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準備をします!

宜しくお願い致します。

第四十一話



    準備をします、



 「「キャァ〜可愛い!!エルルさんこの子は!」」

 「この子の名前はユユ、シルバードラゴンの赤ちゃんで女の子です!

 うちの新しい家族ですよ!」

「エルルさんシルバードラゴンって女神様のお使いの白竜ですよね、」

「ええ一般的には白竜と呼ばれていますね、」

「キュゥー」

「ちゃんと名札をを付けて貰ってて可愛いいじゃないかい!」

「ええ、カッコ良いでしょう姐様、」

 エルルはローブの内ポケットからユユを出しソファーの上に座らせ、

「姐様ユユお腹が空いているかも、

 お昼は特製角砂糖をあげたのですが、クッキーとかも大丈夫かな?」

と言ってクッキーを出す、

 「エルル!私が食べさせてみるよ!」

 「はい、お願いします、」

 リリルがエルルからクッキーを受け取り、 

 「さあユユご飯だよ!」

とクッキーをユユの前に出すとユユはすんすんと匂いを嗅ぐ様な仕草をした後、

 かぷっとクッキーに食い付きがじがじとクッキーをかじり、

 「ピィ〜」

と一鳴きするとまたクッキーをがじがじかじり出す、

 リリルが面白がってクッキーをユユからはなすと、小さな羽と尻尾をぷるぷる振りながら、

 「キュゥー!キュゥー!」

と一生懸命に抗議をしている様だが、

 その仕草もまた可愛く思わずイオも自身でクッキーを出しユユの前に出し、がじがじとクッキーを夢中でかじるユユを見て、

 「可愛すぎです!」

 とリリルと二人で盛り上がっている、

 エルルは居間の隅にツタの様に見える紐を天井からぶら下げその先に卵の様な形の丸い穴が空いたユユの家を作っていると、

「エルル様ユユの巣ですか?

