ご挨拶はお土産を持って!
よろしくお願い致します。
第二十二話 ご挨拶はお土産を持って!
「エルルさん、ナタリア様達は寝室に行かれましたよ、」
「お疲れ様でした、イオさんこれ今日作った魔道具ですまずはこのネックレスから、」
エルルはイオにミスリル鉱を糸状まで伸ばし細かく編み込んだ細身のネックレスをイオにわたす、
「凄い!金属の糸で編んだネックレス、こんな物を貰っても良いのですか?」
「はい、イオさん伯爵様から譲って貰ったミスリル鉱を使った物です、今のイオさんではまだ不意打ちに対処が出来ません、この魔道具は常にに微弱な結界を張っていて不意打ちや予期せぬ事態から、イオさんを守ってくれますよ、あっでも空間魔法が使えない人には只のネックレスですから、」
「ありがとうございます、大切にします、」
次にエルルは白い小さな魔石にこれまた精密な魔方陣が彫み込まれたイヤリングを二つ出し、一つを自分の耳に付けもう一つをイオに渡し、
「イオさん、このイヤリングは対になる魔石の空間に声を届ける魔道具です、耳に付け魔石を触りながら話すともう一つのイヤリングに声が届きます、」
イオはイヤリングを耳につけると、ワクワクしながらイヤリングに触れ、
「あー、あー、聞こえますか?エルルさん?」
エルルは苦笑いをしながら、
「イオさん、目の前で話されても直接聞こえちゃいますよ、僕これから公爵家の寮の部屋からイオさんに話かけてみますね、ちょっと待っていて下さい、」
と、エルルがその場から消え直ぐに、
「もしもし、イオさん聞こえますか?こちらは寮から連絡しています!」
「あー、あー、聞こえていますよエルルさん、こちら森の家のイオです、」
「もしもし、イオさんの声も聞こえます、成功ですねこれから帰ります、」
直ぐ隣にエルルが現れ、
「これで何処にいても直ぐに連絡が取れますね、」
「はい、凄い魔道具です!画期的です!」
「でもこの魔道具も空間魔法の素養が無いと使えないんですけどね、あとは護身用の武器がこれです、」
エルルは白銀の拳銃のような形の魔道具を出し、
「冒険者の魔法使いが使う杖の様な物です、この様に持って使います、」
エルルは白銀の魔道具を構えて見せる
「エルルさん私、火や水、風の魔法は使えませんよ、」
「大丈夫!この魔道具は武器と言うより対象を瞬時に結界に閉じ込める魔道具です、イオさんは魔道具が無くても結界を張れると思いますが、対象が複数の場合はまだ無理でしょう、この魔道具はこんな感じで!」
エルルが魔道具の引き金に手をかけ、家の中の家具を次々結界の中に入れて行く、
「わっ!簡単に沢山の結界が一度に張れるんですね、」
「ええ、明日の朝の鍛錬の時に渡すのでその時詳しく説明しますね、」
お風呂を済ませたエルルがパジャマに着替え部屋のベッドに寝転がっていると、
「あー、もしもしでしたか、エルルさんイオです聞こえますか?」
「もしもし、イオさん聞こえていますよ、」
「おやすみなさい、エルルさん、」
「はい、おやすみなさいイオさん、」
朝イオはエルルに白銀の拳銃形魔道具と、魔道具を入れるワイバーンの皮で作ったホルスターをを受け取りベルトにホルスターを付け魔道具を装着する、
イオはホルスターから魔道具を抜き構え近くにあった石に結界を張る、
「オッケーですね、じゃあイオさん、これから的を土魔法のゴーレムで作りますので結界で捕らえて下さいね、」
エルルが地面に手を当て魔法を発動させると地面からとてもリアルなゾンビのゴーレムがボコボコと次々這い出して来る、
「きゃあー!」
イオは悲鳴を上げながら次々ゾンビに結界を張り、その直後結界の中のゾンビが次々破裂して行く、まるで拳銃で撃たれたゾンビが破裂している様に見え、前世のテレビならモザイクがかかるレベルの映像にエルルはぶぅーっ!吹き出し、これあかんやつや!人に向けたらあかんやつや!
