魔法はスウィーツで!
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第十四話 魔法はスウィーツで!
「エルルさん!私帰りたくないです!」
「イオさん、今日は午後からアズビー商会に行く予定なので一度寮に戻りますよ、」
魔の森の中のエルルの実家でイオの空間魔法の特訓をしている二人、
話は昨晩イオがエルルの部屋を訪ねた所まで遡る!
「エルルさん!お風呂掃除に行きましょう!」
「イオさん、これから女性風呂を掃除したら、僕の実家に行きますよ!」
「えっ、エルルさんの実家って確かバレス辺境領でしたよね?」
「はい、正確には魔の森ですけど魔法の特訓は彼方で行います、主人様や執事長の許可は取ってありますよ、」
「あの、エルルさん辺境領までどうやって行くのですか?」
「まぁそれも訓練の一環なので、とにかく掃除を済ませちゃいましょう!」
エルルは女性風呂の清掃を一瞬で済ませ男性風呂の脱衣場まで来てこちらの清掃も済ませ
「じゃあ行きますよ!」
エルルが何も無い空間に手をかざすと、部屋のドア位の大きさの穴が開き、あんぐり口を開けているイオの手を引いて穴の中に入る、
入った先は真っ暗でエルルが指ぱっちんをすると、辺りがパッと明るくなる、
「イオさん僕の実家にようこそ!まぁ、これからは弟子であるイオさんの家でもありますね!」
明るくなったその場所を見てイオは驚く、
座り心地の良さそうなソファーセットがあり、見た事が無い家具が置いてある、
何よりその部屋は外が丸見えで、外は夜なのに庭が明るく照らされ池や東屋が見えているイオは、
「エルルさん夜なのに庭が明るいですよ!凄く素敵な庭ですね!」
とイオは庭に向かって走り出す、
「あっ!イオさん!そこは!」
びったぁーん!イオは居間から見えた中庭に出ようとして壁一面のガラスに気付かず、凄い勢いでガラスにぶつかり、エルルが前世で見たアニメの様にぶつかったままの形で固まっている、
「イオさん大丈夫?色々説明したいから、まずは彼方のの椅子に座って下さい、」
「痛いですぅー」
イオは鼻を押さえながら椅子に座ると、エルルもテーブル越しに座り、
「イオさん、まず何故実家で魔法の特訓をするのかを説明しますね、」
イオは身を正してこくりと頷く、
「まずここまで来たのは転移魔法ではなく、
空間と空間を繋げるゲートと言う魔法です、」
「じゃあエルルさん、私にもその魔法が使える様になるのですか?」
「はい、ですがゲートは空間魔法の中でも最高位の魔法の一つですので簡単では無いですよ、」
「はい!頑張ります!」
「で、話の続きですが空間魔法は希少魔法です訓練の中でもポイントとなる重要な所はこちらで教えます、素養が無いと使えない魔法ですので他の人には何をやっているのか分からないと思いますが、出来るだけ他の人には秘密にしたいので公爵家の仕事が休みの時はこちらで修行しましょう、勿論イオさんの都合が悪い時や、実家に帰りたい時は言って下さいね、」
「エルルさん、私実家は一応貴族なのですが領地を持たない貧乏貴族でしかも子沢山で三女の私の下にも妹がまだ二人いて、成人した私にはもう居場所が無いんです、」
「イオさん、先程も言いましたが、師弟になった以上これからはここがイオさんの家ですよ、ちゃんとイオさんの部屋も用意します、」
「私に部屋が貰えるのですか?」
「ええ、勿論です外でも魔法の修行をするから衣服も全部用意しますよ、ただし!ちゃんと僕と一緒に炊事洗濯もやって貰いますよ!じゃあお風呂の前に家の中を案内しますね、」
イオさんに家の中を案内したら、驚きっぱなしだよ、とくに中庭の池が露天風呂だと教えると、直ぐに入りたいと言い出したので部屋に行ってバスローブを取って来てからとなだめたよ。
「イオさん、ここがイオさんの部屋です、因みに隣は僕の部屋ですよ、後でドアにネームプレートを付けておきますね、イオさんがお風呂に入っている間に服とかを用意しますが、下着は先日購入した物と同じ物で良いですか?」
