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公爵家の夜会 後編

宜しくお願い致します。



第三十一話 公爵家の夜会 後編



「ねえあなた、エルル達は未だ帰って来ないのかしら?お客様達が見えてしまうわ!」

「マリー落ち着かないか、エルルの準備は終わっている様だし大丈夫だろう、」

「あなた私が大丈夫じゃないわよ、このままお客様達がみえたら私この姿でお客様をおもてなしする事になるのよ!」

「マリー、今のままで充分美しいよ、なあお前達、」

「はいお母様、美しいです来年の私の夜会デビューの時もお母様の様に美しくして頂きたいです、」

「ありがとう、ナターシャあなたもイオの魔法にかかればさらに美しくなれるわよ、来年が楽しみね、さあ、ナルゼとアイリスを連れて上に上がりなさい、デビュー前の子供が夜会の会場に居てはいけないわ、誰か!」

扉からメイドが二人入って来て子供達を連れ一礼して出て行く、

「あなたそう言えば義父様は?」

「父上は母上の部屋でくつろいでいると思うが、そろそろ着替えをして頂かないとな、」

「あなたも着替えを済ませておいた方が良いわ、」

「ああ、分かっている私達男の着替えなど一瞬だよ、今日は使用人達もエルルが用意した特別の衣装なのだろう、」

「ええ、今皆交代で使用人寮に着替えに行っているみたいよ、皆あなたに感謝してるわ、」

「ははは、エルルが用意してくれるから出来る事だよ、」

「本当ね、弟は公爵家の至宝よ、」

「全くだ、」


使用人寮ではエルルが用意した夜会用のメイド服のセットが名前入りでハンガーにかけられていて担当する仕事で衣装が異なっている、

一番人気だったのはホールの給仕係で丈の短いエプロンドレスに大きなバックリボンの付いた純白のエプロンに純白のタイツだ、

クジを引いて給仕係を射止めたメイドが嬉しそうにいそいそと着替えをしている、

一番人気の無かった外の仕事を射止めたメイドの先輩達はハンガーに先日エルルが着ていた様なコートがかかっていて途端に物凄い笑顔になりコートを着て皆に見せびらかしている、次女長が、

「さあ着替え終わった者から直ぐに持ち場に着きなさい、公爵家の使用人として恥ずかしくない仕事をする様に、」

「あら、侍女長は着替えないのですか?」

「ソフィー私は最後に着替えるわ、今日貴女は何係になったのかしら、」

「私とスゥーは案内係です、侍女長ミオンが着ていたコート見ましたか?ミオン、クジで外の係になってがっかりしていたのに、あのコートを見た途端ホールの支給係の子達より喜んでましたよ、」

「あら、そう言えばアニーは?」

「ハズレ以前にローテーションで今晩夜勤です、」

「まぁ!そうだったのね、忙しくて把握して無かったわ、さぞ悔しがっていたでしょうね、」

「夜会のお供が当たった内の一人だからちょうど良いんじゃないですか、」

「ソフィー貴女巧妙に仕込んだわね、今日の夜勤、皆お供に行った子ばかりじゃない、」

「偶然ですよ、さあ着替えて私も持ち場につかなくっちゃ、

ああ後、先日エルル君が着ていた素敵なコート、金貨二十二枚で譲ってくれるそうですよ、」

「そっ、そうなの、」

マチルダは思った!知っているわよ、王都一高い大聖堂から飛び降りるつもりで買ってしまったあのコートは私の宝物よと!


