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ナハリ良い所一度はおいで!

宜しくお願い致します。

第三十六話



ナハリ良い所一度はおいで!



「昨晩わりと早い時間にナハリの領都にある公爵家の屋敷に着きましたよ、夜だったのでしっかりとは見えませんでしたが、海の香りがしていました、」

「エルル、あんた海に行った事が無いのに海の香りが分かったのかい?」

リリルの突っ込みに、

そう言えばこの世界で海に行った事が無かったな、まあここは、

「はい、嗅いだことの無い匂いがしましたのできっと海の香りだと思っただけなのですが、」

「私は島国生まれだからね、海の香りが懐かしいよ、エルル用事が終わったら私もナハリに連れて行っておくれ、

ナハリか、懐かしいねぇ、ナハリ港はオーライドの海の玄関で、私が嫁に来た時も海洋国家のブリネンが誇る北海の女王号でナハリにやって来たのさ、

その時のナハリ領民の歓迎ぶりには感動したねえ、今は亡き先先代の公爵が出迎えてくれたよ、」


と、懐かしそうにナハリの思い出を語るリリルに、

「姐様、イオさんと済ませたい用事が終わったらナハリにお連れしますよ、

まあ僕達が一度彼方に行けば何時でもいけますが、用事を済ませてから皆んなで海を楽しみましょう、」

「楽しみにしているよ、

で食事が済んだら出発するのかい?」

「はい、睡眠も取れましたのでこのまま出発しようかと、」


居間のテーブルで話すエルルの所にイオとカレンが朝食を運んで来る、

エルルはカレンから朝食が乗ったトレーを受け取りながら、

「カレンさんこちらの生活には慣れましたか?」

「はい、驚く事ばかりですが、夢の様な生活をさせて頂いています、」

「ちょくちょく帰って来るとは思いますが、姐様の事を頼みますね、」

「あと、姐様狩は程々にして下さいよ、ポーチの中に首ちょんぱされた大牙虎が入っていた時には倒れそうになりましたよ、」

リリルはエルルから目を外らせながら、

「まさかこのポーチがエルルやイオと共有しているとは思わなかったからほとぼりが冷めるまでポーチの中に隠しておこうと思ってたんだがねえ、」

「姐様とカレンさんのポーチは僕とイオさんの共有しているアイテムボックスに繋がっています、

緊急の時などは手紙を書いて入れて貰えば僕かイオさんが気付いてすぐ内容を確かめる事が出来ます、

その為の共有なんです、」

「成る程、どれだけ離れていても直ぐに連絡が取れる訳ですね、」

「はい、カレンさんよろしくお願いしますね、」

「なんだいエルル、カレンだって赤毛熊を狩ってたじゃないかい、」

「はいはい、お二人共狩には気を付けて下さいね、

イオさん準備はオッケーですか?」

「はい、いつでも行けますよ、」




エルル達がナハリの公爵家屋敷の裏門前に転移して来るとイオが、

「わっ!なんだか独特の香りがしますね、」

「ええ、きっと海の香りですよ、港町でもありますから、」

などと話ていると裏門の詰所から騎士さんが出て来て、

「お嬢ちゃん達、公爵家に御用かな?」

背後から騎士に声をかけられた二人は振り向いて、

「私は公爵家執事見習いのエルル・ルコルです、こちらはナタリア様付きのイオ・タリスマンです、

休暇でこちらに来ましたので、代官様にご挨拶に参りました、

またエドモンド様より、代官夫人様への書状も預かっています、」

エルルの挨拶を聞いた騎士さんが気をつけの姿勢をとり、

「失礼しました先生、代官夫人より伺っております、それに団長や同僚からの便りで先生達の事はこちらでも噂になっていますよ、」

「先生なんて辞めて下さい、同じ公爵家で働く同僚ではないですか、」

