1-5 幕間:第六七班にとってのルキウス・アムセス
エリザベス・アムセスにとって、ルキウス・アムセスは憧れの存在である。
己を無能と蔑んだその人物のことを、他者から弱者の烙印を押された彼のことを、しかしリズだけは、尊敬していたのだ。
二人の関係は、随分と昔から始まっている。
それが物心付く前からだったのか、それ以降だったのかは覚えていないけど、まだ覚えている中でも最初の記憶には、ルキの横顔があった。
太陽のような綺麗な髪と、燃えるような真っ赤な瞳。いつかその容姿を褒めてみたら、逆に自分の容姿を褒めちぎられた。恥ずかしいけど嬉しい、甘酸っぱい記憶。懐かしい記憶。
当時の二人は、はっきりと胸を張って親友と呼べる間柄だったろう。
その関係が破綻したのは、二人が六歳になった頃のこと。
孤児院の生徒は、おおよそ知性が現れだした六歳から、三年間づつ、「初等期」「中等期」「高等期」と学年がわけられ、騎士になるための技術や知識を学ぶ。
そして初等期の間はまだ戦い方を覚えるには早すぎる年齢であるため、中等期に上がって「四人一組」になるまで、ステータスによる位によってクラス分けを行う。
それまでは平等な友人どうしだった二人の仲が有耶無耶になったのは、そうしたクラス分けで、ステータスの格差から別々の場所に移動することとなったからだ。
予兆はあった。いつまでたっても成長しないルキと、開花させた才能によりぐんぐんと力を蓄えるリズ。
無能であるルキは蔑まれ、天才であるリズは盛んに褒め称えられる。
「なんであんな弱虫と仲いいの?」
無垢な子供の純粋な一言は、はっきりと真理をついていた。
それは自分の勝手だろうと、今のリズならば言っていただろう。しかし当時はまだ幼すぎて、他人の言葉を簡単に鵜呑みしてしまうようなあたりまえの少女だったのだから、流されてしまうのは仕方がないことだった。
「人の物を奪ってはいけない」と、保護者代わりのシスターから教えられた。「食事中はあまり喋ってはいけない」とも、「夜遅くまで起きてはいけない」とも言われた。
そこに「弱い者は弱い者と一緒にいるべきだ」とか、「強い者は強い者と一緒にいるべきだ」とかはなかったが、それでも他の子どもたちはそうしているのだから、自分もしなくてはいけないのだと、そう思っていた。
だから、やがて半年も経たぬ内に、リズはルキと行動を共にいなくなっていた。無能という理不尽な運命。才能という定められた世界観。「そうしなければならない」という大衆心理に飲まれた結果がそれだった。
偏屈な学者曰く、そういった大衆的な同一思想こそが霊術を生み出すということらしいのだが、ともかく。
人間は忘れやすい生き物だ。まあ勿論知性があるのだから当然動物よりも物覚えがいいのだろうが、長い寿命を持つ長耳の民やそもそも寿命という概念がない夜の民のようなほぼ永劫的記憶能力は持っていないのである。
しかも子供だから尚更であり、気がつけばリズはルキのことを、完膚なきまでに記憶の中から除外していたのだった。が、それが巻き戻って、ルキという少年のことを走馬灯の如くなんとなく思い出したのは三年後。
元より、リズは好奇心が旺盛で、またその才能から一人で勝手に突き進んでしまう、ガキ大将のような性格の少女だった。
かけっこは誰よりも早く、騎士ごっこでは男子よりも強い。初めの頃は孤児院の少年少女が彼女をわいわいと囲んで、なんでもできてしまうリズをすごいすごいともてはやしたものだが、彼女の突出した才能に誰もがついていけなくなって、気がつけば一人になっていた。
その日もまた、いつもと同じように友達と走り回っていた。だが彼女はかけっこが誰よりも早かったから、そして誰よりも長く走り回ることができたから、他の皆を差し置いて、一人だけ好き勝手に、本当ならば入ってはいけないと言われている孤児院裏の山へと足を踏み入れてしまった。
そしてその結果、リズは魔物に襲われた。
両手と両足が異様に長い、猿の魔物。これはリズの知らぬところであったが、裏山の奥深くには世界核上層に通ずる切れ目があって、魔物はそこから現れたものなのだった。
魔物はやけに大きな口から唾液を垂らしながら、長い四肢を起用に操って木をつたい、リズに迫ってくる。
才能があると言っても、当時はまだ九歳の初等期生。武器の扱いを学んだわけもなければ、戦い方を習ったわけでもない。あくまで、普通の子供よりただちょっと身体が強いだけのリズに、魔物と戦う方法は無かった。
わけもわからず走って、恐怖に怯えながら逃げて、やがて木の蔦に足を引っ掛けてすっ転んだ。魔物はずいと顔を近づけて、リズは恐怖のあまり失禁する。
食べられてしまうと悟って、リズはギュッと目をつぶり―――。
―――やがて何時まで経っても痛みが来ないことに違和感を感じて、リズは恐る恐る目を開いた。
「あ、えっと、うん。久しぶり」
怯えたリズの碧眼を覗く、夕暮れのような赤い瞳。そう言って曖昧に微笑んだ普段通りのルキは明らかに異常だったけど、同時にかっこよくもあった。
ピンチに現れる正義のヒーロー。子どもたちが憧れる神話の英雄。少なくともリズに取って、その時のルキはそれなのだ。
それから―――、
実際のところ、リズは何があったのかしらない。ショックで覚えていないのか、怖くてずっと目を閉ざしていたのか。分かっていることは、ルキがどのようにかあの魔物を倒したということと、「ルキが魔物を殺した」というリズの言い分が通らず、助けてくれたルキ共々反省文を散々欠かされたということ。
そして、その時から、返り血を浴びながらも微笑んだルキが、リズにとっての憧れの人になったということだけである。
