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家族に見つかっちゃいまして

宜しくお願い致します。


 第四十五話


  家族に見つかっちゃいまして


 

「じゃ、じゃあ、ぼっ僕はストーキンさんの所に行ってきますね、」

とエルルが慌てて転移して行くとリリルが、

 「何だいエルルは今朝からどうしちまったんだい?」

ナタリアも、

 「そうねこそこそ何か探してた様だったけれど、」

リリカが、

 「私が夜中水を飲みに起きた時もごそごそやってたみたいよ、」

皆の話を聞いていたイオとカレンが頷き合いイオがアイテムボックスから取り出した物に皆の視線が釘付けになった。



 時間は昨日の夕方まで遡りエルルが夕食の仕度を済ませ居間に入りユユの巣を覗き込み眠ってしまったユユを見ていると、

 背後からエルル自慢のソファーで入浴を済ませてくつろいでいたリリア達が、

 「エルル素敵なお屋敷ね、

 うちの保養地なんてここに比べたらただの宿屋の様だわ、

 温泉にあのバスローブ、それにこの肌触りの良い下着やこの衣装もこの家の特別だとナタリアから聞いたわ、」

リリルが自慢気に、

 「一度ここで暮らしたらもう他の所では暮らせ無いよ、」

「母様をここに連れて来たのは私なんだから感謝して欲しいわね、」

と言うナタリアにリリルは、

 「はいはいありがとうでエルル、ジュリアスを迎えに行かなくても良いのかい?」

「あっ!そうだった直ぐ行ってきます、イオさんとカレンさんがすき焼きの用意をしていますので囲炉裏部屋に移って下さい、」

と言ってゲートの中に入って行く、

 

 離宮でエルルを待っていたジュリアスの前にエルルがあらわれると、

 「エルル遅いではないか!」

「えっ!陛下夕方迎えに来るとお伝えいたしましたよね?」

「早くエルルの屋敷に行きたいと頑張って執務を早く終わらせ待っておったのだ、」

ジュリアスの理不尽な物言いにエルルは苦笑しながら、

 「陛下お詫びに美味しい夕食をご馳走致しますので、」

と言いエルルがゲートを開けば、

 ジュリアスは待ってましたとばかりにゲートに飛び込んで行った。

 

 森の家の玄関で勝手知ったる家とばかりにジュリアスはスリッパに履き替え居間に入って行き誰もいない居間を見て、

 「エルル母上達は?」

 「囲炉裏部屋で陛下を待ってみえますよ、」

と言いながら居間を抜け囲炉裏部屋にジュリアスを案内する、

 部屋の中では二つの魔導焜炉が用意されていて

 奥の魔導焜炉をリリルとイオとカレンが手前の焜炉をナタリア達が囲みエルルの後から入って来たジュリアスにナタリアが手招きしながら、

 「待ってたわよジュリアス、さあ私の隣に座って伯母上と従姉妹を紹介するわ、」

 呼ばれたジュリアスはナタリアの隣に座ると、

 「ジュリアスと呼んで下さい伯母上、従姉妹殿、」

と言うジュリアスにリリカが、

 「ジュリアス私は伯母のリリカよ、

身内なんだからかしこまらないで、」

「私はリリア彼方と同じ王位にいるけどここにいる時は従姉妹のリリアと呼んで欲しいわ、」

「分かりましたリリア姉様、伯母上私の事はジュリアスでお願いします、」

「宜しくねジュリアス、」

 隣のテーブルからリリルが、

 「さああんた達挨拶が終わったんならすき焼きを頂こうじゃないか!

