ルコル
宜しくお願い致します。
第二十ハ話 ルコル
「お母さん!担ぎましたね!」
「ええ、こうでもしないとエルルが母様に逢えないでしょ!」
今皇太后リリスが近習のカレンと共にイオに案内されながら森の自宅の温泉に入っている、
半刻前、エルル達が離宮に入ると二十代半ばほどに見えるアマゾネスの様な美しい女性が凄い勢いで腹筋をしていて、入ってきたナタリアに気付くと
「ナタリー!久しぶりね!ふん!ふん!ちょっと待ってて、ふん!ふん!」
女性は腹筋を終えると近習の女性からタオルを貰って汗を拭く、
この近習の女性も凄い細マッチョさんだよ、
汗を拭き終わった女の人にナタリアが、
「母様お久しぶりですわ、変わらず元気そうでなによりよ、」
「ナタリー貴女綺麗になったじゃない、で背後のとんでもない娘は誰だい?」
「母様!他人の能力を読み取るのはマナー違反ですわ!」
「ナタリー、他国では自分の能力を隠すどころかセールスポイントとして公開している場合がほとんどなんだよ、ファーセルのティュレイカ妃の瞳とか有名だろ、大体能力を覗かれようが公開しようが実際には本人しかわからないし個々によって能力の見え方が違うそうよ、
だからこの国の者達の様に秘密にしているとかえって胡散臭いわよ!
ちなみに私はその者が放つ光の色や強弱で何となく感じる程度さ、ティュレイカ妃は名前や称号や持っている能力を読み取る事が出来るそうだがね、」
エルルは皇太后リリスの話を聞いて、
なるほど色々な考え方があるんだな、ってでもこの皇太后様ってナタリア様のお母さんなんだよな、若すぎないか?
エルルは基本的には他人のステータスを覗く事は無いが、怪我や病気の治療の為にはスキルを使う、また若様やティュレイカ様の時の様に見た瞬間に自動でスキルが発動する場合もあり、理由は分からないがその場合は瞳の色は変わらない様だ、
でも皇太后様のステータスは鑑定しちゃダメな様な予感がするよ!危険な香りがプンプンだよ!
「ティュレイカ様にこの子称号まで読まれちゃったみたいよ、」
「ほおう、ティュレイカ妃の瞳を発動させるとは大した者だよ、私の瞳もその子はヤバイって言ってるよ私以上の存在の様だねぇ、ナタリー紹介してくれるかい、」
「この子はエルル、私の養子よ!」
「エルル・ルコルと言います、宜しくお願い致します皇太后様、」
エルルの名前を聞いた瞬間にリリスは眼をスッと細めナタリアに、
「ナタリー!この娘はなぜルコルの姓を名乗っている?」
「剣聖様の孫だからよ、」
「ラルルの孫だと!そんなはずは、」
「皇太后様、私は赤子の時に魔の森深くで祖父ラルルに拾われ孫として育てられました、今は祖父母共に他界し、辺境伯様にお世話になっています、」
「そう言う事かい、でエルルだったね、お前に私はどう写る?」
「皇太后様、正直覗きたく無いのですが見ても?」
「構わんさ、説明する手間がはぶける
よ、」
エルルがリリスを鑑定すると、
リリス・バチュラ・ブリネン 種族ハイヒューマン 称号(戦乙女) ・・・
ナタリアお母さんのお母さんはハイヒューマンって!しかも称号が戦乙女って、
「その顔をみるとかなり詳しく読めるようだねぇ、ティュレイカ妃以上か、私の全てを見て良いのはソルス様の所で待ってる父ちゃんだけだよ!助平な娘ちゃん、」
驚いているエルルを茶化すように言うリリスにナタリアが、
「母様!私の可愛いいエルルをからかわないで!それととても汗臭いわ、」
リリスは自身の体をクンクンと匂い、
「私じゃなくカレンじゃあないのかい、」
「なっ、リリス様!私は臭くなどありません!」
真っ赤になってる近習さんにナタリア様が、
「二人共臭うわよ、母様少し外に出ない?息子の家に招待するわ、良いでしょエルル?」
「僕はかまいませんが良いのですか、」
「孫のアルクの屋敷かい?私が外に出るのは手続きや何やらで面倒だよ?」
「母様エルルの家よ、辺境領の魔の森深くにあるわ、」
「まさか転移かい?」
「転移も出来るみたいだけどゲートと言う魔法だったかしら、」
「行く!行く!直ぐ行く!カレン、私の着替えを!」
「ああ母様、そのままで良いわ、あとは全てこの子に任せておけば良いわよ、エルル良いかしら、」
エルルは頷き、耳のイヤリングに手を添え、
「イオさん、おつかれ様!森の家にお客様がみえるから準備を宜しく!
