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と言う事が!

 今年も宜しくお願い致します。




特別編


と言う事が!



ギルガス公爵家の使用人達の朝は早い、

最近では特にメイド達が早起きをして自身の鍛錬を済ませシャワーを浴びてから食堂に集まる、

今日も執事長ペレスの朝礼が始まり、

「皆おはよう皆には伝えてあるが本日は奥様の所に特別なお客様方がお見えになる、

今エルルとイオは居ないがお食事会の担当になった者達は料理長達と共に公爵家の使用人として誇れる仕事を行うよう皆頑張ってくれ、」

ペレスの言葉に皆 はい!と返事をしてそれぞれ好きな朝食セットを選び席に着く、

そんな中メイドのアニーが座るテーブルでは、

「今日のホール係は大変そうね、私達は選ばれ無かったけど、

そう言えばアニー この間主人様の所に挨拶に来た辺境伯付きの新人さんってアニーのお姉さんなんでしょう、

聞いたんだけどエルル君の実家の使用人だそうじゃない、」

「そうなんですよミオン先輩、

何でもイオのお姉さんの紹介だったそうですよ、」

「へえーそうなんだエルル君の実家って魔の森の中なんだよねどんな所なんだろう、」

「エルル君の実家の事お姉に聞いたら素敵な所だけど秘密よなんて言うんです思わず代わってよって言っちゃいました、」

隣で聞いていたスゥーが、

「アニーのお姉さんもイオもズボンだよね私最近ズボンもかっこ良いかなって思うの、」

「スゥー先輩あれは女性用のパンツと言うらしいですよ私も最近ありかなって、

あとスゥー先輩とリナ先輩が朝の鍛錬で着てたジャージでしたかあれも良いですよね、」

「あの服はエルル君の手伝いをした時に着た服よ、ソフィア先輩も持っているわよエルル君に頼んだら売ってくれるんじゃないかな、」

アニーは難しい顔をして、

「うーんあのミオン先輩達が買い取ったあのコートも欲しいし、」

「あのコートも良いけどエルル君がメイド姿になった時のコート覚えてる?」

「はいリナ先輩、凄く素敵なコートでしたね、」

「あのコート侍女長買ったらしいわよ、ソフィア先輩の話では金貨二十枚なんですって、」

「ミオン先輩のコートは確か金貨六枚でしたよね、

流石に金貨二十枚は無理だけど六枚なら頑張れば でもお姉が履いてたパンツも気になるし、」

「アニーエルル君の休暇が終わってから考えたら、」

「それもそうですねミオン先輩でもエルル君がいないとちょっとだけ寂しいですね、」

アニーの言葉に皆口々に

「そうよね、」

と呟いた。



バレス辺境領の辺境伯館で朝からナタリアが、

「ねえエド、私をエルルの所まで送って頂戴!」

「ナタリーもう耳がぽんぽんに腫れてしまったよ、

話したじゃないか、一般人を守りながらエルルの家迄行くのは無理だと、

だいたいエルルもイオもナハリに行っているのだから家には居ないよ、」

「リリル様とカレンが居るじゃない、」

と朝からわがままを言うナタリアにエドモンドがこめかみを押さえているとロータスが、

「奥様、エルル様はもうじきこの屋敷に顔を出されますよ、」

「えつ!ロータスそうなの?今日?」

ロータスに詰め寄るナタリアに、

「今日とは申しませんが、エルル様が母君様をずっと放って置かれるはずがありません、」

「ええそうね優しい私の息子だものもうちょっとだけ待っていましょう、」

ナタリアの言葉に安堵したエドモンドだったが、

その晩にはナタリアの朝と全く同じセリフに悩まされる事になる。



 アルクの執務室ではロバートが出した王室や貴族家からの手紙の山を見てアルクとマリーがげっそりしている、

アルクの所にはエルルに相談に乗って欲しいと言う貴族家からの願いや他国の大使館からの面会願いまで来る有様で、マリーの所にはお茶会の誘いがひっきりなしに届き返事の手紙を書くだけでマリーの半日が終わってしまっている、