 凄い!中はベットの様にふかふかです!」

 と卵型の家の中を覗き込むカレンに、

「ええお洒落でしょ、さあユユのお家が出来たよ!」

 とエルルが声をかけるがユユはイオとリリルのクッキーに夢中で二人はまだまだユユで盛り上がっている、

 「じゃあ僕は夕飯の支度をしますね、」

 とちょっぴり寂しそうなエルルにカレンは苦笑しながら、

 「お手伝いしますね、」

とエルルと厨房に入って行く、

 イオ達がクッキーを食べさせ終わると、

 「リリル様見て下さいユユのお家が出来ていますよ!」

リリルはユユを抱き抱え、

 「ユユなかなかお洒落な家じゃないかい、」

「この中ふわふわのベッドになってますよ、」

 とイオはユユの家に突っ込んでいた顔を出してリリルがユユを卵型の家に入れるとユユは、

 「キュゥーキュゥー、」

と鳴きながら、ふわふわなベッドの上を転がり回りやがて身体をまるめると、

 すぴーすぴーと寝息をかきだす、


エルルが厨房から出て来て居間のソファーを片付けながら、

 「ユユは?」

 「エルルさんユユは眠っちゃいましたよ、」

「お腹が膨れたからでしょう、

 イオさんも姐様も手を洗って来て下さい、お寿司屋さんを始めますよ、」


エルルが出したカウンターの椅子に三人が座るとカレンが、

 「エルル様リリカ様とシャルルさんは?」

カレンの隣りに座るリリルが、

 「今日あっちはばたばたしたからねえ多分今日は戻れないよ、」

 「リリカ様お寿司を楽しみにしていらっしゃったのに、」

「イオまた直ぐに戻って来るさ、」

エルルがカウンターの中から、

 「はい!サーモンじゃないサロモンおまち!」

 リリルは眼をキラキラさせ、

 「ブリネンの特産品だよ、焼いても美味しいんだよ、」

と言いながらひょいと手で掴み醤油にちょんと付けぱくりと食べて、

「生は始めてだけど脂が乗ってて最美味しいじゃないかい、」

「エルルさん美味しいです!」

エルル自身も一つ口に入れ、

「旨っま!姐様塩焼きにしたサロモンをおにぎりの具材にしても美味しいですよ、」

「そうなのかい!エルル明日の昼飯に作っとくれよ、」

エルルはサムズアップで応えてサロモンの卵の軍艦巻きと海いがという前世のウニににた食材の軍艦巻きを出す、

「 この間の海苔を使ったお寿司もどうぞ、」

「エルルさん二つ共凄い色ですね、」

 と躊躇しているイオの隣りでカレンが海いが巻を食べて、

 「これ見た目と違って美味しいですよ、」

「でしょ、この海いがって森に生えてるいがの実みたいな見た目であちらでは通の人がパンに塗って酒の肴にしているそうですよ、」

 とカレンの隣りを見れば先程まで食べるのを躊躇していたイオが今は美味しそうに軍艦巻きを食べている、

 エルルはみんな大好きツナマヨや玉子のお寿司も出し皆大喜びでお寿司を味わった。


 夕食後あと片付けが終わるとエルルが、

 「僕はこれからジルおじさんの所に行ってきますね、」

「ジルって昔近衛副隊長やってたアズビーのボンボンかい?」

「ええ、幼い頃からお世話になっています、

 姐様はジルおじさんと面識があったんですね、」

「そりぁ近衛だったからね、

 何よりあのアズビーの跡取りさ下手な貴族より優良物件で一代限りとは言え貴族位を持ってたからね、私の周りの女官達からモテモテだったねえ、」

モテモテってジルおじさん若い時はハーレム野郎だったのか!ゆっ許せん!

「エルル何て顔してんだい、」

エルルは手を振り、

 「姐様何でもないんです、

 じゃあ僕行って来ますね遅くなると思います、」

と言ってエルルは転移した。


 

 エルルが転移して来た所は何も無い部屋でエルルが扉を中からノックしてしばらくすると扉が開きメイドさんが頭を下げる、

「夜分にすいませんジルおじさんは帰ってますか?」

「はいつい先程お戻りになりました、

 こちらへ、」

と案内されたリビングに入ると、孫を抱いたジルおじさんと家族の人が集まっていてエルルが部屋に入ると、ジルおじさんより早く奥さん達が、

「よくいらして下さいましたエルル様、」

と身を乗り出し二人共目をキラキラ輝かせてエルルを見ている、

エルルはお土産ですとケーキが入った紙の箱を出すとジルおじさんの奥さんが、

 「エルル様この紙の箱は貴族の奥様方の中で噂になっている公爵家のケーキでは!」

「その噂がどんな物かは知りませんが中身はケーキですよ、

 皆さんで召し上がって下さい、」

キャァ〜と声を上げる女性陣を見たジルおじさんが、

 「エルルいつもすまんな、

 で今日は?」

と話しながら孫をメイドさんに預ける、

 エルルは書類の束を渡しながら、

「いつものです明日登録お願いします、あと後日公爵家で新しい商売に付いての会議に参加して欲しいです、」

「分かった特許の件は明日朝一で登録しておくよ、

 会議の件は商会代表のクレオの参加で良いか?」

「はいクレオさんお願いします、

 あとジルおじさん今帰って来たんでしょ食事はまだ?

