

「何かまわぬ、そもそも予達に護衛など要らぬ、」

「陛下!」

「あー、よいよい、其方の外交の話しは耳から木の子が生えるわ、

 さあ童が待つ広間に向かうぞ、」



森の間にドビッシュ達が入って来るとエルル達は頭を下げ、

 「今晩は私が陛下の接待をさせて頂きます、

 机の上にメニュー表が御座いますので記載されている物でしたら私かイオに仰って下さい、

 またこちらに並ぶお野菜はその場で天ぷらにしますので私か男爵様に注文して下さい、」


 エルフ達はそれぞれの席に置かれたメニュー表を見て盛り上がりドビッシュが、

 「おー!これはターナスが自慢しておったメニュー表よりメニューの数が多いぞ、」

 と長老エルフ達と載っていた酒で盛り上がる、

 女性エルフ達の所ではカナリザが、

 「ねえテュカ、これこの間の料理も載っているわよ、」

「義母様このバナルのパウンドケーキはこちらの紅茶と共に頂くと絶品ですわ、」

と盛り上がる二人に他の女性エルフが、

 「貴女達私達にも説明しなさいよ!

 この挿絵、乳や卵を使った人種の主食のパンでしょ?」

と言う女性エルフの前にエルルが焼きたての小さなパンを出し、

 「こちらのメニュー表に載っている物にエルフ族の方々が食べられ無い物は載っていませんので安心して頼んで下さい、」

渡されたエルフは匂いを嗅ぎ、恐る恐る口にいれれば、

 「これがパン?お昼のお蕎麦も驚いたけれどふかふかして美味しいわ、」

「良かった、デザート系はイオに注文して下さい、」

と言うエルルにテュレイカが、

 「エルル私にゴルマ味噌ラーメンをお願い、

 この間食べられなくてランが自慢するから悔しくて、」

エルルは直ぐにラーメン器に入ったゴルマ味噌ラーメンを出し、

 「はい!ゴルマ味噌ラーメンお待たせです!」

机の上に出されたラーメン器の中身を見たテュレイカが、

 「これよ!これこの前食べられなかったから、」

と箸を器用に使い麺を啜れば、

 テュレイカの糸目がカッと見開き夢中でラーメンを啜る、」

そんなテュレイカを見たカナリザが、

 「エルル私にも同じ物を頂戴、」

そして直ぐに私も私もとラーメンを注文する、

 男性エルフ達はイオが出した酒を飲み大盛り上がりでモルズに、

 「男爵殿そちらの葉を天ぷらにしてくれぬか、

 予はその葉が好みでな、その天ぷらとやらにして食べてみたい、」

モルズは承りましたとシソの葉に衣を纏わせると熱せられた植物油の中に落とす、

 そして菜箸て油の中から取り出した天ぷらを直接ドビッシュの席の紙が敷かれた皿の上に置き、

 「陛下お待たせ致しました、そちらの天つゆか軽くお塩を付けてお召し上がり下さい、」

「おお!男爵殿これは美味そうじゃ、」

とシソの葉の天ぷらをちょんと塩に付け食べ、

 その後酒をきゅっと飲めば、

 「これは酒のつまみに最高じゃ!

 男爵殿他の野菜も揚げてくれ!」

と言った時にはモルズは沢山の注文に追われ必死に天ぷらを揚げていた



 エルルはアルクの所まで来ると隣のラドナスに、

 大使様ご注文はありますか?

