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休暇を公爵家で中編

宜しくお願い致します。

第五十三話


 

    休暇を公爵家で中編



 「あらあなたこんな朝早くからどちらに行ってらしたの?」

 とローザンヌが布団の中から部屋に戻って来たジュリアスに声をかける、

「今あの風呂に入って来たのだが木の風呂と言うのも中々良いな、

 ただ早起きしたが例の椅子は既に長老方の順番待ちになっておったわ、」

 「どこの国でもご老人の朝が早いのは同じようね、

 例の椅子には昨晩私も座れなかったわ、

 朝食を食べたら城へ帰らなくてはいけないから朝お風呂に行った時に空いていれば良いのだけど、」

と未だ布団の中から話すローザンヌに、

 「さあ、そろそろ女官を呼んで支度するが良い、」

「あなた此処では中居よ、

 それにしても私床で眠ったのは始めてだったのだけど、

 ぐっすり眠れたのはこの身体に吸い付く様なマットに肌触りの良いシーツや羽の様に軽いこのお布団のおかげかしら、

 あまりの心地良さに布団の中から中々抜け出せないわ、」

 ともう一度布団にもぐるローザンヌにジュリアスは呆れながら、

 「予は着替えて先に朝食を食べに行くぞ、」

 「私は女官長が来たら支度をしてお風呂に行くわ、」

と布団の中から返事をするローザンヌにジュリアスは呆れながらテーブルの上に置いてある中居を呼び出す魔導具に魔力を流した。



 

 隠れ宿のロビーでは置いてあったソファーが片付けられ、

 テーブルセットと ビュッフェ用に料理を並べるテーブルが置かれ、中居達が厨房から運んで来た料理をせっせと並べていて未だ朝食の時間には少し早いのかロビーには綱が張ってあり立ててある案内にはしばらくお待ち下さいと書かれていた。


 ロビーの横の土産売り場も昨晩から準備中の綱が張ってあり、数人のエルフが受付にいた中居に声をかけ、

 「のう、中居とやら未だ売店は開かぬのか?」

「はい、後ほどエルル様に商品を補充して頂きその後開店いたします、」

 「さようか、夕べ買えぬ商品が沢山あってな、」

 中居は売店の中の立て札を指し、

「彼方に書いてあります様に、

 今日から各商品おひとり様方二つまでになっておりますので商品が買えなくなる事はないかと、

 昨晩商品が買えなかったとお客様から御指摘が入りましたため対応させて頂きました、」

「何と!二つまでしか買えぬと!」

と残念がる長老達に背後からドビッシュが、

 「長老の方々があれもこれもと買い占められるので後から来た我等は何も買えませんでしたぞ、」

「ドビッシュか、ほとんどの品がここでしか買えぬ物ばかりだ、

 買える物は全て買うつもりじゃ!」

「ほどほどにされませんと童に呆れられますぞ、」

とドビッシュは丁度調理場から中居達と料理を運ぶエルルを見ながら長老達に告げる、

「おおあの娘が来たと言う事は朝食が始まるのかの、」

とドビッシュの注意もどこ吹く風でロビー奥の朝食会場に長老達はわらわらと向かって行く、

 そんな長老達にドビッシュはため息を一つつくと自身も朝食の会場に向かった。


 

 ローザンヌが浴場に向かっていると廊下に女性エルフ達が集まっている、

 「皆様この様な所でなにをされているのですか?」

と声をかけられたエルフの中からカナリザが、

 「おはよう御座いますローザンヌ様イオのお店に姐様達と予約を入れているのですわ、」

とエステサロンイオと名前の入ったガラス扉の前の予約表に指を指す、

 「私は朝食を頂いたら帰らなければならないのでイオに美しくして貰う事が出来ず残念ですわ、」

 「まぁ!もうお帰りになってしまうの、」

「はい、本当は晩餐会が終わり次第帰る様に言われていたのですが、

 陛下が頑張って下さいまして、

 あの素敵なお部屋に泊まる事が出来ましたわ、」

「本当に素敵な宿ですわね、

 何でもエルルが自らこの宿を作ったと聞きましたよ、

 童だとは聞いていましたがあの様な可愛らしい娘だったとわ、」

 「私は昨晩エルルを見て可愛らしい娘だと思うど同時に以前変装をして義姉様と共に王城に来ていた事を思い出しましたわ、

 その時はエルリーナなんて義姉様から紹介されましたわ、」

とローザンヌは苦笑しながら話し、エルフ女性達を見てふと、

 「カナリザ様、皆様がここにいらっしゃると言う事は今脱衣所の椅子が空いていますわね、」

「ええ、テュカはいませんがあの子朝が弱いからきっと未だ夢の中よ、

 ローザンヌ様もお帰りになる前にあの椅子を体験なさると良いわ、」

 とカナリザ達に声をかけられたローザンヌは軽く頭を下げ慌てて脱衣所に向かった。


 