エドモンドがナタリアの部屋のソファーでうたた寝をしていると、いきなりナタリアとイオが現れ、

「あら、エド未だ着替えてなかったの?」

「ああ、そろそろ着替えようかと思っていた所だよ、」

「私も着替えるから悪いんだけどマリーを呼んでくれないかしら、あの子きっとやきもきしているわ、」

「分かった、って誰か来たようだ、」

イオが扉を開けるとアルクとマリーが立っていて、

「イオ帰ってたんだね、」

「はい、今戻りました、」

「マリーちょうど良かったわ、身仕度をするわよ今日はイオも接待の仕事があるから早く済ませちゃいましょう、」

「はい!義母様!」

「父上私達も着替えましょう、」



アルクの執務室で着替えを済ませソファーに座っている所に部屋をノックする音が聞こえアルクが入室を許可すると少し慌てたロバートが、

「主人様、陛下がお付きになられました、」

「何だと!先触れも無しにか?」

「それが、転移してみえまして、」

「分かった直ぐに応接室へ御通ししろ、」

「承りました、」

そこに着替え終わったナタリアとマリーが入って来て、

「あらロバート何かあったの?」

「実は陛下が転移していらっしゃいまして、」

「何ですって!ジュリアスが転移して来たですって!どうやって?」

「宮廷魔法士殿と共に転移して見えて魔法士殿はのびていらっしゃいまして、」

「ロバート!ジュリアスを私の部屋へ、皆はそのまま夜会の支度を整えて!」


ナタリアの部屋がノックされイオが扉を開けるとロバートと国王ジュリアスが立っていて、

イオは直ぐ片膝をつき頭を下げる、

ジュリアスが部屋の中に入って来て、

「こちらが、姉上の部屋ですか?不思議な部屋ですね、」

「イオ、ロバート後は私に任せてロバートは下がりなさい、イオは片付けの続きをすれば良いわ」

ロバートは一礼して帰って行きイオも一礼して奥の美容室の中に入って行った。



屋敷のホールでマリーが

「義父様、私達は陛下にご挨拶しなくて宜しいのでしょうか?」

「うむ、アルク皆を一度集めてくれ、これから陛下を迎えに行ってくる、」


エドモンドが国王ジュリアスと見慣れぬ黒髪の美女を連れてきてアルクが代表で挨拶をし

その後、陛下が美しい天幕に入って行くのを見届けたアルクとマリーはホールの隣に作った夜会の為の応接室に入る、

「ねえあなた、先程の黒髪の女性は誰だったのかしら、エルルに関係がある方かしら、」

「マリー母上達が後で話してくれるさ、」


通常夜会ではその家の者の誰かが玄関で客を迎えるが、

ギルガス家は貴族の中で一番家格が高いので出迎えをギルガス家の者が行う事は無くエルルを除く執事が玄関でお出迎えを行っている、

唯一今年は皇太子コーデリアスが婚約者であるスパロン家のディアナ嬢と共に夜会に参加する為、皇太子が宰相と共に到着した時のみ玄関で出迎える事になる、

そして次々と馬車が到着して貴族達が執事に案内され応接室に入り、アルクに挨拶をしたのち案内役のメイドがホールまで案内する、

誰かが決めた訳ではないが、子爵、男爵が先に訪れその後高位の貴族が入ってくる、

マリーの実家のモントン伯爵家の者がロバートに案内され入ってくる、

「モントン卿、いえ義父上よくお出で下さいました、今宵は楽しんで行って下さい、」