 見てみなこのワイバーンの特殊個体の特上の薄切肉を!」

 と見事にサシの入った極上の肉を見せる、

エルルは魔導焜炉に火を入れ皆のとんすいに溶いた卵を分け、

 「イオさんそちらの鉄鍋はお願いします

と言うエルルにイオより早くリリルが、

 「こっちは勝手に始めるからナタリー達にすき焼きの食べ方を教えてやりな、」

と鉄鍋に菜箸で脂身を塗っている、

 エルルも脂身を薄く塗った鉄鍋に野菜を入れ薄切り肉を軽く焼き、

 そこにエルル特製の割り下を入れれば、じゅう〜っという音と共に割り下の焼ける良い香りが立ち込めナタリアが、

 「エルルたまらない匂いだわ、」

エルルはニヤリと目で応え、

 肉に少し火が通った所で皆のとんすいに肉と野菜を取り分け、

 「お母さんとリリカ姐様はお箸でリリア様と叔父上はホークの方が良いですか?」

「エルル予にも箸を、この様に美味しそうな料理は母上達の様に箸で食べた方がより美味しく食べられそうだ、」

と自分達ですき焼きを美味しそうに食べ始めているリリル達を見て言う、

 そして肉を食べた四人は無言になりジュリアスがエルルにとんすいを差し出し、

 「エルルお代わりだ!早う肉を入れるが良い!」

「エルル私もよ!」

とナタリアもとんすいを差し出していてエルルは野菜に豆腐と肉をバランスよく取り分け、

 「叔父上もお母さん野菜も美味しいのでちゃんと食べて下さいね、」

 リリアもエルルにとんすいを差し出し、

 「エルル素晴らしい料理だわ!

 先日うちの料理人達が用意したワイバーンのステーキも美味しかったのだけどこの料理の前では霞んでしまうわ、

 母様はこちらで何時もこんなに美味しい食事を食べているのね、」

エルルがにこにこしながら長い菜箸でリリアに肉を取り分けているとナタリアが、

 「リリア私の可愛い息子が焼いたステーキはきっとこのすき焼きにも劣らない美味しさよ、

 まあ好みも有るからどちらが美味しい何て比べられないわね、」

「リリア、ナタリアの言う通りよ私はここの料理を食べるたびに大好物が増えていくわ、

 エルル私もお代わりよ!」

 「はい了解です!でも最後にうどんを作りますので食べ過ぎちゃダメですよ、

叔父上お酒もありますので言って下さいね、」

 ジュリアスは再び空のすいとんをエルルの前に出し、

 「エルル玉子も無くなってしまったわ!今は酒よりもこの至高の料理に集中する事にする、」

エルルは溶き卵をジュリアスのとんすいに分け、

 「叔父上に気に入って貰えて嬉しいです、」

 と言い自身もすき焼きを取り分け皆と一緒にすき焼きを食べ美味しさにナタリア達と盛り上がる、


 隣のテーブルではイオが鍋の中にうどんを入れていてそれを見たナタリアが、

 「エルルラーメンなの?」

「麺料理なのですがラーメンとは違いますよ、

 こちらの鍋にも麺を入れて行きましょう、」

と麺を具材と共に煮ていき新しく出した深めのお椀に取り分け、

 「締めのすき焼きうどんお待たせです、」

とエルルからうどんを渡されたジュリアスは未だ箸で上手くうどんが食べられず今はホークで食べていて、

 「以前食べたラーメンとはまた違う旨さであるな、」

 「そうねとても美味しいわよエルル、」

 エルルはうどんをちゅるりと啜ると、

「このうどんって麺料理もラーメンみたいに沢山の種類があるんですよ、

 女王陛下は麺料理が初めてだと思いますがいかがですか?」

「エルル陛下ではなくリリアよナタリアの様にお母さんでも良いのよ、

 この麺を啜るのが難しいのだけどとても美味しいわよ、

 少し食べ過ぎてしまったみたい、」

「リリア未だ食後のデザートがあるわよ、」

「ナタリア甘い物は別腹よと言いたい所だけど少し時間を置かないと無理そうだわ、」

「リリア貴女夢中ですき焼きを食べていたものね、」

と言うリリカにエルルが、 

 「じゃあ皆さんは居間で待っていて下さい、

 ここをぱぱっと片付けちゃいますから、」

「エルル様私が片付けをします、

 エルル様は皆様の所へ、」

「ありがとうカレンさん二人で片付けた方が早いよ」

「エルルさん三人の方が早いですよ、

私も手伝います、」

 とイオも自身が食べた机の上を片付け始めた。


 エルルが居間に戻ると居間では王族同士がソファーに座り対談の様になっていて思わずエルルが、

 「凄い叔父上!王様の会談みたいですよ、」

リリアがくすくす笑いながら、

 「エルルみたいではなく一応私達は王族よ、」

ぷっ!とリリルが吹き出し、

 「ここではあんた達王族の方が普通に見えるよ、」

ナタリアも吹き出し、

 「母様だって王族じゃない!」


笑いあっている皆の所にイオとカレンがティーセットを持って居間に入って来るとエルルが、

 「お母さん今日はとっておきのデザートを出しますよ!まだ誰も食べた事のないお菓子なんですよ!