 エルルは朝食会場に入って来たエルフ達に、

 「皆様おはよう御座います、

 お部屋は如何でしたか?

 こちらのテーブルに色々な料理を用意致しました、

 彼方のトレーに皿やスープ皿を乗せて好みの料理をお取り下さいませ、」

「おお!童とても良い寝心地であったぞ、

 朝食も好みの料理を自分で取るとは面白い趣向じゃ、

 どれどれ、

 何と!どの料理もうまそうじゃ、ふむふむ説明が詳しく書いてあるのか、」

 と盛り上がるエルフ達の向かいでモルズがスープの大鍋の後ろに立ち、

 「こちらはスープになります、

 味噌にトロマン、つぶつぶの実、

 パンプマンなどをご用意して御座います、」 

 と長老達に声をかけている、

長老達はスープを注いで貰うと次はおかずの説明を読みながらまたわいわい盛り上がりトレーに料理を乗せて行きエルルの前に来て、

 「童は、何を作っておるのじゃ?」

エルルはおひつに板海苔、梅干しや漬け物などお結びの具材が乗った皿を見せながら、

 「こちらはお結びと言う白米を使った料理です、

 オーライドでは白麦草と呼ばれている穀物を炊いたものです、」

「おお、聞いておるぞ、昨晩出た炊き込み御飯も美味であった、

 どれ儂はその梅干しとしそとやらを入れて結んでくれ、」

「かしこまりました、

 お握りには焼いた物も御座いますよ、」

と説明しながらエルルは手際良くお結びを作り長老達の皿に乗せていった。

 

 「エルルおはよう、とても良い寝心地であったぞ、」

と朝食会場に入って来たジュリアスにエルルはにっこり笑顔で

 「陛下おはよう御座います、」

と七輪の上で焼いていたお結びに刷毛で醤油を塗りながら挨拶をする、

 「エルル良い香りだな、」

「はい、焼きおにぎりと言います、

 陛下彼方で中居さんからトレーやお皿を貰って好きな料理を選んで下さいね、」

 「では皿を貰って来るとしよう、

 でエルルその焼きおにぎりとやらも頂こう、」

 

 と言って中居からトレーを受け取り好みの料理をトレーに乗せ終わるとドビッシュ達が座るテーブルに行き、

 「おはよう御座います、ファラカーン殿、」

「おお!お早いなオーライド殿、」

「ええ食事が終わったら城にもどらねばなりません、」

「それは残念じゃ、

 じゃが昨晩話した様にこれからは童が我が国とオーライドを繋いでくれるじゃろう、

 オーライド殿や童なら何時でも歓迎しますぞ、」

「我が甥ごをそこまで信用して頂き、ありがとうございます、ファラカーン殿、」

「なんのなんの、童は退屈しておったじじいをこの様に楽しませてくれておる、

うむ?オーライド殿の皿に乗っておるにぎりから香ばしい良い香りがしますな、

 それは童が言っておった焼きおにぎりとやらかな?」

 「ええ、エルルがその様に言っていましたな、」

「たまらん匂いじゃ、どれ儂も貰って来るかの!」

とドビッシュは皿を手に席から立ち上がった。



 「おはようエルル、面白い朝食ね、」

「おはよう御座います皇后様、

 お部屋は如何でしたか?」

「そんな他人行儀な呼び方はやめて頂戴!カナリザよ、

 お部屋は最高だったわ、あの床と布団もね、」

 「ありがとうございます、」

「ねえエルル、朝食のおすすめはあるかしら、

 どれも美味しそうで目移りしてしまうわ、」

「私の家族には生野菜のサラダが人気ですよ、

 好みのドレッシングをかけて召し上がってみて下さい、

 あとデザートにはフルーツゼリーなど如何ですか、」

 「ありがとう先ずサラダを食べてみるわね、」

 と言い、カナリザ達はサラダ用の生野菜を好みで皿に乗せドレッシングの説明を読み、

 「私はこのゴルマタレのドレッシングにするわ、」

 「私はこっちのドレッシングよ、」

などとそれぞれ気になるドレッシングをかけ女性エルフ達もテーブルについた。


 