「イオさん!ストップ!ストップ!」
エルルがイオを止めた時にはエルルが出したゾンビゴーレムは全て粉々になっていてイオが、
「エルルさん!酷いです!あんな気持ち悪いお化けを出すなんて!今晩夢の中に出て来ちゃったらどうするんですか!」
とイオはぷんすか怒っている、
「ごめんイオさん、でも今どんな風に魔道具を使ったのか教えて下さい、」
「どんな風にと言われても、夢中で結界に閉じ込め、気持ち悪かったので爆ぜちゃえって感じですかね、」
「なるほど分かりました、イオさんヒトに向けて今の魔法は絶対使わないで下さいね、」
「エルルさん、私!犯罪者にはなりたく有りませんよ、だいたい人に治癒魔法以外の魔法をかけたら重犯罪者になっちゃいますよ!」
やべえ知らなかった!婆ちゃんちゃんと教えておいておくれよ、
「でもエルルさんこの魔道具格好良いですね、」
とイオは言い、ホルスターから魔道具を抜いて構える、
「イオさん!分かりますかこの魔道具の格好良さが、じゃあちょっと見てて下さいね、」
エルルは空間に森を映し出す、その映し出された森の木々の影からゴブリンが弓を構えこちらを狙っている、エルルが魔道具でゴブリンを結界に捕らえるとゴブリンが消えるが、直ぐ別の場所からゴブリンが弓で狙って来る
エルルは素早くゴブリンを捕らえて行くがゴブリンが一度に数匹現れる様になり、エルルは両手に魔道具を持ち次々ゴブリンを捕らえて行った。
「エルルさん!格好良いです、私にも挑戦させて下さい、」
エルルは少し悪い顔をして、
「分かりましたじゃあイオさん、挑戦してみて下さい、」
「おはようエルル、イオ、早いね朝の鍛錬かい?」
「おはようございますエド様イオさんの魔法の鍛錬をしていた所です、」
「見学させて貰っても良いかい?」
「ええ、イオさん始めますよ!」
エルルが空間に森を映し出すとエドモンドは驚きイオは魔道具を構える、
イオは次々ゴブリンを捕らえて行き、ゴブリンの数が増えて行くがイオも魔道具を巧みに使い対処する、エドモンドが関心していると
森から二匹同時に顔を出したゴブリンにイオが結界を張ると、森全体が赤くなり、良く見ると二匹同時出たのはゴブリンと人間の子供で子供に結界を張った瞬間森が赤くなった様だ、
「イオさん、森から出て来るのはゴブリンばかりとは限りませんよ、油断大敵です!今日はここまでにしましょう、お疲れ様でしたイオさん、」
「ありがとうございました、エルルさんもっと精進します、あとエルルさんみたいに両手で魔道具が使いたいです、両手で魔道具を使うエルルさんはとても格好良かったです、」
「この魔道具の良さが分かるイオさんに、これを、」
と少し大きさが違う魔道具と肩にかけるタイプのホルスターをイオに渡す、イオはホルスターを付け脇の下に魔道具をしまう、
魔道具をずっと羨ましそうに見ているエドモンドにエルルが、
「エド様この魔道具は空間魔法の魔道具で僕達にしか使えないんです、魔法使いの杖みたいな物ですね、エド様も僕が作る土魔法で作ったゴーレムと戦ってみますか?」
イオが青い顔をしながら、
「エルルさん、あの気持ち悪いお化けだけはやめて下さいよ!」
「面白そうだ、エルル光剣で相手すれば良いかい?」
「はい、じゃあ始めますよエド様、これから出す騎士達を倒す事が出来ますか?」
エドモンドは自信たっぷりに、
「相手がエルルでなければ何人出て来ても大丈夫だ!」
エルルは凄く悪い顔をしながら、地面にに両手をつくと魔方陣が四つ現れ魔方陣の中から、とても際どいビキニアーマーを付けたオッパイの大きな美しい女騎士が光剣を構えエドモンドを囲む、エドモンドは目を見開いて固まっいる、良く見ると鼻血も出しちゃってるよ、その直後エドモンドの悲鳴が魔の森に轟いた。
朝食時にナタリアが、
「エド、今日も盛大に斬られたみたいだけど、いつもと違い顔が緩んでるわよ!」
「今日はエルルが作ったゴーレムの相手をしたのだが思いのほか強くてね、」
イオはそう話すエドモンドとエルルをジト目で見ている、
「ゴホン!」
とエルルがわざとらしく咳払いをして、
「お母さん僕は今日ワイバーンのお肉のお裾分けに色々な所を回ろうと思っています、