じゃあ〜んこんなのです、」

と言って白磁の皿に乗ったフォンダンショコラをとりだす、

「なにエルルこれチョコの焼き菓子かしら?」

エルルは皆にフォンダンショコラを配りながら、

 「ちょっと面白いのでフォークて切ってみて下さい、」

エルルの説明にイオもカレンも紅茶を配りながら目は焼き菓子に釘付けになっていてナタリアより早くリリルがフォークを入れれば溶けたチョコレートが中からとろりと溶け出し一口たべれば、

 「こりゃ美味しいねえ!」

と目を細め他の者達も一斉にフォークを入れ口の中でチョコがとろけるフォンダンショコラを味わいうっとりしちゃっててそこに、

 「ピィ〜!」

と鳴き声と共にエルルの所に巣からユユが飛んで来てエルルが抱き止めるとお腹が空いたとばかりにエルルの頬を頭でつつく、

 「はいはいユユもお腹が空いたんだね、

 じゃあユユもこのフォンダンショコラを食べてみるかい?」

とフォークで小さく切り取り溶け出したチョコをつけユユの前に出せば、

 ユユはパクッと食い付き小さな紫色の瞳をキラキラさせ、

 「キュゥ〜」

 と甘える様に鳴き口を開きエルルに催促する

「はいはい、ユユも沢山お食べ、」

とユユをテーブルに座らせフォンダンショコラを食べさせていると、ユユを見て固まっていたジュリアスが、

 「エルルドラゴンではないか!」

「はい、うちの新しい家族のユユです、」

「ピィー!」

とユユもジュリアスに応え、

 「驚いた!ドラゴンを見るのは初めてだがこの様に小さいとは、」

「龍種で言うと幼生体で人で言う所の赤ちゃんなんです、

 ちなみに女の子ですよ、」

「エルル触っても良いのか?」

リリルが、

 「ジュリアス止めておきな、ユユに嫌われたく無ければ男は触らない方が良い、」

「えっ!姐様僕男なんですけど?」

リリルは呆れ半分、

 「エルルあんたは特別だよ、」

エルルはユユに向かって、

 「ユユ男の人はダメなのかい?」

と聞けばユユはジュリアスをちらりと見て、

 「ピッ!」

とスカした姉ちゃんの様な仕草でプイっと顔を外らせそれを見た女性陣が大爆笑する、

 リリルが大笑いしながら、

 「オーライドの王様も白竜様の前じゃあ唯のおっさんだねぇ、」

とユユを抱き上げながら笑い、

 ジュリアスはユユに向かい、

 「予にその様な態度を取るのは我が妃と其方ぐらいな者だぞ、

 まあこれはこれで中々、」

ナタリアが満更でも無さそうなジュリアスに、

 「ジュリアス彼方特殊な性癖があるんじゃないの?」

「姉上までユユと同じ様な顔をするのは止めて下さい、」

 「ジュリアス彼方も人の事は言えない顔をしてるわよ、」

 エルル達はナタリア達のやり取りに思わず吹き出してしまう、

 そんな中リリカが、

 「リリア貴女達はそろそろ戻りなさい、」

リリルも、

 「そうだねジュリアスも送ってもらいな、」

「そんな!母上私は未だ温泉に入っていませんよ!

 そうだエルル予と一緒に温泉に入らぬか?」

 ジュリアスの言葉にエルルより早く女性陣が、

 「「ダメに決まってるじゃない!」」

と一斉に突っ込みエルルがぽかんとしている間にナタリアが、

 「イオ、ジュリアスを送るからゲートを出して頂戴!母様の離宮よ!」

そしてジュリアスはイオが出したゲートに押し込まれ戻って行く、

 ナタリアが鼻をふんっ!と鳴らし、

 「私の可愛いいエルルとお風呂だなんてとんでもないわ!」

呆けていたエルルが、

 「お母さん僕も叔父上も男なんだから問題無いんじゃないですか?

 ってまさか権力者によくある特殊な嗜好をお持ちとか?」

とエルルはとっさにお尻を押さえる、

 途端皆が吹き出し、リリルが笑いながら、

 「エルルあんたは女にしか見えないから男の前で裸になるのはおよし、」

イオも、

 「そうですよ!エルルさん!