「いい加減どの家にもエルルが長期休暇中だと伝わったと思ったのだが、」                  

 とうんざりするアルクにペレスが、

「こちらで対処出来る物は全てお断り致しました、

ですが王室関連に関しては主人様に直接対応して頂くしか、」

 アルクは手をひらひらさせ、

「分かっている、しかしどれもエルルが戻ってからでないと進められぬ話ばかりだ、陛下や大使殿達に書状を認めるので届けてくれ、」

「かしこまりました、あと奥様本日のお茶会の事ですが、」

「ペレス思い出させないで、また胃がキリキリ痛み出してしまうわ、」

「マリー仕方ないよ陛下から内々の願いだからね、」

「分かっていますわ、ですがお客様が王妃様とファーセルの皇后様にテュレイカ様、

ゴースロのマルティン様達ですのよ、

その様なお茶会は王城でやって下さいまし!」

侍女長が、

「まあまあ奥様同じ公爵家のイセリナ様が奥様のお手伝いに来て下さいます、

エルルとイオは居ませんが、エルルが衣装の用意もしてくれていますし、

 ソフィアはイオからメイクを習っています、

 あと大奥様には美容室を使って良いと言われていますのでいつもと変わりません、」

「そうね、うちの子達最近皆下手な貴族夫人より綺麗だもの、

今イオの部屋だった所 ビューティ・イオって美容室になってるそうじゃない、

でイオの休み明けはメイドの子達の予約で一杯なんでしょ、」

「はい、イオの時間が空いている夜のお店ですからね、辺境伯家の子達の予約も入っている様ですしイオのメイク講座も大人気で食堂で開かれる講義は毎回夜勤の者以外全員参加していますよ、」