「いえ、団長は僕の伯父にあたる者でして伯父の身体を治して頂いて本当にありがとう御座いました、

直ぐにご案内いたしますこちらへ、」


と騎士さんに手を引かれて屋敷の中に案内される、

騎士さんが歩きながら話てくれるには、

お屋敷には執事は居らず代わりに代官の元で仕事をする文官が数人居るそうだ、

メイドさんはちゃんと居ますよと言っていたよ、

騎士さんが扉をノックした後、

「ルチア様、エルル先生がお着きになりました、」

かけられた言葉に応える様に扉がメイドさんによって開かれ中から、

「入って頂いて、」

と声がかかる、

エルルが失礼しますと、中に入ると執務机の向こう側にマリー様位の女性が立っていて、

「ようこそナハリへエルル様、アルク様より連絡を受けています、

私はナハリ代官ストーキンの妻 ルチアで御座います、」

「初めまして代官夫人様、エルル・ルコルと申します、こちらは私の弟子のイオ・タリスマンです、あと私は公爵家の使用人ですので、様付けは勘弁して下さい、

あとエドモンド様より夫人様宛に書状を預かっています、」

と言って書状を渡す、

夫人は失礼しますと書状を一読した後、

「エルル様は先代様の御養子様で御座います、まして今は休暇中様付け以外はご容赦下さいませ、

あと、皆の健康診断の件は午後からでもよろしいでしょうか?」


一瞬呆けたエルルは、あのクソジジイまたやりやがったな!と思いつつも笑顔で、

「はい構いません、

あと夫人様代官様にもご挨拶致したいのですが、」

エルルの言葉に夫人の目に光が無くなりボソボソと呟き出す、

やがてはっ!として、

「申し訳ありません、実は夫は超が付く位の変わり者でして、

いえ、決しておかしな者では無いのですが、元々学者でして、新しい魔道具の発明をする事を生き甲斐にしている位の研究バカでして、

それで稼げもしない研究バカなら良かったのですが、

いくつもの魔導特許を持ち、この国でも上から数えた方が早い資産家なので研究を辞めて代官業に専念しろとも言えず、

先代が無くなる直前にこのナハリ代官の子爵家を妻の私に頼むと言い遺され旅立たれた後は表向きは主人が、実際は私がナハリ代官の仕事を行なっています、

と言っても公爵家の優秀な文官達が居りますので、何も問題は無いのですが、

あっ、主人の名前はストーキン・フォン・パルボ、パルボ子爵家はギルガス家の分家に当たります、

長々と申し訳ありません、私の事はルチアと読んで下さいね、」

「分かりましたルチア様、

ですが私は子爵様と良いお友達になれそうです、

子爵様は今どちらに、」

「屋敷の隅にある研究室とやらにいつも篭っていますよ、

ただ食事の時には必ず出て来ますので、もうすぐ昼食になります、それまで待たれますか?お部屋をご用意いたします、」

「いえ、研究室に案内して下さい!」

瞳を輝かせるエルルにルチアは旦那に通じる物を感じたのか隣のイオを見るとイオの目がその通りと言っていた。


扉の前でルチアが、

「貴方!エルル様がお着きになったわよ!エルル様が貴方に挨拶したいそうよ、開けるわよ、」

部屋の中から、

「ルチア!ちょっと待って、今大事な所!」

などと聞こえるがルチアは躊躇なく研究室のドアを開け、

「エルル様、本当に汚い所ですがどうぞ、」

エルルが部屋に入ると部屋の中には無数のメモ書きが散乱していて、中央の机の上でボサボサ髪の丸眼鏡の男が何やら大きめの箱をいじっていた、

エルルは目を更に輝かせている、

隣のイオはエルルに、

「エルルさん、あれ冷蔵庫に似ていますね、」

イオの言葉に丸眼鏡の男が驚愕し、

「君!今何て言った?レイゾウコ?

