至高の料理
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第二十九話 至高の料理
「料理長、貴方はこの国で一番の料理人でなければならないわ、」
ナタリア姫殿下に言われた言葉が今も頭の中で繰り返され、男は馬車の窓から見える貴族街を観ながら何度目かわからないため息を吐く、
男の名前はモルズ・バイツ、代々宮廷料理人を輩出している一族の現当主で準男爵でもあり、国王陛下より宮廷料理長を拝命しているが今は陛下から暇を頂き料理の勉強のために公爵家に向かっている、
十歳の時より王宮の食堂の下働きを始め成人する頃には王族の食事を作る宮廷料理人となっていた。
この国で最高の料理を作るため日夜研鑽を重ね美味しい料理を出す店があると聞けば食べに行きその料理以上の料理を作る努力をしている、
先日も調理ギルドから新しいお菓子のレシピが公開され早速レシピを購入してみてその画期的なレシピに驚いた、
自分なりにレシピを改良し王族の方達にお出ししたところ大好評で今朝も陛下の使いが、久し振りに王宮にいらっしゃるナタリア姫殿下のためにケーキを用意して欲しいとの事、
自信作のケーキを出した所直ぐにお呼びがかかり、急ぎ王族専用のテラスに行けば、ナタリア姫殿下に甥のカーンが作ったケーキを見せられ美術品の様な見た目に驚き、食べてみれば言葉を発する事が出来なかった、
殿下は貴方がどう思おうと構わない、でも貴方はこの国で一番の料理人でなければならない、公爵家で料理の勉強をしなさいと言われ、気が付けば私は国王陛下に暇を願っていた。
私が厨房に戻ると副料理長が、
「兄貴、ナタリア姫殿下にケーキは気に入って貰えたかい?ってどうした!顔が真っ青だぞ、」
「副料理長すまん、私はしばらく休ませて貰う、宮中晩餐会の準備の前までには必ず戻る!それまでここを頼む、」
「おい!兄貴いきなりどうしちまったんだ、」
驚く弟の副料理長ヒルズにモルズは厨房の椅子に座りテラスであった事を語る、
「兄貴カーンが作ったって言うケーキはそんなに凄かったのか?」
「ああ、公爵家の夜会であのレベルの料理が出されたら宮中晩餐会で今のケーキを出せば陛下は大恥をかいてしまう!」
「なあ兄貴、ケーキのレシピがギルドから公開されて間もないのにそれ程の物がカーン達に出来るものなのか?」
「分からない、だかあの見事な菓子を公爵家の料理人が作った事は間違いない、姫殿下は最初から私を公爵家で勉強させるつもりで来ていらっしゃったようだ、
私が公爵家で勉強する許可をすでに閣下から頂いていると言ってみえたんだ、
とにかく公爵家で学べる料理は全て学んでくる、ヒルズすまないここをしばらく頼む、」
「兄貴分かった!しばらく会ってないがカーンに野に降りたが頑張っているのだなと
伝えてくれ、あと孫に会いたいと言っていたとも伝えてくれ!」
「ああ、伝えよう、」
馬車が公爵家に着くと玄関に執事が立っていて、
「男爵様、お待ちしておりました、私は公爵家執事長のペレスと申します、主人の所に案内致しますのでこちらへ、」
「執事殿、今の私は教えを請う者モルズと呼んで頂きたい、」
「承りましたモルズ様、」
ペレスの後に続き公爵閣下の執務室に一礼して入って行く、執務机の向こうから、
「バイツ男爵公爵家にようこそ、母より話は聞いています、屋敷に部屋を用意させよう、男爵の気が済むまで滞在していって下さい、」
「公爵閣下私は教えを請う身、使用人として扱って頂きたい、」
「貴殿はそう言うと思っていましたよ、では私は貴殿を夜会のための料理人の助っ人としよう、貴殿に足りない所は吸収し、うちの料理人に足りない所を指導して頂きたい、
ペレス、バイツ殿をエルルが用意した部屋へ、それと丁度お昼の時間になる、料理長の所へは昼食を取った後にするといい、」
「承りました、モルズ様ではこちらに、」
「閣下、感謝致します、」
モルズはペレスの後に続き公爵家の裏口より使用人寮に入る、
廊下にはお昼休憩に入るメイドが食堂であろう部屋に入って行くのが見え、
「執事長殿、皆さんの賄いもカーンが作っているのですか?」
「いえ、賄いは料理人下働きのサムと言う者が作っています、モルズ様先に部屋にご案内致します、使用人用の狭い部屋ですので申し訳ないのですが、」
