休暇を公爵家で前編
更新がかなり遅れてしまい申し訳ありません。
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第五十二話
休暇を公爵家で前編
「陛下こちらがお部屋でございます、
こちらではお履物を脱いでお過ごし下さい、」
と中居頭のスミが部屋の引き戸を開けながら伝えれば、
「うむ、」
とスリッパを脱ぎドビッシュが部屋の中に入り、
後から部屋に入ったカナリザが鼻から大きく空気を吸い込み、
「異国なのに私達が落ち着ける素敵な部屋ね、この香りは床の匂いかしら、」
とドビッシュに声をかける、
「その様じゃの、ほうこの床は植物を編み込んで板状に加工しておる様じゃ、
置いてある机の高さからするに床に直接座る部屋の様じゃな、」
と二人の後から部屋に入って来たマリーに声をかける、
マリーは部屋に入ると引戸を丁寧に閉め正座し一度頭を下げ、
「陛下こちらに逗留されます間は女将と呼んで下さいませ、
陛下のおっしゃる通り此方のお部屋ではこの畳と言う床に直接腰を下ろして頂きます、彼方にあります座椅子にお座り下さい、中居頭がお茶をお淹れいたしますわ、」
カナリザは部屋の中を興味深く見廻っっていたがマリーの説明を聞いてドビッシュと共に座椅子に座わり、
「まぁ!脚の無い椅子なんて面白いわね、」
と足を投げ出し背もたれに身体を預ける、
中居頭のスミが昨晩女官達と練習したお茶を淹れ、
「陛下お茶とお菓子の用意を致しましたがお毒見のお方をお呼び致しましょうか?」
「無用じゃ!ラドナスがせめて近習だけでもと言っておったがの、」
と湯呑みに手を伸ばし湯呑みの形を楽しみながらお茶を飲む、
「ほう、我らが飲む茶とは違う物だがこれも良いな、中居頭とやらもう一杯、」
と空になった湯呑みを差し出す、
カナリザはスミの用意した海苔巻き煎餅に手を伸ばし口に入れ、ぽりぽりと食べると、
「これ面白いお菓子ね、美味しいわ、」
と新たな煎餅に手を伸ばす、
「これっ!妃よ予の分まで食べるでないぞ!」
「あなたこのお菓子一度食べ出すと止まらなくなっちゃうわ、」
と更にもう一枚と煎餅を摘む、
マリーは建物の案内を用意しながら、
「カナリザ様、宿の受付横に売店がございまして、
色々な菓子や飲み物、土産などがご用意してございますよ、
ただご利用は夜のお食事を美味しく召し上がってからにされた方が良いと思います、」
ドビッシュも煎餅をぼりぼり嚙りながら、
「して奥方いや、女将だったかの童は何処に?」
「そうよ!私もエルルに会いたいわ、」
「陛下、カナリザ様、弟は今宮廷料理長と共に今晩の料理を作っています、宴の時に挨拶させましょう、
国王陛下主催の宴まで今暫く時間が御座いますので先ずは湯浴みなど如何でしょう、
あとこの宿では其方に掛けてある浴衣をお使い下さいませ、
大浴場などの施設の案内がこちらに御座います、」
と言いながら宿の案内をテーブルの上に開く、
ドビッシュとカナリザはそれぞれ渡された案内をみて、
「おお!この挿絵は見事じゃの!」
「あなた見てこの素敵なお風呂、
マリーさんこのお風呂に行きたいからその浴衣と言う衣装を着せてくれないかしら、」
と言うカナリザに中居頭役のスミが、
「では殿下私が着付けさせて頂きます、
今回はお手伝いで中居頭をしていますが普段は宮廷女官長を致しておりますスミと申します、」
「あら今日は公爵家の方達だけではないのね、」
「宮廷料理長をはじめ女官の方々を国王陛下よりお貸しいただいています、
陛下、カナリザ様御ゆるりと楽しんで下さいませ、」
とマリーはもう一度綺麗な所作で頭を下げた。
「リリス様?」
「お久しぶりねテュレイカ様、公爵家の夜会以来ですわね、」
「そのお姿は?」
とテュレイカはイオに案内された部屋の入り口でリリスを見て固まっている、
リリルがイオに目で合図をすれば、
「大丈夫ですよリリル様結界は張り終わっています、」