これが何か分かるのかい?」

「いえ、うちにある冷蔵庫に似ていると思っただけです、

あっ!うちの冷蔵庫は師匠のエルルさんが作った物ですが、」

驚き過ぎて口をパクパクさせている男に、

「ほら、もう!貴方髪がボサボサよ、エルル様に挨拶して!」

と髪をルチアさんにとかれ、

「待って!ルチア!僕はその少女達に聞きたい事が!」


数分後、落ち着いたストーキンはエルル達と共に応接室に座っていて、

「いゃーすまなかったね、取り乱しちゃって、私の名前はあっ、もう聞いているよね、ストーキンと呼んでくれたまえ、」

「エルル・ルコルと言いますこちらは弟子のイオ・タリスマンです代官様、」

「言ったじゃないかストーキンで良いと、エルル様から見てあの氷室箱はどうかな?」

「ストーキンさん、とても画期的だと思いますよ、」

「いゃー僕ね、氷結魔法が得意なんだけど少し前に知人の王都の商会の女主人に海の魚を凍らせて欲しいと頼まれてね、

その話を聞いて僕は氷室箱を閃いたのさ、

あの箱はまだ試作器なんだけれど、

あの魔道具が完成すれば全ての家に簡易氷室を付ける事も夢じゃなくなるよ、」

「素晴らしい発想です、ストーキンさん是非研究に協力させて下さい、

このナハリにも新しい産業がいくつも生まれます、」

ストーキンさんの隣で話を聞いていたルチアさんが、いきなり身を乗り出して来て、

「エルル様それはどんな産業何ですの?」

「先程のストーキンさんの閃きそのままです、

例えば大きな魔導氷室箱を作ったとします、港に水揚げされた魚をそのまま氷室箱に入れて凍らせてしまいます、

その箱をそのまま荷馬車の荷台に積んで王都や、海の無い地方の領へ送る事が出来るとなれば」

エルルの話の途中にもかかわらずルチアさんは、

「今迄干物に出来る魚しか遠くへ売る事が出来なかった魚が、新鮮な状態でどんな魚も売る事が出来るわ!

「はい、僕は既に王都でモルガン商会から魚を購入して食べましたよ、

この件は既に主人様とアズビー商会にも話が通っています、」

「エルル様!待って下さい!