「閣下お招きに感謝いたします、今日は閣下の弟君に会えると楽しみにして来ましたぞ、」

そこにペレスに案内されたアルマン家の者達も入ってきて、

「閣下、バーグル挨拶の途中でしたかな、」

「アルマン卿、よくお出で下さいました、」

「ノルド、儂とお前の仲じゃ、気にはせん、」

「閣下お招きに感謝いたします、今宵は妻がエルルに会えるのを楽しみにしていましてな、」

アルクは済まなそうな顔をしながら、

「卿達、すまない実は今宵外国からの客人がありまして、弟は父と共にそちらの接待に当たっていまして屋敷の中に居ないのです、」

「何と外国からの客人!あの噂は本当だったか!」

「ノルド噂とは何じゃ?」

「ファーセルとゴースロの皇太子夫妻がお忍びでオーライドを訪問していると言う噂があっての、」

「何と!ですが閣下屋敷の中に居ないとは?」

「屋敷の庭に天幕を張ってそちらで接待致します、ご一緒では貴族の方達に心から楽しんで頂けません、

あと皇太子夫妻の件は出来るだけ内密に、この事あと宰相しか知りません、」

「閣下、私達へのご配慮に感謝いたしますが、外国の方々しかも皇族を庭の天幕でなど、大丈夫ですかな?」

「ええ、皆さんもホールに入れば分かりますよ私も父にここを任せ私があちらに行きたいぐらいですよ、なあマリー、」

「ええ、義父様も義母様も弟を独り占めしてずるいですわ、私達も今日は忙しく天幕の中を見ていませんの、」

「しかし閣下、ゴースロはともかくプライドの高いファーセルそれもターナス殿下が、」

そう話すノルドを手で制し、

「卿、すでに弟はターナス殿下のお気に入りでして、今日も天幕の中という趣向をお喜びになられますよ、」

皆がアルクの言葉に驚いているとロバートが、

「主人様、宰相家の先触れが到着致しました、お支度を、」

「うむ、では皆様はホールの方へ、ソフィア!」

部屋の隅に立っていた案内係のソフィアが伯爵家の方々を連れ隣のホールに入って行くのを見送ったアルクとマリーは玄関に出てスパロン家の馬車を待つ、

馬車は近衛騎士団員に護衛されながら屋敷の玄関に入ってくる、アルクを始め公爵家の者が皆片膝をついて皇太子が降りるのを待ち、

皇太子コーデリアスが馬車から降りると、

アルクが、

「殿下、公爵家へようこそ、今宵は楽しんで行って下さいませ、

宰相閣下、夫人、ディアナ様も夜会を楽しんでいって下さいませ、」

「閣下、世話になる」

「では殿下こちらへ、」


応接室に入るとアルクが、

「殿下、殿下とディアナ様はこちらの部屋で待機して頂きます、その後ホールの方でディアナ様とご一緒に挨拶して頂きそのまま庭の天幕に移って頂きます、」

「おい!アルクまさか殿下や外国からの客人を庭の天幕の中でもてなすのか?」

「ああ、天幕は父と母と弟で客人をもてなす、あの中に入れる殿下とディアナ様が羨ましいですよ、なあマリー、」

「本当ですわ、私達も未だ入れて貰っていませんの、」

「閣下、伯母上もいらっしゃるのだ、私はかまわぬが、外国の方達は大丈夫なのか?」

「はい、間違いなくご満足して頂けます、

ではしばしこちらでお待ちを、」


アルクが宰相ローレンスを連れてホールに入るとホールの中は大盛り上がりでケーキバイキングに盛り上がる夫人方、料理と酒に舌鼓を打つ貴族、美しく輝く庭の天幕に見惚れてる者、