「うちには頼もしい使用人の子達がいるものソフィアお願いね、」

「はい奥様、」



数日遡りファーセル大使館ではテュレイカとランがファーセル産のお茶を飲みながらギルガス家から譲って貰っている菓子を食べている、

「テュカ様殿下はファーセルに着かれた頃ですかの、」

「そうね国からの連絡が来てから数日ゴネていらしてラドナス殿に説得され渋々たたれましたからそろそろじゃあないかしら、」

二人が話している部屋の外がにわかに慌ただしくなりランが、

「何かありましたかの、そちらの者見てまいれ、」

と部屋の中にいるテュレイカ付きの侍女に声をかけ侍女は頭を下げ部屋から出て行く、

そして暫くすると侍女が困った顔をしたラドナスとその背後に皇后を連れて入って来る、

ランは直ぐに片膝を付きテュレイカは糸目を丸く見開き、

「義母様?どの様にしてこちらに?」

「来ちゃった!」

と外見は美しいエルフだが実際はかなりの年のおばあちゃんがお茶目に答える、

「義母様来ちゃったではありません転移ですか?」

「ええ、魔法省長官のシーアと二人で転移してきたのよ、」

ランが、

「皇后様お祖母様とこちらに参られたので御座いますか、確かにお祖母様なら転移に問題はありませぬが、

魔法省長官が皇后様と他国へ出るなど皇王様がよくお許しになられましたな、」

「ランそう言えば貴女はシーアの娘の子でしたね、

ちゃんとターナスに伝えて来たわよ

あの子慌てていたけど、」

と笑顔で答える皇后に、

「叔父上があの様なお顔をなさっている理由が分かりましたな、」

皇后カナリザはテーブルの上の菓子を見て、

「美味しそうなお菓子を食べてるじゃない貴女達だけずるいわよ、」

テュレイカは自慢気に、

「最近懇意にしている公爵家から譲って頂いていますの、」

「例の童の所ですか、ターナスが帰ってからずっと童の事を自慢するのよ、

「エルルの事ですわね、あの人だけでなく私やランのお気に入りですわ、

ですが義母様エルルは今休暇中なので陛下のオーライド入りはオラリウス陛下との間でエルルの休暇が明けた後と決まったはず、」

「分かっているわでもターナスが小冊子を見せて自慢するのよ、

あれ凄いわね私たちエルフ用のメニューなんでしょう見たことも聞いた事無い料理ばかりだけどどれも絶品だそうじゃない 特にデザートの所よ、」

「義母様確かにどの料理も絶品でしたが私達もメニュー表の料理の半分も食べていませんわ、」

「最初連絡役の魔法省職員がターナスからだと言ってお酒とお菓子を持って来たじゃない、

 他国の食べ物なんてって思っていたんだけど毒味役の侍女があまりに美味しそうに食べるのだもの、

 私も一口食べてからはオーライドの甘味の虜になってしまったわ、

 噂は直ぐに元老院の方や魔法省まで広まりターナスが企画書と一緒に持たせてきた調味料を使った食べ物を誰が試食するかで大揉めだったのよ、

 そんな所にあの冊子のデザートよ我慢出来ない娘が二人転移して来ちゃった訳よ、」

 呆れたテュレイカとランの横で眉間に指を当てたラドナスが、

「皇后様転移は大使館の確認を取ってからにして頂きたい、

こちらの王宮への根回しが大変なんですぞ、」

そこにランを妖艶にした様なエルフ女性が入って来て、

「カナここにいたの、テュレイカ妃殿下お久しぶりでございます、

 ラン貴女達ターナス殿下の話では毎日美味しいお菓子でお茶しているそうねって、そのお菓子は何?」

ランは呆れ顔で、

「お祖母様魔法省長官が国を空けるなど、」

「心配無いわよ婿殿に頼んできたから、」

とシーアは涼しい顔でそう返す、

「父上もおかわいそうに、

 お祖母様この菓子は水ようかんですな、」

ラドナスが従者に、

「皇后様とシーア様に菓子の用意を、

さてお二方とはお茶を飲みながらこれからの事を相談させて頂きますぞ、」



後日王宮に来たラドナスは、

「とその様な事が御座いましてな、

なにとぞ陛下におとりなし下さいませ宰相閣下、」

と宰相ローレンスの執務室でファーセル大使ラドナスが頭を下げる、

「大使殿大使館の中でしたら我らの関する所ではありません陛下にお伝え致しましょう、

あと大使殿皇族の方々の貴族家訪問はお控え願います、あらぬ噂が立ち兼ねませんので、」

ラドナスは渋い顔をしながら、

「皇后様はギルガス家への訪問を望まれていまして、」

「大使殿そのお話は陛下と皇王陛下の間で陛下の甥御の休暇が終わってからと決まったはず、

 とは言え皇后様のお気持ちも分かります我が妻も日頃から公爵家に行きたいと従者達を困らせていますので一度陛下に相談致しましょう、」

「感謝いたしますぞ、宰相閣下!」


 王族専用テラスでお茶を飲んでいるジュリアス達王族が宰相ローレンスの報告を受け、

「うむ、ファーセルの皇后様がエルルの休暇が終わるまで待てず転移していらしたと、」

「はい、皇太子殿下が国に戻られた時に例のメニュー表を大変自慢なされたとかで、」

ジュリアスの隣の皇太子コーデリアスが、

「確かにあの冊子は素晴らしい物でしたターナス殿は持ち帰られたのか、

私はほとんど食べられなかったよ、」

話を聞いていた王妃ローザンヌは、

「陛下もコーデリアスも二人共公爵家で食事した事があるから良いじゃない!私はこのテラスで頂いたケーキと晩餐会で食べたケーキが忘れられませんの、

 そうだわ!マリーさんの所でお茶会を開いて頂くのはいかがかしら、

ファーセルの方々だけでなくゴースロのマルティン様もお誘いしたら問題無いじゃない、」