 朝食会場に最後に入って来たのはローザンヌとテュレイカでテュレイカは慌てて来たのか髪がぼさぼさで、

 ただでさえ細い糸目が今は開いているのか分からないほどである、

 「おはよう御座います妃様、テュカ様、」

エルルの挨拶にローザンヌは少し膨れ、

 「あらエルル、何故テュレイカさんは愛称呼びなのかしら、

 私もローザと呼んで頂戴!」

エルルは少しだけ慌てて、

 「わっ分かりましたローザ様、」

と言うエルルにローザンヌはくすっと笑いながら胸を張って、

「宜しい!じゃあお勧めの朝食をいただくわ、」

 と伝える、背後からとても眠たそうな声でテュレイカが、

 「エルル、私はフレッシュジュースをお願い!他は要らないわ、」

と言ってエルルがコップに注いだフレッシュジュースを持って空いているテーブルに向かうとカナリザが、

 「テュカは相変わらず朝が弱いわね、」

「おはよう御座います義母様、

 あの至高の布団からなかなか抜け出せなくて、」

 「おはよう御座います皆様、

 朝のお風呂も良いものですね、」

 とローザンヌもトレーをテーブルに置きながら席につく、

 「おはよう御座いますローザンヌ様、例の椅子は如何でした?」

「最高でしたわ!帰る時にエルルにお願いしなくては、

 あら、皆様は生野菜を召し上がっていらっしゃいますのね、 」

 「ええ、姐様達もこのドレッシングとか言うタレをかけたお野菜に夢中ですわ、

 因みに私のお勧めはゴルマタレドレッシングですわ、

 何でも昨晩売店に少しだけ売っていたそうで、

 たまたま購入出来た姐様が先程から自慢していますの、」

 「まあ、私達が売店に行った時にはほとんどの商品が売れてしまっていましたわね、」

「本当ですわ、姐様達欲張りすぎですわよ、」

「あらカナ早い者勝ちよ、

 此処でしか買えない商品ばかりだものまた商品が並んだら必ず買うわよ!」

と言い合う女性エルフ達の隣を食事を済ませた男性エルフが通りがかり、

 「先程中居から聞いたのじゃが、

 次回から同じ商品は二個までしか買えんそうじゃ、

何でも皆が商品を買える様にするそうじゃ、」

 「と言う事はまた商品が入るのね、」

「中居は童が商品を補充してくれると言っておったぞ、」

と言い残し朝食会場から出て行った。


 


 