アズビー商会の前会頭は、オーライドのギルドで賢者と名高いジル・アズビー騎士爵様、話が通っていると言う事は、既に氷室箱が?」

「いえ、その件はストーキンさんとの話し合いに成ります、

私もストーキンさんと同じ物を考えていました、先程弟子のイオが言っていた冷蔵庫と言う物です、

正確には冷蔵庫と冷凍庫が有り今回魚を運ぶ箱は冷凍庫になります、

でここからがご相談なのですが、

私はギルドにこの冷凍庫と冷蔵庫のの特許を無償で渡すつもりだったのですが、ストーキンさんも類似の魔導具を研究していらっしゃりました、

研究には多額の費用がかかったと思われます、」

エルルが話し終わる前にストーキンはエルルの話しを手で制し、

「エルル様、私は充分過ぎる資産を有しています、その資産はこれからも増え続けるでしょう、

ですから今回の件気になさらずギルドにお譲り下さい、

その代わりと言ってはなんですが、その冷凍庫なる物を見せて頂きたい、と言ってもその時は私が王都に見に行きますので!」

「あ、直ぐに出せますので、」

と言ってエルルは応接室の隅に魔導冷凍冷蔵庫をにゅっと出す、

あんぐりと口を開ける夫婦に、

「出来ればストーキンさんの名前で登録して頂きたいです、」

と言った時にはストーキンさんは冷凍庫の扉を開け中を見て感動しちゃってたよ、


結局後日王都の公爵屋敷で皆で話し合う方向で何とか話しがまとまったよ、

もうこれからはいつでも王都の屋敷と行き来出来るので問題ありませんよと告げると、はあ、そうなんですかと呆けた返事が返って来たよ、

話し合いの途中にメイドさんから、昼食は如何されますか?と聞かれルチアさんが、

「エルル様生の魚は大丈夫で御座いますか?、

生は苦手な方もいらっしゃいますので、」

「僕もイオも生のお魚は大好きですよ、ねえイオさん、」

「はい、エルルさん私あの醤油とわさびで食べるお刺身が大好きです!」

「あら、イオさんはお刺身と言う言葉を知ってらっしゃったのですね、

地元でも漁師と料理人しか使わない言葉ですよ、」

「そうなのですか、私はエルルさんからお刺身料理として教えて貰ったんです、こちらのお刺身は何を付けて食べるのですか?」

「 植物オイルに塩と柑橘の実を絞った物を付けますね、

それ以外に何かあるのですか?」

「うちは豆から作った醤油と水根の根を摩り下ろした薬味を付けて食べます、」

ストーキンさんが、

「じゃあエルル様お刺身を用意したらその薬味と調味料で食べさせて頂けますか?」

「はい、構いませんが僕はその植物オイルでも食べてみたいです、」


屋敷の食堂のテーブルの上に前世のお造りの盛り合わせが置かれていて、刺身の他には貝のスープが用意して有り、

エルルは小皿に醤油とわさびを置いていく、

醤油とわさびはストーキンさんとルチアさんに大絶賛され、

メイドさん達にもお土産と言って醤油を渡したらとても喜んで貰えたよ、

食後に以前より気になっていた海苔の事を聞いたのだけれど二人共に見た事も聞いた事も無いと言われ、

後日見本を海で作って来るのでそれを見てもう一度話し合う事にしたよ。




「先生ありがとうございました、」

「はい、ではお大事にして下さい、」

メイドさんがお礼を言いながら頭を下げて出て行く、

「エルル様、今の者で最後です、後は非番の騎士団員と港に詰めている者達だけです、」

「分かりました、では僕達は市場に出掛けます、今日は港の宿に泊まりますのでまた後日伺いますね、」

「そんなぁ!エルル様これから魔道具について色々お話しを聞きたかったのに!」

「ストーキンさん、僕達は暫くこちらで休暇を楽しみますので、魔道具のお話しはまた後日に致しましょう、」

「エルル様、この屋敷の部屋を用意させます、こちらで逗留して下さいませ、」

「ありがとう御座います、ですがそれでは休暇になりませんので、」



エルルとイオが屋敷を去った後、

「アルク様より連絡を貰っていましたが、想像以上に規格外な方達ね、」

「ああ、僕は今迄ジル様が賢者様かと思っていたけど、今日それは僕の勘違いだったと確信したよ、

ジル様は大賢者様を護られる方々のお一人であったのだと、」

「ねえ貴方、これから忙しくなりそうね、」

「そうだねルチア、これからは僕も協力するよ、

勿論研究は続けるけどね、僕もエルル様の弟子にして貰えないかなぁ、」




「お嬢ちゃん達この時間に市場に来たってめぼしい魚は売れちまってるぞ!

朝一番で来ないと、うちも売れ残ってるのは八つ足位な物さ、」

エルル達は市場に来てみたのだが、大半の店が終わっていて、

店の片付けをしていたおっさんの言葉に、

「おじさん!八つ足見せて!」

エルルの食い付きにおっさんは引きながら海水が入った桶の中をウネウネ動く前世のタコを見せる、

「おじさん!全部ちょうだい!いくら?」

「えっ!嬢ちゃん全部かい?

全部買ってくれるなら、八匹で銀貨六枚で良いぞ!」

「わっ!おじさんありがとう!じゃあこれお金、」

「おう確かに、で何処に運んだら良いんだ?」

エルルはにゅっと桶を出し、

「おじさんこの中に入れて!」

あんぐり固まっていたおっさんを正気に戻し、桶にタコを全て入れて貰うと、

「ありがとう、でおじさん堅魚の干物って何処かに売ってない?」

「おい、嬢ちゃん達何者だい?堅魚の干物なんてその筋でなの通った料理人しか買わない干物だぞ、

面白え!乗りかかった舟だちょっと待ってな!知り合いの乾物屋を紹介してやる、

でその八つ足の桶は?」

とおっさんが聞いた時には何処にも桶は無かった、


おっさんが店じまいするのをしばらく待ち、店に鍵を掛けたおっさんが、

「待たせたな嬢ちゃん達、

で嬢ちゃん達は魔法士様なんだよな、」

「ええ、こちらの者は私の弟子です、」

「でそんな魔法士様達が人気薄の八つ足に堅魚の干物なんて何に使うんだい?」

「作りたい料理があるんですよ、

ねえおじさん、海苔って聞いた事無いですか?

