小さな家族が増えちゃいました。
宜しくお願い致します。
第四十話
小さな家族が増えちゃいました!
「エルル凄いわ!うちの馬車が全然揺れないわ!」
「ミルル姉様あの揺れだとお尻が痛くなっちゃいますよ!」
「ふふ、そうねお尻は大事よね、」
ミルルの怪しい笑みにエルルはとっさにお尻を手で隠す、
「エルル大丈夫だってば、」
とミルルは笑いながら隣に座っているエルルに抱き付いていると馭者席の小窓が開き、
「姫様馬車を停止させます、」
と言って馬車を端に寄せて停車する、
「何かあったの?」
「騎士団の騎馬が向かいから来ます!
赤母衣付きです!」
直ぐに騎馬が近づく音が聞こえやがて馬車の横で馬の嗎と共に、
「馬上より御免!ルコル家の馬車とお見受けする、乗ってお出での方は?」
ミルルは窓から顔を出し、
「魔導師団団長ミルル!」
「至急王城に登城されたし!先導致します!」
「承認!聞いての通りよ、騎馬の後を追ってちょうだい!」
「ミルル姉様何かあった様ですね、」
「至急だなんて何だか不味そうね、エルルちょっと付き合ってくれないかしら、」
「構いませんが外国人の僕が王城に入っても良いのですか?」
「ルコルの者だもの大丈夫よ!
あとあちらに着いたらシャルルを迎えに行ってくれないかしら、」
「ちょっと待ってて下さいね、」
と言ってエルルは耳のイヤリングに手を添えた。
シャルルが出かける支度を済ませると
「シャル綺麗じゃない、」
と特攻服に着替えリリルと共にお茶を飲んでいたリリカが声をかける、
「はい、イオさんのお化粧は凄いです!
リリカ様もブリネンに帰られたら陛下が驚かれますよ、」
「私の事を見て娘が何て言うのか少し楽しみにしているよ、」
部屋に着替えに行っていたイオがジャージ姿で耳に手を添えながら居間に入って来て、
「シャルルさん、今エルルさんから連絡が来ていてブリネンで何かあったみたいです、
エルルさんシャルルさんのお姉さんと王城に向かっていてシャルルさんに王城へ来て欲しいそうです、」
ブリネンでとのイオの言葉にリリルが、
「お姉ちゃん帰った方が良いんじゃない?何も無ければ直ぐエルルに送って貰えば良いし私も久しぶりにブリネンに行きたい、」
「シャル、私とリリルを連れて飛べそう?」
「はい大丈夫ですよ、この腕輪魔力全然減らないんですよ、この魔石とんでもない量の魔力を貯めておけるみたいです、」
イオは三人の話を聞きながら、
「エルルさんリリル様とリリカ様もシャルルさんと共にそちらに向かわれるそうです、
私も向かった方が良いですか?
はい、了解です!」
シャルルは話し終わったイオに、
「イオさんエルルさんは何て?」
「ミルル姉様に伝えますだそうです、
私とカレンさんは予定通り屋台を出して欲しいと言われました、」
エルル達が騎馬に続き王城の門を潜り馬車寄せに停まるとミルル姉様と同じローブを着た男の人と高価そうな鎧を着た騎士さんが立っていて、
馬車を降りるミルルに、
「団長お父上様が大変な時にすいません、」
「良いのよ副長、で何があったの?」
とミルルの問いかけに鎧の騎士さんが、
「ミル、ウェーイズの森から魔物達が溢れ出しているそうだ!
今は領の騎士団と冒険者達が森近くの港町を守っているそうだがあとどれだけもつかわからん!
最悪町の防壁の中に籠城して応援を待つ事になる、
これから対策会議が開かれる、」
「分かったわポール、騎士団で応援部隊を集められるだけ集めてちょうだい!副長うちもよ!」
「ミル、ウェーイズ近隣の領の騎士団ならともかく今ここで集めて何になる?」
「説明してる時間が惜しいわ!手配を!」
王城にある魔導師団の事務所にシャルルが転移して来ると、
「あれ隊長?特務と任務中では?