お母さんオッケーですよ、でも勝手に皇太后様を連れ出してしまって良いのですか?」
「良い!良い!カレン後は上手くやっておいて!」
「何を言ってらっしゃるのです!私もお供するに決まっているじゃないですか?」
「私は構わんが、全員転移できるのか?」
「問題ありませんよ、」
とエルルはゲートを開き、
「さあこの中に入って下さい、」
「じゃあ母様こっちよ、」
とナタリアに手を引かれてリリスがゲートの中に入って行く、カレンさんが、
「付き人殿、少しだけ待って頂きたい、騒ぎにならぬよう手を打っておきたい、」
「はい、どうぞでは待っていますね、」
カレンさんは慌てて部屋を出て行き思ったより早く帰って来たよ、
ゲートから出たリリスは玄関でイオの出迎えを受け、今はリビングを見て目を輝かせている、
「なんと!不思議な部屋だ!外が丸見えだぞ!」
リビングではしゃぐリリスに驚いているイオに、
「イオさん、ただいま!あの方はナタリアお母さんのお母さんで皇太后様です、」
「えっ!ナタリア様のお母さんですか?」
「ええ、後ほど詳しく話しを聞きましょう、僕も少し驚いています、
あっ、こちらは皇太后様の近習のカレンさん、二人を温泉に案内してくれるかな、多分使い方が分からないと思うから、」
イオはカレンに頭を下げ、
「エルルさんの弟子のイオ・タリスマンです、」
「王宮衛士所属、皇太后近習のカレン・ブランです、貴女はもしかしてウォーレン・タリスマン宰相秘書官とリン・タリスマン衛士のご家族の方かな、最初アルマンに連なる方かと思いましたが、」
「はい父と姉です、カレンさんはもしかして公爵家に家族の方が働いていませんか?」
「ギルガス家に妹のアニーが使用人として働いていますが、」
「やっぱり!私、今は辺境伯付きなのですが、アニー先輩にはお世話になっています、普段はナタリア様と共に行動する事が多く、王都と辺境領屋敷とここを行き来しています、」
ふいにリリス様が、
「おや、その子も転移が出来るのかい?そんな風には見えないけどね、」
「皇太后様、私の弟子のイオです、イオさん腕輪を外してみて、」
言われたイオが分かりましたと腕輪を外すと、
「あんたも化け物だったのかい!凄まじい魔力だよ!」
「母様!私の可愛いい付き人になんて事いうの!後、勝手に覗いては駄目よ!イオ母様と近習をお風呂に連れて行って!臭くてしかたないわ!」
イオが二人を中庭の温泉に連れて行くと、
「お母さん!担ぎましたね!」
「ええ、こうでもしないとエルルが母様に逢えないでしょ!」
「もう!最初は本当に何か重い病なのかと心配しちゃったじゃあないですか!」
「許してちょうだい、母様の事で相談に乗って欲しかったのよ、それにエルルの祖父様と母様は同じ国の出身で縁があるの、聞いたことないかしら、」
「爺ちゃんは剣聖として皆に剣を教えていたとしか、あまり昔の事を語りたがりませんでしたね、」
「詳しくは母様が話してくれるわよ、母様は海の向こうの島国ブリネンの第二王女だったのよ、」
「では、爺ちゃんもブリネンって国の出身なんですね、」
「ええ、後は母様がお風呂から上がってからにしましょう、」
「分かりました、着替えて皇太后様達の着替えを用意して来ますね、」
と言ってエルルは部屋に戻り自身にクリーンの魔法をかけウイッグを外しいつものシャツとパンツ姿になり鏡に映る自身を見て、
ふう、やっぱりこうじゃなきやね!