「そうかい、じゃあテュレイカ様突っ立ってないで座って下さいな、」
と言われたテュレイカがリリルの反対側の座卓に座るとリリルはお茶の用意をしながら、
「テュレイカ様、この姿の私を見てもリリスと呼ばれたと言う事は私のことが見えていらっしゃるのでしょう、
私は息子を産んだ後テュレイカ様達エルフ族の様な妖精種の様に長命になってしまってね、
表向きは崩御した事にしてエルルの元でリリル・ルコルとして暮らしているんだよ、
私の事はリリルと呼んで下さいな、」
「リリスいえ、リリル様その髪と瞳の色はエルルの魔法で?」
「いや髪は染めているだけで瞳は眼鏡の代わりになる様な物を入れているだけさ、
確かコンタクトとか言ったかね、」
話を聞いて驚いていたテュレイカが探るように、
「ではリリル様はエルルの事を、」
リリルは頷き、
「ああ、私の瞳にもあの子は特別だと写ってね私とイオはエルルが御子様だと知っているよ、」
テュレイカはイオを見て、
「イオ貴女も特別なのでしょう、
私の瞳に貴女のステータスが写らないわ、」
「そう言えばイオの称号は聞いたがあんたも私と同じハイヒューマンなのかい?」
「私の種族は秘密です、
自分でも信じられないんです、」
「これだからオーライド人は、」
と言うリリルにテュレイカが
「そう言えばリリル様はブリネンのご出身で初めてお会いしたのは先王陛下との結婚式でしたわね、」
「そうそう懐かしいねぇ、ってテュレイカ様今日は貴女にお願いがあって来たんだよ、」
「私にお願いですか?」
「ああ、エルルの秘密を知る者としてあの子のもしもの時には力になって欲しいんだよ、」
「リリル様、エルルの事は勿論誰にも話していませんわ、
そしていざと言う時は全力でエルルを守りましょう、」
「宜しく頼むよ、あんた達とは長い付き合いになりそうだからね、
じゃあイオ送ってくれるかい、」
と立ち上がるリリルにテュレイカが、
「もうお帰りになるのですか?今日は主人も居ませんのでゆっくり話しませんか、」
「ありがとう今度ゆっくりうちで話そうじゃないかエルルに頼んどくよ、」
「まあエルルの家に招待して頂けるの?」
「ああ、とても素敵な所さ私の部屋もこの部屋の様な感じで庭には温泉も出ていてね、
そうそう温泉で思いだしたよ、
この宿にある大浴場の脱衣場に置いてある椅子に座って魔力を流してみなよ、
うちの居間にも最近エルルが置いてくれたんだけどあれは身体を揉んでくれる最高の椅子なんだよ、
じゃあ私は帰るとするよまたね、」
と言い手をひらひら振りながらリリルはイオが出したゲートに入っていった。
調理場で野菜に飾り彫をするエルルにモルズは、
「なんと見事な!本物の花の様だ!」
「もう!モルズ様頼んでおいたお吸い物は出来たんですか?」
「申し訳無いエルル様この今晩のお膳の見事さに見惚れてしまって、
お膳の上がまるで絵画の様ですな、」
「食事は味も大切だとおもいますが、香りや見栄えも大切だと思いますよ、」
モルズは沢山並べられたお膳の上で色鮮やかに飾られた料理の小鉢や皿を見てまた、
「はあ〜何と美しい、」
「もう!モルズ様お吸い物持って来て下さい!味見します、」
エルルの言葉にモルズは慌てて小皿に吸い物を注ぎエルルに手渡し、
「如何です?」
エルルはわたされた小皿をひと舐めして、
「良いですね、乾燥させた海藻のダシが良い仕事してますよ、
後は厚揚げを炙った物にすり下ろした生姜を少し乗っけて完成っと、」
エルルが菜箸でそれぞれのお膳に厚揚げを乗せていると、
隣からぐぅ〜とモルズのお腹が鳴る音が聞こえる、エルルはくすっと笑うと余った厚揚げをモルズに渡し、
「モルズ様も味見して下さい、」
モルズは恥ずかしがりながらも厚揚げにエルルお勧めの醤油を少しかけて食べれば、
「おお!これは美味しい!この揚げが豆から出来ているとは信じられませんな、」
「お豆はとても優秀な食材ですよ、