って後ろの方達は?」
「説明はあとよ!直ぐに近衛を呼んで来て、
貴方は上皇陛下に椅子の用意を!」
シャルルの言葉に呆けていた魔法士達が一斉に片膝を付き頭を下げる、
「突然ごめんなさいね急遽休暇から帰って来たの、
何があったのか分かりませんが皆自分達の仕事に戻りなさい、」
リリカの言葉に魔法士達はもう一度頭を下げ仕事に戻って行く、
シャルルが自身の部下に、
「何が起こったの?」
「詳しくは聞いていませんが、
ウェーイズの森から魔物が溢れ出しているそうです、うちの隊の者も情報収集と連絡の為に彼方に飛んでいます、
副長は団長の代わりに対策会議に向かわれました、」
「承認!直ぐに団長も合流されると思うわ、」
部下と話すシャルルの所に、
「シャルル何だい僕達近衛を呼び出すなんて僕達は忙しいんだよ、
って言うか後ろの珍妙な二人は何?
笑えるんだけど、」
近衛の男の言葉に部屋の中が一瞬で凍り付く、
座っていたリリルが、
「ぷっ!何だいお姉ちゃん今のブリネンの近衛はこんなにチャラいのかい、
私ん所だったらボコるわ!」
と笑いながら話すと、
「リリルそれあの絵物語の台詞でしょ、でもこの様な言葉をかけられたのは初めてよ、」
シャルルは近衛の男を憐れみながら、
「貴方これからは強く生きて行くのよ、
さあ上皇陛下を陛下の所までお連れして、」
エルルはミルルの後に付いて歩いているとポールと呼ばれた騎士さんが、
「でミルどうしても気になるのだが、
その娘は誰なんだ、」
「この子はルコルの至宝、私の身内よ今は外国で暮らしているの、
たまたまこちらに来ていたから助力をお願いしたの、」
「ミル助力って?」
「ちなみにこの子は当代の剣聖様よ、」
「ちょっと姉様!僕は魔法の方が得意なんですってば!」
「はいはい、わかりました行くわよ私の可愛いい剣聖様、」
もう!っとエルルは頬を膨らませながらミルルの後に付いて行き突き当たりの大きな扉の前に立つ衛士に、
「魔導師団団長ミルル、」
と告げると衛士さんが重厚な扉を開ける、
エルルとミルルの会話を聞いて固まっていた騎士さんも慌てて、
「騎士団団長ポール、」
と告げエルルの後から入って行く、
会議室の中はすでに偉そうな人達が座っていて入って来た見慣れぬ少女に注目している、
そんな中一番奥に座る女性が、
「魔導師団長お父上様はいかがです、」
「陛下御心配をおかけしました、
無事治療も終わりまして今は安静にしています、」
「それは良かった宰相も心配していましたよ、
で皆の代表で尋ねるがそちらの娘は何方か?」
「私の身内、ルコルの者にございます、たまたまこちらに来ておりましたのでこの度の件の助力を願いました、」
ミルル姉様が話終わると部屋の影からすっと出て来た男が女王様に耳打ちをする、
女王は一つ頷くと
「そちらエルルさんで良かったかしら、母がお世話になっているそうね、」
「初めまして女王陛下、私はエルル・ルコルと申します、
上皇陛下は私の養母の叔母上様にございます、」
エルルの言葉に部屋の中でどよめきが起こる、
宰相がその場を鎮めようとした時、
部屋の扉が開き毒でも飲んだのじゃないかと思うくらい顔色の悪い衛士さんが入って来て、その後に見た事のあるサングラスに特効服姿の二人が入って来るのを見たエルルは思わず吹き出してしまう、
その場は先程のどよめきが嘘の様に静まりかえり皆おかしな格好の二人に注目している、