エルルが聞くがイオはベッドや備え付けの家具に夢中になって、
「エルルさん!私の部屋凄すぎです!このベッド身体が沈みますよ!机や椅子もお洒落です!あっ!下着はエルルさんが良かったらソフィア先輩が購入していた凄く肌触りの良いあの下着が良いです!」
「はいはい、了解です!はいこれバスローブ、お風呂上がったら東屋で待ってて、」
「はい!行ってきます!」
イオが張り切って出て行った後でエルルは備え付けのクローゼットに普段着、パジャマ、ジャージ、Tシャツ、外出用ローブ、防具、下着を用意して、東屋に向った。
「エルルさん!この露天風呂って温泉なんですか?」
「そうだよ、イオさんはいこれ、」
エルルはよく冷えたフルーツ牛乳をイオに渡す、イオは教えてもいないのに、片手を腰に当てお約束のポーズでフルーツ牛乳を飲む、
「エルルさん、ヤバイです!これ癖になります!」
「はいはい皆そう言いますよ、イオさんついでに魔法の練習も少しやっちゃいますよ、先日から練習している結界はもう完璧でしたよね、」
イオは胸を張って、手のひらに結界を出し結界の中の魔石をぐるぐる動かし、
「エルルさん、どうですか?」
「イオさん!凄いですよ、魔石を浮かせるだけでは無くて動かせるなんて、僕今から浮いた魔石を動かす練習をしようと思ってたんですよ、」
関心したエルルは魔石を東屋の椅子に置き、
「じゃあイオさん見ていて下さいね、」
エルルは椅子から離れ、離れた所から魔石に結界を張り魔石を浮かせ自身の手にも結界を張る、次の瞬間魔石が椅子の上の結界からエルルの手のひらの結界に移る、
「イオさんちょっと難しいと思いますが、慣れれば結界を張らずに遠くにある物が取れる様になりますよ、先程話したゲートの一番基礎になる魔法ですね、先ずは離れた所に結界を張る練習からですね、」
エルルは魔石をイオの前に置く、イオさんは集中して、魔石に結界を張ろうとするが離れた所に結界を張る事が難しい様だがイオさんが、
「あのエルルさん、結界を張るのって魔石じゃなきゃダメなんですか?」
「別に何でも構わないですが、あっ!成る程!」
エルルはおもむろにアイテムボックスから、白磁の薄い皿に乗ったイチゴのショートケーキを取り出し長椅子に置き、
「じゃぁーん!イチゴのショートケーキですよ!イオさんの大好きな生クリームがいっぱいですよ!」
エルルが挑発する様な顔でイオを見ると、イオは手にケーキが乗った皿を持っていて、
「エルルさん!フォーク、フォーク下さい!」
エルルはぶぅーと吹き出し鼻水を出して固まっている、そんな凄い顔をして固まるエルルの顔をイオは自身のバスローブの袖で拭いながら、
「ほらほら、エルルさんフォーク出して下さい、」
居間に戻りイオはエルルの用意したパジャマに着替え、
「エルルさんもう食べて良いですか?」
エルルは紅茶をイオに出しながら、
「はいはい、召し上がれって、その前にあそこのソファーに掛かっているバスローブを取って貰ってもいい?」
イオはバスローブに手を向ける、次の瞬間バスローブはイオの手の中にあり、
「はい、エルルさんなまかわしちゃダメですよ、」
と言いながら夢中でケーキを頬張るイオに、エルルは思ったヤバイこの天然女は本当に天才だぞと、
「エルルさん、このショートケーキって涙が出ちゃう位美味しいですよ!」
イオの言葉にエルルの研究心に火が付き、
「イオさん、ケーキには無数の種類があるんですよ!僕の空間魔法のアイテムボックスには今まで作って来た沢山のケーキが入っています、まだ早いかと思っていたんだけどイオさんアイテムボックスの魔法を覚えてみますか?お菓子やケーキが入れ放題ですよ、まぁ、その人の魔力の多さで容量は変わりますがアイテムボックスに入れておけば時間経過が無いのでいつでも作り立てのケーキやお菓子が食べられますよ、」
イオは真剣な顔をエルルに寄せて、
「エルルさん!詳しく!」
イオの迫力にエルルは引きながら、布地の袋を出す、