皆笑顔で夜会を楽しんでいる、

「アルク、あの光輝く光の幕が天幕なのか?」

「ああ、夜見ると本当に美しいな、ローレンスあれならたとえ陛下でも文句は言えまい、」

ホールのガラスの壁から光輝く天幕を見入っているローレンスにイタズラっぽく話す、

「ああ、本当に美しい、なあイセリナ、」

とローレンスは妻イセリナに話かけたが

イセリナはすでにマーガレットやエバ達とケーキバイキングに夢中になっていた、


貴族達から、素晴らしい料理だ、先程私はモルズ殿に会ったぞ、この料理はモルズ殿が手伝っているのか、

流石宮廷料理長を務めるモルズ殿だ などと聞こえて来る、

「アルク、先日王宮でナタリア様がモルズ殿に公爵家で料理の勉強をしなさいと言われたのはこのためか、」

「ああ、皆あの様に良い誤解をしてくれる、

これでモルズ殿がうちの料理を覚え来週末の宮中晩餐会でもこの料理を出せれば問題ない、」

「アルク私も殿下と共に天幕に行っては駄目か?」

「お前はこの国の宰相様だからな、殿下達をご案内願おう宰相閣下、」



屋敷の玄関に豪華なファーセル皇国の紋章が入った馬車が止まり、一緒に入って来た殿周りが乗る馬車より先に殿周りがおりて来て馬車を囲み馬車からまずランが降りて来る、

その後にターナス、テュレイカ、パスカトフ、マルティンの順て降りて来る、

玄関で待っていたエドモンドが、

「殿下、妃殿下よく来て頂きました、パスカトフ殿下、マルティン妃殿下、お久しぶりでございます、」

「おお!閣下久しいの、」

「殿下私は爵位を息子に譲り引退した身、エドモンドとお呼び下さい、

殿下、今日は私の末の息子が殿下達を接待致します、」

エルルが深く一礼して、

「エルル・ルコル と申します、庭に特別な天幕をご用意させて頂きました、こちらへ、」

エルルの言葉に、ゴースロの殿周りの一人が、

「無礼者!殿下を屋敷に入れず庭の天幕に案内するだと!」

「控えよ!」

パスカトフの一括にゴースロの殿周りが皆片膝をつき頭を下げる、

「エドモンド殿うちの者が粗相をした、許されよ、ラン殿ここは私に免じてこの者を許してくれぬか、」

「この様な場所で殿下に恥をかかす不忠者よ、殿下が止めねばお前のその足りない頭と胴が離れておったぞ、」

「ラン様、そんな意地悪言ってはダメですよ、ラン様今晩の食事抜きですよ、」

「まて!まて娘!儂は意地悪など言っておらんぞ!」

ターナスとテュレイカが笑いながら、

「おお、ラン可愛そうに童の料理が食べられぬとは不びんな、

パスカトフ殿下、この童は我のお気に入りでな、きっとこの世の物とは思えぬ持て成しをしてくれるぞ、」

ターナスの言葉にエドモンドとエルルは一礼して歩き出す、

そして屋敷の角を曲がった所で光る小道が現れ、小道を進むと美しい庭が明るく照らされ

庭の真ん中に光の帯が天空に舞う様な輝く天幕がある、皆声も出ず呆けているとエルルが天幕に手をかざし入り口がするするめくり上がる、

「さあ、中へ、お付きの方々はあちらにテーブルと椅子をご用意させて頂きました、野外で申し訳ありません、後ほど温まる物をご用意致します、」

皆が中に入って行き、最後にエルルがぺこりと頭を下げて中に入るとめくり上がっていた入り口が元に戻る、


ターナス達が中に入って中の美しさにも驚いたが、丸いカウンターから、

「おお!よくいらっしゃったターナス殿、パスカトフ殿、さあこちらへ、」

「オラリウス陛下、どうしてこちらに?」

「実は姉上に誘われてお忍びて遊びに来ているのだよ、皆、膝など付かないでくれ、今日はここにいる姉の弟だと思ってくれれば良い、」

エドモンドが

「さあ皆様、お座り下さい、カウンターの中におります息子か、息子の弟子のイオに食べたい物を言って頂ければ、ご用意すると思います、

また机の上にメニュー表がございますので参考にしてみて下さい、」

「童、我は早速酒を頂こう、パスカトフ殿童の酒は最高ですよ、」