風呂上がりにリリスはイオにマッサージをして貰いなから、
「ふぅーここは最高だね、貴女イオとか言ったね、」
「はい皇太后様、イオとお呼び下さい、」
「じゃあイオ、エルルの弟子になってから、称号が変わったんじゃないかい?私の予想が正しければ、貴女の称号は使徒じゃないかい?」
イオの動きが一瞬止まり、その後リリスから目を逸らす、
「答えなくても良いわ、でも貴女とも長い付き合いになりそうね、よろしくねイオ、」
そこにエルルが入って来て、
「皇太后様、ここに着替え置いていきますね、」
「エルルかい、ここは本当に極楽だよ、ってあんた髪は付け毛だったのかい!」
「皇太后様、僕は男ですよ、ナタリアお母さんに頼まれて女装していただけです!」
「私に会うために女装までしたのかい、それは難儀だったねぇ、でもエルルだったらそのままでも問題無く後宮に入れるだろうね、
あとここまで来たのは転移魔法ではないね、よくよく考えたら王族の居住スペースは転移魔法を阻害する結界が張ってあるんだよ、」
「空間魔法の派生のゲートと言う魔法ですね、僕は転移も使えますが、イオはこの魔法で移動しています、リビングで待っていますのでマッサージが終わったら着替えて来て下さいね、」
リビングでエルルが用意した山桃の炭酸ジュースの上にアイスクリームを乗せた物を夢中で食べるリリスとカレンにナタリアが、
「母様、そろそろお話に入りたいのですが、」
「ちょっと待ってちょうだい!ズズッ!この不思議な飲み物が美味しいのよ!ズズズゥー!」
リリスはストローで最後までジュースを吸い上げると、
「ふぅー、美味しかったよ!どこまで話したんだったけ、」
「まだ何も話してないわよ!」
ナタリアの突っ込みを分かっていると手で制し、
「冗談だよ!おっほん、まず自己紹介から、
私の名前はリリス・バチュラ・ブリネン、
今はこの国で皇太后をやってるが、出身はブリネン王国で十五の年にこの国の当時皇太子だった父ちゃんの所に嫁入りして 今は美しい未亡人さ!・・・・
って!貴女達なんとか言いな、」
「リリス様、ご自身で美しいと言われるのはどうかと、皆さんが引いていらっしゃいます、」
「分かってるわよ!じゃあイオ!私は今いくつくらいに見える?」
「はい、私には皇太后様は二十代位にみえます、」
「ありがとう、私は実際にジュリアスを産んだ時から姿が変わってない、まあファーセル人の様に妖精種ではないけれど人間種の中に極々稀に産まれるハイヒューマンって種族さ、私の祖国のブリネンでは、建国の母と言われた初代女王がハイヒューマンで聖女だったとか戦乙女だったとか、
五代にわたり代々のブリネン女王を陰から支えたと伝わっているね、その話しが本当なら私はエルフと同じ位の寿命があるって事だよ、」
「皇太后様は先祖返りされたと?」
「エルル、初めて聞く言葉だけど正にその通り!あんた上手いこというね、
ブリネン王国の王家はどういう訳か分からないが、王女しかうまれず、王女の中で一番優れた者が女王になるしきたりでね、私は年の離れた姉と二人姉妹だったんだよ、で姉が今もブリネン女王を未だやってるそうだよ、」
「でも、初代様と同じ称号を持たれている皇太后様がなぜ女王に即位なさらなかったのですか?称号とか隠さないんですよね、」
「ああ、その時今の称号を持っていれば私がブリネンの女王になっていただろうね、能力だって経験が増えれば上位の能力に変わるし、称号だって立場で変わるもんだよ、とんでも称号を持ってる者をのぞいてね、