イオさん、伯爵家に行く前に連絡をしますのでそれまではお母さんと一緒にいて下さい、お母さんの今日の予定は?」
「週末だから、エドと一緒に辺境領で過ごすわ、」
「分かりました、じゃあエド様これワイバーンのお肉です、」
と特大の包装されたお肉を出す、エドモンドはお肉をポーチに収納しながら、
「エルル、こんなに沢山のお肉を貰っても良いのかい?」
「はい、大丈夫です辺境領の皆さんで召し上がって下さいね、」
「あの、エルルさんお婆様の所にも寄って良いですか?」
「良いのですかイオさん、僕はイオさんのお祖母様にお会いしたいので嬉しいです、伯爵様の所に行く前に寄りましょう!」
「エルルさん、じゃあ辺境領にナタリア様達を送ってあちらで連絡を待っていますね、」
とイオはゲートを開きエドモンドとナタリアの後から手を振ってゲートの中に入って行った。
エルルは公爵家の使用人食堂に入り、朝食の片付けをしていたサムに、
「サムおはよう!今日主人様の許可が取れたら、ワイバーンのお肉で焼肉を皆でしようと思うんだけど良いかな?」
「ワイバーンのお肉なんて夢見たいでさあ!あっしは構いません!連絡をお待ちしてまさあ!」
エルルは手を振り、アルクの執務室の前に転移して扉をノックする、直ぐに扉が開きエルルは一礼して中に入ると公爵家の皆さんと執事長、侍女長、ロバートさんにソフィア先輩がいて、
「主人様、お早うございます、皆様、」
「エルルご苦労様だったな話は侍女長から聞いているよ、」
マリー様にいきなりきつく抱きしめられ、
「エルル、父や義弟を助けてくれてありがとう、」
「奥様、くっ、苦しいです!」
「あらやだ!私ったら、」
「でエルル、結局ワイバーンの群れは何匹いたんだい?」
「八匹のワイバーンがいました、現場に着いた時には冒険者の方達が既に一匹倒されていて、おかめさんが二匹、後ひょっとこが六匹仕留めました、あっ!これお土産です、」
エルルはアルクの机の上にこれまた大きな包みを出す、
「ワイバーンのお肉です、皆さんでお召し上がり下さい、」
「凄い、こんな大きなワイバーンの肉など一体いくらするのやら、」
「で主人様お願いがあるのですが、騎士団の本部の方にもお肉を届けに行っても良いですか?後今晩の夕食を裏庭で馬廻のウィンや庭師のダン達皆にお肉を振る舞いたいのですが、許可して頂けますか?」
「私は構わんぞ皆喜ぶだろう、」
「ありがとうございます、外に出るついでにアルマン伯爵家にも寄って来てもよろしいでしょうか?」
「わかったがエルル、実は私からもお願いがあるのだが、」
「はい!何なりと、」
「今日午後より宰相様が我が屋を訪問される、それまでに帰って来て欲しいのだが、」
「分かりました、では私はこれから騎士団の本部にお土産を届けて来ます、その後伯爵家に伺い昼過ぎには帰る様にいたします、ロバートさん、ウィンやダン達皆に今晩の事連絡して頂けますか?」
「分かった、エルル任せておけ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします、」
と言いエルルは騎士団の本部に転移して行った。
「ジルムお疲れ様!」
「あっ!エルル様どうしたんですかい?」
「今日はお土産を持って来たんだよ、」
「土産ですかい?」
お日様に感謝する日という事もあり非番の騎士さん達が話を聞き付けて食堂に入って来て、皆が、
「エルル先生!今日はどうしたんです?」
「エルル先生!これから勝負して下さい!今日こそあの姿絵を!」
「あら、エルル君今日ははどうしたの?」
と、いっぺんに話しかけられ戸惑っていると、熊男が二人食堂に入って来て、
「お前達、騒がしいぞ!って、エルル先生じゃないか、今日はどうしたんです、」
「あっ!団長、班長熊男が出たかと思っちゃいましたよ、今日はお土産を持って来ました、」
とエルルは机の上に大きな包みを三つ出し、
「ワイバーンのお肉です、皆さんで召し上がって下さい、」
班長が、
「あれ、俺耳がおかしくなったみたいだ先生、ワイバーンの肉と聞こえたが、」
「班長の耳は正常ですよ、全部ワイバーンのお肉です、」
「マジなのか?」
「マジです!」
「すげえ〜!ワイバーンだぞ!貴族様でも早々食べられないぞ!」
騎士団の皆さんから大歓声が上がる!