 あっでも料理人の方が用意してあるのかな、」

 ジルの目が光り目だけでエルルを制し、

 「いやまだなんだ何か食べさせてくれるのかい?」

エルルは寿司桶に並んだ握り寿司を出し、

 「お土産で作ったお寿司って料理ですジルおじさんでも始めての料理じゃないかな、」

 「これは美しい鮮やかな料理だな、ナハリの魚の刺身の下にご飯か、」

「ジルおじさん凄い!流石大商人刺身って言葉ナハリの方でも一部の方達しか使わない言葉と聞きました、

 魚はナハリ産ではない物もありますよ、」

 ジルは笑いながら、

「ははは、伊達にこの商売をやってはいないからな、

 この小皿に入った醤油に付けて食べるのだな、」

 と言いながら寿司を食べ、旨い旨いと食べ出すジルに、

 「親父一つ貰うぞ、」

 とクレオさんが寿司をひょいとつまむ、

 「あっ!こら勝手に食べるんじゃない!お前達は食事を済ませたのだろう、」

「あらあなただけずるいわよ、」

と奥さん達からも突っ込みが入る、

 エルルは笑いながら、

 「お寿司ではないのですがこんなのはどうですか、」

と言いながら八つ焼きとお好み焼きを出す、

 「エルルこれは?」

「この料理は今ナハリの屋台で出している八つ足やゲソを使った料理であちらで結構人気なんですよって、そう言えばショーンさんは?」

お寿司を奥さんに取られ抗議していたジルが、

 「ショーンは婚約者の家に行っているよ、エルルが来たと知ったら悔しがるだろうな、」

「わっ!おめでとうございます、」

「ありがとう、ショーンに伝えておくよ、」

「はい、何かお祝いさせて下さいと伝えて下さい、」

 お好み焼きを食べたクレオさんが、

「これは旨いな、王都でも屋台を出せば直ぐ大人気になるぞ、」

「クレオさん今回ギルドにレシピを公開しましたので、もう少ししたら王都で八つ焼きやお好み焼きの屋台が出るかも知れませんね、」

「エルルはいつも無償でギルドに登録しているのだろ、

 他の者達の様に特許料を貰えば良いのに、」

エルルは横に首を振り、

「僕は出したレシピからより美味しい食べ物が出来たりより良い商品が出来るのが楽しみなんですよそれだけで十分です、」

 クレオは出かかった言葉を飲み込み肩をすくめこれが本当の大賢者なんだなと心の中で呟いた。


 エルルが森の家に帰って来てユユの巣を覗き込むと巣は空で気配を探ればイオの部屋からユユの気配を感じ、

 エルルはくすっと笑いおやすみユユと呟いた。



 朝エルルが鍛錬に出ると女性陣がストレッチをしていてユユが皆を見て自身もストレッチの真似をしている、

その動作が面白く皆くすくす笑っていると、

「おはよう御座います皆さん」

「おはようエルル、見とくれユユもストレッチをしてるんだよ、面白いだろ、」

エルルはユユに向かい、

「おはようユユ昨晩はよく眠れたかい?」

エルルの言葉にユユは小首を傾げるが直ぐに短い両手を上げ、

 「ピィー!」

と鳴くイオが笑いながら、

 「エルルさん昨晩皆が寝室に戻った後ユユ寂しくなったのか廊下をピーピー鳴きながら私達を探してたんです、

 で昨晩は私の布団の中に潜り込んで寝たんですよ、」

 「イオさん今晩は私ですよ!」

とカレンが言うとエルルが、

 「ユユは未だ赤ちゃんですからね、僕やイオさんがいない時はカレンさんお願いしますね、

 これユユのお出掛け用の鞄です、姐様もユユをお願いしますね、」

「任せときな、で今日は刀の鍛錬に付き合って貰うよ、」

と言いリリルは光剣刀バージョンを出現させた。



 「リリル様思いっきり斬られちゃいましたね、」

汗を流し終わって居間のソファーに寝そべるリリルを見てカレンがニヤニヤしながら言うと、

 「ふん!刀だったからだよレイピアならもう少しましだったさ、」

と不貞腐れるリリルにエルルが朝食を用意しながら、

 「姐様十分お強いですよ、油断したら僕でもスパッと斬られちゃいますよ、

 はい食事の用意ができましたよ、」


 皆がテーブルに付きユユもテーブルの端に座りエルルが出した芋揚げを美味しそうにかじっている、

 エルルはイオに、

 「イオさん今日はナハリの公爵屋敷でストーキンさん達と色々話し合おうと思っています、」

「エルルさん屋台はお休みなんですか?」

「ええ、今日は広場に八つ焼き屋台を始めたい方募集の看板を騎士団の方にたてて貰おうと思っています、

 イオさん今日はお休みにして下さい、」

「分かりましたエルルさん私お婆ちゃんの所に行って来ます、