で、その時の私はヒト種の王女だったんだよ、その後オーライドに嫁ぎナタリアが生まれジュリアスを産んだ後、王都の大聖堂でジュリアスと一緒に当時の大神官に祝福を受けた時、私の種族がハイヒューマンになってて称号も戦乙女なんて、物騒な称号になっていたね、多分もう変わる事はないだろうね、」
「皇太后様、ハイヒューマンとは遺伝ではなくあくまで突然変異という事ですか?」
「エルル!あんた学者かい?その若さでその知識!驚いたね、私も父ちゃんに頼んでハイヒューマンに関する文献を集めて貰って調べたさ、
その学者達の研究によると、ハイヒューマンは遺伝しない、あくまでもその者一代限りで
寿命はハイエルフと同じぐらいだと書いていた学者もいたね、」
「あ、あの皇太后様は種族がハイヒューマンになってから見た目が変わらなくなられたのですか?」
と、珍しくイオが質問したのに対し、リリスはいたずらっぽくニヤリと笑い、
「エルフとは少し違い成人位までは普通のヒトと変わらないそうだよ、種族もヒト種になっている事が多いと書いてあったね、
心配しているのかい?」
はっ!として手をばたばた振るイオに微笑み、そしてエルルをみて、
「エルル、私をここに置いてくれないかい?」
「皇太后様がここに住まれるという事ですか?」
「ダメかい、私はそろそろ崩御しようと思ってるんだよ、これからずっとあの離宮で暮らすなんて事は出来ないよ、
私の秘密は先代近習のカレンの母と王族しか知らないからね、
幸いな事に皇太后が王族意外の者に会うことは無く、崩御しても秘され王族だけの密葬だから私が居なくなっても何も問題は無いし、勿論生活費は入れる、あと冒険者がやってみたいんだよ!
幸いここは魔の森だからね腕がなるよ!」
「エルルお願い!母様をここに住まわせて、ここだったら私もいつでも会えるわ、」
「皇太后様、崩御だなんて縁起でもない事言わないで下さいよ!僕は構いませんよ、イオさんはどうです?」
「もちろん私も問題ありません、」
「皇太后様分かりました、引っ越してみえるまでにこの家を少し増築しておきますね、
僕はナタリアお母さんの息子ですので皇太后様の孫だと思って下さい、
ただこの家にはお客様もありますので皇太后様との間柄と名前も新たに考えた方が良くないですか?」
「ありがとう、私を家族だと言ってくれるんだね、
では私はブリネンからラルルを訪ねて来たリリル・ルコル 、エルルの叔母でどうだい、二人共もリリル姐さんとでも呼んでおくれ、
ただエルル、ルコル という姓はブリネンの大公爵家の姓なんだ!お前の祖父の実家だよ、」
「リリル姐様、爺ちゃんて貴族だったんですね、」
「ああ、ルコル家は初代女王と共に建国に尽力した大魔女が開祖だと伝わっていてね、
この大公爵家も代々女しか生まれなかったんだよ、ラルルが生まれるまでわね、
代々魔女の家系に剣聖の称号を持った男児、
ラルルは成人すると直ぐにルコル家を出て女王直属の騎士団に入団してブリネン中を巡り魔物を討伐していった、中でも天災級のドラゴンの単独討伐を成功させた事で、ブリネンの英雄と呼ばれ次期大公爵にと周りが騒ぎ始めてね、
次期を同じくして私とオーライド聖王国の皇太子との結婚が決まりブリネンを離れる事になり、ラルルは自ら私の護衛を志願して宦官となり共にこの国に来たんだよ、」
「えっ!宦官って、爺ちゃん付いてましたよ!!」