「ほう、楽しみじゃ、童よ、この庭といい、天幕もこの部屋の中も、まるで神の住まいと言われても納得してしまいそうじゃ、」

「ありがとうございます、殿下、ではとっておきの一本をお出ししましょう、」

エルルはにゅぅーっと半透明な緑の瓶を取り出し、

「香水花の蒸留酒の六年物です、

じゃあ開けますよ、」

エルルが瓶の栓を抜くと部屋中に花の良い香りがひろがる、

エルルはターナスとパスカトフの前にグラスを出し丸い大きな氷を落としグラスの中に香水花の蒸留酒を注ぐ、

「童、素晴らしい香りだ、ずっと嗅いでいたい匂いだ、」

「儂はもう我慢出来ん、」

我慢が出来なくなったパスカトフが、くいっと酒を飲んで、

「うっ、美味い!美味すぎる!なんと甘露な酒か、童!もう一杯、」

「はい、喜んで、殿下メニューに酒の味も紹介してございます、そちらも一度見て下さいませ、」


カウンターの反対側ではナタリアを中心にメニューを見ながら盛り上がりイオに注文している、マルティンはメニュー表のケーキの欄を穴が開く様に見て、イオに、

「ここに載っている物は全てだせますの?」

「はい、大丈夫でございます、なんなりと、」

「娘、確かイオとか言ったの、儂はこの杏仁豆腐と言う物を出しておくれ、」

「はい、杏仁豆腐ですね、はいどうぞ、」

直ぐにランの前に杏仁豆腐が置かれ、驚くランが、

「イオ、娘の弟子とか言っておったが、おぬしも大概じゃの、」

「ラン様この子は私のお気に入りよ!」

「姫殿下のお気に入りとな、で殿下の隣の娘似のおなごはどちら様かの?」

「この方はエルルの叔母にあたる方でエルルの実家で暮らしてみえるわ、

「リリル・ルコル と言いますよしなに、」

その時ランの隣で柑橘の炭酸水をストローで飲んでいたテュレイカが盛大に炭酸水を吹き出し、

「テュカ様、如何された?」

「いっ、いえ何でもないわ、炭酸水に少しむせてしまって、」

そんなテュレイカにリリルは笑顔で手をふっている、

そんなリリルをナタリアはひと睨みしたあと、

「ラン様、その杏仁豆腐は大丈夫ですの?

確か乳が入っていたと思いましたが、」

「お母さん、ティュレイカ妃様とラン様のメニューはファーセルの方用になっていまして特別製で大丈夫ですよ、」

イオにケーキを頼み美味しそうに食べるマルティン妃を見たティュレイカが小さな声で

「あの、」

エルルは笑顔で、

「はいテュレイカ妃様何なりと、あと僕、いえ私の事はエルルとお呼び下さい、」

「ではエルル私はバナルのパウンドケーキをお願い、」

イオが直ぐにパウンドケーキをテュレイカの前に出すとエルルが、

「テュレイカ妃様、そのケーキにはこちらの紅茶が良く合いますよ、紅茶の中に少しだけブランデーと言うお酒が入っています、」

テュレイカがパウンドケーキを食べるとその糸目が見開かれる、

紅茶を飲み、ほっと息を吐くと、

「美味!エルル美味しいわ、貴女にはテュカと呼んで欲しいわ、」

「おお娘、テュカ様に気に入られたようじゃの、どれテュカ様儂に一口くれぬかの、」

「嫌よ!ラン貴女も頼めば良いでしょう、」

円卓の反対側より、

「妃よ、童を独り占めするでない!

童、その妃が食べておるケーキは我らでも食べられるのか?」

「はい、ファーセルの方のメニューには乳や玉子を使った料理は載っていません、」

ターナスの隣でパスカトフがメニュー表を目をしかめながら見て、

「抜かった、眼鏡を忘れたわ、」

「殿下目を患ってみえますね、硝子職人病とも言われていますが、白内障と言う目の病です、」

「童、其方は医者か?」

「パスカトフ殿下、息子は高位の医者で治癒術師でもありますよ、」

「童!この鍛治士病が治せるのか?国一の医者や神官が治せぬこの目を!」

「はい、目の構造とこの病の事を熟知していれば治癒魔法で簡単に治りますよ、

あと、ちゃんとギルドが鍛治やガラス職人用の保護眼鏡を紹介していたはずです、この様な物ですが、鍛治士事の時はちゃんと使って下さいね目を守ってくれます、あっ、この保護眼鏡は差し上げます、」