顔色が悪い衛士さんが部屋の壁側に立っていた侍従に耳打ちをすると侍従達は慌てて女王の背後に椅子を用意して
姐様達が侍従に案内され女王の後ろまで来ると、
「遅れてごめんなさいね、急遽休暇から戻って来ました、今は私達の事よりウェーイズの事よ、」
と言いながら二人は椅子に座る、
「母様!色々伺いたいのですが後に致しましょう、では宰相、」
宰相と呼ばれた人が、
「はい、今ウェーイズの森の入り口付近に領騎士団が防衛陣を冒険者と共にしいていますが魔物の数によっては守りきれなくなります、
この場合は近隣の港町の防壁の中まで下がり籠城して応援を待つ事になります、
今魔導師団の飛べる者に近隣領に応援要請を伝えに行かせておりますが、
応援には数日かかると思われます、
もし他に良策があるようでしたらお聞かせ願いたい、」
宰相の説明を聞いたミルルが挙手し、
宰相が頷くのを確認したミルルは、
「時間が惜しいので簡潔に説明させて頂きます、
うちの転移が出来る者に、ウェーイズの防衛陣の所までエルルを連れて飛ばせます、
幸いウェーイズの森は学園出身の者なら魔物討伐研修を受けていますので防衛陣まで直接飛ぶ事が出来るでしょう、
後はエルルがこちらに戻り次第待機させている騎士団と魔導師団を送ってもらいます、
宰相閣下時間がありませんご決断を、
」
ミルルの案に部屋の中が再びどよめく、そんな中女王が立ち上がると、
「此度の指揮は騎士団団長が努めよ!
参謀は魔導師団団長とする!
勅命である!直ちにかかるが良い!
」
ミルルとポールは立ち上がると胸にてを当て一礼する、
「じゃあエルルいくわよ!」
「はい、でもちょっとだけ待って下さいあそこにいる僕の姉様が多分付いて来ますので、」
とエルルはリリルに手を振ると
リリルは、
「じゃあお姉ちゃん私も行って来るよ!」
「エルルが一緒なら大丈夫だと思うけど気を付けて行くのよ、」
「お姉ちゃんの娘が見れて良かったよ、」
と手を振ってエルルの所に歩いて行った。
エルル達が城の中庭までくると騎士団員と魔導師団員が整列していてポールが、
「でミルどうするのだ?」
「まずは妹と共にエルルに飛んで貰うわ、シャルル小隊長前に!」
魔導師団の列の中からシャルルが走って出て来る、
「勅命です!エルルを連れてウェーイズの防衛陣まで飛びなさい!」
ミルルの命令に、
「承認!エルルさん行きますよ!」
「はい、姉様も一緒にお願いします、」
次の瞬間三人は転移して行き直ぐにエルルが現れ大きなゲートを開き、
「団長様!防衛本部前に繋がっています、皆さんそのままゲートに入って下さい、」
「夢でも見ているようだが、では隊列のまま前へ進め!」
「魔導師団も続け!」
ウェーイズの防衛陣ではいきなり現れた大援軍に本部に詰めていた領の指揮官が口をパクパクさせている、、エルルと殿で入って来たポールは指揮官らしき者に、
「私はブリネン騎士団団長ポール!
陛下の勅命により指揮を仰せつかった、こちらは魔導師団団長ミルル今回の作戦参謀だ、
先ず状況を説明せよ!
その後防衛陣の再編成を行う!」
「はっ!斥候の報告ではワイバーンの大規模な群れが暴れていまして追われた魔物が森から溢れ出しています、
ワイバーンの中には特殊個体も見られたとの報告も入っています、
今は溢れる魔物を防ぐのが精一杯の状況で森の中は手が付けられません、」
「承認!では各隊長に伝える!