「王妃殿下、ファーセルとゴースロの王族の方がお忍びでいらしている事は貴族の中ではすでに暗黙の了解となっております、

 夜会のシーズンならともかく貴族家が他国の王族を屋敷に招けば他の貴族家からあらぬ噂が立ちアルク殿に迷惑をおかけする事になります、」

宰相の言葉に国王ジュリアスが、

 「我が宰相貴族夫人達の中で公爵家の食事や菓子が特別なのは周知の事実

万が一にも公爵家の機嫌を損なえばその家の夫人はあの菓子を食べられなくなるのだ、

 予が誓っても良いその様な阿呆はこの国には居らぬと、」

 「では陛下アルク殿に私からのお願いと言う形でマリーさんにお茶会を開いていただけるようにお願いして下さいませ、」

 ジュリアスにぐいぐいと迫るローザンヌに、

 「わかった、わかったから我が妃よ、その様な顔を近付けてくるでない、我が宰相よアルクに頼めるか、」

ローレンスは心の中で盛大に溜息を吐きながら一礼した。



 ギルガス公爵家の応接室で応接用の椅子に座るローレンスが、

 「とその様な事があったのだ、」

「ローレンス勘弁してくれ、今はエルルが居ないんだぞ、」

「アルク済まないファーセルの皇后様と王妃様の立っての願いとなれば断りきれなかった、」

 アルクはローレンスに手で答え、

 「ペレス料理長を、侍女長はマリーを、」

と伝えしばらくしてマリーが入って来る、

「ご機嫌麗しゅう宰相閣下、」

「勘弁してください奥方、その様にかしこまられてはこれからお話しするお願いを話せなくなります、」

「まあ宰相様が私にお願いで御座いますか?」

「はい、じつはお茶会を一席ご用意していだだきたい、」

「はあ、その様な事でしたら、」

「マリー、招待して欲しい方々が王妃様にファーセルの皇后様に皇太子妃様、あとゴースロの皇太子妃様達だぞ、」

マリーは驚き、

 「ローレンス様、それはうちでは無く王城で行うお茶会ですわ、」

「奥方の言う通りなのですが、

 恥ずかしながら王宮ではファーセルの方々に満足して頂ける菓子の用意が出来ません、

 またこれはファーセルの皇后様の強いお願いでして、」

アルクが、

 「ローレンス一応うちの料理長に確認を取るが、料理長が無理と言ったらエルルの休暇が終わるまで待って下さいと伝えてくれ、」

「わかった、その時は私が責任を持ってお断りしよう、」

そこに料理長を連れたペレスが入って来る、

 アルクが料理長に、

 「とその様な事があったのだ料理長、エルルはいないがおもてなし出来そうか?」

「主人様実はエルル様がこの様な時の為に特別な菓子と料理を用意していて下さいまして、エルル様の様にメニュー表をお出しする事は出来ませんが、

決められたコースメニューでしたらご用意出来ます、」

「おー料理長殿感謝する!」

「まて、ローレンスまだ行うと決めた訳ではないぞ!マリーはどう思う?」

「エルルが準備してくれていれば大丈夫でしょう、私は直ぐに招待状を認めますが、宰相様私が王妃様や皇后様方に招待状を送るのは失礼ではありませんか?」

「奥方、今この家から招待されて無礼に感じる者など居りませんよ逆に感謝される事でしょう、

 王妃様には私が直接届けましょう、」


 ゴースロの大使館応接室の皇太子夫妻の前に片膝を付いて頭を下げるペレスに皇太子パスカトフが、

 「頭を上げられるが良い執事殿、

恩ある公爵家の者その様にかしこまらず、して今日は?」

「実はその様な事が御座いまして今日は妃殿下に奥様よりご案内状を預かって参りました、」

「まぁ素敵!また公爵家に招待していただけるのね!」

「なんと夫人方の食事会かそれは残念じゃ!」

「あなた何処が残念なのです!今オーライドで公爵家のお茶会や食事会に誘って頂けるのはとても幸運な事ですのよ、

 執事殿喜んで伺わせていただきますわ!くれぐれも公爵夫人に宜しく、」

「妃よ、其方は良いであろうよ儂も付いていきたい所よ、」

「あなた王妃様や皇后様もいらっしゃるのです、今回は我慢なさってエルルやイオの休暇が終わってから公爵家との会談をオラリウス陛下より許可して頂いて要るのですから、」

「うむ、父上や母上達のオーライド入りも認めて頂いておるからの、

 ここは一つ我慢するかの、」



 ファーセル大使館でもロバートが皇后カナリザ、皇太子妃テュレイカの前で片膝を付き、

 「とその様な事が御座いまして奥様よりのご案内状を持参致しました、」

美しい二人の皇族エルフは満面の笑顔で、 

「嬉しい便りをありがとう執事殿、必ず伺わせて頂くと奥方にお伝え願おう、」

「謹んで承りました、」

とロバートが頭を下げると皇后カナリザが、

「あと私から一つ願いがあるのだか、この食事会にそこにいる我が国の魔法省長官も招待して頂く訳にはいかぬか、

 この者私の馴染みでのそこのランの祖母に当たる者だ、」

「帰り次第主人様と奥様に必ずお伝え致します、」



 スパロン家に戻ったローレンスが、

 「とその様な事があってな、」

「まあ!あなたでは私がマリー様のお手伝いに公爵家に伺いますわ、」

その場に控えていた侍女長も、

 「奥様私もお手伝いに伺わせて下さいませ、」

侍女長の他にも私も私もと、皆手を上げ呆れたローレンスが、

 「お前たちあちらの公爵家にも優秀な侍女がいるのだ、イセリナの共の者一人で良い、一応彼方に確認を取っておく様に、」

とローレンスが部屋から出て行った後、誰がお供するかで侍女の中で盛大なバトルが繰り広げられた。


 