「エルル!あんた何言ってんだい!宦官って言っても一時的に不能にする魔法をかけるんだよ!嫁入り前の王女の護衛になる男性騎士の決まり事さ、任が解ければ魔法を解除するだけだからね、
ただ、希に魔法を解除した者が子供が出来ないって事もあってね、」
僕の知識の宦官とはだいぶ違う物の様だ、
爺ちゃんに子供が出来なかったのは、やっぱりその魔法をかけた後遺症だったのだろうか、
今となっては分からないが、爺ちゃんはきっと家族の事を思い自らこの国に来たんだろう、
「エルル、難しい顔をしているね、きっとラルルが家族で争うのを避ける為に私に付いてブリネンを出たんだと思ってたろ、」
「姐様、違うのですか?」
リリスは笑いを堪えながら、
「ラルルはね、母の大公爵や姉達から他人が見たら引く位にそれはもう愛されていたんだよ、成人して直ぐに家を出たのも母や姉達から逃げたかったのさ、
ラルルのオーライド行きが決まった時、大公爵は爵位を娘に譲りラルルに付いて行くと大暴れした位だよ、」
姐様せっかくの美しい爺ちゃん像が今の話しで台無しだよ!
「母様、エドだけには母様の事を話したいのだけど良いかしら、」
「これからは会う事も多くなるからね、かまわないよ、」
「リリル姐様、後日僕とイオも冒険者登録をしようと思っていましたので、一緒に登録しましょう、バレス辺境領の冒険者ギルド長への紹介状を貰っています、」
「本当かい!楽しみだねぇ!ねえエルル、私はここ数年城の外に出てないんだ、少しな間で良いから森に連れて行ってくれないかい?」
「リリス様!いけません!ここは魔の森の奥ですよ!」
「カレンさん、僕やイオがいれば大丈夫ですよ、それに姐様のオーラに当てられて魔物は近づいてきませんよ、」
「わかりました、ですが心配ですので私も連れて行って頂きたい!」
「分かりました、ただ今日はあまり時間も無いので魔道具に乗って辺りを回って来るだけですよ、二人共一応このマントを羽織って下さい、」
「エルル、私は留守番しているから!帰ったら少し早いけど夕食にしてくれるかしら、母様、美味しい夕食を食べていかない?」
「食べる!食べる!さっき飲んだ飲み物もまた飲みたいよ!」
「分かりました、じゃあい行きますよ!」
玄関から外に出てエルルとイオはローブを羽織り二人共魔導バイクを取り出す、
バイクを見たリリスが目を輝かせながら、
「なんだい!これが魔道具なのかい?」
イオが魔導バイクにまたがりながら、
「空飛ぶ馬ですよ!カレンさんは私の後ろに乗って下さい、」
「じゃあリリル姐様は僕の後ろに、」
リリルとカレンがおっかなびっくりバイクにまたがると、二代は並んで空に舞い上がる、
「ぎゃあぁー!あぁー!」
リリルは突然空に舞い上がった魔導バイクに驚きエルルに思いっきりしがみつく、
「ぐぅえぇー、あっ、姐様!くっ、苦しい!大丈夫だから腕を緩めて!」
アマゾネスの様なマッチョの女性に締められ顔が紫になっちゃってるエルルを見て、 並走するイオの後ろに乗るカレンが、
「リリル様、目を開けて下さい!大丈夫です、素晴らしい景色ですよ!」
カレンの言葉にエルルにしがみついていたリリルがしがみつく力を緩めてチラリと眼下を見れば、美しい森や湖が見え、
「なんて綺麗な所なんだい!それに空を飛んでるよ!」
「リリル姐様!ソルス様の所へ行った婆ちゃんが花畑の向こうで手を振っているのが見えちゃいましたよ!」
「エルル!飛ぶならちゃんと飛ぶと言っておくれ!いきなりでびっくりしたじゃないか!