各隊所定の位置に付き領騎士団と共に防衛戦の強化、
魔導師隊は後方より援護を、
あと両団精鋭部隊は私と共に森に入りワイバーンを討伐本部指揮はミルル団長とする!」
エルルの所まで来たシャルルとリリルが、
「エルル聞いたかい!ワイバーンの群れだって!」
「聞きましたよ姐様!お小遣いを稼ぐ大チャンスですよ!」
シャルルがそんな二人に、
「お二人共目が金貨になってますよ、」
と狩る気満々の二人に突っ込む、
「シャルルさん僕達団長さんの所に行って来ますね、シャルルさんはミルル姉様と本部でお留守番ですよ!」
森の中に入る精鋭部隊がポールの指揮で森から溢れる魔物を狩ながら森に入って行く、
最後尾のポールの所にエルルが来て、
「団長様、僕達今は冒険者なので自分で狩ったワイバーンは貰っちゃっても良いですよね、」
とリリルと共に金貨の目をしたエルルが首から下げた冒険者カードをみせる、
「ルコルの姫様達か姉上様の方も規格外の様だな、
当代の剣聖様の力を見せて貰おうか、」
「もう!僕は魔法使いなんですよ!」
と言いながらエルルは五月雨丸をだす、
エルルの隣ではリリルが秋桜を出し、
「じゃあウォーミングアップに露払いをしようかね、
隊長さん威圧を使うから、気をしっかり持ってな!」
エルルは慌てて大きな声で、
「皆さん!凄い威圧が来ますよ!気をしっかり持ってないと倒れちゃいますよ!」
リリルは先頭で魔物を倒しながら進む騎士の横に並びすぅーと秋桜を鞘から抜き構えると同時に向かって来る魔物に威圧を放つ、
途端魔物達は止まり動けなくなる、
「鳴け!秋桜っ!」
リリルが刀を一閃すると爆発的な衝撃が魔物達を襲い、
同時に巻き上がった砂埃が晴れると、
森の中まで道が出来ていた、
エルルがリリルの隣まで来て、
「もう、姐様やりすぎですよ!
でも夕方には帰りたいのでぱぱっと済ませちゃいましょう、」
と一瞬で二人は森の中に消えて行った。
ナハリの広場では今日も大勢の者達が集まり八つ焼の屋台が出来るのを待っていた、
イオがカレンと何時もの場所に着くと、
「あれ嬢ちゃん今日は二人だけか?
あの黒髪の魔法士の子がいねえなら今日は休みなのか?」
「ちゃんと店をだしますよ、
今日は他にも仕事があって私達だけなんです、」
と言ってイオは何時もの場所に今日はお好み焼き屋さんと描かれた屋台をだす、
「うお!嬢ちゃんも凄え魔法士様だったんだな、
えっ!お好み焼き屋?八つ焼きじゃねえのか?」
「はい今日はお好み焼きです! とっても美味しいんですよ、」
集まっていた客達はイオが出した屋台を見て戸惑っていると八つ焼きを最初に買った勇者のおっちゃんが、
「よし!姉ちゃんそのお好み焼きってのも俺が一番に食べようじゃねえか!」
「ありがとうございます、森豚と玉子が入った豚玉と、ゲソと玉子のゲソ玉は各銅貨五枚です、
森豚とゲソが両方入ったミックスは銅貨七枚です、」
「おう、じゃあ豚玉とゲソ玉を一つづつ貰おうじゃねえか、」
「ありがとうございます、銅貨十枚です、」
と言って厚紙に入ったお好み焼を渡す、
おっちゃんは渡されたお好み焼きにかぶり付くと、
「これも無茶苦茶旨えじゃねえか!
ミックスってのも追加だ!」
「ありがとうございます銅貨七枚です、」
気付けば我も私もといつもどおり長蛇の列が出来ていて作り置きのお好み焼きがどんどん売れて行く、
「わっ!カレンさん列の最後尾にこの看板を置いて来て下さい!