 「弟君私は妃様達が先日頂いたと言うお肉が食べてみたいのですが、」

「大使様あれはお豆で肉では無いですよ、

 でも食感は肉と代わりませんね、

 味付けによっては人種でも肉と勘違いするかも知れません、」

と言いながら大豆ミートのステーキを出す、

 大豆のステーキを初めて見た隣のアルクが、

 「いやエルルこれは肉だろう、」

「兄様も召し上がってみますか?お肉と違って沢山食べても太りませんよ、」

アルクの隣に座るマリーの目が光り、

 「エルル私はおろしポン酢で頂戴!」

アルクとマリーはエルルが出した大豆ステーキを食べ、

 「エルル肉じゃないか!」

とアルクがエルルに突っ込む、隣ではラドナスがナイフとホークを使い優雅な所作で美味しそうに次々大豆の肉を口に運ぶ、」

長老エルフ達は肉に見える物を美味しそうに口に運ぶラドナスを見て、

 「おいラドナスが肉を食うておるぞ、」

「何を言う、先程童が豆だと言っていたではないか、」

「おいラドナス!その肉いや、豆は美味いのか?」

「絶品ですぞ長老方、この薬味とソースの味も最高ですな、

 是非長老方も召し上がってみて下さい、」

長老達はラドナスの言葉に考え込む、

 勿論ラドナスの食べている豆も食べてみたいが女性陣が余りにも美味しそうにラーメンとやらを啜っているからだ、

 しかしあの様なボリュームの料理を二つ共食べてしまえば他の料理が食べられなくなってしまう、

 悩んでいる長老達にエルルが、

 ではラーメンにあのお肉に見えるお豆を載せましょうか?」

「なんと!肉を乗せると?」

「はい、うちではラーメンにお肉を乗せて食べますよ、」

とエルルは肉入りラーメンを出し、

 「お待たせ致しました肉入りゴルマ味噌ラーメンです、」

「おお!肉が二枚も乗っておるぞ、」

「これは美味い!汁に浸された麺も美味いが肉を浸して食べると最高じゃ、」

エルルはドビッシュに、

 「陛下は如何ですか?」

「予はこちらの稲荷寿司と、味噌のスープを頂こう、」

エルルが直ぐに稲荷寿司を出せばドビッシュは直ぐに口に入れ、

 「予の思った通りの味じゃ、美味しいのお、

 これは昨晩食べた油揚げに味付けした物じゃな、」

 「はい、こちらも豆から出来ています、」

「この吸い物の味付けの味噌も豆からか、

 豆とは偉大な穀物であるな、

 我等は長い年月食べていながらこの様な物を作り出す事が出来なんだ、」

「陛下、今殿下が頑張っておいでではないですか、」

「ああ、確か発酵とやらだったかな、

 息子の説明に皆が食材をわざど腐らせるなどと言っておったが、

 学者達は熱心に息子に質問しておったわ、」

「陛下、私はこの世の中に魔法があることを女神フィーネス様に何時も感謝しています、」

「うむ、無論予もじゃ、」

「ただその便利過ぎる魔法のお陰で発展しない物があるとも感じています、」

「それはどんな事じゃと?」

「一番大きいのは医術だと考えます、

 どうしても治癒魔法に頼ってしまい、

 病気になる原因や、治療法の研究が遅れていると感じます、

 確かに魔法は便利ですが行使する者に医術の心得がなければ魔法効果は二割程度いえ、一割程だと考えます、」

 「成程、童には一度我が国の学者達にその考え方を教授して欲しい物じゃ、

 食材に対しても同じ事かの?」

「はい、エルフの方々は食材保存に多分腐敗防止の魔法を使われますね、

 食物を腐らせない便利な魔法です、」

「ああ、ただ我が種族と他一部の者にしか使えんがの、」

 「その腐らせないと言う便利な事が豆の可能性を遮ってしまったのでは無いでしょうか、

 正確には腐ると発酵とは別の物ですが、エルフの方達もちゃんと発酵と言う技術を使っていらっしゃいます、」

「それは何処でかの?」

「エルフの国にもお酒が有るじゃないですか、」

「酒造りが発酵じゃと?

 あれは神世の昔から女神の奇跡だと信じられておるぞ、

 童その事は教会関係者の前で言うではないぞ、」

「はい、心しておきます、

 時間は掛かると思いますが気長にギルドを通じてレシピと言う形で世に流して行きます、」


話し込む二人の他は酒や料理で盛り上がり、

 女性陣はイオを囲んで甘味の試食会になっている、

 「このテュカが教えてくれたバナルのパウンドケーキも良いのだけど、

 私はクリームを使ったケーキの方が好きかも、」

私も私も、同意するエルフ女性の中で一番知的そうなお姉さんエルフが、

 「ねえイオ、このクリームは乳では無く何から出来ているの?」

「皆様が昨晩から飲まれている豆乳からです、

 あと、先日休暇で過ごした海辺の町で購入したヤシの実のミルクを使った物も有ります、」

「それはギルドからレシピが公開されているのかしら?」

「はい、ケーキのレシピと共に公開されたと思いましたが、

 人種でわざわざ豆乳などを使う事は少ないかと、」

「私達エルフが穀物で知らない事があったなんて勉強不足ね、

 帰ったら研究中の殿下達に教えてあげないと、」

「姐様はその様に直ぐ小難しく考えられて、

 甘い物は正義!ただそれだけで良いのです!」

「カナ、貴女は本当に昔から幸せね、」


 