「なに執事長殿、若い時に戻った用で楽しみですよ、」
「こちらになります、部屋の中は入り口で靴を脱いでお入り下さい、」
モルズは部屋に入って驚く、確かに部屋は狭いが、部屋は明るく正直自分の家よりも上質な空間になっている、
確かに使用人と言えど公爵家ともなればメイドも貴族家の出身の者も多い、モルズは荷物をタンスの中にしまい、
「執事長殿、この部屋を使って良いと?」
「ええ、使用人の部屋になりますので狭くて申し訳ないのですが、」
「とんでもない、自分の部屋にしたいほどですよ、」
「ありがとうございます、さあご一緒に昼食を食べに行きましょう、」
モルズは先程メイド達が入って行った使用人食堂に入って再び動きが止まってしまう、
見た事の無い様式の食堂、奥のカウンターの向こうには厨房が見え、中から男がメイドにトレーに乗った食事を渡している、
「さあモルズ様、今日のお昼はサンドウィッチかチャーハン定食のどちらかですが、
カウンターの見本を見てお好きな方を選んで下さい、」
モルズがペレスに付いてカウンターに行くと
トレーが二つ置いてあり、三角のパンに食材を挟んだ物と、見た事が無い穀物の混ぜ物の様な物が置かれ二つ共赤いスープが付いている、
「サム、私はチャーハン定食を頼む、
あとこの方は朝礼で話したモルズ様だ、」
「下働きのサムでございやす、宜しくお願い致しやす、」
「こちらこそ、モルズ・バイツと言う、カーンの叔父に当たる者だ、この料理は君が作っているのかい?」
「へい、賄いは全てあっしが作りやす、」
「では執事長殿と同じ物を、それと食事の後厨房を見せてくれるかな、」
「へい、分かりやしたお待ちしてまさあ、」
ペレスと共にテーブルに着き食事を始め先ず赤いスープを飲む、予想通りトロマンのスープだが、とんでもない出来だ!どうしたらこんなスープになるんだ!作る行程がまったくわからない、自分達が作るスープとは別物だ、ではこの穀物を焼いた様な料理も、
モルズはスプーンでチャーハンをすくい口の中に入れる、
美味しい!食べた事が無い料理だ、異国の料理なのか?あの下働きの男は異国人なのか?
この腕なら王都で店を出せばたちまち人気店の仲間入りが出来るレベルだ、
気付けばスープもチャーハンも綺麗に完食していて、
「どうやらうちの賄いを気に入って頂けた様ですね、」
とペレスに声をかけられ我に返り、
「執事長殿、とても賄いとは言えない料理です素晴らしい腕ですよ、外国の料理人ですかな?」
ペレスは真面目にサムの腕をベタ褒めするモルズに、
「いいえ、サムはこの王都出身ですよ、腕を上げたのは最近です、料理の師匠が規格外の者でして、」
「甥のカーンがですか?」
「いいえ、うちの料理人達もその者に習っているのです今日はこちらに居りませんが、
私は仕事に戻りますので、サムとの話が終わったらサムに屋敷の厨房に案内して貰って下さい、あと今晩仕事が終わったらここで一杯どうですか?」
「執事長殿ありがとうございました、ぜひご一緒させて下さい、」
頭を下げるモルズにペレスも軽く頭を下げて空いたトレーをカウンターに返却して食堂から出ていった、
モルズもカウンターにトレーを置くと、
「モルズ様とお呼びしても良いですか?」
「ああ構わないよ、サムだったかな素晴らしい料理だ!この食材をパンに挟んだ料理も食べてみたい物だ、」
「気に入って頂けて良かったでさぁあ、」
カウンターの中にトレーを片付けるサムを見ながらカウンター越しに厨房を見て、
「サム、厨房の中に入れてくれるかい、」
「ええ、かまいやせんどうぞ、」
モルズは厨房の中に入り周りを見渡す、
ここは厨房なのか?料理用の魔道具が並んでいるのだろうが使い方がさっぱり分からないが美しいと感じてしまう厨房だ、大きな鍋でスープを煮込んでいるのだろう、これまた嗅いだ事が無い食欲をそそる匂いを発している、
「サム、素晴らしい厨房だな、こんな厨房見た事が無い、」
「へい、あっしも厨房を改装した次の日は今のモルズ様と同じ顔をしてやしたよ、」
「この良い匂いは夕食のスープかい?」
「へい、カレーと言う料理なんですが、穀物を炊いた物にかけて食べる使用人の皆様の人気メニューでさぁ、モルズ様もきっと気に入って貰えると思いまさぁ、」
「それは楽しみだな、でサムにこの料理を教えた方はどんな方なんだい?」