 ギルガス公爵家の応接室にスパロン公爵家の侍女長と侍女長補佐の二人がアルクとマリーの前で頭を下げ、

 「と言う事がスパロン家で御座いまして奥方様のお手伝いに伺いたく、」

アルクが、

 「宰相閣下にはお手数をおかけしますな奥方さえ良ければお手伝い願おう、なあマリー、」

「イセリナ様がいらしてくださるのなら心強いわ、

 では当日打ち合わせと準備があるので早めに来て下さいますよう伝えてくださるかしら、

あと侍女長うちの接客用の衣装予備はあったかしら、」

「はい、予備も含めて用意出来ます、」

「じゃあスパロン家の応援の子達の事は侍女長に任せるわ、」



そして当日ギルガス私兵騎士団が総出で警備する中スパロン家の馬車が到着してマリーが待つナタリアの部屋に入ったイセリナは目を丸くしている、

「娘から聞いてはいましたが、見た事の無い様式のお部屋ですわねマリー様、」

「ええ、エルルが義母様の為に改装したお部屋ですの 義母様から許可も貰っていますわ、さあこちらに今日はイオは居ませんがソフィアがメイクしてくれますわ、」

とイセリナを美容室に案内する、

美容室で待っていたソフィアがイセリナに、

 「奥方様宜しくお願いいたします、

 とソフィアは頭を下げイセリナの手を取り椅子に座らせる、

 イセリナは興味深げに美容室の中を見渡しマリーのドレスがかかっているハンガーを見てうっとりしながら、

 「いつ見ても素敵なドレスですね、何処のお店のドレスなのか教えていただきたいですわ、」

「ごめんなさいイセリナ様義母様とエルルが用意して下さるから私も知らないの、

 て!イセリナ様早く準備をなさって下さいまし、ソフィアお願い、」

ソフィアはイセリナの椅子を寝かせて髪を洗いトリートメントを済ませてメイクも落としイオに習ったオイルマッサージを行う、

 イセリナはとろんとしながら、

 「娘に聞いていましたか、このマッサージはたまりませんわね、

 一度うちで娘が行おうとしたのですがどの様なオイルか分からなかったので怖くて出来ませんでしたの、」

「奥方様もうすぐアズビー商会から発売されますよ、確かアロマオイルとか言っていました、」

と話しながらソフィアはイセリナの椅子を起こすと魔道具で髪を乾かしメイクを施して行く、

 「私はまだイオの様に髪を切れませんのでセットだけさせて頂きました、

 さあ奥様もお着替えになって下さいませ、」

イセリナが鏡に写った自身にうっとりしているとイセリナの背後で下着姿になったマリーが写り、

見た事のない扇情的な下着に、

 「マッ、マリー様なんて下着を付けてらっしゃるの!」

マリーはドレスを纏いながら、

 「イセリナ様恥ずかしいのでそんな目で見ないで下さいまし、」

「最近縫製ギルド加盟のお店が次々女性物の下着を発表していると聞いてはいましたがその様な形の下着を見るのは初めてですわ!」

「もう、イセリナ様!お客様がいらっしゃいますホールに向かいますわよ、」


 ホールでは侍女長と料理長が打ち合わせをしていて入って来たマリーに、

「奥様こちらの打ち合わせは終了致しました、

 後は我々にお任せ下さいませ、」

「料理長 侍女長お願いね、」

マチルダの後ろに立つスパロン家の侍女長にイセリナが、

「侍女長素敵じゃない、」

「奥様見て下さいませこの髪の艶、

それにこの髪飾りとエプロンは是非うちでも貸与して下さいませ」

と自身の髪を手ですきながら話す、

「はいはい、帰ったら主人にお願いしてみるわね、」


屋敷の玄関ではアルク達が出迎えの為に並んでいる、

 そこに近衛の騎馬に守られた馬車が入って来て馬車の中から近衛のリンがローザンヌの手を引き降りて来る、

 アルク達は片膝を付き待っているとローザンヌが、

「閣下お世話になるわね、」

「王妃殿下公爵家にようこそ妻がホールで殿下を待っております、ペレス殿下を、」

と隣で片膝を付き頭を下げているペレスに告げペレスは立ち上がり深く礼をすると、

「こちらで御座います、」

と屋敷の中にローザンヌを案内する、

ローザンヌの後を近衛のリンが付いて行くのを見送るアルクに、

「閣下、」

と声をかける男に、

「男爵お勤めご苦労様、」

「いえ、私達近衛の仕事ですので、

 閣下話は変わりますが閣下の弟君に妻を診て頂き感謝いたします、

 噂の公爵家の医者殿に診て頂けるとは、」

「男爵奥方はイオの姉君なのだろう、

 エルルの弟子の姉君なのだ身内の者を診るのは当然だと思うが、」

「閣下の弟君にその様に思って頂ける妻は幸せ者です、」

とアルクにもう一度頭を下げトーマスは持ち場に戻っていった。


 しばらくするとファーセルとゴースロの馬車が大使館の職員に護衛されながら入って来る、先に入ったゴースロの馬車から見た目は少女の侍女とマルティンが降りて来て直ぐに後ろの馬車からランを始めにシーア、テュレイカ、皇后カナリザが降りて片膝を付き待つアルク達の所まで来ると代表でカナリザが、

「公爵閣下、奥方のお招きに感謝を、」

「公爵家にようこそ皇后陛下、皇太子妃様、皆様、さあこちらに、」

と言ってアルクは屋敷の中を案内する。



 ペレスに案内されホールに入ったローザンヌは見た事の無い様式の部屋に驚き庭が丸見えのガラスの壁を見てまた驚きローザンヌが部屋に入って来てからずっと片膝を付き頭を下げている公爵夫人達を見て近衛のリンがローザンヌに、