国王ジュリアスとターナスが話を聞いて驚いている、パスカトフが震える声で、

「でっ、では今ここで直ぐ儂の目が治るのか?」

「はい、治されますか?」

「ああ、頼む童!」

エルルはカウンターから出てパスカトフの前に立ち、

「失礼しますね、」

と言ってパスカトフの両眼に手をかざす、

「はい殿下、治療は終わりましたよ、メニュー表を見てどんどん注文して下さい、」

「は、もう治療は終わったのか?むむ、凄い!目が目が治っておるぞ!読める、細かい字までくっきり読める!」

エルルはパスカトフにぺこりと頭を下げカウンターの中に戻ると、国王ジュリアスが、

「姉上、規格外な娘とは思っていましたが、とんでもないですな、賢者どころか大賢者だ、」

「童!いや、医者殿!其方の名前をもう一度教えてくれぬか、」

「はい殿下、私はエルル・ルコル と申します、」

「エルル・ルコル 、はて何処かで聞いた様な、 はっ!其方あのレイピアをうったものか?」

「パスカトフ殿下!内密にしてくれと、申し上げたのに、」

「あっ!すまぬラン殿目が治った嬉しさでつい、」

エドモンドがエルルをジト目で見ると、エルルはそっぽを向いて口笛を吹いていたが、音は出ていなかった。


公爵家のホールで挨拶を済ませた皇太子コーデリアスが宰相と共にホールの庭に繋がるガラスのドアの所まで来るとアルクが、

「殿下、外の天幕の周りには他国の殿周りが外で待機しておりますので、温まる差し入れをご用意致しました、うちの者が給仕いたしますので一言殿下よりお願い致します、」

「私で良いのか?」

「勿論でございます、さあ宰相閣下、」

「では殿下、」


皇太子コーデリアスが天幕に行くと、殿周りが使っていた椅子から立ち上がり、騎士の礼を取る、

「皆この様な外で待たせて済まぬな、温まる差し入れを持って来たので交代で食べるが良い、この者達が給仕する、」

皇太子の言葉にメイド達が皆一礼する、

「では殿下中へ、」

宰相がコーデリアスを案内すると天幕がするするとめくり上がり中へ入ってコーデリアスとディアナは動けない、

カウンターの中からエルルが、

「殿下、ようこそこちらのお席に、」

「おー!コーデリアス殿我等と一緒にエルルの極上のの酒を飲みましょうぞ!」

「おー、息子よ挨拶は終わったのか?

我が宰相、其方も早う座るが良い、エルル!予は少し小腹が空いた、何かないか?」

「飲み会の後のお約束、ラーメンと言う食べ物がございますが、」

「エルル!私ラーメン食べたい!」

「はい、お母さん了解です、

はいラーメンおまたせです、お母さんの好きな味噌ラーメンですよ、」

「おおー!娘!儂はソルバの麺が食べたいぞ!」

「ラン様、ファーセルの方にもゴルマ味噌ラーメンをご用意していますが、」

「エルル!予が一番に頼んだのだぞ!」

「陛下、お待たせしました、お行儀が悪いですがお母さんの様にズルズル啜って食べて下さい、

はい、ラン様もどうぞ、」

「皇太子殿下もディアナ様もメニューから何でも頼んで下さいね、甘味はイオさんにお願いしますね、」

「イオさん、私このパフェと言う甘味が食べてみたいです、」

「承りました、はいパフェです、今日初めてお出ししました、」

「わっ!イオ美味しそうじゃない、私にもパフェいや、こっちのチョコレートパフェを頼むよ、」

「はい、リリル様どうぞ、」

「娘!美味い!美味いぞ!このラーメンとやら、」

「ラン、そんなに美味しいなら一口くれないかしら、」

「テュカ様も頼まれませ、食べませんと後悔する美味しさですぞ! 」

「童、我にもラーメンなるものを、」

「あの、殿下殿周りの方々が、」

エルルがそう言って入り口を作るとファーセルの殿周りの代表の方が驚きながらも中に入ってきて、

「殿下、お約束のお時間で御座います、」

「なっ!もうそんな時間か?未だ良いではないか!、」

「なりませぬ、大使館の者が心配いたします、また今日はゴースロの方々をお時間までにお送りせねばなりません、既に玄関で馬車が待っております、」

「そんな!私はラーメンを食べていませんわ、」

ラン様なんて凄い勢いでスープまで飲んじゃって、

「娘、儂はまた来るでの、」

と言って席を立ち、マルティン様は

「イオ、パフェを!馬車の中で食べます!」

「何と!帰らねばならぬのか?

エルル、儂はまだ其方に話したいことが沢山あるのだ、後日連絡を取れぬか?」

「殿下、私は公爵家の者で御座います、まずは主人様にご確認下さいませ、」

「大使を通じてはからせる、必ず会ってくれ、」

「童、名残惜しいが仕方がない、我も大使を通じてはからせる、今宵は馳走になった、

エドモンド殿、閣下にもお伝え願いたい、」

「殿下必ず伝えましょう、」

「イオさん、僕は殿下達のお見送りにエド様と行って来るので中をお願い!」

「了解です、」

「では陛下、」

「ターナス殿、パスカトフ殿また会おう!