「へい、私からは詳しく申せませんが辺境伯様の御養子様です、」
「ほう、今いらっしゃらないと聞いたが辺境領に?」
「はい、ご実家も辺境領にあるそうでさぁ、」
「それは残念だ、是非お会いしたかったのだが片道一ヶ月近くかかる辺境領では、」
サムはなんとも言えない様な顔をしながら、
「今晩モルズ様の歓迎会も兼ねて夜ここで男使用人だけで飲み会をしようと、エルル様に言われていまして、」
「先程執事長殿にも誘って頂いたのだがエルル様は今辺境領ではないのかい?」
「あっしの口から全てを話す事は出来やせんが、大変規格外なお人でして、辺境領とこのお屋敷を隣の部屋に移動する位の感覚で行ったり来たりなさりまさぁ、」
モルズは話を聞いてしばらく呆けていたが、
「そっ、それは凄いな夜お会いするのが楽しみだよ、あと厨房の魔道具の説明もして欲しいのだが、」
「へい分かりやした、ですがモルズ様、ホールの厨房で料理されるのでしたら、カーン様やロック様に教えていただいた方がよいのでは?」
「お屋敷の厨房もこの様に素晴らしい厨房なのかい?」
「へい、こちらより広い厨房でさぁ、お客様もみえますので美しい厨房でさぁ、」
「わかったサム、カーンの所に案内してくれるかい、」
「へい、分かりやしたこちらです、」
「料理人殿、今日は娘は居らぬのか?」
「ランファン様、エルル様は男の子ですよ、」
「分かっているのだが、娘にしか見えんでな、で娘は?」
「今は辺境領にいらっしゃると思いましたが、」
「残念じゃぁ、使いついでに一緒に鍛錬をしようと思ったのだが、」
「エルル様がランファン様の食事を用意して行かれましたが食べていかれますか?」
「もちろん食べていく!帰ったら殿下やティュカ様に自慢してやろうかの、二人とも儂について行くと言って伯父上を困らせておったでの、」
カーンはエルルが用意していった笊蕎麦を出し、
「ランファン様この料理はお蕎麦をこちらのツユの中に一度浸し食べて下さい、」
ランは出された蕎麦を箸でひとつまみして、
「うむ、これはまた変わった食べ物じゃのう、ソルバの香りがするがソルバの実を使っているのか?
国でもソルバの練り物がスープの中に入った物や焼いた物をよく食べておるが、
どれツユにつけすすれば良いのかの、」
ランは蕎麦を箸でつまみツユに蕎麦を浸し、
するするとすすると、
「おお!料理人殿これは美味い!ソルバの風味も良いがこのツユがソルバの麺と絡みあい至高の味になっておる、それにツユから出ている森タケの風味も良い!」
「ランファン様凄いです!ツユの出しが森タケと私は気づけませんでしたよ、」
モルズはサムに案内され厨房の裏口より中に入るとロックが、
「サムお疲れ、親方お久しぶりですねようこそ公爵家の厨房へ!」
「ロック久しぶりだなお世話になるよ、
それにしても素晴らしい厨房だな先程使用人食堂の厨房を見てきたから驚く事に慣れたがこちらの厨房の方が大きく美しい、厨房が美しいと感じるなんて初めてだ、」
「ええ、俺っちもこの見事な厨房で仕事が出来て幸せです、」
「ロック様、それではあっしは戻りますんで、あと今晩の準備は本当にいらないんですかい?」
「ああ、エルル様がそうおっしゃっていたから大丈夫だろ、お疲れ!夜にな、」
「サム、案内してくれてありがとう、」
サムは頭を下げ出て行く、モルズは厨房の中を見渡しながら、
「で、カーンは?」
「大将は今外国のお客様の接客中です、あちらの隅は表の厨房に繋がっていまして、」
モルズは隅まで行き表の厨房をこっそり覗く、
そこは料理台の向こうがカウンターになっているようで、一目でわかるファーセル人が美味しそうに食事をしながらカーンと話していて、料理の味を褒めている、
食にうるさいファーセル人がオーライドの料理人を褒めている、
それに料理人が客と直接対面して話しながら料理を出すとは、
「親方驚いたでしょう、俺っちも最初は驚きましたが今は料理人としての考え方が変わりました、見て下さいよあのファーセルの客人あちらの国の高位貴族の方なんですよ、」
「ああ、驚いた、カーンはよっぽど美味しい料理を出しているみたいだな、でロックは今何を作っているんだい?」
「ファーセルの皇太子殿下と皇太子妃殿下に頼まれた菓子を作っている所です、」