 エルルさんみたいに綺麗な男の娘だったらあの書庫の奥の奥にある薄い本みたいになっちゃいますよ!」

えっ!そんな本出したっけ?覚えが無いが婆ちゃんのリクエストに応えるのがめんどくさくてそう言えば行き付けだった書店の棚をイメージしながら書庫を作ったんだった、

 確かに過激な本もあったからなその手の本迄あったとは、

 それにしてもイオさんから男の娘なんて言われちゃうなんて、

「エルル!エルルどうしたんだい考えこんで?」

「いえ、姐様何でも無いですよ!」

「そうかい、じゃあリリアをブリネンに送っておやり、」

「はい、分かりましたリリア様良いですか?」

「名残惜しいけど今日は帰るわ、

 エルルこの絵物語を借りて行っても良いかしら?」

と例のレディースヤンキー物の本を出すとエルルは苦笑いしながら、

 「リリア様もその本をお読みになるのですね、」

「ええ、食事前に少し読んだのだけど面白くって母様達はこの絵物語の格好をしていらしたのね、」

 エルルはリリアが抱えている本を預かり袋に入れゲートを開き、

「じゃあこちらへ入って下さいブリネンのリリカ様の部屋に繋がっています、

 あとイオさんも一緒に付いて来て下さい、」

「はい了解ですエルルさん、」

 と言うイオを連れブリネン王宮へ行き女官さん達にイオさんを紹介したら女官さん達イオさんの綺麗さに驚いちゃってたよ。




 

 夜入浴を済ませたエルルが自室に戻りベッドにころがりエルル秘蔵のコレクションをアイテムボックスから取り出そうとして、

 あれっ?あれれ?コレクションの本が一冊足りない?

 嘘っ!

 エルルは慌ててコレクションを全て出し並べてみると、

 ドキッ!水辺のきわどい水着スペシャルが無くなっている、

 あれっやっぱり無いや研究室で見たっけ?

 と研究室に行きしばらく探すが見つからず自室に戻りごそごそ探すが秘蔵の本は見つからない、

 またイメージして取り出せば良いのだがエルルははっと気づく、

 まさか出し忘れてた本を掃除やシーツを替えて貰う時にイオさん達に見つかっちゃったのか!

 もしそうだったらエロ本を家族に見つかった中学生みたいだ!

 イオさん達に女の子達の姿絵見ませんでしたか?

 って聞くのか?恥ずかし過ぎるよ!

 でもせめての救いは水着スペシャルだった事だよこれが他のコレクションだったら、

 いや水着スペシャルでも充分気まずいよ!

 