お好み焼きもうすぐ無くなっちゃいます!」
カレンが慌てて看板を立てるとこれから並ぼうとした客らが残念そうな顔をしながら他の屋台の方へ向かって行く、
「イオさんあっと言う間に売り切れてしまいましたね 、
もう少し多目に作った方が良いのでは?」
「この位で丁度良いと思いますよ、買えなかったお客さんは周りの店で買い物をします、」
「あっ!なるほど他のお店の事を考えてこの量なんですね、」
「はい、もう少ししたら調理ギルドからケーキの様に八つ焼きとお好み焼きのレシピが公開されると思いますよ、
今は宣伝みたいな物だと思っています、」
とイオは話しながら屋台を片付けているとお店を見守ってくれていた騎士さんが、
「お疲れ様でしたイオ様、今日エルル様は?」
イオはぱたぱたと手を振り、
「様付けは辞めてください私達同僚じゃないですか、
こちらはカレンさん私と同じ辺境伯付きです、
今日 エルルさんは別件で出かけているんですよ、私達は帰りますありがとうございました、」
と騎士に告げカレンも騎士に頭を下げ市場の方に帰っていった。
「姐様今何匹狩ました?」
「さあ最初の十匹くらい迄は数えてたんだけど面倒くさくなって数えてないね、
もうほとんど狩っちまったんじゃないかい、残りは特殊個体ってのだけかい?」
「ちょっと索敵をかけてみますね、だいぶ森深くまで入って狩ってますのでほとんど狩っちゃったと思いますが、」
と言ってエルルは一瞬目を閉じ、
「姐様西の方角に二匹いますお願いしても良いですか?
「僕は北にいる一匹を追いますその先に気になる反応がありましたので、」
「わかったよ!早く片付いたらそっちに向かうよ、」
「お願いします姐様!」
と言い残してエルルは北の方角に向かい矢の様な勢いでかけていく、
「ピィー!ピィー!」
「鳴き声?あれは!」
エルルは巨大な赤いワイバーンに襲われていた小さな生き物に慌てて結界を張る、
結界に阻まれ怒りでグァアーと吠えるているワイバーンの首をエルルは背後から五月雨丸でスパッと一閃するとそのままワイバーンの首がゴロリと落ちワイバーンが横たわる横を抜け結界まで掛けて行き中を覗きこんで、
「かっ、かわええ!えっ、何これ、」
エルルの目が紫色に変わり、
[シルバードラゴンの幼生体] [雌]
シルバードラゴンって女神の使で白竜って呼ばれる神龍種だったよね、
めちゃめちゃ可愛い!
竜の子のつぶらな瞳には紫色の瞳のエルルが映っていて、
「キュゥー、キュゥー」
と鳴いている、
「おいで!」
とエルルが手を伸ばすとよちよちと歩いて来てエルルの手前まで来るとふわっと浮き上がり腕の中に飛び込んで来る、
「ピィー!ピィー!」
と鳴いて頭を擦り付けて来る竜にエルルは例の栄養入り特製角砂糖を砕き竜に食べさせると竜はもっと頂戴どばかりに、
「クゥー、」
と鳴く、うわぁー癒されるエルルは角砂糖のかけらを与えながら、
「ねえ君、僕の家に来るかい?」
竜は首を傾げその後、
「キュイ、」
とまるで応えた様に鳴く、
「じゃあ今から君は僕達の家族だよ、
そうだ名前を付けないとね、
君には皆が癒されそうだから、
前世の漢字の癒しをゆと発音して、
音を被せユユ、君の名前はユユだよ、」
とエルルは言いながらユユとオーライドの文字が入ったタグ付のミスリルのネックレスをユユの首にかける、
「ユユ似合ってるよ!かわええ!」
「キュゥー!」
エルルがもう一度ユユのステータスを確認すると、
[名前 ユユ] [称号 御子のペット]
[種族 神龍種シルバードラゴン(幼生体)]
[性別 雌]
[備考 ちゃんと面倒みるのよ]
エルルは目を閉じ、ふぅーっと息を吐くと、
見なかった事にしよ!