「妃殿下お言葉を、」

ローザンヌは我に返り、

「ごめんなさい見た事の無い様式のお部屋に驚いてしまったわ、聞いてはいましたがとても素敵な部屋だわ、

 さあ二人共膝など付かず今日私の事は友人としてあつかって頂きたいわ、」

王妃の言葉に一度頭を下げたマリーは立ち上がり、

「王妃殿下よくお出で下さいました、心ばかりのお食事をご用意させて頂きましたさあこちらの席にお座り下さい、」

と上座の席の一つに案内する、

 直ぐにまた入り口の扉が開きアルクに案内されたファーセルとゴースロの者達だが、テュレイカとラン以外は固まってしまっている、

 今度はアルクが、

 「では皇后陛下ごゆるりとお楽しみ下さいませ 男の私どもはこれにて、」

と執事達と共に一礼して部屋から出て行き、

 カナリザが、

「マリーさんとイセリナさんだったわね、その様にかしこまらず私達の事はお友達くらいにあつかって下さいな、」

マリーは一礼するとイセリナと共に立ち上がり、

「ようこそお出で下さいましたマリーと申します、本日は心ばかりの料理をご用意させて頂きましたごゆるりとお楽しみ下さいませ さあこちらに、」

とカナリザをローザンヌの横の席に案内する、

カナリザは席に座りながら、 

「初めましてローザンヌ様私はカナリザよ、」

「ローザンヌで御座いますカナリザ様、

 実は私は王女時代にジオラフトの大本山でローザンヌ様をお見かけした事が御座いまして、」

「ローザンヌ様はイスタリアの姫君でしたわね、ではあの狸小僧の戴冠式ですわね、」

 ローザンヌは思わず吹き出し、

「まあ!カナリザ様教皇猊下を狸小僧だ何て、」

「私から見たらその様な物ですわ、

 その様な事より私は今日の食事会が楽しみ過ぎて、昨晩余り眠れませんでしたわ、」

「私もですわ、あと皆様私はローザンヌですわ、」

と席に着いた者達に挨拶し、末席に座るイセリナとマリーが最後に挨拶をした後、マリーかパンパンと手を叩くと侍女達が本日のお品書きを配って行く、

 カナリザが隣りに座るシーアに、

 「シーア見てターナスの冊子の様に精密な絵は描いてませんが、聞いた事が無い料理ばかりよ!」

「義母様私も初めての料理ばかりですわ、マリーさんこの料理はエルルが?」

「勿論弟監修のお料理ですわ、少し我が家の料理長から説明いたしますわ、」

カウンターの向こうから料理長が出て来て片膝を付き頭をさげながら、

「本日のお料理は主人様の弟君エルル様監修の料理で御座います、

 また本日のデザートにつきましてはエルル様自らの作品で御座います、」

と告げ一礼して立ち上がるとカウンターの奥からメイド達がキャスターを押しながらカナリザの隣りまで来ると、美しい白磁の器に入ったクリームシチューを並べて行く、

 皆お品書きと料理を見比べ目を輝かせていると料理長が、

「本日のお料理は皆様同じ名前の料理となっていますが、ファーセルの皆様のお料理はエルル様からヴィーガン料理と教えて頂きました、」

我慢し切れずローザンヌがスプーンを手にシチューを食べ、

 「凄く美味しいわ!でもこれ乳のスープよね、」

カナリザも興味深げにスプーンでシチューをすくい上品に口の中に運ぶ、

 途端目を見開き、

 「素晴らしい出来のスープだわ!

 この私を唸らせるとは息子が虜になってしまうのが分かるわ、」

「ええカナこの様に美味しい料理を食べたのは何年振りかしら、

 お代わりは頂けるのかしら?」

下座のイセリナが、

 「シーア様全ての料理を美味しく召し上がる為にはお代わりなさらない方が良いかと、」

「これ以上の物が出ると?

 えっと次は木の子のキッシュですか、」

 直ぐに給仕係の侍女がローザンヌとカナリザの前に何も乗っていない平皿を置き、カウンターからキャスターを引いてきた料理長とロックがそれぞれのキッシュをカットして平皿の上に置いていく、