 次の朝エルルは鍛錬を休み食事後慌てて、

 「じっじゃあ、ぼっ僕はストーキンさんの所に行って来ますね、」

と慌てて転移して行く、

 「何だいエルルは今朝からどうしちまったんだい?」

ナタリアも、

 「そうねこそこそ何か探してた様だったけれど、」

リリカが、

 「私が夜中水を飲みに起きた時もごそごそやってたみたいよ、」

皆の話を聞いていたイオとカレンが頷き合いイオがアイテムボックスから取り出した物に皆の視線が釘付けになりリリルが、

 「何だいこれ下着姿の女の姿絵かい?」

「母様見てこの下着!お尻の所が紐よ!」

 イオが、

 「これも見て下さい!これ胸隠れてませんよ先っちょの所以外は殆ど紐なんです、」

 リリカが、

 「これ艶本なんじゃない?ソルス様の所に行った旦那が昔こっそり集めてたわ、

 勿論こんな精密な姿絵ではなかったけれど、」

「うちの旦那も集めてたよ、私の為にハイヒューマンの文献を集めるって影で色々な国の艶本を集めてたよ、」

とリリルが懐かしそうに笑う、

 「そう言えばうちのエドも最近こっそり何か見てて慌てて魔法の鞄に隠しちゃうのよ、

 で言い訳が国家の機密文書だから見せられないよって言うのよ、

もしかしてエルルから艶本を貰ったんじゃないかしら、」

イオがちょっと待ってて下さいと出て行きしばらくすると書庫から女性ファッション雑誌を持ってきて、

 「こちらの本もエルルさんの部屋で見つけた本の様に下着姿の女の子が沢山描かれていますよエルルさんの部屋で見つけた本も女性向けの書物では?」

と下着特集のファッション雑誌を見せる、

 皆文字が読めない為なにが書いてあるのか分からないがリリルが、

 「いやイオが書庫から持って来た本は女性用だろうがエルルの本は艶本だと思うよ、ここに描かれている女は皆男を誘っている様に見えるからね、」

カレンが、

 「でエルル様のこの本をどうしますか?」

イオが、

 「皆さんに見て頂いたので見つけた時と同じベッドと壁の隙間に戻しておこうかと、」

「だったらイオ皆の共有ボックスに突っ込んでおきな、

 で皆エルルが何か言って来るまで生暖かく見守ってやろうじゃないかい、」

イオが皆の顔を見渡せばにやにや笑いながら頷くので少し引きながら共有ボックスの中にエルルのお宝を突っ込んだ。



 「エルル君どうしたんだい?今日は心ここにあらずだよ、」

と魔導式を上の空で描いているエルルに話かける、

 エルルは上の空の手を止め目に涙を溜め、

 「実は貴重な本を紛失させてしまって、」

「ほう、エルル君が貴重だと言う位の本なのだ余程の本だったのかな、」

「二度と手に入らないと言う訳では無いのですがどうやら家族の者に見つかってしまったようでごにょごにょ、」

エルルの態度にストーキンはピンと来たようで、ニヤリと笑うと、

 「何だい隠していた艶本でも見つかっちゃたのかい?」

エルルは壊れたブリキのおもちゃの様にギギギとストーキンに顔を向け、

 「艶本と言う物を見た事がありませんがその様な物です、」

「ははは!でもエルル君凄いね、その若さで艶本を集めるなんて人気の絵師の艶本は驚く程高価で取り引きされているよ、」

「ストーキンさん僕今言いましたよね艶本と言う物を見た事が無いって、」

ストーキンは解ってる解ってるとばかりおもむろにに自身の机の引き出しを引き抜き引き出しの奥に手を突っ込んで古びた麻の袋の様な物を取り出し、

 「エルル君には僕の至高のコレクションを見せてあげよう、おっと!」

と言いながらストーキンは慌てて研究室に鍵をかけ麻袋の様な者に手を突っ込み中から数冊の薄い本をとりだす、

 「僕のコレクションの中でも一押しの人気絵師の作品さ、裏オークションで高額で競り落としたんだよ!」

と胸を張る、

 エルルはその本を見て何だこれ、前世の三流同人作家より下手っぴな姿絵だ、

 前世でこの作品に興奮出来る猛者はそうそういないぞ!

 そんな事よりその袋!

「ストーキンさんその袋魔法の袋ですか?」

 全く艶本に興味を示さず袋に興味を示すエルルを不思議がりながらも、

 「ああそうだよ、これは僕のへそくりを殆どはたいて裏オークションで買った魔法の袋だよ、

 空間魔法が使える君にとってはたいした物じゃないだろう、」

「始めて本物を見ますよく見せて貰っても良いですか?」

「ああ構わないけれどこの僕自慢の艶本も見て欲しいのだけど、」

エルルは艶本を自慢したいストーキンを流し眼鏡をかけ魔法の袋を鑑定する、

 

 ダンジョン産魔法の袋小  馬車一台分の荷物を入れる事が出来る

 袋の中は時間経過しない


 おお!ダンジョンのお宝だ!小だけど結構な収納力だよ、


 じっと袋を見つめるエルルにストーキンが、

 「エルル君はもしかして鑑定が出来るのかい?」

エルルは片目を閉じ、

 「秘密にして下さいね、とても良い魔法の袋ですね、小の割りには収納力がありますし時間経過が無い所が良いですね、」

「凄い!鑑定書通りだよ!」

「ストーキンさん裏オークションの品に鑑定書何てあるのですか?」

「エルル君は裏オークションを勘違いしてないかい、

 決して違法なオークションではないよ、勿論ギルドが行うオークションの一つなんだけど出品と買い取りを代理で行うプロのバイヤー達が代わりに行うオークションだから裏オークションって呼ばれているだけなんだよ、

世の中顔を出さずに売りたい人買いたい人がいるから 艶本とかね、」

「普通の人にも参加出来るのですか?」

 「年に数回行われていて、どのギルドの所属カードでも持っていれば参加出来るよ、

 ただ出品するにしても買うにしても正規の手数料の他に一割の手数料をバイヤーとギルドに支払わないといけないから自分で出品するオークションと比べて売れば二割安く買えば二割高くなってしまうけどね、

 まあ裏オークションを使う人達にそんな事を気にする者はいないと思うけどね、」

 「なるほど!僕も参加してみたいな、出品リストとかあるんですか?」

ストーキンはにやにやしながら、

 「何だいエルル君も好きだねぇ!商業ギルドに行けば次の出品リストの閲覧が出来るよ、出品したい時や買いたい物があった時は僕が懇意にしているバイヤーを紹介するよ、

 でエルル君はどんな艶本が好き何だい?」

「ストーキンさん僕がコレクションしている本を見たらきっと倒れちゃいますよ、」

「おお〜っ!自身ありげたね、そんなエルル君に僕のとっておきの獣人ちゃんの艶本で勝負だ!