食事が終わり今日はマリーと共に此方に泊まるアルクが最後に中居に案内され出て行くとモルズが、

 「エルル様お疲れ様でした、」

と労い、エルルも、

 「モルズ様に結局揚げ物を任してしまってすいません、助かりました、」

 と頭を下げる、

 「いえいえ、私はただ勉強させて頂いているだけです、

 ですが早い物ですな、明日の朝には皆様お帰りになるなんて、」

「そうですねあっという間でしたね、

「エルル様朝食の仕込みは終わっていますので今日は早めに上がって下さい、中居達も働き過ぎだと心配していましたよ、」

「ありがとうございます、

 何時もこんな物ですよ、

 でもお言葉に甘えて今晩は実家に帰ろうかな、

 あっ!じゃあこれ皆さんで飲んで下さい、元気が出る飲み物です、」

 と小さな小瓶を出す、

 「お任せ下さい、後明日の昼の打ち上げ女官達が喜んていましたよ、」

「はい、そちらはうちの料理長達が準備してくれていますので、

ではお先に失礼します、」

とエルルはその場から消えた。



次の朝来た時の衣装で朝食を食べるエルフ達一行の隣では土産屋で護衛エルフ達が買い物をしている、

 ドビッシュがアルクに護衛達が土産をを買える様に頼み、アルクが快諾し護衛用に土産屋を開いている、


 「あっ!隊長酒は一人一本迄ですよ!」

「なに?此処に各商品お一人様二つ迄と書いてあるぞ、」

「こっちをちゃんと見て下さいよ、

 お酒はお一人様一本と書いて有りますよ、

 それにそのお酒私のお給料位しますよ、

隊長が昨晩一人一杯なんて言わなかったらそのお酒ももっと飲めたのに!」

 「ああうるさい!昨晩も任務中だと言っただろ!」

 女性護衛達も、

 「これ食べても良いの?」

「試食と書いてあるから良いんじゃない、」

と薄くスライスされ揚げられた芋揚げを食べ、

 「やっば、このお菓子美味しいわよ、」

「見て!違う味もあるわよ、」

「こっちは甘味もあるわ!