醤油や味噌もお豆が主材料なんですよ、」
などとエルル達が話ながら料理の仕上げをしていると
調理場にイオが入って来て並べてあるお膳を見て、
「わっ!凄いですね!とっても綺麗です!お膳の上に絵が描いてあるみたいですね、」
「イオさんお疲れ様、」
「エルルさんこれから陛下のお迎えに行って来ますね、」
「お願いします!あっ、イオさんこの稲荷寿司食べて行って、」
と皿に稲荷寿司を二つ乗せイオに渡す、
「ありがとうございます!頂きますっ!」
とイオは稲荷寿司をひょいと摘み口の中に運べば
「あっ!この味今まで食べたお寿司とはちょっと違いますね、
甘酸っぱくて美味しいです、」
「イオさん料理の余りだからみんなには内緒ですよ、」
「了解ですエルルさん!家でまた作り方を教えて下さいね、」
と言いながら皿を流台で洗った後ゲートを開き中に入って行った。
王城の一室で国王ジュリアスと王妃ローザンヌに皇太子コーデリアスと王女ルーナが、
「父上私も公爵家に連れて行って下さいませ、」
とせがむルーナにジュリアスが、
「ルーナ今日は他国の皇族方がおいでだから連れて行く事は出来んな、」
「そうよルナちゃんコーデリアスと共にお留守番よ、」
「父上と母上、お二人だけで公爵家にお泊まりするなんてずるいです!」
「そうです父上せめて皇太子である私を晩餐会だけでも参加させて下さい、」
「兄上もずるい!」
と言う子供達にローザンヌが、
「今日は何時も頑張っていらっしゃる陛下と私のご褒美休暇の様な物だからたまには二人で楽しませて頂戴!
ちゃんとエルルに頼んでお土産を貰って来るから!」
と家族で話している所に部屋の外から後宮女官が、
「イオ様がいらっしゃいました、」
「おお!入ってくれ、」
ジュリアスの言葉で部屋の隅に控えていた侍従の一人が扉を開けるとイオが入って来て片膝をつき頭を下げ、
「主人様の命によりお迎えにあがりました、」
「イオ此処は我等の私室だ、その様な硬い挨拶は無しだ、」
「そうよイオ、でエルルが公爵家の庭に宿屋を作ったんですって、」
「はい、先程私は皇太子妃殿下をお部屋にご案内させて頂いたのですが大変喜んで頂けた様です、」
「イオ何でもエルルの家の様な様式らしいな、」
ジュリアスの言葉にイオが驚くとジュリアスはハッとして口を手で押さえる、
そんなジュリアスにローザンヌの目がすっと細まり、
「あらあなた、あなたはエルルの家に行った事があるのかしら?
私は未だエルルに会った事が無いのに、」
「妃よ、エルルから話を聞いただけだ!だからイオも其方の様におどろいたのであろ、
さあイオ!送っておくれ、コーデリアス後は任せたぞルーナもじいの言う事をちゃんと聞くのだぞ、」
と言いジュリアスはイオが出したゲートに慌てて入って行った。
カナリザが大浴場の檜の湯船に浸かりながら後から入って来た元老院の女性エルフ達に、
「姐様方最高のお風呂ですわね、
外にも露天風呂がありましたよ、」
「案内でみたわよ、風呂だけで無くお部屋も素敵だったわ、カナ貴女あのお煎餅ってお菓子頂いた?」
「はい姐様美味しく頂きましたわ、」
「私ね中居だったかしら彼女が売店で他の味のお煎餅も売っていますよ、
ですがお食べになるのは夕食の後にした方が良いですよ、
何て言われたの、でお風呂に来る前に売店に寄ってみたのだけど未だお店が準備中でがっかりしたわ、」
「夕食後私も売店に行ってみますわ、
で姐様テュカを見ませんでした?」
「テュカなら脱衣場の変わった椅子に座っていたわよ、」
「あの子お風呂に来て椅子に座るって何してんのかしら、」
カナリザがお風呂から上がると脱衣場に置いてあった椅子がテュレイカを包み込む様な形になっていてテュレイカは椅子に身体を預け気持ち良さそうに目を閉じている、
「テュカその椅子は何?私が入って来た時と形が違うんだけど?」
テュレイカは片目だけを開け、
「義母様お風呂は如何でしたか?