 この僕を驚愕させられたらこの本を進呈しようじゃないか!」

「えっ!もしかしてストーキンさん獣人さんに会った事があるのですか?」

「エルル君僕はこう見えてもナハリ代官なんだよ、南大陸に有る獣人の国からの役人さんや商人さんも少ないけど入国するからね、」

エルルはぷるぷる震え久しぶりに、

 「oh!fantastic!!」

 といきなり叫ぶエルルにストーキンは、

 「エルル君どうしたんだい?いきなり訳の分からない事を叫んで、

 「すいません、お気になさらず僕獣人の方にお会いした事が無いので、」

「エルル君獣人の女性は凄い美人が多いんだよ、えへへ、」

「本当で御座いますか!代官様!」

「ああ大使館員の猫人族の女性はそれはそれは美しかったなぁ、」

「なっ!何と!猫人族!!」

「おっと、話がそれてしまったエルル君勝負だ!さあ君のお宝を!」

エルルは不敵に笑い!

 「良いでしょう!きっとストーキンさん倒れちゃうからソルス様への土産にこれを見せちゃいます!」

とお互い机の上に本を出す!

 ストーキンが出したのは相変わらず三流同人作家の姿絵で三角の耳に尻尾が生えただけの絵で、

 この位の絵なら僕でもかけちゃうよ、とさっきまでのハイテンションから急に梅干しを食べた時の様な萎んだ酸っぱい顔をする、

 向かいのストーキンを見ればエルルが出した秘蔵コレクションの中の一押し、

 oh! sukebee!のコスプレスペシャルの表紙の兎耳を付けバニーガール衣装がちょっぴりポロリしちゃってる表紙を見て目を血貼らせ固まっている、

 エルルがゆっくりお宝本をアイテムボックスに片付け、

 「ストーキンさん僕の勝ちですね、

でもこの艶本でしたかこの本は頂けません、僕は王都に戻って獣人の国の大使館の女性にお会い出来るのを楽しみに待つ事にします、」

 そこに扉をノックする音が聞こえまだ動かないストーキンを放っておいてエルルが鍵を開け扉を開けばメイドさんが立っていて頭を下げ、

 「エルル様ルチア様の所にお客様が見えていましてエルル様にお会いしたいと、」

「分かりました直ぐにいきます、

 ストーキンさん僕にお客様がいらして居るみたいなので僕は行ってきますね、」

と声をかけメイドさんの後に付いて行く、

 ルチアさんの部屋に入れば漁村の村長さんが待っていてルチアさんの手には海苔がある、

 「エルル様村長が海苔の出来を見て欲しいそうです、」

エルルは喜び、 

 「凄い!もう出来るようになったのですか、

 とルチアから板海苔を受け取り厚みを確かめたり光に透かせたり切り取り食べてみて、

 「悪くない出来ですね、もう少し均等になるとより良いですよ、

 ほら光に透かせると海苔の均一で無い所があります、

 でも充分合格点ですよ、早速僕が購入します、」

村長さんは顔を破顔させ、

 「これは村の女と子供達が作ったのです、隣の村でも海苔を作る様になって村々に活気が出来ました、

 「でエルル様今日浜で大鍋をしようと思うのですが、」

「えっ!僕も呼んで貰えるのですか?」

「エルル様そんな大層な物ではありませんよ、大鍋で魚をごった煮するのと売れなかった魚の刺身だけですよ、」

エルルは目を輝かせ、

 「行きます!絶対に行きます!僕の家族も連れて行きたいのですが良いですか?