 キッシュを皿に配っていく料理人を見ながらカナリザが、

「マリーさん公爵家の料理人殿は素晴らしい腕ね、普通の料理人でしたら私達の前でこの様に落ち着いて料理を支給出来ませんわ、」

「陛下、弟の指導の賜物で御座いますわ、」

「マリーさん私の事はカナリザでお願い皆もよ、

 この様な席で堅苦しいのは無しよ、

でも皆がそこまでお気に入りの童に私も早く会ってみたいわ、」

カナリザが話す隣りでシーアは黙々とキッシュを食べながら、

 「カナこんなに美味しい料理が冷めてしまうわよ、後この匂いは何かしら?」

周りを見渡すシーアに、

「シーア様これは賄いのカレーの匂いですわ、」

とマリーが答えると同時にホールの隅のテーブルで座っていたリンとゴースロの侍女の所に大きなハンバーグが乗ったカレーを運んで行き侍女長が、

 「お疲れ様です、こちらは当家使用人の賄いで申し訳ありませんがどうぞ、」

リンと侍女はそれぞれの主人の方に顔を向けるとローザンヌは、

「リン衛士とても美味しそうじゃない、私達の事は良いから二人共頂きなさい、」

ローザンヌの言葉にリン達は一礼するとカレーを夢中で食べ出す、

 驚いたのはゴースロの侍女が体つきとは似つかわしくないスピードで食べて行く、」

 そんな二人を見ていたカナリザ

 「この匂い堪らないわね、

 ねえ料理長殿あの料理は穀物にスープがかけてあるのかしら、」

「はい、お客様にはお出し出来ない当家の賄い料理で御座います、」

「それは私達エルフでも食べられる物なの?」

「はい、ラン様の大好物で御座います、最近はいつもきの子カレーを食べて行かれます、」

その時調理場の奥からガッシャンと倒れる様な音がしてロックが慌てた声を出している、

 「失礼いたしました、料理の続きを直ぐに、」

と一礼して入れ替わりに侍女が小鉢に入った料理を持って来る、

 「そう言えば孫娘の姿が見えないわね、」

「そう言えばそうね私達と一緒に入って来たはずなんだけど、」

 マリーが、

 「シーア様はラン様のお祖母様で御座いますか?」

「娘が嫁いだファンファン家の一応姫ね、剣姫なんて言われているわね、

 でも婿殿にターナス殿下が、模擬試合で剣姫が童に敗れたと言われていたわね、」

シーアの隣りのテュレイカが、

 「ええ、私も見ておりました、ランもですが童の強さは常人では有りませんわ、」

話している所に次はキャスターの上にじゅうじゅうと鉄板の上で焼けるステーキが出て来て、ローザンヌとマルティンの前におかれ、

 「ワイバーンの特上霜降り肉のステーキでございます、エルル様特製のタレがかけて御座います、」 

マルティンの目はレアな焼き加減の霜降り肉に釘付けで、震える手でホークとナイフを使い一口食べると、

 「幸せ!」

そしてカナリザの前にもじゅうじゅう焼ける肉のステーキが出され、

 「大豆のステーキで御座います、薬味に白婦人脚を擦り下ろした物にポン酢と言うソースがかけて御座います、」

「これが豆料理ですって!お肉にしか見えませんわ!」

 カナリザが隣りを見ればシーアとテュレイカが夢中で大豆ステーキを頬張っている、

 カナリザも一口口に入れ体験した事の無い歯応えと、薬味の効いたポン酢の味に、

 「何て料理なの、私達エルフが長年研究した食事の先を行く料理だわ、」



食事も終わり今テーブルの上には美しいカップに入ったお茶が出され、皆が食べた食事の事で大いに盛り上がっている、

 そこにまた白磁の器がおかれ料理長とロックが赤ベリーが沢山乗った白い大きなホールケーキを持って来て先ずロックがケーキをカットしてローザンヌとマルティンの前に出す、