私はこの椅子から離れられ無い身体になってしまいましたわ、」
「何?その椅子はそんなに座り心地が良いの?」
「はい、イオが教えてくれたのです、
あっ!あぁ〜いいそこそこ!」
とテュレイカは身体を仰け反らせる、
「ちょっとテュカ大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですわ義母様、
この椅子のマッサージが気持ち良すぎて、」
「マッサージ?」
「椅子が身体を揉みほぐしてくれますの、」
「それは凄いわね、そんなに良いなら代わって頂戴、」
「まだだめです、手元の魔石が赤から緑になったら終了と此処に書いてあります、」
カナリザ達が話している所に長老達も加わり早く早くとテュレイカを急かせていると中居が脱衣場に入って来て、
「殿下方、皆様お風呂上がりに冷えた豆乳などは如何ですか?
豆乳とフルーツ豆乳をご用意させて頂きました、」
長老の一人が、
「その乳は私達が飲める乳なの?」
「はい、豆から取れた乳ですので、」
カナリザが、
「では私にフルーツ豆乳をちょうだい、」
「かしこまりました殿下、」
と中居は瓶の紙の蓋を開けてカナリザにわたす、
カナリザは匂いを確かめてフルーツ豆乳を少し口に含むと、
かっと目を見開きごくごくと音をたてながら飲み小さめの豆乳瓶を空にする、
「これ美味しいわ!冷えててお風呂上がりには最高ね!」
カナリザの感想に私も私もと皆豆乳を飲みファーセルの賢者と呼ばれている長老達が驚いている、
テュレイカもマッサージが終わったらしくフルーツ豆乳を美味しそうに飲んでいた。
ジュリアスがゲートを潜ると畳部屋の入り口に出る、
ジュリアスは直ぐに靴を脱ぎ部屋の中を見回っていると部屋の入り口でイオがローザンヌに靴を脱ぐ様説明していて、
後から入って来たローザンヌがジュリアスの足元を見てふたたび目を細め、
「あらあなた、どうしてこのお部屋が履物を履かないと知っていらっしゃるのかしら?」
「そっそれはエルルと晩餐会の打ち合わせをした時にこの宿の中は上履きで歩き部屋では履物を履かないと聞いていたからだよ、」
ジュリアス達の部屋の物音に気付いたのか部屋にスミを連れたマリーが入って来て正座をして頭を下げ、
「陛下、殿下、お待ちしておりました、陛下主催の宴の準備は整っていますので、お支度が出来次第宴の間にご案内させていただきます、
ジュリアスとローザンヌはマリーの衣装を見て、
「マリーさんその美しい衣装は他国の物ですの?
よく見たら後ろにいるのは女官長じゃない!貴女の衣装も他国の物かしら?」
「殿下、こちらの衣装はこの宿に合わせて義弟が用意してくれた物ですわ、
この宿では私の事は女将と呼んで下さいませ、
ちなみに女官長様は中居頭と言う役を演じて貰っています、
殿下テーブルにこの宿の案内もありますので宴の支度をしながら説明させて頂きます。」
公爵屋敷のホールでは公爵家の騎士団やファーセルの近衛師団に大使館の文官が交代でバイキング形式の賄いを食べていて、
近衛師団長がランとウッディ騎士団長に、
「話には聞いていましたがとても美味な料理ばかりですな、女性団員などは甘味に夢中ですぞ、」
何故かランがとても自慢気に、
「であろ師団長殿、公爵家の料理はオーライドで一番ですからな、
今回の使節団の護衛任務の志願者でかなり揉めたとか伯父上からききましたぞ、」
「ファンファン卿の言う通りで我等近衛だけで無く他の師団員からも志願者が出まして大変でしたぞ、」
「儂は伯父上に元老院の方達など皆化け物ばかりで護衛などは不用ですぞと申し上げたのだが、
外交がなんたらとか言われての、」
「おっ、噂をすればですかな、」