海岸の岩などに付いてる緑の苔みたいな物を乾燥させた物なんだけど、」

「聞いた事がないな、緑の苔だったら漁師達が船底に着いて剥がすのが大変だと何時もぼやいてやがるが、」

「なるほど、ありがとう、勉強になりました、」

「本当に不思議な嬢ちゃんだな、」



「おい!ロッッア!可愛い客を連れて来てやったぞ、」

「おお、ドッヂ呑みの誘いにゃあちと早いぞ、」

「何聞いてんだ!お客様だぞ、」

ロッッアと呼ばれた小太りのおっちゃんがエルル達をみて、

「この可愛いお嬢ちゃん達がうちの客だと?」

「ああ、堅魚の干物が欲しいそうだ、話を聞くとアレの様だぞ、」

ロッッアと呼ばれたおっちゃんが、

「嬢ちゃん、削り節が欲しいのか?」

エルルは目をキラキラ輝かせて、

「おじさん、それそれ!それを有るだけちょうだい!」

「おいおい嬢ちゃん、削り節はその筋では魚の宝石って言われるくらい高えんだぞ良心的なうちでも一節金貨一枚だぞ、」

「はい!構いません!有るだけ下さい!」

「分かった分かった、でも全部は駄目だ、他にも定期的に買ってくれるその筋の者が居るからな、

今直ぐ用意出来る数は五本だ、」

「分かりました、じゃ五本下さい、

これお代です、」

と何処から出したのかエルルの手のひらには五枚の金貨が乗っていた、

「おう、じゃあちょっと待ってな、」

とおっさんは店の奥に入って行き、

しばらくすると、

「嬢ちゃん確認してくれ、どれも上物だぞ、」

エルルは嬉しそうに一本ずつ丁寧に確かめ、

「はい確かに、ありがとう御座いました、」

「いやいや、お礼を言うのはこちらだよ、

で嬢ちゃん見た所魔法士様のようだが、削り節をどう使うか良かったら教えてくれないか、」

「構いませんが他のお客さん達はどうやって使っているのですか?」

「そりゃあ削り節って言うだけあって削った粉をスープの素にするらしいぞ、

嬢ちゃんはどうするんだい?」

「色々な使い方があるのですが、

今回はこんな風に、」

と言って鉋のような物を取り出し買ったばかりの削り節を目にも留まらぬ速さで削れば、

透き通るほどの見事な薄くて広い前世の鰹節が出来て、

「おおお!凄え、粉じゃねえ削り節なんて見た事がねえ!

嬢ちゃんそのまま食べんのか?」

エルルは削った鰹節を紙の袋に終いながら、

「先程買った八つ足を使った料理の上にかけて食べるんですよ、」

「なあ嬢ちゃん、良かったらその料理を俺たちに食わせてくれないか、

勿論タダでなんて言わねえ、

明日うちに入った魚の良い所を見繕って渡すからよ、」

「すいません八つ足の下処理とか有りますので今すぐにと言う訳には行きません、明日広場で屋台でも出そうかと、」

「嬢ちゃんそいつぁ難しいな、

公共の場での屋台は領主様の許可が必要になるんだ、

勝手に屋台なんて出したら騎士団員に連れてかれちまうぞ、」

「それなら大丈夫だと思います、

僕達公爵家の使用人なんで問題無いですよ、もしお店を出してたら食べに来て下さいね、今日はありがとう御座いました、」

と固まっちゃってるおっさん達に告げ、エルル達は市場を後にした。



ナハリ港近くの宿屋の部屋で、

「エルルさん宿が取れて良かったですね、」

「はいそうですねイオさん、僕は一度明日の屋台の準備に家に戻ろうと思いますがイオさんはどうしますか?」

「私もお風呂に入りたいので戻ります、

何だか髪がいつもよりごわごわします、」

「海風に当たったからですかね、

じゃ一緒に戻りましょう、」



「おや、あんた達帰って来たのかい、」

「ただいま戻りました姐様、

お風呂と明日出す屋台の仕込みをしたいので戻って来ました、」

エルルは厨房に入ると買って来た八つ足を取り出し、

大量の塩をまぶしてモミモミと揉み込み水洗いをした後大鍋で茹でて行く、

八つ足を茹でている間に卵を水で溶いた物に小麦粉を入れ大量に生地を作り同時に天かすも大量に作って行く、

そして八つ足が茹で上がるとエルルは八つ足を細かく刻んで行く、

「エルル、八つ足スープの屋台を出すのかい?」

「姐様スープじゃ無いですよ、食べてみますか?」

リリルが、答えるよりも早くお風呂上がりのバスローブ姿のまま居間に入って来たイオとカレンが、

「エルルさん!私も食べたいです!」

「二人共ちゃんと着替えてから来て下さいよ!