「イオさん、この袋の中はアイテムボックスの中と同じ空間になっています、空間魔法に素養が無いとただの袋なのですが、素養が有る人だと異空間を感じる事が出来ますよ、ちょっと手を突っ込んでみて下さい、」
イオは布地の袋をを受け取り、恐る恐る手を差し込む、
「わっ!わっ!エルルさん!手が何処までも入っちゃいます!なんだか底が無くて気持ち悪いです、」
エルルは苦笑しながら、
「イオさん、これでイオさんには空間魔法の素養が有ると証明されましたね、じゃあ、」
エルルは机の上に先日と同じチョコレートとチョコレートケーキを出し布地の袋の中に入れる、入れると言っても手に持っていた物がスッと消えたと言う方が正しいのだが、
「イオさん、今入れたケーキを取り出してみて下さい、取り出すと言うよりイメージで呼び出すと言った方が正しいですね、」
イオは自信満々に袋の中に手を差し込んで、目をつむり集中していたが、
「エルルさん、なんだかこの袋の中空じゃないですか?何も入って無いように感じます!」
「その通りです!この布地の袋を僕が使えば、僕の空間につながり、イオさんが使えばイオさんの空間に繋がるアイテムボックスの練習用の袋なんです、」
と言って袋から先程のチョコレートとチョコレートケーキを出す、
「じゃあイオさん、イオさんがこの菓子を入れてみて下さい、」
イオは直ぐにでも食べたそうにしていたが、布地の袋の中にチョコレートを入れようとするだけで、チョコレートはスッと消えて行く、チョコレートケーキなんて触っただけで消えちゃってるよ!
「オッケーみたいですね、じゃあ取り出して見ましょう!」
イオが袋の中に手を入れて、
「わっ!エルルさん!ちゃんと中に何が入っているのか分かります!えい!」
とイオはチョコレートを机の上に出し、またしまい次はチョコレートケーキを出す、
「イオさん、コツが掴めましたか?」
「はいエルルさん!なんだか袋無しでも行けそうな気がします、他にもお菓子を出して下さい私のアイテムボックスの中で保管して見せましょう!」
「イオさん、お菓子は作り方を教えるから、自分で作って入れて下さいね、あともう今日はお菓子を食べちゃダメですよ、」
イオさんは作戦が失敗して、悔しそうな顔をしている、
「じゃあイオさん今日はここまでにしましょう、明日の朝は弟子としてイオさんが起こして下さいね、僕はお風呂に入って寝ますおやすみなさいイオさん、お菓子食べちゃダメですよ、あとちゃんと歯をを磨いて寝て下さいね、」
「エルルさん!子どもじゃないんだから大丈夫ですよー!おやすみなさい」
朝はちゃんとイオさんが起こしてくれたよ、何でも昨晩のチョコレートケーキが早く食べたくて早起きをしたらしい。
今は朝の鍛錬中でイオさんは離れた場所に結界を張り、中の空気を抜く空間魔法を応用した攻撃魔法を練習中だ、肺呼吸をする生き物や魔物なら無傷で倒してしまえるのだが、魔法耐性の高い高位の魔物には結界を張る事が出来ない、
最初イオさんは空気を抜くイメージが出来ず苦労をしていたが、エルルが例のごとく、フルーツケーキの上に蝋燭を立てた所、一発で空気を抜き蝋燭の火を消しちゃったよ。
鍛錬を終えて二人でキッチンに入りサンドイッチの作り方をイオさんに教える、イオさんは貴族なんだけど、家にはお手伝いすらおらず、お母さんと一緒に料理を作っていたそうで、サム程じゃ無いけど良い感をしているよ!今は生クリーム作りに夢中で、フルーツサンドを作ると意気込んでるよ、
「イオさん、朝食を済ませたら森に入って卵や乳の採取に行きますよ!」
鼻歌を歌いながら、パンの間に生クリームを塗っていたイオさんの顔が、ギギギと音がする様な動きでこちらを見て、
「エルルさん、ここ魔の森の中なんですよね、私高ランクの冒険者じゃ無いんですけど、」
「はい、イオさんは大丈夫ですよ!いざとなれば結界を張って下さい、ドラゴンはヤバイですがワイバーンクラス迄は大丈夫です、後魔物は魔力を敏感に感じます、言っては悪いですがイオさんは十分化け物クラスですよ!