エルルは厨房のジルムの所へ行き、調理場に大型冷蔵庫と大型冷凍庫を作りワイバーンのお肉を入れる、
「ジルム、冷蔵庫と冷凍庫にお肉入れておいたから、冷蔵庫のお肉から使ってね、冷凍庫に入っているお肉はかなり持つから解凍してから食べてね、これワイバーンのお肉料理のレシピと、調味料、」
調理場の外から、
「おい!ジルムお昼にワイバーンが食べられるのか?」
「夜まで待ってくだせえ、エルル様に教えて頂けた料理を作りまさぁ!」
エルルが厨房を出て食堂にいたフローラに
「フローラ班長、これ女性騎士さん達にお土産です、」
と、シュークリームと、カスタードプリンを渡す、男性騎士さん達から、女だけズルイ!とフローラ班長に詰め寄っていたが、他の女騎士さん達にフローラ班長はガードされ食堂を出て行った、残された男達がエルルの所へ詰め寄ろうとしたが、既にエルルの姿は無かった。
エルルは公爵家の自室に転移し耳のイヤリングに手を添え、
「もしもし、イオさん支度が出来たら僕の部屋に来て下さい、」
「もしもし、エルルさん了解しました、えっ、そうですエルルさんと会話していま・・」
直ぐにイオがゲートから出て来て、
「お待たせしましたエルルさん、」
「大丈夫ですよイオさん、お祖母様の家までゲートで行けますか?」
「はい、大丈夫です直ぐに開きますね、」
二人がゲートをくぐると小さなお屋敷の玄関の前で、イオが、
「お婆様は今、執事さんとメイドさんの夫婦と共にこのお屋敷で暮らしているんです、
息子さんやお嫁さんに迷惑かけたくないって、」
イオが扉をノックすると扉が開き、
「イオ様、良くおいでくださいました、マイラ様が喜ばれますこちらへ、」
と、執事さんに案内され、お日様が良くさす居間のソファーに座る老婦人を見た瞬間、
「婆ちゃん!婆ちゃん!」
と、いきなりエルルは老婦人にしがみ付き、わんわん泣きだす、」
「あらあら、大きなお嬢さんが甘えん坊さんね、」
と、エルルの頭を優しく撫でる、
「お婆ちゃん、久しぶり元気そうで良かった、」
「イオ、お仕事頑張っているみたいね、この子がノアのお孫さん?」
「そうだよ、私の魔法の師匠のエルルさん、今は甘えん坊さんになっちゃってるけど、
凄い魔法使いでお医者様でもあるからお婆ちゃん腰を見てもらうと良いよ、」
未だひくひくやっているエルルに、
「初めまして可愛い魔法使いさん、私の名前はマイラよ、」
エルルはローブの裾で涙を拭い、はにかんで、
「初めましてマイラ様、エルル・ルコルと申しますマイラ様があまりに祖母に似ていまして取り乱してしまってすいません、」
「そう、エルルと言うのね、ラルル様がお名付けになったのかしら、」
「そうだと聞いています、今日はあまり時間がありませんが、また遊びに来ても良いですか?あっ!これお土産です、」
と、何も無い所から、ワイバーンのお肉とイオが作ったお菓子を出し、
「ワイバーンのお肉と、イオさんが作ったワイバーンの卵を使ったお菓子です、」
マイラは目を丸くして、
「貴女そんな可愛い顔をして本当に凄い魔法使いなのね、」
「お婆ちゃん、今の魔法なら私もつかえるよ!」
「はいはい、イオは私の孫だもの」
「あー!お婆ちゃん信用してないでしょう!」
「イオ、貴女が作ったお菓子を頂いても良いかしら、」
イオはふくれながらも、カスタードプリンを出し何も無い所から、スプーンを取り出しマイラに渡す、マイラがカスタードプリンを一口食べ、
「これ本当にイオが作ったの?本当なら貴女お菓子職人になった方が良いわよ!」
ぶぅーっ!と吹き出すエルルをイオはひと睨みして、
「美味しいでしょお婆ちゃん、沢山あるから使用人の人達にも分けて上げてね、」
「ありがとうイオ、皆で美味しく頂くわ、」
「マイラ様首と、腰が悪い様なので、治療致しましょうか?」
「エルル貴女本当に凄いのね、見ただけで分かってしまうの?お願いしようかしら、」
エルルは寝室のベッドにマイラを腹這いに寝かせて、首と腰に治癒魔法をかける、
「マイラ様、治療が終わりましたよ、」