 昨日食べた羊羹や饅頭もあるわよ!」

と盛り上がり、食事を終えたドビッシュ達が見たのは大きな袋を両手に抱えた護衛隊員であった。



 別邸の玄関にドビッシュ達一行と公爵家の者達、それに大使館員達が集まりドビッシュが、

 「閣下世話になりましたな、

 奥方の気遣いこのドビッシュ忘れませんぞ、」

アルクが一礼すると他の公爵家全員が片膝を付き頭を下げ、代表でアルクが、

 「陛下を我が家にお迎え出来た事をギルガス家の誇りに致します。」

「閣下その様に言われてはまた呼んで欲しいと気軽に言えないではないか、」

ラドナスが、

 「陛下その様な事はくれぐれも気軽に申さないで下さい、

 オラリウス陛下にご迷惑がかかりまする、」

「なにこっそり童に連れて来て貰えば良いではないか、」

ラドナスは呆れ困った様な顔をしているアルクの背後からエルルが、

 「では陛下、お送り致しますので護衛の方々から此方へお入り下さい、」

エルルの開いたゲートに護衛の者達が恐る恐る入って行く、

 カナリザがマリーに、

 「マリーさんまたお会い致しましょう、テュカは未だ此方にいるのね、」

マリーは一礼して、テュレイカは、

 「此方で出来ましたご友人と未だ約束が有りまして、」

「妃様テュカ様の護衛は引き続き儂、いえ私にお任せ下さいませ、」

「分かったわ、ランお願いね、ラドナス殿も頼みましたよ、

 では陛下私達も、」

とカナリザとドビッシュがゲートに入って行く、

最後にエルルとイオが、

 「主人様陛下をお送りして来ます、」

とゲートに入って行った。



 魔法省の転移の間で長官のシーアと副長官である娘婿のルーカスに皇太子ターナスがドビッシュ達の帰還を待っていると、

 部屋の壁に穴が開き、近衛隊長をはじめ護衛エルフ達が両手に荷物を抱え次々と出て来る、

 そして長老達の後からドビッシュとカナリザが出て来るとターナスが、

 「お帰りなさいませ父上、」

 「おおターナス、其方もおったのか、」

「ただいま戻りましたターナス、」

「母上雰囲気が変わられましたな、

 よく見れば長老の方々も、」

 「ふふふ、イオが綺麗にしてくれたのよ、」

「ちょっとカナ!姐様達もどうしちゃったのよ!」

「彼方でエルルの弟子のイオが宿の中にお店を出していたのよ、

 これお店の案内、」

 「これ!妃もシーアも後にするが良い、

 シーア、童の弟子のイオの登録もたのむぞ、予は城に行き早く宰相に土産を渡して機嫌をとらんとな、

 では童世話になった、また予をあの宿に呼んでくれ、」

「エルル私も戻るわ、例の椅子を宜しくね、」

と手を振り去っていく長老達やドビッシュにエルルが頭を下げているとターナスが、

 「童よ久しいな、」

「はい殿下、お久しぶりで御座います、」

「うむ、で我が妃は如何した?」

「テュカ様は彼方のお友達とまだお約束があるから帰れないと、」

「さようか、まあ良い今日は童にこれを渡したくてな、」

と言えばターナスの背後に控えていたエルフがエルルに壺を渡す、

 「殿下これは? ってまさか味噌ですか?」

ターナスはニヤリと笑い、

 「ああ、エルフ豆の味噌だ、

 童その顔は熟成が足りないと言う顔だな、

 確かに資料では三か月ほどは掛かると書いてあり実際未だ熟成途中だが、

 我が国の研究者が面白い実験をしてな、

 熟成中の味噌や醤油にある魔法をかけた、

 すると熟成期間が大幅に短縮される事が分かったのだ、

 もっともまだ実験の途中で比べられないのだが、」

 ターナスの説明にエルルは目をキラキラ輝かせ、

 「殿下素晴らしい成果で御座いますね!」

「なに儂より研究者達が乗り気でな、

 今は自分で作った味噌で味噌汁を作っている者もおる、

 おお、すまんすまんついつい話し込んでしまったわ、」

と途中でルーカスの咳払いに気付いたターナスが話を止め、エルルも周りを見ればイオとシーアも話し込んでいてルーカスの目がエルルに彼方の二人を止めてくれと語っていた。



 

 「ではシーア様馬車と馬は後日先程の厩舎に直接お送り致します、」

「お願いするわ、ラドナスの所にも使いの者を出しておくから、

 あとイオ先程の事お願いね、オーライドには自分で行けるから大丈夫よ、」

シーアの隣りのルーカスは呆れ、

 「エルル君イオさん長々と悪かったね、イオさんの登録も完了しているから何時でも此方に遊びに来てくれたまえ、

 ファンファン家は君達を歓迎するよ、」

 「ありがとうございます、また長期休暇が取れたら二人で遊びにきますね、」

 とエルルとイオが立ち上がれば

「婿殿その時は私も必ず呼んでちょうだい、」

とまたまた話が長くなりそうなエルフ達に話しかけられる前にエルルとイオは慌てて頭を下げその場から転移した。



 

 おまけ


 エルルがイオと共に公爵屋敷に帰って来ると中庭では焼肉が始まっていて、

エルルがイオに、

 「イオさん、カレンさんをお願いします、」

 と頼めば、

「はい行ってきます、」

とイオは転移して行き、

 エルルがアルクやモルズ達と話している所にイオがカレンを連れて帰って来る、

 アルクはカレンに、

 「カレン昨日はご苦労様だったね、

 今日は此方で楽しんでくれ、」

「ありがとうございます主人様、」

 とカレンが頭を下げればマリーも、

 「さあカレンもイオもあそこで侍女長や女官長様が貴女達を待っているわよ、一緒にお肉を食べていらっしゃい、」

 と言われ二人は女性達の輪の中に入って行く、

 二人を見送るマリーにエルルが、

 「奥様今回は私の無理を聞いて頂きありがとうございました、」

「あらエルル、女将の事かしら?」

「はい、」

「とても楽しい体験が出来たわ、

 あの別邸を使って公爵家で宿でも始めようかしら、」

「奥様勘弁してください、多分これから奥様達のお茶会がお泊まり会になったりしますよ、」

「ふふ、それは楽しそうねお友達に招待状を送ろうかしら、

 でもその前にエルルの家に招待して欲しいわ、」

「そうですね、姐様も落ち着きましたし主人様とお二人でご招待させて頂きます、」

 

 


 

 


 


 


 


 



 





 



 



 

 

 




 

 

 





 

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