我が宰相よ、其方も殿下達をお送り致せ、」

宰相ローレンスは一礼して客人達の後を付いて行く、

残ったリリルが

「エルル、あの子凄いね、外国の次代達の心を鷲掴みだったね、」

「私も掴まれましたよ、姉上先日の企画書の件でエルルと相談したい、」

「分かったわ、あと貴方どうやって帰るの?」

「宰相にコーデリアスと共に送って貰おうかと、」

「二人ともエルルか、イオに送って貰いなさいな、空間魔法で送って貰えば扉の向こうは王宮よ、」

「では送って貰うか、だがまた爺に小言を言われそうだ、息子よ宰相が戻り次第エルルに送って貰うぞ、」

「父上、私は少し前に来たばかりですよ、

未だここの至高の料理を頂きたいです、」

「また次の機会にするが良い、予も名残惜しい、」

「ジュリアス、料理長が今一生懸命料理を学んでいるわ、きっと貴方達に美味しい料理を作ってくれるわよ、」

「姉上、楽しみに待つ事に致しましょう、」

エルルが、エドモンドとローレンスと共に天幕に入って来るとナタリアが、

「エルル、ジュリアスとコーデリアスを王宮に送ってくれるかしら、」

「了解です、陛下、殿下こちらにお入り下さい王宮の会議室に繋がっています、」

「本当に我が姪御は規格外よ、エルル、近日中に例の晩餐会の企画書について話したい、姉上には了解をとったが、義兄上も娘殿をお借りして宜しいか?」

「承りました陛下、アルクにも伝えておきましょう、」

「では皆、また会おう、リリル殿も 、」

と、ひらひら手を振るリリル姐様をジト目で見ながら陛下と殿下はエルルが出した扉から王宮へ帰っていった。

「イオ、リリル様も送ってくれるかしら、屋敷の方もそろそろお開きになるころよ、」

「はい、ではリリル様はこちらへ、」

「今日は世話になったね、ありがとう美味しかったよ!またね!」

リリルが帰るとディアナが、

「イオさん、メイクの技術も素晴らしいですが凄い魔法士様だったのですね、流石先生のお弟子様です、ぜひ私のお友達になって下さいませ、」

「ディアナ嬢、イオは私のお気に入りよ、貸してあげないわよ!」

と悪戯っぽく言うナタリアに、

「お母さん、イオさんは僕の可愛いい弟子ですよ、意地悪言うお母さんには貸してあげませんよ、」

エルルの言葉に皆吹き出し、エドモンドが、

「では宰相閣下屋敷に戻りましょう、エルルここは片付けるのかい?」

「エド様、今ここを片付けちゃったら主人様と奥様が拗ねちゃいますよ、」

「違いないな、よし一度戻るぞ、」

「ホールのガラス扉から中へはいると、モントン伯爵家の方とアルマン伯爵家の方にイセリナ様が残っていて、イセリナ様が宰相様を見るなり、

「貴方!どうして私を連れて行ってくたさらなかったの!ひどいわ!ディアナ貴女もよ!」

「イセリナ、落ち着きなさい皆様の前だぞ、」

「そうですわ、お母様、」

もめる宰相家の隣でバーグルが、

「閣下、閣下の弟君はどちらに、」

「あちらの黒髪の者が弟のエルル、ひょっとこで、もう一人あの者がエルルの弟子のイオ、おかめですよ、」

「成る程確かにあの髪と瞳、ノルドの身内に違いないな、しかしあの娘達がオカメとひょっとことは信じられんな、」

ノルドはバーグルに自慢げに

「バーグル、二人共儂の身内だぞ、姉さんの孫にマイラ姉さんの孫だ、」

「確かに、あのイオと言う娘はノア殿とマイラ殿の若い頃に良く似ておる、」

と言ってバーグルはメイドや料理人達と楽しげに話していたエルルに、

「先日助けて貰ったバーグルだ、ちゃんとお礼が 言えなかったからの、この様に若い娘達だったとわ、驚きだ!」

エルルは、ギョッとして、

「どうして分かったのですか?」