 それと大鍋の味付けを任せて欲しいです!」

「勿論大歓迎なのですが、大鍋が貴族様のお口に合うか、」

 「僕の家族に貴族は居ませんよあと僕は平民ですよ、」

家で待ってる人達は王族だから貴族じゃないよね、 イオさんは貴族だけど家族の皆さん貴族だと思ってないし、

と心で言い訳しながら、

 「で味付けには何時位に行けば良いですか?」

「夕方の鐘四つ頃から準備いたします、」

「分かりました!あと先日乾物屋さんでも見かけなかったのですが、こんな形の海藻知りませんか?」

と絵で描いた海藻をみせる、

 「こんな海草なんて何処にでも生えてますが?」

「今日夕方迄に手に入れられますか?」

「えっ!そんな物で良かったらいくらでも、」

「お願いします、これも商売になりますよ、」

村長は驚き、

「そんな物が?」

「ええ!村長それでは僕は準備が有りますのでまた後で、

 ルチアさんはどうしますか?」

「エルル様残念ですが、今晩は主人も私も予定が入っていまして、」

と残念そうな顔をする、

 「分かりました残念ですがまた次のきかいに、

 あとストーキンさんにも宜しくお願いします、」

と頭を下げギルガス王都屋敷の厨房に転移した。


 厨房では突然転移して来たエルルに夕食の下ごしらえをしていたロックが驚き、

 「わっ!エルル様じゃないですか?」

「お疲れ様ですロックさん料理長は?」

「カウンターでラン様達と話してますよ、」

エルルがどれどれとホール側のカウンターを覗けばラン様とラン様似のエルフ女性が楽しそうに話していて、

 ランが厨房の奥から覗くエルルに気付き、

 「おお!娘ではないか休暇より帰って来たのか?」

「お久しぶりですラン様今もナハリから料理長に用があって飛んで来た所ですよ、

 ラン様そちらのお方は?」

 「儂のお祖母様じゃ、」

 ランに紹介されたエルフ女性はエルルに微笑み、

 「シィーアよ可愛らしいお嬢さん、」

「初めまして公爵家執事見習いのエルル・ルコルで御座いますシィーア様あと私は男に御座います、」

 「そうでしたわね、ランが娘娘と言うものだから、」

ランが目を輝かせ、

 「で娘今日は何か無いのかの?」

 エルルは先程貰ったばかりの板海苔を出し、

 ナハリで作り始めた海産物の加工品ですと板海苔をランに渡す、

 「ほほう、これは海の植物を干した物か?」

「はい、この海苔は単体で食べるよりも野菜に巻いたり穀物を巻いたりして食べると美味しいですよ、

 例えばエルフの皆さんには白麦草の実を炊いた物と、

 菜のものの漬物を細かく刻んだものに少し植物油と白ゴルマを和えて、

混ぜ握った物にこの海苔を巻いて食べるととても美味しいんですよ、

 お一つ如何ですか、」

 と前世の野沢菜お結びを出せば、

 「よし、頂こう、」

とストーキンさんの様にいきなりお結びにかぶり付き、

「これはまた旨い!カレーも良いが娘これも良いな!」

「ラン!貴女だけずるいわ、わたしにも食べさせて頂戴!」

「娘!お祖母様にも無いかの?」

エルルはもう一つお結びを出し美味しそうに食べるエルフの方達を笑顔でみている料理長に、

 「料理長忘れる所でした!大き目の鍋を一つ貸して下さい、今晩浜辺で作る大鍋のスープを少し頂いてきますので、」

「おお!漁村のスープですか?」

「ええ魚のスープだそうですが味付けは僕がします、」

おにぎりを美味しそうに食べるランが、

 「残念じゃ!魚のスープは儂らわ食べられぬ、」

「ラン様また美味しいスープをお作りしますよ、」

「約束じゃぞ娘!」

料理長が蓋付き鍋を抱えて戻って来て、

 「エルル様この様な鍋で宜しいですか?」

「はい大丈夫です、出来たら持って来ますね主人様達の夕食に如何です?」

「はい、お待ちしています、」

エルルはラン達ににこりと笑い頭を下げその場から転移した。


 森の家に帰ったエルルはお宝本の事などすっかり忘れ、

 「ただいまぁ!皆さん今日はナハリの浜辺で魚の大鍋を頂いちゃいましょう!」

と皆引く位の笑顔で食事に誘うのであった。


 

 おまけ、


 我に返ったストーキンはエルルが出した姿絵を思い出し、次エルルが来た時の為にへそくりを下ろしにギルドへ走った。




 


 

 



 



 

 

 

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