エルルはローブの裏側にちょちょいと大きなポケットを作り、
「さあユユ、このポッケに入って!お家に帰るよ!」
エルルがローブを開き待っているとユユはぽてぽてとポケットまで這い上がって来てすぽっとはいり、
「ピィー!」
と鳴く、ローブの前を締めるとエルルはワイバーンの特殊個体と首チョンパした首を収納して森の中を戻っているとローブの中が気持ちが良いのかユユは眠っちゃってるみたいだ 、
途中合流した姐様に、
「姐様そっちはどうでした?」
「ああ、二匹とも仕留めてきたよ、
でエルルの方はやっぱり特殊個体だったのかい?」
「立派なワイバーンでしたよ、最高級な霜降り肉が食べられそうです!」
「それは楽しみだねえ、でそのお腹はどうしたんだい?」
「お腹が空いたのでお昼を食べすぎちゃいました、」
と顔を背けわざとらしく応えるエルルに
「何隠してんだい!」
「かっ帰ったら話します、あっ隊長さん達ですよ!」
と言ってエルルはポールの所に走って行き、
「団長様お疲れ様です、ワイバーンの暴れていた物は全て狩ました、もう大丈夫だと思いますので陣に戻りましょう、」
「姫様達本当に凄いな俺達要らなかったんじゃないのか?」
「何言ってんですか団長様、僕達はワイバーンを狩っただけで実際魔物を防いでいたのは団長様達騎士団の皆さんじゃあないですか、
早く陣に帰ってミルル姉様に報告しましょう、」
騎士団が作戦本部に戻る頃には森の浅い所にはほとんど魔物はいなくなっていて本部に帰るとミルルが、
「お疲れ様、森から出て来る魔物がほとんどいなくなったから防御陣を森の中まで押し上げて浅い所の魔物は全て狩っておいたわ、
今冒険者達が魔物の処理をしている所よ、」
「承認、こちらも魔物を森深くまで追い返した、
それにしてもルコルの姫様達はとんでもないぞワイバーンを全て狩ったらしい、」
と伝えポールはエルル達の方を見ると領騎士団の代表にワイバーンの特殊個体の頭部を渡し、
代表はぺこぺこ頭を下げていてこちらに気付くと副官と共にポールの前まで来て、
「団長様、この度の王家よりの応援心より感謝致します、
また不在の領主に代わり重ねて感謝致します、」
「その言葉間違いなく陛下に伝えよう、」
ポールが挨拶している隣ではミルルがシャルルと共に騎士団と魔法師団を整列させている、
エルルはリリルに、
「姐様先に戻っていて下さいイオさん達も戻っていると思います、
僕は近くの港町で魚を買ってからルコルの本家に寄ってお父上様を見て帰ります、」
と言ってエルルがゲートを開くと
「じゃあ先に戻ってるよ、であんたさっきからお昼食べたものがもぞもぞお腹で動いてるよ、」
とニヤニヤしながら手を振りゲートの中に入って行った、
ミルルがエルルの所まで来て、
「エルル準備が整っているわ、皆を送ってくれる、」
「はい姉様僕はお父上様の所に戻ります、」
と言ってエルルは騎士団の前に立つポールの隣まで行きゲートを開く、
「ルコルの姫様世話になったな、今度剣の指導をしてくれないかラルル様は俺達騎士団の憧れなんだ、」
「団長様ブリネンの騎士団の皆さんはとてもお強いですよ、
私の時間がある時にいずれ、」
とエルルが伝えるとポールは一度頭を下げゲートの中に入って行く、
「エルルありがとう私達は帰って陛下に報告を行うわ、父様を宜しくね、」
「エルルさんまた後ほど、」
エルルはシャルル達を見送った後近隣の港町まで行きそこで見つけた前世の鮭やイクラ、ウニなどに大喜びし大量に買い込んでからルコルの家に転移した。
女王の執務室で女王リリア、夫の宰相チャーチル、上皇リリカが応接用の椅子に向かい合って座り、
「母様人払いはしましたわ、
で一体あの黒髪の女性は何方かしら、ミルルが連れて来た剣聖の孫と感じが似ていましたが母様の事をお姉ちゃんなどと呼んでいましたね、」
「ええ、あの子は私の妹のリリス オーライドの皇太后様よ、」