 エルルさんお婆ちゃんがここに遊びに来たいと言ったら連れて来ても良いですか?」

「僕もお祖母様にお会いしたいのでぜひ!」

 エルル達の話を聞いていたリリルが、

 「イオ、お婆ちゃんってマイラの事だろう久しぶりだねぇ連れて来な、」

「リリル様祖母を知ってみえるのですか?」

「私の嫁入り直後はノアもマイラも独身でね、父ちゃんが私が寂しくない様に同年代の貴族の娘達を城に呼んでくれたのさ、

 まあノアは魔導師団員だったから城に勤めてたしね、」

「姐様僕が帰ったらその頃の婆ちゃん達の話聞かせて下さいね、」

「ああ任せときな!」




ストーキンの研究室でエルルが魔導回路をいじるのを見てストーキンが

「ふむ、なるほどなるほどではここは?」

「ここはこんな感じにちょちょいと、」

「これは凄い確かにこの方が効率的だ!」

「いえストーキンさん驚きですこの魔導回路の考え方は素晴らしいです!」


エルルは今ストーキンの研究室で魔導冷凍庫付きの馬車について話合っている、

 ナハリの公爵屋敷に飛んで来たエルルはルチアに漁業ギルドの者にも話し合いに参加して欲しい事と警らの騎士に広場に看板を建てて欲しいと伝えると、

 ルチアは直ぐギルドに使いの者を走らせる、

 同時に事務官にはエルルから渡された看板を騎士の詰所に持って行く様指示を出し、

 エルルは話し合いが始まるまでストーキンと共に研究室で冷凍庫付きの馬車について語り合う事になった。

 「なるほど、ではエルル君はこの馬車をどの様に運用するつもりなんだい?」

「今オーライドでは各商会や個人の商人が個々の馬車で荷を運んでいるじゃないですか僕の考えでは物流専門の商会があっても良いのじゃないかと考えます、

 例えば常にナハリと王都を往復していて商会や商人に頼まれた荷物を運んだりするのです 、

 まあいきなり変える事は出来ないと思いますがこの魔導冷凍馬車を使った商売を知り合いの商会に提案しようと思っています、」

 「画期的な発案だと思うのだけど、実際買い付けや運搬中の補償など難しい所が多いのではないかな、」

流石学者様だ的確に問題点を突いてくるエルルは心の中で感心し、

 「流石は学者様、勉強させて戴きました、」

「ははは、エルル君勘弁してくれ大賢者様に学者様だなんて、」

「ストーキンさんだから大賢者なんて言わないで下さいよ!」

エルル達が研究室で盛り上がっていると、部屋の中にメイドさんが入って来て、

 「旦那様奥様やギルドの方達が会議室でお待ちです、」

と伝えストーキンさんが、

 「ええっ!もうそんな時間かい?話に夢中になってしまった様だ直ぐに行くよ、さあエルル君!」



エルルとストーキンが会議室に入るとルチアさんと三人の男が立って待っていてストーキンさんが、

 「待たせてしまったね、あれ商業ギルドの所長までいるじゃないか、ルチア説明はしてくれたのかい?」

 「ええ、それにギルドの王都本部から朝一で連絡が入ったらしいわ、」

 「分かったでは皆座ってくれ、こちらは公爵閣下の弟君エルル様だ、」

エルルはぺこりと頭を下げ、

 「エルル・ルコルといいます、今日は宜しくお願いします、」

三人の男が頭を下げて挨拶をして行く、

 商業ギルド所長のドナウさんに漁業ギルドの代表のキョウさん、漁村の村長でキョウさんのお父さんのキュウさん、

 挨拶が終わるとエルルがドナウに、

 「所長様朝一で連絡が来たと言われましたが昨晩統括様とお話しをさせて頂いたばかりなのですが、」

「エルル様ギルドにも優秀な魔導師がいるのですよ、」

「なるほど納得致しました、」

「しかし最近話題の八つ焼きの屋台を出していたのがエルル様だったとは、

 今回ギルドからの説明会と調理器具の貸し出しの件承りました、

 全て統括より細かく指示を頂いています、」

「宜しくお願いいたします、お帰りになる時に器具をお渡し致します、」

次にキュウさんとキョウさんに、魚を冷凍し王都や他の内陸の町に鮮魚を売る相談を始める、もちろん所長も関係する話なので三人共エルルの説明に聞き入っている、

 話が終わると村長さんが嬉しそうに、

 「エルル様そいつあありがてえです、漁師達の収入が増やせやす、」

エルルは嬉しそうに笑う村長に、

 「で村長様もう一つこれを見て下さい、」

と言って板海苔を見せる、

 「こいつぁ先程奥様に見せて頂いた物で御座いますね、何でも食べ物だとか?」

「ええ海産物です、海辺の岩などに付いた苔の様な物を加工した物で海苔と言います、」

「エルル様そいつぁ船底に付いたり、入れっ放しにした網に付いたりする物と同じですかい?