僕と訓練する様になってから、秘めていた魔力が漏れちゃってます、後で普段の仕事用に魔力を抑える腕環を作って置きますね!」
「分かりました、自分でも生クリームを作りたいので、卵と乳をゲットしちゃいますよ!でもいざとなったら助けて下さいね、」
「了解です!さぁ食事を食べて出かけますよ!」
普段着の上から魔法のローブを羽織った二人が家の外に出るとイオが、
「エルルさんこのシャツとズボン見たことの無い形ですけど、かっこ良いですねそれにこのローブもパレードの時に見た宮廷魔法士団の方達のローブよりかっこ良いです!」
「でしょ!でしょ!イオさん!先日王宮で宮廷魔法士様が着ている物を見て勝ったなって思っちゃいましたよ!」
「はい、エルルさんとてもかっこ良いです!で昨晩は夜だったので気付きませんでしたが、裏手の丸い建物は何ですか?」
「あの建物は僕の研究施設です、また次の機会に案内しますね、」
と言いながらエルルはアイテムボックスから自慢の空飛ぶバイクを出し、バイクにまたがり、
「さぁ、イオさん後ろに乗って下さい、コッコ鳥の卵を取りに行きますよ、」
「エルルさん!乗れって言われても、これ何なんですか?魔法の馬?」
「イオさん僕の婆ちゃんみたいな事言わないでさあ早く乗って!乗って!」
イオがおっかなびっくり後部シートにまたがると、空飛ぶバイクはふわりと浮き上がり滑る様に動きだす、イオさん!そんなに強くしがみ付かないで!凄く大きな物が当たっちゃってるから!
しばらく飛ぶとエルルは崖の下に空飛ぶバイクを止めて、
「イオさん、崖の中腹の所のコッコ鳥の巣がみえますか?」
「はい、よく見ると卵の先が見えています!凄く大きな卵ですね、」
「ええ、一応コッコ鳥は名前は可愛いですが魔物の怪鳥ですからね、じゃあこっこ鳥がいないうちに卵を回収しちゃいましょう!」
「了解ですエルルさん!」
イオさんは卵を取り寄せそのままアイテムボックスの中に入れている様だ、さらっと二つの魔法を同時に行使するなんて昨晩魔法を覚えた者とはとても思え無い天才ぶりだよ、
「エルルさん次はどこに向かっているのですか?」
空飛ぶバイクに慣れて来たイオが後部シートから声をかける、
「ヌウヌウ水牛の群れが集まる水辺ですよ!」
エルルは水辺から少し離れた林の中に空飛ぶバイクを止め、林の中から水辺のヌウヌウ水牛を見て、
「イオさん、ヌウヌウ水牛はとても臆病なのでこれ以上近づいたら逃げられちゃいます、群れの中に以前搾乳の魔道具を付けた雌牛がいますので、その搾乳の魔道具を回収しますよ、遠くて良く見えないと思うのでこれを使って下さい、」
とエルルはイオに双眼鏡を渡す、イオは渡された双眼鏡を覗き驚く、
「エルルさん!水牛が近くにいますよ!手が届きそうです!」
イオは双眼鏡を覗きながら手をばたばた振っている、
「イオさん、搾乳の魔道具を付けた水牛が見えますか?乳房に銀色のキャップの様な物が付いているはずです、それを回収して下さい!」
「はい!了解です!あっ、見つけました!エルルさんこれですね!」
イオは手に取った魔道具をエルルにみせる、
「はいオッケーですよ、イオさんはそのまま回収を続けて下さい、僕は新たに魔道具を付けて行きます、」
回収が終わり林の中で偶然見つけた甘笹をついでに刈り取り帰宅中に後部シートのイオさんが、
「エルルさん、この魔法の馬の乗り方を教えて下さい、私も乗ってみたいです!あっ、でも私空間魔法しか使えないから無理ですか?」
「イオさん、大丈夫ですよ乗り方さえ覚え練習すれば誰でも乗れますよ、次来た時に練習しましょう、」
イオは喜びエルルにぎゅっとしがみつく、
エルルはちょっと得した気分で少しだけスピードを緩めた。
家に戻り、エルルは取って来た卵と乳を色々な用途別に分けてアイテムボックスの中にしまい、イオさんは生クリームと、エルルに新しく教えて貰ったカスタードクリームを夢中で作って、アイテムボックスの中にしまってるよ、
「イオさん、お昼を食べたら帰りますよ、」
「エルルさん、私帰りたくないです!」
「イオさん、今日は午後からアズビー商会に行く予定なので一度寮にもどりますよ、あとイオさんには寮でやって貰いたい事も有るんです!」
「私にやって欲しい事ですか?」
「はい、今日夕食の時に僕に変わって屋台を出して欲しいんです!」
「先週のカキ氷屋さんですか?」
「いえ、今日はクレープ屋さんです!甘い物好きのイオさんなら直ぐに作れる様になりますよ!