 宿のロビーにアルクとマリーが皆の食事が終わるのを待っていて先に出て来たエルフの長老達に朝の挨拶をしている、

 「おはよう御座います皆様、

 公爵家の別邸を楽しんで頂けていますか、」

「おお若き閣下殿、今も朝から美味しい食事を頂いた所だ、

 閣下と働き者の夫人に感謝しますぞ、」

「喜んで頂けている様で安心いたしました、

 今日は天気も良いので庭もご自由にお楽しみ下さい、」

「では後ほど腹ごなしにこの見事な節の木林を見に行こうかの、」

と言って自身の部屋に戻って行く。


 エルルは会場から出て来ると売店で商品を出し、補充を中居にお願いするとアルクの所まで来て、

 「おはよう御座います主人様、奥様、」

「エルルおはよう、陛下達は?」

もう直ぐこちらにいらっしゃるかと、」

と言って朝食会場を見ると国王と皇王夫妻が会場から出てくる、

 アルクをはじめマリーとその背後でエルルも片膝を付いて待ち、

 ジュリアスが、

 「アルク膝など付かぬとも良い、」

 隣のドビッシュも、

「そうじゃぞ閣下、其方達には我等が世話になっておるのじゃ、

 外国からの客人程度の扱いで十分じゃ、」

とドビッシュもアルクに言葉をかける、

 アルクは一礼すると立ち上がりマリーやエルルを立たせ、

 「おはよう御座います陛下、

 両陛下に朝の御挨拶と陛下のお見送りに参上致しました、

エルル陛下の御支度を、」

 と言うとエルルが前に出て頭を下げ、

 「こちらは公爵家からのお土産で御座います、」

と言ってジュリアスとローザンヌにそれぞれ大きな紙袋を渡しゲートを開くとジュリアスはアルクに、

 「アルク世話になったな、

 ファラカーン殿妃殿またお会いしましょう、」

隣に立つローザンヌもエルルから貰った大きな紙袋を大切そうに抱え、

 「カナリザ様またお会い致しましょう、

 皇王陛下お先に失礼させて頂きますわ、

 あとマリーさん、先程カナリザ様とお話ししていたのだけれど、

 今度はこの別邸で女子会を開いて下さらない?」

 マリーはもう一度頭を下げると、

 「主人とエルルに相談させて頂きます、」

と答える、

 ジュリアスが、

 「我が妃よ、公爵夫人が困っておるであろ、

 早くゲートに入るが良い、」

と言ってまだ話そうとしていたローザンヌを連れてゲートの中に入っていく、

 ゲートが消えるとドビッシュが、

 「童よ、例の件だがこの信書をラドナスに渡すが良い、

 かの者が段取りをするであろ、」

「分かりました、陛下これから屋敷に詰めていらっしゃる大使様に伺ってまいります、」

 「うむ、頼んだぞ童よ、

 其方であれば儂らもオーライド殿の様に送って貰えるからの、」

 「承りました、昼食は朝食と同じ場所でカレーとお蕎麦と言う料理をご用意して御座います、

 昨日護衛の方々にお出しした所、

 大変好評だったとうちの料理長が言っておりました、」

カナリザが、

 「その料理は以前公爵家の食事会の時に護衛の者達に出していた料理ね、」

「はい、元々は使用人の賄い食として出していたのですが、

 主人様方にも大人気でして、」

「ランが何時も自慢しますの、

 やっとカレーが食べられますわ、」




 イオは森の家でカレンと共にエルルが用意したエステサロン用の制服に着替えリリルに、

 「リリル様カレンさんと共に公爵家のお手伝いに行って来ますね、」

「ああ二人とも頑張っといで、ユユは私がみてるから心配無いよ、

 それにしてもその格好で仕事をするのかい?」

とリリルの膝の上で丸まって寝ているユユを撫でながら話す、

 カレンは裾の少し短かいワンピース形の制服が少し恥ずかしいのか顔を赤くしながら、

 「リリル様、今日お手伝いする仕事の衣装をエルル様から見せて頂いただいた見本の中でこの衣装が一番まともだったのです、

 今は居ませんがシャルルさんなんてこのワンピーススタイルの裾が膝上の物が可愛いなんて言うんですよ、」

「カレンさん私も膝上のワンピースも良いと思いましたよ、」

「もう!イオさんまで!」

 と制服の話しが止まらない二人に、

「はいはい、あんた達仕事に遅れるよ!」

 とリリルに突っ込まれたイオ達は慌ててゲートに入って行った。

 

 