「母様あの方が叔母上?どう見ても私より若く見えましたが?」
「私も最初妹と気付かなかったわ、髪や瞳の色を変え変装してたからね、」
「幻術の類いなのですか?」
「いいえ魔法ではないわ、髪を染めて目に入れる色の付いた眼鏡の様な物を入れているそうよ、」
「幻術でないのなら叔母上はまるでエルフの様ですわ、」
リリカは真っ直ぐリリアを見て、
「あの子はハイヒューマンなの、そして戦乙女の称号を持っているそうよ、
私達のご先祖様と同じギフトね、
エルルはリリスが先祖返りしたんじゃないかって、」
「なんと、お伽話かと思っていました、叔母上はギフトを隠されオーライドに嫁入りされたのですか?」
「いいえ、皇太子を出産した後に種族と称号が変わっていたそうよ、
そしてその秘密は王族と極一部の者達で守られ表向きリリスは崩御した事になっていて今はリリル・ルコルと名乗りエルルの叔母として魔の森深くで暮らしているのよ、」
「あのエルルという剣聖の孫も常人ではありませんね、」
「ええ、リリスと同種いえそれ以上の存在ではないかしら、」
今までじっと話を聞いていたチャーチルが、
「陛下、雰囲気と言うか感じが変られましたね、その衣装はオーライドで流行っているのですか?」
「あなた雰囲気だけじゃないわ、髪や肌も叔母上程ではありませんが美しくなられてるわ、」
「ふふん、そうかしらエルルの弟子が綺麗にしてくれたのよ、
ずっと悩んでいた酷い癖毛もこの通りよ、」
と自慢げに髪をすいてみせる、
コンコン、と扉がノックされ、リリアが、
「人払いをしたはずよ、如何した?」
扉の向こうから、
「はっ!団長達がウェーイズの森から帰還致しまして報告に来ております、」
団長達の思いの外早い帰還にリリカ以外は驚き、
「良いでしょう入りなさい、」
開いた扉からポールとミルルが入って来て二人共片膝を付き、
「騎士団団長ポール、魔導師団団長ミルルただ今ウェーイズの森より帰還致しました、」
「ご苦労様でしたね、であちらは?」
「はっ、森より魔物が溢れた原因は大規模なワイバーンの群れが暴れていまして、そのワイバーンを討伐し、
森の浅い所の安全を確保致しましたので我々は撤収致しました、
また領騎士団の代表より王宮への感謝の言葉を預かって参りました、」
宰相チャーチルが、
「ブリネンが誇る騎士団ならびに魔導師団の強さを疑ってはおらぬが溢れ出す魔物を狩ながら、ワイバーンの大規模な群れを狩る事などこの様な短時間で成し遂げるとは、」
一歩前に出たポールが、
「宰相閣下ワイバーンの群れは全てルコルの姫達が狩ってしまいました、
二人共強さの次元が違います、
一緒に森に入った精鋭部隊の者達には口止めしておきましたが、
実際話した所で誰もその様な話を信じますまい、」
隣に立つミルルも一歩前に出て、
「各隊の隊長達に今回の報告書を書かせています、明日には文務の方に上がるかと、」
「二人共ご苦労、下がって部下達をねぎらってくれ、」
ポールとミルルが頭を下げ部屋から退出しようとするとリリカが、
「ミルルエルルとリリルはどうしたの?」
リリカの問いかけにポールはもう一度頭を下げ部屋を出て行きミルルは、
「黒髪の女性はエルルが送っていました、エルル自身は父の所へ行くと言っていましたが、」
「分かったわ、じゃあシャルを私の所に来る様に伝えて、」
「母様、王族が私用で魔導師団の者をお使いになるのはお控えください、
貴族の者達への示しがつきません、」
ミルルはリリカに
「上皇陛下、シャルル小隊長には今日の件と昨日までの特務師団との任務に付いての報告書も提出させますので、
今日は本部から離れられないのではないかと思われます、
また明日からは通常任務に復帰させます、」
リリカは慌てて、
「待って!じゃあルコルの家に使いを出してエルルに私を迎えに来る様に伝えて頂戴、
今晩はエルルにお寿司と言う料理を食べさせて貰う事になっているのよ!」