 料理長も同じくケーキをカットしてカナリザの前に置き、

 「今お出ししたのはエルル様がお作りになった外国の言葉でいちごのショートケーキと言うケーキだそうです、

 二つのケーキは同じ様に見えますが材料が全く異なる物でして、

 エルフの方々にも安心して食べて頂けるそうです、

 カナリザとシーアは頬を押さえながらケーキを食べ、

 マルティンは、 

 「お代わりを頂けるかしら、」

とお代わりを頼んでいた、

食事会も終わりに近付いた時料理長が、

 「シーア様は氷結魔法をお使いになる事が?」

「ええ料理長殿何故です?」

「良かった残ったケーキに氷結魔法をかけてお土産にする様にエルル様から言付かっていまして、」

「素敵!そんなお仕事だったらどれだけでもこなせるわ!」


そして食事会がお開きになり、

 ローザンヌが、

 「マリーさん今日はありがとう、今日のレシピを城の料理長に送ってくださらないかしら、」

「はい、承りました男爵様も休みの時によくお出でになって見えますので、料理長に伝えておきます、」

 ケーキの箱を大切そうに抱えたマルティンが、

 「マリーさん必ずまたお茶会に呼んで下さいませ、今日はご馳走様でしたエルルとイオに宜しく、」

と軽く膝を折って挨拶して侍女と共に帰って行く、

 ローザンヌの所に来たリンに、

 「リン衛士貴女女官達が先生と仰ぐエルルの弟子のイオの姉じゃない!」

「えっ!殿下今更で御座いますか、」

「髪の色は違うけどよく見たら貴女の瞳もアルマンの瞳の色ね、」

「イオは母方の祖母の若い頃にそっくりだそうです、」

「マリーさんイセリナさん話がそれてごめんなさいね、今度は私がお茶会にお誘いするわ、

 でその時にお土産でケーキを持って来て頂けると嬉しいわ、」

と悪戯ぽく笑いリンを連れて帰って行く、

 最後に残ったカナリザ達が、

 「素晴らしいお料理でした、私も早く童に会ってみたいわ、

 それと私もランの様にこっそりお邪魔しても宜しいかしら、」

「カナリザ様勘弁して下さいませ、貴族の方々でしたら対処も出来ますが、皇族の方々となれば使用人達が倒れてしまいます、」

カナリザの隣りでシーアが、

 「あらカナ可愛そうに代わりに私がランと一緒に公爵家にお使いに来ますわ!」

「ずるいわシーア!ってラン?貴女何処から出て来たの?」

「さて陛下私はずっと警備しておりましたが、」

シーアが、

 「あら、ラン頬にケーキのクリームが付いているわよ、」

 慌てて頬を拭うランに、

 「貴女今日調理場で何を食べていたか教えて貰うわよ、

 それと服の中に隠している包みもね、」

と笑いながら帰って行くファーセルの者達を見送ったマリーはテーブルに突っ伏す、

 侍女長が、

 「奥様お疲れ様でございました、

 奥方様もありがとうございました、」

「私は何もしていないわ、マリー様お疲れ様、」

「もうエルルのいない時のお茶会は懲り懲りですわ、なんだかお腹が空いてしまったわ!料理長賄いのカレーは残ってる?」

「はい、奥様ここにいる全員分御座います、」

「流石ね料理長、では皆で美味しいカレーを頂きましょう、」







 「と言う事がギルガス家であったのよ、」

とスパロン家の屋敷に帰って来たイセリナに今日あった事を延々と聞かされるローレンスであった。

 



 




 




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