 エステサロンイオに着いたイオが指パッチンをするとサロンの照明魔道具に灯りがつき部屋の中が明るくなる、

 「ひぃっ!」

とカレンがサロンのガラス扉を見て悲鳴をあげる、

 イオが扉をみればガラスの扉に顔をくっつけて凄い顔になっているエルフ女性達が見え、

 イオが急いで扉の鍵を開け、

 「おはよう御座います、お待たせ致しました皆様、」

「おはようイオ!待っていたわ!」

と言いながらカナリザと女性エルフ達が待ってましたとばかりに皆で入って来てイオに予約表を渡す、

 「ありがとうございます皇后様、

 こちらは私の同僚で今日手伝いをしてくれるカレンです、

 彼女は私と同じく辺境伯付きの使用人で普段はエルルさんの家のお手伝いをしています、」

 とイオの隣で片膝を付いて頭を下げているカレンを紹介する、

 カナリザは、

 「今は休暇中なのよ、その様にかしこまらないで頂戴、」

 「カレンで御座います、宜しくお願い致します、」

 「ええ、イオもカレンも宜しくね、

 で貴女達のその格好は少し刺激的ね、人種ではその様な衣装が流行っているのかしら?」

「これはこのサロンの制服で特別な物ですよ、」

「そうなの、その格好で男達の前に出ちゃ駄目よ、老人には刺激が強すぎるわ、」

カナリザの言葉にイオとカレンは笑いながら頷きイオが、

 「では皇后様、あちらの更衣室で専用の下着とガウンにお着替え下さい、

 あと他の皆様、施術には少々お時間がかかりますのでお部屋でお待ち下さいませ、

後ほどご案内させて頂きます、」

「待って頂戴イオだったかしら、

 私達はカナを見ていたいのだけど、

 こちらで待っていてはダメかしら、」

「私達は構いませんが、皇后様が良いと仰るなら、」

「ねえカナ、良いでしょう?」

カナリザは更衣室の扉から顔を出し、

 「姐様、イオ達に迷惑をかけてはだめですよ、」

と中に入って行く、イオは女性エルフ達にサロンのソファーに座るのを進め、エルルが特別に用意した髪型や衣装の姿絵を渡せば女性エルフ達は大いに盛り上がる。

 若い女性達がファッション雑誌を見てキャーキャー騒いでいる様にカレンには見えているが、

 実際はお婆ちゃん達が騒いでいると思うと思わず笑いが込み上げ、

 ふとイオと目があうとイオも笑うのを必死に我慢していた。

 

 更衣室から少し顔を赤らめたカナリザがガウン姿で出て来て、

 「ねえイオ、この下着って頂けるのかしら?

あとこの着心地の良いガウンも、」

 「はい、このサロンの施術料の中に含まれています、」

「イオ、オーライドの下着ってこんなにつけ心地が良いの?

 もしかして貴女達は何時もこの様な下着を付けているの?」

と話しをしているカナリザ達に女性エルフ達が、

 「カナ!もしかして貴女この姿絵の様な下着を付けているのかしら!

 ちょっと見せて頂戴!」

と目をギラギラさせながら詰め寄って来る、

 「姐様達待って下さい、今私はイオに話しを聞いているのです、

 それに下着を見せろだなんて、

 あら?でも姐様その精密な下着の姿絵と私が付けている下着は違いますわ、

 その絵の下着の方が素敵ですわね、」

「カナリザ様その下着は下着としても使って頂けますが、施術用の下着なんです、

 さあ彼方で横になって下さい、施術をはじめます、」





公爵屋敷のホールで打ち合わせをしていたエルフ達の所へ庭に繋がるガラス扉からエルルが入って来て、

 「おはよう御座います皆様、」

と声をかけられエルフの中からランが、

 「おお!娘か彼方はどうなっておる?」

「皆様朝食をお召しになりお褒めのお言葉を賜り、

 先程国王陛下と妃様をお城にお送りいたしました、

 あとファーセルの皇王陛下から大使様宛の信書をお預かりしております、」

 とエルルの言葉を聞いたラドナスが、

 「おはよう御座います姫様、いえ今は執事殿でしたな、」

「おはよう御座います大使様、

 皇王陛下が大使様にこれをと、」

と言って信書を渡す、

 直ぐに信書を開いたラドナスは一読すると隣にいた文官にも信書を見せ文官はホールの庭先に作ってある天幕に入って行く、

 暫くすると文官がローブを羽織ったエルフを連れて来てラドナスがエルルに、

 「この者は魔法省の職員で本国との連絡役です、執事殿にはこの者と一緒に飛んで頂きますがこの者は人を連れて転移は出来ません、

 陛下の信書には執事殿と飛べは大丈夫だと書いてありましたが、」

「はい、転移が出来る方と私が手を繋げば私の魔力で飛べますので、」

「驚きました、人を連れて転移出来る者は比較的魔力量の多い我等の中には多少おりますが、

 まさか魔力を分け与える事が出来るとは、」

 「なあに叔父上もこの娘が規格外な事は知っておいででしょう、

 娘、彼方に行ったらお祖母様に宜しくの、」

エルルはにっこり笑うと準備が出来た魔法省の職員と共にファーセルに向かった。



 ファーセルに転移して来るとその部屋は建物の中なのにまるで森の中にいる様にエルルは感じ、

 「凄い!僕の実家のある森の中の匂いがします、」

一緒に飛んで来た職員は自身の魔力が減って無い事に驚いていたがエルルの反応に笑みを浮かべ、

 「姫様、森都ファラカーンへようこそ、外国の方が森都に入ると皆姫様と同じ様な反応をされますよ、

 では少しだけこちらでお待ち下さい、直ぐに手続きをいたします、」

と言ってエルルに椅子を用意した後、頭を下げ部屋から出て行った。

 