「私が帰った時にエルルが居ましたら必ず伝えましょう、
ですが私も隊長達からの報告書をまとめた後ですので、」
「そんな!誰かルコル家に使いを!」
「母様!先程申し上げたばかりですよ、
ただあの娘には私が直接礼を言わねばなりません、後日正式な招待状を持ってあちらに飛んで貰って頂戴、」
「承りました陛下、あとエルルは男の子で御座います、」
「なんと、母様も知っていらっしゃったのですか?」
「もちろんよ、可愛くて仕方ないわ! でリリアこれから私をルコル家に送ってくれないかしら、」
言い合う母娘を他所にチャーチルが、
「ミル、ここからは身内の者として接してくれ、ターチルの尻の病はどんな治療をしたのだい?」
「叔父上もお尻の病でお悩みならエルルに紹介しますが、」
「彼女いや彼がターチルを治療したのかい?」
「はい、エルルは超高位の医者でもあり、超高位の治癒士でもあります、
父の病は完治いえ、エルルは根治と言っていましたわね、
根治とは悪い所の根元から治す事でしたか、」
「君はその治療を見たのかい?」
「はい、家族で見学させて貰いました、詳しくは明日直接父より聞いて下さいませ、」
とまだ言い合っている王族達に一礼してミルルは部屋から出ていった。
大公爵家にエルルが来るとサララが飛んで来て、
「エルル大丈夫だったの?魔物が氾濫した森に行っただなんて、」
「サララ母様ただいま戻りました、
僕は幼い頃から魔物に囲まれて育って来たんです日常業務みたいな物ですよでお父上様は?」
エルルはサララに手を引かれサロンに入ると、
「エルル君は凄いなあれだけ悩まされ続けた尻が嘘の様に治っている、
サララにどんな治療をしたのか聞いてびっくりしたがありがとう」
「安心して下さい ちゃんと治っていますよ、
で今日行ったウェーイズの森のお土産があるのですが、サララ母様ワイバーンを一匹そのままお渡ししても大丈夫ですか?」
二人と部屋の隅に立っていた執事さんとメイドさんまで驚いちゃってる、
「エルルワイバーンを狩って来たの?」
「ええ沢山狩れてラッキーでした、
ここでは出せませんので庭に出しましょうか?」
「じゃあちょっと見せて貰おうかしら モーリー庭に準備を、」
大公爵家の使用人さん達も皆庭に出て来てエルルが芝生の上ににゅっと黒光りした美しいワイバーンを出すと、
わっと歓声が上がる、
「エルル君この様な見事なワイバーンギルドで売ったらひと財産出来てしまうよ、」
「お父上様気になさらず、ワイバーンのお肉って凄く美味しいんですよ、何でしたら僕が解体をしちゃいますよ、
で僕がお肉を収納魔法で保管しておけばいつまでも新鮮なお肉のままで定期的に持って来ますよ、」
「じゃあエルルそうして頂戴、でも本当に良いの?」
「はい、では解体したら持ってきますのでその時大公爵家の皆さん全員でこの庭で焼肉パーティーをしませんか?
焼いたワイバーンのお肉をうちの秘伝のタレを付けて食べると最高なんですよ、準備は僕が全て行いますので、」
「素敵じゃない!楽しみにしているわ!」
「はい楽しみにしていて下さい、
僕はこの後約束がありますので帰りますね、」
「そう、それは残念ね」
「また直ぐにお伺いしますでは、」
と言ってエルルはその場から手を振って転移して行った。
「ただいまぁ!」
と居間に入って来るエルルに目を輝かせた三人が、
「さあエルル!隠している生き物を出しな!」
「わっ!本当だエルルさんお腹に何か入れてます、
生き物何ですか?」
「見てごらんもぞもぞ動いているだろう、」
エルルのローブの膨らみに注目する三人の前でエルルはローブの前を開き、
「ジャァーン!新しい家族が増えちゃいました!」
と内ポケット見せるとユユがひょっこり首を出し、
「ピィー!」
と一鳴き、
「「キャァー!可愛い!!」」
次回は特別編になります、
ありがとうございました。