 「船底は分かりませんが網に付いたものは同じ物だと思います、

 製法はギルドが特許を持っていますので買って下さいね、

 この海苔造りは漁村の方達の副業として最適な物だと思います、漁業と違い女性の方や子供でも作る事が出来ますよ、

 でこの海苔と言う海産物はエルフの方に絶対うけます!そのままでも食べられますので一度食べてみて下さい、」

 エルルにカットされた海苔を渡され口の中に入れたキョウさんが、

 「磯の香りがします酒の摘みになりそうですね、」

「海苔単体で食べるよりも他の料理に色々組み合わせて食べると良いですよ、」

と言いながら皆にツナマヨおにぎりとおかかおにぎりを渡す、

 おにぎりを渡された者皆が戸惑っていたけどストーキンさんだけはいきなりおにぎりにかぶりつき、

 「これは美味しい!エルル君作り方をうちの料理人に教えてくれないかい、」

「ストーキンさん調理ギルドでレシピが公開されていますので問い合わせてみて下さい、」

ストーキンを見た他の人達もおにぎりを食べキュウさんが、

 「旨い!がこの具材は海流魚と、

 うーむこの風味は堅魚か!じゃが魚をどんな具合ち調理したのか全く分からん、」

「流石村長様よく海流魚と堅魚と分かりましたね、

 海流魚の油漬けと、堅魚の削り節です、」

「何と削り節と!この海苔が巻いてある穀物も魚とよく合う、今晩は村の者を集めんと!」

 「ああ、親父ギルドでレシピを買って来るよ!」

そして男三人はエルルに頭を下げ、

 「エルル様ありがとうございます、 村にも遊びに来て下せえ、」

「はい、休暇中に伺わせていただきますね、」

エルルの隣りからストーキンが、

「村長僕も良いかい?」

「勿論で御座います代官様、」




 広場に八つ焼きを求めて人が集まっていると騎士が立て看板を立てる、

 隣りの屋台の男が、

 「騎士様今日は嬢ちゃん達の屋台は休みなんですかい?」

「あのお方は公爵様の弟君様だ、ご商売をなされていた訳ではない、」

 騎士の言葉に周りからどよめきが起こりさらに騎士が立てた立て看板を読んだ者達がさらにどよめく、

 立て看板には八つ焼きとお好み焼きの屋台を始めたい者に対するギルドの説明会の案内が書いてある、

 字の読めない者のために騎士が書いてある事を読み上げると、

 「騎士様これは本当ですかい?」

「勿論だ、これ以上の事は直接ギルドに問い合わせるように、」




 マイラの屋敷に転移して来たイオは執事に案内され居間に入る、

 「お婆ちゃん久しぶり!遊びに来たよー、」

「イオいらっしゃい今日はお休みなの?」

「今私長期休暇中でエルルさんと一緒にナハリに行ってるんだけど今日はお休みでこっちに帰って来たからお婆ちゃんの顔を見に来たんだよ、」

 「ありがとうイオ私も可愛いい孫の顔が見えて嬉しいわ、

 そうそうイオ私もうすぐひいお婆ちゃんになるのよ、」

「お母さんから聞いたんだね、

 レンお姉ちゃんエルルさんに診てもらってるから安心だよ!」

 マイラは微笑みうなずき、

「でイオ、今日エルルは?」

「今エルルさんナハリに行ってるんだけどお婆ちゃんに会いたいって、」

マイラは少女の様に目をキラキラ輝かせ、

 「イオ森の家に連れて行ってくれるの?」

イオはニヤニヤしながら、

「うん、エルルさんの他にもお婆ちゃんに会いたいって方もいらっしゃるんだよ、」

「私に?何方かしら、」

「会ってからのお楽しみだよ、

 さあ行くよお婆ちゃん!」

マイラは部屋の隅で二人を笑顔で見守っていた老執事に、

 「お出掛けして来るわね、遅くなったら先に休んでて頂戴、」

「かしこまりました奥様、」

と言って頭を下げる執事にイオも頭を下げマイラと共にゲートの中に入って行った。



 イオがマイラを連れて森の家の居間に入ると、

 ソファーに寝転び絵物語を読んでいたリリルが、

 「お帰りイオ!久しぶりだねぇマイラちょっと歳をとったんじゃないかい?」

マイラは話かけてきた黒髪の女性をきょとんとした顔で見ていると、

「なんだいマイラ昔あんたが書いた恋文をラルルに渡してやったじゃないかい、」

マイラは真っ赤になり、

 「なっ!何故その事を?」

イオが笑いを堪えながら、