師団長の言葉にウッディとランが振り向くと部屋にアルクとラドナスが入って来て、
「皆警備ご苦労様、ファーセルの方々も心ばかりの料理で申し訳無いが休憩中はゆっくり休んで頂きたい、」
アルクの言葉に近衛師団長が代表で、
「閣下、素晴らしい料理やもてなしで感謝しております、」
「師団長殿にそう思って頂けて嬉しいです、
私は大使殿と共に陛下主催の宴に出席して来るので引き続き警備をお願いしたい、」
「承りました閣下。」
隠れ宿の森の間に案内されたアルクとラドナスの所に浴衣姿のジュリアスとローザンヌが中居頭のスミに案内され入って来る、
片膝を着こうとするアルク達をジュリアスが手で止め、
「アルク今宵は予も妃も休暇中であるからあまりかしこまるでない、」
と言いながらスミが案内した上座の席に腰を下ろす、
すると次々と中居に案内された長老達が森の間に入って来てジュリアスにファーセル式の挨拶をした後席次表を見ながら座布団の上に座っていく、
最後にマリーに案内され皇族が入って来てドビッシュが上座のジュリアスの隣に座る、
「オラリウス殿素晴らしい宿ですな、今日こちらに招いてくれた閣下に感謝を、」
とアルクに声をかければアルクはその場で頭をさげる、
「ファラカーン殿今日は我が甥ごがこの様に床に座る宴にしましたが、」
「なにオーライド殿長老達を見てくれ、
我等が童の頃は床に敷物を敷き今の様に皆で食事をした物だ、
懐かしさに話しながら涙を浮かべておる方もおるわ、
妃殿儂はファーセルで皇王をしておるドビッシュ、こちらは、」
「あなた私はローザンヌ様とは面識がありますわ、
お初にお目にかかります国王陛下、私はカナリザと申します、何時も息子やテュレイカがお世話になっています、」
「妃殿こちらこそ妃共々お世話になります、
おっ、料理が入って来る様ですよ、」
森の間に中居達がお膳を上座のドビッシュから順に並べて行く、
目の前に置かれたお膳を見て皆驚きよりため息を漏らしている、
「なんと!これが食べ物とな!まるで膳の上が絵画の様に見えるの、」
「見て!あなたお品書きに料理の詳しい説明が載っているわよ、」
お膳を見て盛り上がっている所に、
エルルとモルズが入って来て正座をするとぺこりと頭を下げ、
「今回国王陛下の命により宴の支度を仰せつかりましたエルル・ルコルと申します、
こちらは私と共に料理を手伝って下さいました宮廷料理長のバイツ男爵様でございます、」
「おお!其方が息子が自慢しておった童か、
儂は皇王をしておるドビッシュ、こちらは妃のカナリザじゃ、男爵殿も宜しくの、
じゃかこの宿といい、料理も素晴らしい早う食べてみたい!」
「では皆様に乾杯のお酒をお注ぎ致しましょう、」
とエルルが言えば中居達が酒を注いで周り酒が行き渡った事を確認したジュリアスが立ち上がり、
「では皇国と聖王国の友好と繁栄に!」
と言い盃をかかげるとみな、
「「友好と繁栄に!」」
と答え皆が酒を飲み待ちきれ無いとばかりに料理に手をつけた。
そして誰もが美味い美味いと顔を綻ばせ料理を味わい、お品書きを見て食べた料理について語り合う、
エルルは小声でモルズに、
「モルズ様皆様に喜んで頂けている様ですね、」
「はい、エルル様料理人として一番幸せな時間です、」
と返すとエルルはにっこり笑顔で、
「僕もですよ、」
と話すエルルに上座から、
「エルル我が妃を紹介したいこちらに来てくれぬか、」
とジュリアスに呼ばれたエルルにモルズが、
「後は私に任せて下さい、」
と言ってその場で静かに頭を下げ調理場に戻って行く、
エルルが上座のジュリアスの前まで来ると、
「エルル見事な料理だ、味も至高だが何より料理が美しい、」