 エルルが待っている部屋の外から賑やかな声が聞こえ、

 ばんっ!と勢いよく扉が開く、

 「よく来たわねエルル!」

とシーアが数人のエルフを連れ部屋の中に入って来る、

 エルルは座っていた椅子から立ち上がり頭を一度下げ、

 「シーア様お久しぶりです、

 今日は皇王陛下の命にてこちらまで職員の方に連れて来て頂きました、」

「話は聞いたわ、とりあえずエルルの登録だけ先に済ませて私の執務室へ行くわよ!良いわね婿殿、」

「はいはい義母上、

 始めまして可愛らしい魔法使いさん、私の名前はルーカス・ファンファン、魔法省の副長官をしている、

 君には娘と弟がお世話になっているようだね、

 帰国された殿下や義母上から君の話しを聞いているよ、」

「始めましてエルル・ルコルと申します、

 ラン様には何時も剣の指導をして頂いています、」

「婿殿!お話しは後にして登録をして頂戴!」

「はいはい義母上、ではエルル君こちらの魔道具に魔力を流してくれたまえ、」

と言って大きな魔石の付いた魔道具をエルルの前に出す、

 エルルが魔石に魔力を流せば魔石が一瞬輝き確認したルーカスが、

 「これで良し、登録が終わったよエルル君これで君は森都の大結界の中に外国から転移出来る様になる、」

「ありがとうございます、明日の朝皇王陛下方ををお送り致しますので宜しくお願い致します、」

 「分かったわエルル、じゃあこちらに付いて来てちょうだい、」


エルルは案内された長官室のソファーに座り向かいに座るシーアとルーカスに、

 「これお土産です、皆さんで召し上がって下さい、」

と言って大きな菓子折りを出しシーアの前に置く、

 「ありがとうエルル、皆で頂くわ、」

 と嬉しそうに微笑みながら菓子折りに手を添えればエルルが空間魔法を使った時の様にぱっと消える、

 「凄い!魔法の袋ですか?」

 「ええ、袋の中に保存すれば傷まないので便利なのよ、

 エルルは空間魔法を使っているのよね、

 希少な魔法の資質だわ、太古の昔エルフは空間魔法が使え魔法の袋を作る事が出来たと伝わっていてね、

 魔法の袋を代々受け継ぐ家もあるのよ、」

「私の知り合いの袋はダンジョン産でした、」

と言いながらエルルは次にルーカスの前に酒瓶を出し、

 「こちらは山芋の焼酎と言うお酒です、」

「おお!これはありがたい、

 いやなに、殿下が公爵家で振舞われた酒を大層自慢されましてね、」

と嬉々としてルーカスが酒瓶に手を伸ばすより早くシーアが横から手を伸ばし菓子折りの時の様に酒瓶が消える、

 「まあ!エルル希少なお酒をありがとう、大切に頂くわ、」

と言うシーアにルーカスが、

 「義母上!ちゃんと私にも飲ませて下さいよ!」

「分かってるわよ!ちゃんと一杯だけ飲ませてあげるから、

 でエルル、カナは彼方で楽しんでいるのかしら?」

とシーアが問うと、

 「はい、今朝も宿と朝食を褒めて頂きました、

 今は私の弟子のお店でお肌を磨いていらっしゃると思います、」

 「なんですって!それは聞き捨てならないわ!詳しく話して頂戴!」

「義母上!」

「お黙りなさい婿殿!」

「未だ何も言ってはおりません、」

エルルは二人の喜劇の様なやり取りに笑うのを堪えながらシーアにエステサロンイオのパンフレットを渡す、

 シーアは目を皿の様にしながらパンフレットを読み、

 「婿殿!私は今から早退するわ!後をお願い、」

そんなシーアにルーカスは呆れながら、

 「義母上、また宰相に叱られますよ、

 もしどうしてもと言われるなら宰相の許可を貰ってからにして下さいね、」

「お兄ちゃんが許してくれる訳無いじゃない!」

「義母上、お客様の前で宰相をお兄ちゃんなどとお呼びになるのはどおかと、」

「私のお兄ちゃんなんだから仕方ないじゃあない!」

「義母上明日陛下達がお帰りになるのです、直ぐに手配を始めませんと、」

「悔しいけど仕方ないわね、

エルル次に休みが取れた時にオーライドへ遊びに行くから、