僕は男の子ですよ!」

と言いつつ何時もの様に何度もチラ見しちゃったよ。



エルルは中庭に八焼き屋さんと名前の入った屋台を出し、

増築した縁側に腰掛け興味津々で屋台を見ている三人の前でエルルはたこ焼き用の凹みの付いた鉄板に植物油を薄く引き、

ダシを絡めた生地を流し込んで行く、

そこに八つ足と天かすを入れ、

エルルはピックを取り出し器用にたこ焼きを丸めて行く、

そして舟を模した紙皿の上に熱々の八つ焼きを六つ並べ、

特製ソースを刷毛でたっぷり塗り市場で手に入れた削り節を振りかけ、

最後にこれまた特製の絞り袋に入れたマヨネーズを編み目の様にかけて完成っと!

「お待たせしました!八つ焼きですよ、楊枝で刺して食べて下さいね、

あと中身は熱々なので気を付けて食べて下さい、


目をキラキラ輝かせて待っていた三人は紙の皿から楊枝で八つ焼きを口の中に運び、

八つ焼きの熱さに口をハフハフさせる、

「ヘフフはん、ハフハフれおひしひれふ、」

お約束の様な感想を話すイオに、

「イオさん、食べ終わってから話して下さいね、」

と突っ込み、その隣ではリリル姐様は美味しい!美味しいと平気でぱくぱく食べている、

カレンさんは猫舌なのか一生懸命ふぅーふぅーと息を吹きかけ八つ焼きを冷ましていたよ。



おまけ


オーライド沖の海をナハリに向かって進むブリネン船籍の巨大商船団の旗船の舟の中、

特等級の船室に金髪の髪を纏め上げた碧眼の女の子が入って来て、

上質な椅子に腰掛けている老貴婦人に、

「上皇陛下、明日の午前中にはナハリ港に入港出来ると船長が申しておりました、」

「シャルご苦労様でした、

ですが私は貴女の伯母のリリル・ルコルですよ、」

「ですが陛下、今は二人しかおりません、陛下を伯母上とお呼びする事に抵抗がありまして、」

「私は引退した身、今は今迄取れなかった休暇を楽しむお婆ちゃんよ、」


シャルと呼ばれた女の子はため息をつきながら、

「ですが陛下がオーライドへお忍びで旅行されるなど、近衛も付けず良かったのですか?

女王陛下はこの事を許可されたのですか?」

「シャル、もう耳が腫れてしまうわ、ちゃんと置き手紙をして来ました!

あと大魔女の生まれ変わりと名高いルコルの三の姫が護衛してくれるのよ、これ以上の護衛は居ないわ!」

「陛下、私は上のお姉ちゃん いえ、

魔法士団長に帰ったらこっ酷く叱られる未来しか見えません、

因みにルコルの次代はちぃお姉ちゃんですよ、」

「そうでしたね、ルコルの家は姉妹の中で一番魔力の多い者が次代になる仕来りだったわね、」

「はい、三姉妹の中で私は一番魔力量が少ないので、

今回私は上皇陛下を国に転移でお送りした後、

私の大伯父にあたる剣聖様に剣の指導をして頂こうと思っています、」

「ラルルね懐かしいわ、私の初恋の殿方よ、リリスに付いてオーライドに渡ってしまわれたわ、

リリスからの便りで結婚したと聞いているわね、

でも貴女魔法士団はどうするの、

その年で小隊長なのでしょう?」

「上皇陛下、私は時空系魔法士ですよ、ブリネンからでも大伯父上様の元に通えます、

ただ一度転移したらその日は転移出来ませんが、」

「大公爵が嘆いていたわよ、休日に騎士団の訓練に参加するのは魔法士としてどうかととね、

騎士団長から中隊長クラスだと言われているそうね、」

「たまたま初代様と同じ時空系魔法士だと言うだけで大魔女の生まれ変わりなどと言われていますが、

私は攻撃系の魔法が得意ではないのでそれを補う為に剣術を磨きたいのです、」

「はいはい、わかりましたその前に私がリリスに会える様にナハリ港を収める公爵閣下に嫁いだ姪のナタリアに会いに行くのに付き合って貰うわよ、」









ありがとう御座いました。

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