「えっ!もう?って凄いわ腰と首の痛みが全く無いわ!」
「お婆ちゃん良かったね、私の師匠は凄いでしょう?」
「ええ、本当に凄いわね、エルルありがとう私の事もノアみたいに婆ちゃんで良いのよ、」
「はい是非、婆ちゃんと呼ばせて下さい、ですがマイラ様は婆ちゃんと違ってお上品な感じがするのでお祖母様ですね、」
「まあ!エルルノアが聞いたら間違え無くソルス様に自己紹介する事になるわよ、」
「僕もそう思います、そうだ今度僕の家で食事会を開きますので、是非参加して下さい、イオさんの家族も参加していただけるそうです、」
と言ってエルルはマイラに招待状を渡す、
「こんなお婆ちゃんを食事会に誘ってくれてありがとう、でもあまり遠く迄は行けないわ、」
「バレス辺境領の魔の森の中の家ですが、イオさんが迎えに来ますので、お祖母様がこのお屋敷の玄関に行かれるよりも近いですよ、」
「分かりました、私の可愛い孫達はどうやら規格外の魔法使い様のようね、食事会楽しみにしてるわ、」
「で、お祖母様これからアルマン伯爵様のお屋敷に伺おうと思っているのですが、お屋敷の場所を知って見えたら教えて頂きたいのですが、」
マイラは微笑んで、
「ノルドのお屋敷はうちの裏よ!」
「エルルさんお婆ちゃんうちの裏って言ってましたけど、私達もう半刻ほど歩いていますよ、」
「それだけ大きなお屋敷なのでしょう、公爵家だって同じ位広いですよ、」
二人がようやく伯爵家の門の横にある騎士の詰め所に行くと、騎士さんでは無く魔法使いの衛士さんが詰めていて、
「お嬢ちゃん達伯爵家に御用かな?」
「はい、大伯父上様にエルルが会いに来たとお伝え下さい、」
「失礼致しました、もう一人のお嬢様のその瞳と髪、お身内の方々と知らず申し訳ありません、直ぐに取りついで参ります、」
直ぐに若い執事さんが息を切らせて迎えに来てくれ大きなお屋敷に案内される、
お屋敷のサロンに伯爵家の皆さんが集まってみえて、大半の人がイオさんと同じ瞳と髪の色をしていたよ、その中のお爺ちゃんが、
「エルル、良く来てくれたね私はノア姉さんの弟のノルド・ララ・フォン・アルマンだ、
そちらの娘さんはマイラ姉さんの孫娘のイオさんだったね、本当に姉さん達の若い頃に瓜二つだよ、」
「伯爵様、公爵家への推薦をして頂きありがとうございました、おかげさまで無事に公爵家で働く事になりました、今はエルルさんの弟子として行動を共にしています、」
「全ては何かの縁だったのだろう、ここには身内しかいない遠慮は要らないよ、」
「エルル、早速来てくれたのね、嬉しいわ、先日のお茶会のケーキは素晴らしかったわ、貴女達の前にうちのお菓子なんて決して出せないわね、」
「大伯母さま今日はお土産を持って来ましたよ、イオさん出して下さい、」
「はい、ワイバーンの卵で作ったカスタードプリンと、シュークリームと言うお菓子です、」
とイオは空間から紙の箱に入ったお菓子を取り出し机の上におく、
「空間魔法?」
隣でエルルもにゅぅーっと大きな包みを机の上にどんと出し、
「お土産のワイバーンのお肉です、皆さんでお召し上がり下さい、」
「エルルワイバーンなんてどうしたの?」
「たまたま沢山狩る事が出来たのでお裾分けです、」
「貴女本当凄いのね、早速お菓子を頂いても良いかしら、」
「母上、私は未だエルルに挨拶をしていませんよ、それにお客様が持って見えたお土産をその場で食べるのはどうかと思いますよ、
エルルすまない、私の名前はノウラス・フォン・アルマン私が君に会うのは二度目かな、宮廷医師長のお弟子さん」
「ノウラス様、勘弁して下さいよ、あの時私がやらかさなかったら、宰相様はお亡くなりになってみえましたよ、」
ノウラスは笑いながら、
「ああ、宰相を救ってくれてありがとう、エルルには私が弟子入りしたい所だよ!」
「宮廷魔法士長様が弟子入りなんてダメですよ、」
「ノウラス!エルルを独り占めするんじゃない、エルル今日はゆっくり魔法について語ろうじゃないか、」
ノルドに誘われたエルルが済まなそうな顔をして、