 「お婆ちゃんリリス様だよ、」

「えっ!リリス様ってリリス殿下?」

「本当に久しぶりだねぇ、マイラが知っているリリスは崩御して今はリリル・ルコル、エルルの伯母としてここで暮らしているのさ、」


 そこにエルルも帰って来て、

 「お祖母様いらっしゃい!お会いしたかったです、」

「エルル!私には何が何やらわからないわこちらの女性がリリス殿下だなんて!」

 戸惑うマイラにリリルはくすくす笑い、

 「エルルお婆ちゃんのマイラにも分かる様に説明しておやり、」

「もう!姐様もイオさんもお祖母様が戸惑ってみえるじゃないですか!」

エルルはマイラをソファーに座らせ事の次第を丁寧に説明して行く、

 「まあ!では本当にリリス殿下なのですね、」

「マイラ私がリリスで無かったらあんたの恋文の話など知る訳無いじゃないかい!」

エルルの目がキラリと光り、

 「姐様何です?婆ちゃん達の昔の話ですか?」

「そうだよあれは私が此方に来たばかりの頃マイラが、」

「わぁー!お辞め下さいませ殿下!」

 赤い顔をして手をバタバタさせるマイラにリリルが、

 「はいはい、乙女の秘密だったからねいつになるか分からないけれどお墓まで持って行ってあげるよ、

 そうだ一緒に温泉なんてどうだい、」

「約束ですよ殿下!温泉はお供させていただきます、」

「マイラ殿下は辞めておくれ今はエルルの伯母のリリルだよ、」

「分かりましたリリル様」

「姐様カレンさんとユユは?」

「ユユはカレンと一緒に庭を散歩しているよ、

 直ぐ帰って来ると思うよ、」

「お祖母様温泉から上られたら新しい家族を紹介しますね、

 僕は先日買ったワイバーンを少し解体して来ます、

 今晩はワイバーンのカツ丼にしようかな、」

 「エルル新しい家族で思い出したわ、レンを診てくれてありがとうエルルが診てくれれば安心だわ、」

「そうだった!お祖母様おめでとう御座います、

 レン姉様は此方で出産する事になりました、

 無事出産が終わったらお祖母様を迎えにいきますよ、」

「ありがとうエルル、

 楽しみにしているわ、」




 エルルが解体から戻ると居間ではマイラの膝の上でユユがクッキーをぼりぼりと食べていてエルルが入って来た事に気が付いたマイラが、

 「エルル可愛らしい家族ね竜なんて初めて見たわ、」

「シルバードラゴンで未だ赤ちゃんなんですよ、」

「シルバードラゴンですって、女神様のお使いの龍神様じゃない!」

驚くマイラにリリルが、

 「マイラこの家の家族にふさわしい竜だろ、」

「姐様は特別っぽいですが僕は平民ですからね、

 で今日の晩ご飯なのですがワイバーンのカツ丼にしようと思っているのです、

 ご飯の上にキャベットの千切りを敷きその上にカツを敷き詰め特製ソースをたっぷりかけるソースカツ丼とカツをワイバーンの玉子でとじた物をご飯にのせる親子丼の好きな方を選んで下さい、」

「エルルなんだい私だけ化け物みたいに言って!私は親子丼をたのむよ、」

姐様僕も人の事は言えませんが貴女は充分化け物ですからねと心の中で思いながら、

 「了解です、お祖母様やイオさん達は?」

「エルル、私もリリル様と同じ親子丼をお願いするわ、」

「エルルさんお手伝いしますよ、

 因みに私は小さめのお皿に両方ともお願いします、」

「私もお手伝いします、」


 そしてイオとカレンが手伝ったカツ丼をほり炬燵の部屋で皆夢中で食べているマイラは美味しそうにソースカツ丼を食べるイオに、

 「ねぇイオそのソースのカツ丼カツを一切れ私に頂戴、」

 「はいお婆ちゃんちょっと御行儀が悪けど、」

と言いながらイオは箸でソースのたっぷりかかったカツを一切れ摘みマイラのどんぶりにおく、

 スプーンでソースカツをすくい食べたマイラは、

 「ありがとうイオこっちもとても美味しいわ、」

そんなマイラを見たリリルが、

 「エルル私も!」

とおねだりするリリルのどんぶりにソースカツをのせ、

 「はい姐様美味しいですよ、」

 そしてまた夢中で食べ出すリリルの隣りではカレンも小ぶりのどんぶりのカツ丼をこれまた夢中で食べていて

 ユユはエルルが細長くカットしたワイバーンの肉で作ったジャーキーをかじっている、

 