「ロック、それは凄い事だぞ、」
「いやあ、先日公爵家がファーセルの皇太子殿下達を接待したのですが、うちの料理やお菓子を殿下達がお気に入りになって、大使館を通じてうちの主人様がお願いされまして、」
「なあロック、先日ナタリア姫殿下がお城に持ってみえたケーキは、」
「あれは俺っちが作ったんですよ、喜んで頂けましたか?」
「ロックが作ったのか!ロック!ギルドの料理レシピからあれ程のケーキを作ったのか?」
ロックは頭をかきながら、
「大将、ギルドのレシピは見た事が無いですが、俺っち達はエルル様から料理を教えて頂いているんです、」
そこにカーンが表から顔を出し、
「ロック、お菓子の準備は出来ているか?」
「大将出来てますよ、あと親方が、」
「叔父貴!いらっしゃい、お客様がお帰りになるので少し待っていてくれ、」
カーンはロックに渡された包みを受け取り表に戻って行き、
しばらくすると、カーンが厨房に入ってきて、
「叔父貴久しぶりですね、親父は元気にしてますか?」
「ああお前に宜しくと、あと孫に会いたがっていたぞ、」
「ジーンは先代様の所で働いてますよ、最近はうちと同じでエルル様とお弟子様から色々料理を教えて貰っているようで、料理が楽しくて仕方ないと手紙に書いていましたよ、」
「サムもエルル様は規格外の方と言っていたがそんなに凄い方なのか?」
「俺にとっては神様みたいな方だな、叔父貴も今晩直接話すと良いよとてもきさくな方だから、」
「楽しみにしよう、でこれから夕食の支度なのか?」
「叔父貴、支度の前に調理器具の説明からだな、」
「ああ宜しく頼む、」
夕食も終わった使用人食堂に屋敷で働く男達が集まっている、
「それにしても公爵家の使用人寮は素晴らしいな、カーンはどこに住んでいるんだ?」
「叔父貴俺は寮の裏手にある建物で妻と暮らしているよ、ロックは屋敷に小部屋を貰っている、」
「やはりそこも寮の様なのか?」
「いや普通の住まいだ、ここはエルル様が改装なさったんだ、」
「本当に規格外な方なのだな、この食堂も異国のようだ!
それに厨房と繋がるホールと言う所を見た時は本当にここがオーライドかと疑ってしまったよ」
「叔父貴、ここでしばらく働けば慣れるよ!
あと執事長酒の用意もしていませんが?」
「料理長、エルルが作った酒を飲んだら私達が王都で買える酒では、
今日は私が皆にエルルの酒をご馳走させて貰うよ、」
ロバートは驚き、
「本当ですか?執事長!結構な金額になると思いますが、」
「なに、たまには皆を労わせてくれ、」
「執事長殿!その役は私の役ですぞ!どれだけ掛かろうと構わないので私に払わせて頂きたい!
その様に貴重な酒なら私も飲んでみたい!」
「執事長!親方!ゴチになります!お二人に頑張ってもらえばいつもより良い酒が飲めますよ!」
「コラ!ロック、調子に乗るんじゃない!」
カーンがロックをたしなめていると、
そこに黒髪の美少女がジーンを連れて突然あらわれ、
「すいません、少し遅れました!」
モルズがジーンと黒髪の美少女を見て固まっているとジーンが、
「本家のじーちゃん久しぶり!じーちゃんは元気?」
「ああ、ヒルズは元気だお前にあいたがっていたよ、でそちらの娘さんはどなただい、」
いきなりジーンに話かけられ応えるモルズに黒髪の美少女が、
「始めましてエルル・ルコル と言います、」
「貴女様がエルル様なのですか?」
「はい料理長様、私はギルガス公爵家執事見習いですのでエルルとお呼び下さい、
あと僕は男ですからね!」
「私はモルズ・バイツと言います貴女様に教えを請うためここに来ています、どうかカーン達のように様付でお呼びする事をお許しください!エルル様!」
エルルは口を尖らせて、
「ほら料理長やロックさんが様付で呼ぶからぁ!」
「エルル!モルズ殿の思う様に呼んで貰えばいい!
そんな事より、お前に言われるまま何も用意してないのだが、」
と、ペレスに言われたエルルは、自信たっぷりに、
「辺境領の屋敷でジーンさんと用意して来ましたよ、直ぐに用意しますね、」
エルルはそう言うと飲み会様に繋げたテーブルの上に次々料理を並べて行き、
皆の前に凍る様に冷えているジョッキを置いて行き、エルル特性のビールを注いで回り、
「では皆さん、このお酒はエールに似たビールと言うお酒です、先ずはこのお酒で乾杯を!