ジュリアスの隣で味噌田楽に舌鼓をうっていたドビッシュも、
「おお、来たか美しい童よ、
息子やテュレイカが自慢したくなるのがよう分かるわ、」
エルルは頭を下げ、
「エルル・ルコルで御座います、」
「ドビッシュじゃ、隣におるのは妃のカナリザじゃ、」
「カナリザよ、会いたかったわエルル、」
ジュリアスの隣りからも、
「私はローザンヌよエルル、」
右や左とぺこぺこ頭を下げるエルルにジュリアスが、
「エルルその様にかしこまらずとも良い、
この様な宿や料理のもてなし予は叔父として鼻が高いぞ、」
「そう言えば童はオーライド殿の甥ごだそうだの、」
「ええ、姉上の末の息子で公爵の弟になります、」
カナリザが、
「まあ!エルルは男の子なの?美少女にしか見えないわね、
ますます可愛いわ、後で私の部屋にいらっしゃい、」
「カナリザ様エルルを独り占めするのはずるいですわ、
今日は久しぶりの休暇ですもの私の所にもイオと共に遊びに来て頂戴、」
「妃様、僕いえ私はこれから料理長様と明日の朝食の準備がありますのでそろそろ失礼させて頂きます、
イオは売店の店番をしていると思います、」
「二人共忙しいのね残念だわ、」
「妃様明日の朝も美味しい料理をご用意させて頂きます、
明日の朝食は売店前のロビーでビュッフェスタイルになります、
あとイオのお店も明日からオープン致します、
詳しくはお部屋の案内書をご覧下さい、」
カナリザが思い出したとばかりに、
「そうよ!明日は朝一でイオのお店の予約をいれなくっちゃ!
あとエルル脱衣所に置いてあるあの椅子を譲ってくれないかしら、」
「お譲りするのは構いませんがけっこうなお値段になりますよ、」
「うふふ、値段などいくらかかっても構わ無いわ!私の部屋に置きたいの、」
「なんじゃ妃よ、脱衣所にあった変わった椅子が欲しいのか?」
「あなた、あの素晴らしい椅子を使ってらっしゃら無いの?」
「うむ、誰も座っとらんかったの、」
「私は姐様達と取り合いで大変でしたわ、
身体を揉んでくれる素晴らしい椅子ですのよ、」
「何と!椅子が身体を揉むとな?」
「ええ、あなたも座ったらあの椅子の虜よ、」
ローザンヌが、
「まあ!そんな椅子が、それとカナリザ様イオのお店とは?」
「あらローザンヌ様は宿の案内書を見ていらっしゃいませんの、
イオのエステサロンだったかしら、
女性専用でとても興味深いお店よ、」
などと盛り上がる王族にエルルは頭を下げて最後にテュレイカの前に来て、
「テュカ様いらっしゃい、」
「エルルとても美味しい料理よ、
あと義母様ではないけど私もあの椅子を譲って欲しいわ、
あと、」
と一瞬テュレイカは周りを見渡し声をひそめ、
「リリル様にお会いしたわ、
エルルの家にお呼ばれするのを楽しみにしているわね、」
「はい!了解です、でもテュカ様あの椅子は先程妃様にもお伝えしましたがかなりお高いですよ、」
「大丈夫よ、私たちはファーセルでは結構なお金持ちよ、」
エルルはそりぁそうかと納得して
」分かりました、ご用意させて頂きますよ、
あとテュカ様明日ファーセルの魔法士の方で転移出来る方を紹介して頂けませんか?
僕を一度送って頂ければ皆様を一度にファーセルにお送り出来ます、
あっ!僕の魔力で飛びますので魔力は心配無いですよ、」
「分かったわ、後でラドナスや陛下と相談しておくわね、」
「宜しくお願いします。」
エルルは森の間を出て売店の前でスミと話しをしているイオに、
「お疲れ様です女官長様、イオさん、」
「お疲れ様ですエルルさん森の間は?」
「凄く盛り上がっていましたよ、女官長様頃合いを見てデザートを宜しくお願いします、」
「はい、宴会場担当の者に知らせて来る様に言ってあります、」
「了解です!