「閣下に聞いておらなんだか?お前が持っておった地図、公爵家の紋章が透かしで入っておったぞ」

「えっ、気づきませんでした、あと私は男に御座います、」

「そうであったなすまぬ、すまぬ、」

「私からも礼を言わせて欲しい、命を救って頂き感謝します、執事殿、」

「お気になさらず、ワイバーンが沢山狩れてラッキーでした、」

手をぶんぶん振りながら答えるエルルに、

「エルル、お久しぶりね、今日は会えないかと思っていたけれど、最後に会えて良かったわ、またうちに遊びに来てね約束よ、」

「はい、大伯母様その時に膝の治療もしますね、」

宰相ローレンスが、

「皆様そろそろお暇致しましょう、使用人達が可哀想だ、」

宰相の言葉に皆頷き皆ホールを出て玄関の前で待っていた馬車に乗り込むと馬車が動き出す、

公爵家の執事全員が深く頭を下げて、馬車を見送くり、最後の馬車が門を出て行くと、

ペレスが、

「皆お疲れ様、一度ホールに集まるぞ、」

ホールに帰ると皆集まっていて、最後に団長さんが入って来る、全員集まった所でアルクが、

「皆今日は良く働いてくれた、今年も無事夜会を行えたのは皆のおかげだ、片付けは明日の朝からにして今日は休んでくれ、

団長も警備御苦労、夜勤の者を残し撤収してくれ、では解散!」

使用人が各自簡単に片付けをしてホールから出て行く、

エルルは庭の灯りを落とし、今は天幕だけが光っている、

マリーが、

「エルル!私未だあの天幕に入って無いわ!

中が見たいわ!」

「マリー、明日にしなさい、」

そんな二人にエルルが、

「主人様と奥様は沢山のお客様の接待でお疲れで御座いましょう、

今あちらの天幕の中を素敵なお部屋に改装致しました、何と素敵なお風呂に御手洗まで付いております、結界も張りますので、

お二人でお泊りになっては、」

「まあ、マリー良いじゃない!あの素敵な天幕に泊まれるなんて羨ましいわ、」

「あなた!直ぐに天幕に行きましょう!早く!はやく!」

「ああ、分かったわかった、エルルありがとう素敵なご褒美だ、

ペレス、マチルダあとを頼むよ、」

と言い残しアルクとマリーは嬉しそうに手を繋いで天幕に入って行き、

ナタリアは、

「エド、貴方も今日は私の部屋に泊まって行きなさいな、」

「ああ、夜も遅いしそうするよ、

では皆お疲れ様、私達もさがるとするよ、」

そして使用人達も居なくなり最後にロックがホールの灯りを落とした。



おまけ


王都の貴族町の中を小ぶりだがビルドマ男爵家の家紋の入った馬車が貴族町外れのタリスマン家に向かっている、

馬車の中でトーマスが、

「レン、素晴らしい夜会だったね、料理も食べた事がない至高の料理だったよね、

知っていたかい?今日宮廷料理長のモルズ殿を見かけたよ、手伝ってみえてたから、今日の料理は宮廷料理だったんじゃないかな、」

「男爵、送って貰って悪いね、」

「義父上、気になさいますな、そう言えば義妹の姿を見ませんでしたね、公爵家で働いていると聞いていましたが、」

「イオは今辺境伯付きでして、」

「あなた!馬車を停めて!」

「レン、どうしたのだ?」

馬車が止まりレンは馬車を降りるとその場で嘔吐する、ミリアがレンの背中を摩りながら、

「レン、大丈夫?そう言えばあなた今日ケーキを全然食べて無かったわね、レンもしかして、」

「多分ね、今日イオに相談してエルル様に見て頂こうと思ってたんだけど、手紙をメイドさんに渡しておいたわ、」

「レン、大丈夫かい?」

「あなた心配しないで病気じゃないから、」

とレンは微笑んだ。











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