 食後にはサッパリ酸味の効いたフルーツゼリーを食べ今はお茶を飲んでいてエルルがマイラに、

 「お祖母様今日泊まっていかれますか?」

「ありがとうエルル家の者が心配するといけないから今日は帰るわ、

 送ってくれる、」

「分かりました僕の休みの時にまたお祖母様の所に遊びに行きます!」

「エルルその時は私も連れてっておくれ、」

「まあ、リリル様を我が家にお招きできるなんて光栄で御座います、」

 とわざとらしく頭を下げるマイラに、

 「なんだいマイラ手紙の事をバラされたいのかい?」

「でっ殿下それは秘密で御座います!」

と慌てるマイラを他所にエルルとイオはマイラが帰った後リリルに聞く気まんまんであった。




 おまけ



 ウェーイズの魔物討伐から数日後、

 ブリネンの王城の魔導師団本部でシャルルの部隊の副官が書き物をしていたシャルルに、

 「隊長やっと休暇が貰えましたね、

 明日はご実家でゆっくりされるのですか?」

シャルルは嬉しそうに、

 「私は師匠の所に魔術と剣を習いに行くわ、」

「例のルコルの姫ですか、

 討伐に参加した先輩達の噂では、二人だけでワイバーンの群れを全て狩ってしまったとか聞きましたよ、

 にわかには信じられませんが、」

「私のお師匠様なんだものその位は当然よ、

 でもその事は一応秘密よ、」

 そこにミルルが、

 「シャルル小隊長良いかしら、」

 シャルルは机から立ち上がり副官と共に気を付けの姿勢をとる、

 「シャルル小隊長、陛下の執務室に行きます同行しなさい、」

「承認!」


「魔導師団団長ミルル、シャルル小隊長を連れて参りました、」

と女王の執務室に入ったミルルがシャルルと共に片膝を付き女王リリアに報告する、執務室のソファーには、上皇リリカ宰相チャーチル、大公爵サララが座っていてリリアが、

 「ミルルご苦労様貴女達も座りなさい、」

女王の言葉に二人は一礼してサララの横のソファーに座るとリリアが、

 「シャルル貴女明日の休暇オーライドに行くのかしら、」

「陛下何故それを?」

「大公爵から聞いたのよ、」

シャルルは母サララを睨むがサララは涼しい顔で受け流す、

 「はい、仕事が終わり次第彼方に飛ぼうかと、」

「そう、ではこの書状をエルルに渡して頂戴、」

「分かりました、必ずエルルさんに渡します、」

二人の話が終わった所で上皇リリカが、

 「じゃあシャル私も一緒に森の家に送って頂戴、」

「母様!先程話したではありませんか私がエルルにお礼を言った後私がエルルに母様の事を頼みますので、それまではお待ち下さいと、」

「良いじゃないシャルが彼方に行くのならついでよ!」

そんなリリカにシャルルが、

 「上皇陛下、エルルさんの所の事が分からないので今回はお控え下さいませ、彼方の了解が取れた時であればいつなりと、」

 と言って頭を下げる、隣りに座るサララが、

 「シャル、エルルに焼き肉パーティー楽しみにしているわよと伝えて頂戴ね、」

リリカとリリアが、

 「大公爵焼き肉パーティーとは?」

サララは得意げに、

 「申し訳ありませんわ陛下ルコルの家の事ですので忘れて下さいませ、」

「サララ教えなさいよ!」

上皇リリカの言葉にサララはますます得意げに、

 「息子が私のために先日狩ったワイバーンーのお肉で焼肉を振る舞ってくれますの、」

「母様何言ってんのよ!一緒に討伐に行った私のためにお肉を焼いてくれるのよ!」

二人のやり取りに呆れたシャルルが、

 「ちょっと母様もミルお姉ちゃんも陛下の御前よ!」

 「良いのよシャルル私も直接エルルに頼む事にするから、」

シャルルは心の中で、お前もか!と盛大に突っ込んだ。


ありがとうございました。


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