とその前に執事長乾杯の挨拶をお願いします、」
「エルル、私は挨拶より早くこのビールと言うお酒や料理を食べたいのだがまあ、
モルズ様公爵家にようこそ、週末には公爵家の夜会も有る、皆で力を合わせて公爵家を盛り上げていこう!乾杯!」
「「乾杯!」」
皆がジョッキを合わせビールを飲むと、
「くぅーっ!これは美味いですねエルル様!癖になる喉越しです、一気に飲んじゃいましたよ!」
「ロックさんお代わりはカウンター横の冷蔵庫の中に入れて置きますので取り出してご自由に飲んで下さいね、
他のお酒が良い方はその都度声をかけて下さい!」
「本家のじーちゃん!俺の作ったこの海流魚のカルパッチョって料理食べてみてよ!
めっちゃ美味しいから、大旦那様や奥様にも好評だったんだよ、」
「ジーン、海流魚は海の魚だろう、これ生じゃないか!大丈夫なのか?」
「料理長様、王都にあるモルガン商会が画期的な方法で海の魚を新鮮な状態で仕入れているんですよ、」
話を聞いたモルズがホークでカルパッチョを口に入れ、
「うっ、美味い!」
「でしょう、じーちゃん!他にも沢山つまみ作って来たからたべてよ!」
皆がエルルが出したつまみを夢中で食べ、
ジャン先輩はピザにハマったみたいでロバートさんは唐揚げを食べビールを飲んで幸せそうな顔をしている、
テーブルの隅で遠慮がちにビールを飲んでいるサムに、
「さあ!サムもいっぱい食べて味とレシピを覚えてね!」
「へい、ありがとうございますエルル様、このビールって酒は美味いですね、こんな美味い酒飲んだ事がありやせん!」
「エルル!私は何時もの蒸留酒を出してくれないか、今日は奮発していつもより高い物でも構わない、」
エルルは透明な瓶に入った琥珀色のお酒を出し、
「穀物から作ったお酒でウイスキーと言います、蒸留した穀物の酒を木の樽の中に入れて寝かせたものですね、豆を炒った物やチョコレートにもあいますよ!」
「おお!新たな酒との出会い!女神様に感謝を、」
執事長は大きな氷が入ったグラスにウイスキーを注ぎ、
キュッと一口飲み、
「至高の味だ!なんて美味さだ!」
「執事長殿、その様に美味い酒なら私にも、」
「おお!モルズ様、ささ飲んでみて下さい!」
「素晴らしい!素晴らしい酒だ今日食べた料理と言い、別の国に来ている様だ、」
少し涙ぐみながら料理を食べるモルズにエルルは、
「料理長様、私が作る料理は決して難しい料理ではありません、一度覚えてしまえば誰にでも簡単に出来る料理ばかりなんです、
うちの料理長ともよく話すのですが、このレシピを元に料理長が今まで培ってきた料理の知識をたしてより至高の料理が出来る事を楽しみにしていますね、
あとナタリア母様より宮中晩餐会のアドバイスをする様に言付かっています、多少はお役に立てると思いますので良かったら相談して下さい、」
「ありがとうございます!エルル様!ぜひご教授下さい!」
男連中が酒も入りワイワイ盛り上がっていると食堂の入り口にメイドの先輩達が集まっていて、
代表で侍女長が、
「エルル!皆が大声で美味しいと叫んでいたら気になって仕方ないじゃない!私達も混ぜて頂戴!」
結局メイドの先輩達も飲み会に合流して大宴会になっちゃったよ!
後日王城の後宮最奥の部屋に国王ジュリアスが入ってくると、ナタリアとリリスがケーキを食べていて、
「はて、姉上今日登城されるとは聞いていませんでしたが、」
「ジュリアスごめんなさい、こっそり入って来てるの内緒にしてね、
で母様の案を聞いたんでしょう?」
「ええ、辺境領の魔の森で別人として暮らし始めるとの事ですね、
実際その様な所に住める物ですか?」
「ええ問題は無いわ、ここより良い生活が出来るわよ、あとこれ息子が作った晩餐会の企画書、一度読んでみてきっと王家のためになるはずよ、返事は母様にしておいてまた来るから、」
「分かりました母様の事も早急に返事をする様にいたします、」
「あと明後日のうちの夜会にもお忍びで参加してみて、きっとおどろくわよ、
その時息子を紹介するから、」
「はい、分かりました姉上様楽しみにしています、」
ありがとうございました。