エルルは新しい屋台を出し屋台に、イオのクレープ屋さんと名前を入れ屋台の中で次々とクレープの生地を焼いて行き、
「イオさん、焼き上がった生地をアイテムボックスの中に入れて行って下さい!」
言われた通りにしまうと、次は生クリームとカスタードクリームを搾り出す袋に詰めていき、これまた直ぐにイオがアイテムボックスに収めていく、エルルがチョコレートの絞り袋を出してイオに渡した時にイオがこっそりチョコレートを出して舐めようとして、
エルルに見つかり叱られている、最後に色々なフルーツがシロップ漬けにしてあるガラスの入れ物を渡されイオのテンションはマックス状態で、口からよだれが垂れちゃってるよ、
「はいはい、イオさん注目!これからクレープの作り方を教えて行きますよ!一緒にイオさんも作ってみて下さいね!」
エルルはクレープの生地を一枚取り出し生クリームを搾り出しフルーツを乗せ器用に一度折るとクルクルっと巻いて型紙の中に入れて、
「はい完成!イオさんどうですか?」
エルルがイオを見るとイオは生クリームとフルーツのメガ盛りクレープを作っちゃってるよ、」
「イオさん人に出す時はこの位にして下さいね、あと、カスタードクリームのクレープと
チョコレートのクレープも作って行きますよ、」
流石スウィーツの天才!一度見ただけで見事なクレープを作り上げて行く、
エルルは屋台にクレープの種類の絵と説明を書き終えると、
「イオさん、お昼はクレープで良いですね、僕はイオさんの魔力を誤魔化す魔道具を作って来ますので、お茶を用意して待ってて下さい、」
イオがテーブルにお茶を用意して待っていると、エルルが戻って来て、
「お待たせイオさん、これをここに居る時以外は何時も着けておいて下さいね、」
黒く細い腕環をイオに渡す、
「エルルさん、かっこ良い腕環ですね、」
「ワイバーンの皮で出来てるんですよ、今はイオさんから魔力を感じないのでオッケーですね、あとこれ屋台をする時の前掛けです、僕が調理する時みたいに腰に着けて下さい、」
イオはエルルからあずき色の前掛けを渡されアイテムボックスに入れて、
「エルルさん、あの今着ているかっこ良い服とかローブや気に入った服をアイテムボックスの中に入れて行っても良いですか?」
「はい、かまいませんよ!でもあそこの屋台を忘れないで下さいね、」
イオは慌てて屋台の所まで行き、手をかざし一瞬で屋台を消している、
エルルは思った、この天然の女の子は直ぐに空間魔法をマスターしてしまうだろうと。
「イオさん、忘れ物は無いですか?」
「はいエルルさん、大丈夫ですここは?」
「僕の祖父と祖母のお墓です、イオさん僕はこの森で赤ん坊の頃に祖父に拾われて育てられたのですよ、祖父と祖母が亡くなり一人になってしまいましたが、今は公爵家で働く皆さんが僕の家族だと思っています、」
イオさんは何も答えずお墓の前に行き、この国の礼式でお参りをして、
「エルルさん!私もエルルさんの家族です!いつでも甘えて下さいね!あっ、思い出した!エルルさん居間の姿絵は子供の頃のエルルさんと、お祖父様とお祖母様ですよね、凄く精密な絵で驚いたのですが、それよりもお祖母様が私の母方の祖母にそっくりでびっくりしました!」
「本当ですか?もしまだイオさんのお祖母様が生きていらっしゃるのなら、是非合わせて下さい!」
「はい、帰ったら手紙を出しておきますね、
今も王都のお屋敷で元気に暮らしていますよ、」
「ありがとうイオさん、楽しみがまた一つ出来ました!さぁ、帰りましょう!」
ありがとうございました。