 その時にお弟子さんを紹介して頂戴、」

「分かりましたシーア様イオに伝えておきますね、

 では私も陛下方の接待が有りますのでこれで失礼させて頂きます、

 また明日の朝皇王陛下と共にこちらに来ますので宜しくお願いいたします、」

と伝え、シーアにその場から転移する許可を貰いエルルは隠れ宿の厨房に転移した。



 エルフ女性達が大きな鏡に写るカナリザに釘付けになっている。

 

 カナリザはイオとカレンのアロママッサージで全身を磨き上げられた後、

 ヘアカタログから気に入った髪型をイオに伝えカットをして貰い鏡に写る自身を見て、

 「髪の形でこんなにイメージが変わるのね、」

「妃様とてもお似合いです、

 あとこれだけお肌が美しいのであればお化粧は殆ど要らないかと、」

「イオ、普段のお肌にこんな艶と瑞々しさはないわ!あの先程のマッサージは最高よ、

 私付きの女官達に指導して欲しいわ、

あと妃ではなくカナリザよ、」

 「分かりましたカナリザ様では軽くお化粧をして仕上げさせて頂きます、」

そして女性エルフ達が見守る中カナリザの施術が終わると、

 「凄いわカナ!別人よ!」

「待って次は私よ!未だ髪型が決まって無いの!」

「じゃあ私が先に!」

などわいわい盛り上がる女性達の所に

 テュレイカがサロンに入って来て、

 「まあ皆様盛り上がっていらっしゃるのね、

 って!義母様ですの?」

と椅子に座り皆に囲まれているカナリザを見てテュレイカの糸目が見開く、

 「テュカ貴女も来たのね、

 見て頂戴この生まれ変わった私を!イオが綺麗にしてくれたのよ、」

「義母様別人ですわ、それにその衣装は?」

「このサロンの施術用の衣装でタオル地のガウンは着心地最高なのよ、

 さっきカレンからお風呂上がりに着ると最高だと教えてもらったの、

 ちなみにガウンの下は下着だけよ!

 この下着も素晴らしいつけ心地なの!」

と自慢気にガウンの胸元を少し開け下着を見せる、

 テュレイカはイオに、

 「イオ!私にも!」

と言おうとすると、

 「駄目よテュカ!順番よ!」

とエルフ女性達に釘を刺され、テュレイカはサロンのソファーで大人しく順番を待つのであった。



 厨房に戻って来たエルルにモルズが、

 「お帰りなさいませエルル様、」

「ただいま戻りましたモルズ様、

 昼食は如何でしたか?」

モルズは空になった大鍋を見せながら、

 「大好評でしたよ、男性の皆様はカレーをお代わりをされた後お蕎麦まで召し上がられまして、」

「モルズ様ありがとうございます、

 後は僕が行いますので、モルズ様は休憩に入って下さい、」

「エルル様私に休憩なんて必要ないですよ、」

「駄目ですよモルズ様ちゃんと休んで下さい、

 公爵家はブラック企業じゃ無いので、」

 さあさあ早く休んで休んでと急かすエルルにモルズは降参しましたと、

「言葉の意味は分かりませんが、

 分かりました少し休憩させて頂きます、」

と言って洗いかけの鍋を洗い終え厨房から出て行くモルズを見送ったエルルは今晩の仕込みを鼻歌混じりで始めるのであった。



 おまけ、


 王城で執務を始めたジュリアスの所に宰相ローレンスが入って来て、

 「陛下公爵家の別邸は如何でした?」

「我が宰相、王家の保養にある離宮より過ごしやすい宿であったわ、」

「宿とはこれはまた、」

 「妃が公爵夫人に次はこの宿で女子会を開いて欲しいなどと頼んでおったぞ、」

「ほう、それほどの宿でしたか、」

「ああ、派遣した女官達も嬉々として働いておったわ、」

「では私もアルクにその宿で男子会を開いてくれる様頼んでみますか、」

「我が宰相その時は勿論予も呼んでくれるのであろうな?」


 

 


 

 

 




 

 



 

 

 


 


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