あっ!あそこの美しい湖に行っておくれ、」
「了解です!湖の周りを一周したら家に戻りますからね、少し飛ばしますよ!」
その後リリル姐様は魔導バイクに慣れたのか、帰りはもっとスピードを上げな!とか地上すれすれに飛びな!とか注文を付け、最後は自分で操るって言い出して、
運転はまた次の機会に教えると約束して帰って来たよ!
自宅に戻りアイテムボックスから作り立ての料理をテーブルに次々並べていく、
並んでいる見た事がない料理を一口食べ、一瞬だけ固まった後、カレンと共に夢中で食べ出したリリルが、
「ナタリー!私、今日からこの家の子になるよ!ジュリアスに私はルコルの家の者になったと伝えておくれ、」
「母様!駄目に決まってるじゃない!」
「ナタリー、あんたずるいよ自分だけこんな美味しい食事を毎日してるなんて!」
文句を言いながらも次々料理に手を伸ばすリリルにエルルが、
「姉様、夜会のシーズンが終わるまで待って下さい、しばらくお休みが公爵家より貰える事になっています、ナハリに行く予定ですが、平行してこちらも準備しておきます、
で お母さんどうですか?」
「わかったわ、一度ジュリアスに相談してみるわね、じゃあ母様食事が終わったら帰るわよ、」
エルルは今日着ていたメイド服のセットを出して、
「イオさんこれを着て王城に付いて来て下さい、帰りはイオさんとお母さんで帰って来て下さいね、」
と、僕は絶対着ませんよ!と無言の笑顔でお願いしたら、イオさんが、
「エルルさん!嬉しいです、今日エルルさんが着てるのを見て羨ましかったんです!直ぐに着替えてきますね、」
イオが着替え終わるのを待ち離宮にゲートを開き皆で離宮に戻る、
「次からは基本的にイオさんが迎えにきます、僕は男の子なので念のためにですが、」
「わかったよ、エルル今日はありがとう、
この素敵な下着とか服は貰ってしまっても良いのかい?」
「ええ、差し上げますよ、」
こちらに帰って来てから何か考え込んでいる様に見えたカレンがエルルに、
「あの、お願いがあるのですが、」
「カレンさん何でしょう?」
「はい、リリス様が魔の森に移られましたら、私を皆様の使用人として置いて頂けないでしょうか、」
「カレン!あんた何いってんだい!ダメだよあんたには衛士の仕事があるだろ!それに魔の森はカレンにはギリギリの所だよ、」
「もっと精進して強くなってみせます、リリス様!お願いします、」
「カレン、私は許可を出せない、あそこはエルルの家だ、」
「エルル様!お願いします、」
「僕はかまいませんが、お母さんはどうです?」
「そうねえ、エルルやイオがずっと居る訳でもないから、正直貴女が居ると助かるわ、
エドと相談になるけれども、あそこで働きたいのなら、辺境伯家の使用人として働きなさい、でどうかしらエルル、」
「はい、ありがとうございますお母さん、
カレンさんギルガス家の使用人となったら僕やイオさんの同僚です!これから宜しくお願いします、じゃあ僕は帰りますので、」
と笑顔で手を振りながらゲートに入って行った。
ナタリアとイオが後宮の入り口まで出て来ると、入り口にまだリンが立っていて、
ナタリアに頭を下げた後側仕えのメイドが黒髪から銀髪になっていて驚き、
「わっ!お姉ちゃんの仕事姿初めて見たよ!カッコ良いよ!」
さらに側仕えが自分の妹に変わっていて、
おどろきで口をパクパクさせていた。
ありがとうございました。