イオさん宴会が終わったら売店に寄っていかれる方がいると思いますが準備はって大丈夫そうですね、」
「はい、エルルさん大丈夫です、もう少ししたら休憩に入っている女官さんが手伝いに来てくれます、」
「明日は女官の皆さんに売店の店番をしてもらわないといけませんからね、」
「お任せ下さいエルル様、」
調理場ではモルズが賄いを持ってきたカーンと話していて、
「伯父貴宴の料理はどうだった?」
「大好評だったぞ、そちらは?」
「こちらも好評だったよ、
特に女性達に甘味が大好評だったよ、」
「こっちもこれからデザートを出す所だ、
そろそろ女官が取りにくる、」
「手伝おうか?」
「いやもう準備は出来てる、どうだ一つ食べて行くか?」
「伯父貴よいのか?」
「ああ、かなり余裕を持って作ってある、」
と豆乳で作ったアイスクリームを出す、
そこにエルルが帰って来て、
「ただいま帰りました、料理長お疲れ様です、
モルズ様僕にもアイス一つお願いします、」
モルズが冷蔵庫からもう一つアイスを出した所でスミと女官達が入って来て、
「デザートをお出ししますので宜しくお願いします、」
と言うがスミ達の目はカーンやエルルが持つ豆乳アイスに釘付けで
エルルが、
「女官長様今日のお仕事が終わったら皆さんにも出しますので、」
の言葉に、女官達は張り切ってデザートを運んで行った。
カナリザは運ばれて来た豆乳アイスを見て、
「先日頂いたケーキとは違うデザートね、いったい公爵家にはどれだけの料理があるのかしら、」
隣りのドビッシュが、
「おお!何と冷たい菓子か?
しかし凍っておるわけじゃないの、
これは風呂上がりに飲んだ豆乳を使った物じゃな、
しかし美味い!まさか我等が乳を食べる日が来るとはの、」
「あなた見て姐様達もう食べてしまったみたいよ、」
ドビッシュが周りを見れば大半の者がアイスを食べ終え物欲しそうな顔をしている、
皆童の料理に心奪われてしまった様じゃな、
まぁ儂も人の事は言えんが、
「オーライド殿素晴らしいもてなしと料理であった皆を代表してお礼申し上げる、」
「ファラカーン殿に喜んで頂けた様で安心しましたよ、
私と妃は明日の朝城に戻りますが、ごゆるりと楽しんで下さい、」
「オーライド殿に感謝を、」
売店のイオの所に森の間から出て来たエルフが押し寄せ、
商品を見ながら目を輝かせる、
「おお!これは部屋にあった煎餅!
何と味に種類が?」
イオと共に店番をしていた中居の一人が、
「はい、辛子味やカレー味が御座います、
こちらに試食品が御座います、」
中居の持つ籠の中の試食品にエルフ達は次々手を伸ばす、
他の所でも、
「おい!こちらの芋揚げと言う菓子も美味いぞ!」
「いや!こっちを見て!甘味がこんなに沢山!」
「おお!酒まであるぞ!」
「待って!このガラスの箱の中に入っているのは先程のアイスクリームじゃない!」
わいわい騒ぐエルフ達にイオが、
御会計は商品を彼方の籠に入れて頂き此方の魔導具に魔力を流して下さい、
後日お代を大使館へご請求させて頂きます、」
イオの説明を聞いたエルフ達が商品を次々籠の中に入れて行く、
慌てた中居が、
「お客様、商品には賞味期限が御座いまして、」
「なあに大丈夫だ、儂らは皆魔法の袋を持っておる、どれだけ長く入れておろうが問題ない!」
「そうよ!こんな機会二度と無いかもしれないのよ、
お金なんて腐る程持ってるから私はアイスクリームを買い占めるわ!」
「何言っておる!儂もアイスクリームや甘味をかうぞ!」
そして森の間で少し話し合っていた皇族がロビーに出て来て売店に寄った時には商品は殆ど残って無かった。
おまけ
宿の控え室で仕事を終えた中居達が賄いを食べたりくつろいでいる所にエルルが入って来て、
「イオさん売店閉めたの?準備中の綱が張ってあったけど?」
イオは疲れた顔をしながら、
「エルルさんエルフの皆さん爆買いされて直ぐ店じまいになっちゃったんです、」
「えっ!」
「エルルさん皆さん魔法の袋を持っているから大丈夫と次々と買って行かれて、
少し後に会議をされていた皇族方がいらした時には殆ど商品は残ってませんでしたよ、
で唯一残っていたのはこの木剣だけでした、」
とイオはアイテムボックスから木刀を取り出した。
何時も不定期更新で済みません。
ありがとうございました。