「大伯父上様実は今日公爵家にお客様が有りまして、お客様がみえる前に公爵家に戻らないといけないんです、」
エルル達が話している横でイオさんはエバ様達女性に囲まれ服や化粧、髪について根掘り葉掘り聞かれちゃってるよ、
大伯母様なんて我慢出来なかったのかプリンを自分で出して食べ幸せそうな顔をしちゃつてるし、
「せっかくエルルに会えたのに残念だ!」
「またお邪魔させて頂きます、祖母の話も聞きたいです、」
「姉上の話ならいくらでもしてやろう、夜通し話してもはなしたりんぞ、」
「はい、楽しみにしています、イオさん僕は帰りますよ、イオさんはどうしますか?」
「はい、私もナタリア様の所に戻ります、用事があったらいつでも呼んで下さいね、」
「では皆さんまたきます、失礼かとおもいますが、この場から直接帰らせて頂きます、身内の方々の前なので大目にみて下さいね、」
エルルとイオはアルマン家の人達にぺこりと頭を下げ、先ずイオがゲートを開き入って行き、エルルは笑顔で手を振りながら、すぅっと、その場から消えた。
エルルは公爵屋敷に戻りロバートの元に行き
「ロバートさんただいま戻りました、」
「ああ、エルルちょうど良かった、スパロン公爵家の馬車がもう直ぐ到着する所だ、お出迎えは私がするからエルルは主人様の所に行ってくれ、」
「はい、ロバートさん」
エルルが応接室に入るとアルクが、
「エルル間に合って良かった、」
エルル は執事長の隣に立ち、ぺこりと頭を下げ、
「ただいま戻りました、先程ロバートさんに聞いたのですが、宰相様も公爵様なのですね、」
「ああ、この国の公爵家はうちとスパロン家の二家でスパロン家は代々宰相を務めている、」
「宰相の職は世襲制なのですか?」
「いや、過去には伯爵家から宰相が出た事もあったそうだが、スパロン家の者は人身掌握に長けた者が多いのだよ、」
「ギルガス家から宰相が出た事は無いのですか?」
「ギルガス家は元々王家の分家で、宰相の職につけないんだよ、この国は王家の血が濃いと宰相の職に就けない法律があるのだよ、」
「なるほど、権力が集中しないようにする為ですね、」
「エルル難しい言葉を知っているのだな、」
コンコン、と扉がノックされエルルが扉を開けると、ロバートさんが一礼して、
「宰相様方をお連れしました、」
「ご苦労お入り頂け、」
ロバートに案内され部屋の中に入って来たのはエルルが頭を剃りあげた坊主の男と、ナターシャと同じ位の歳なのに驚くほど厚化粧の女の子でアルクが、
「よく来て頂けました宰相様、」
と挨拶をすると、
「アルク!ここは王宮では無いのだローレンスと呼んでくれ、幼馴染だろ!」
「分かったよローレンス、で今日はどんな厄介ごとを持って来てくれたのだい?」
アルクの問いかけにローレンスは苦笑いをしながら、
「御見通しということか、今年も夜会のシーズンが始まり隣国のゴースロとファーセルからの使節団が間も無くそれぞれの大使館に到着する、」
「待て!ローレンスまさかうちに接待をさせるつもりじゃないだろうな?接待役は夜会を開かない上位貴族が行う筈だぞ!」
「分かっている、ただ今年は特別なんだ、お忍びで皇太子と皇太子妃がいらっしゃる、で我が家とギルガス家で何とか接待役を受けて欲しいと国王から内々に打診されたのだ、」
「料理人泣かせのファーセルに酒に底無しのゴースロか、」
「アルク、お願いしておいて何なのだが私としてはファーセルをお願いしたい、先日妻がお土産で頂いて来た見事な菓子を作る事が出来る料理人なら大丈夫じゃないかと思うのだが、」
「駄目だ先日の菓子はファーセル人には出せない森人は動物や魔物を口にしない、」
アルク達の話を部屋の隅で聞いていたエルルが隣に立っているペレスに小声で、
「執事長、もしかしてファーセル人ってエルフですか?でゴースロ人がドワーフですか?
「ああ、知らなかったのか?」
エルルはプルプル震えながら、いきなり
「oh!ファンタスティック!」
と叫んだ。
ありがとうございました。