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レオナルド・アムセス・エディレトにとって、ルキウス・アムセスはただの友人だ。
元々は赤の他人で、気がつけば友達だった。そこにタイミングというものは明言されず、またすることに意味など無いのだろう。これもまた大衆思想。「クラスメイトは大抵友達」という考えでしかないのだから。
ただ、それが真の意味合いでの友達、あるいは「友人」と呼べる関係のきっかけを作ったその日のことは、忘れたくとも忘れられない――――というほどでは無くとも、比較的忘却し難いものだったのは、確かなことであった。
レオの名に「アムセス」という言葉が付く前のこと。つまり、彼女が「レオナルド・エディレト」という名前であり、アムセスの孤児院に入る前のことである。
彼女は、一族の恥だった。
一口に一族の恥と言っても色々種類はあるけれど、具体的に、レオナルド・エディレトは、平地の民と長耳の民のハーフだったがために、一族の恥だと言われていた。
このご時世において、異種族間のハーフというのは能力をかけ合わせた稀有な存在として重要視されるが、ただ一つの例外として、長耳の民―――少なくともレオがいたエディレトの部族だけは、その種族的信仰によりて、異なる民同士に交わりを断固として禁じているため、ハーフそのものを嫌悪する傾向にある。
実際のところ、レオは何故それが禁忌なのかはっきりと聞かされていなかったが、それでも彼女自身がハーフだったため、彼女自身が蔑まれていたことなど想像に難くない。
駆け落ちだったという。
どこにでもいそうな長耳の民の青年が、ふらりとエルフの集落を訪れた旅人の女性に恋をした。それだけのこと。
そして、その結果生まれたのがレオナルド・エディレトであり、後々に、具体的には九つの頃に、厄介払いとして強引に孤児院に預けられた、稀有な少女なのである。
とはいえそんな生い立ちのレオだったけれど、そのステータスはどちらかと言えばどちらでもない、平地の民のようだとも長耳の民のようだとも言える、どっち付かずなものでしかなかった。
至って平凡。在り来り。本人は「そんなもんだ」と納得していたが、それにしたって、どっち付かず過ぎた。
本来ハーフというのは、どちらかの種族の能力を高く持って生まれてくる。高い方がステータスの種族欄に表示される。そして、なによりレオのようなハーフエルフは、長耳の民が霊的に過ぎるため、他の種族よりも強くその性質を受け継ぐ傾向にあった。
にも関わらず、明らかに凡庸。まあ確かに霊力値そのものは他よりも若干高かったが――それだけだ。筋力や俊敏は言わずもがな低く、頭の出来だってあくまでも普通。若干高い霊力でさえ、他の霊術を学びたいという優等生らに比べれば劣っているという有様だった。
ゆえに、レオが転校して転入したクラスというのは、ステータス別に差分化された内の、最もアビリティの低いクラスで、――そして、そこには当然、ルキウス・アムセスがいた。
彼のことは、噂程度には聞いていた。曰く、能無し。あくまでも平凡であったレオとは根本的に異なった、才能において完膚なきまでに底辺にいる、正真正銘の無能。
とはいえ当時なんてまだ十にも満たない年齢の幼子だったから、レオからすれば自分と彼にそこまでの差があるとはおもえなかったけれど。
そして勿論、それを面と向かってルキに言えるほど、二人の関係は近いものではなかったけれど。
良くも悪くも、ただのクラスメイト。顔見知りではあったが、会話を交わすことなんて無かったのである。
そんな二人が正真正銘に出会ったのは、レオが暇つぶしに借りた本を、孤児院の中にある図書館へと返しに来た時のことだった。
孤児院は学校でもあったが故に、五百冊程度の本が収納された、小さな図書館がある。数こそ少ないが、その種類は千差万別であり、子供でも読める絵本から、大人でも唸るような小難しいことの書かれた辞典まであった。
そして、レオが借りたのは前者の絵本であり、図書館に篭もるようにしていたルキが読んでいたのは、後者の辞典なのだった。
アウトドアを好むようなタイプではないから、レオは比較的よく本を借りることが多かった。だから、常日頃から暇を見つけては図書館で本を読むルキに出会うのは当然のことだとも言えた。
「何を、読んでいるんですか?」
だがどうして、その時に限って、レオがルキに声をかけたのか、今となってはわからない。ともかく彼女は興味にかられて、これまで話したことのないような少年に話しかけたのだ。
「んーと、魔物生体辞典」
知っているような知らないような、難しいような難しくないような単語を三つ並べたその本を指して、ルキはただそう言った。
「読んでみる?」
「えっと、はい。お願いします」
そう言われて読んでみて、読めなかったことに酷く驚いた。差別するわけではなかったけれど、あくまでも「無能」と呼ばれる少年が読む本だ。アビリティの内の知能欄だってルキよりも高いのだから、自分だって、簡単に読み解けてしまう程度のものなのだと思っていた。分厚い本だったが、外観だけが難しそうだから、誰も読まないだけなのだと思っていた。
けど違う。単純明快に、外観通りに、大人でも唸るような小難しいことの書かれた辞典だった。子供では読めるはずのない、知能アビリティが確実に足らないような、難解な辞典だった。
人間にステータスがあるように、本にもまたランクがある。それが厳密に表示されるわけではなかったが、推奨される知能アビリティよりも高くなければ、本を読み解くのは難解なのだ。
つまり、本来アビリティの低いルキが、彼よりも高いアビリティを持つレオが読めない本を読むことができないのである。
なのに、彼は普通に読むことができているようだった。内容を尋ねてみて淀むこと無くつらつらと述べるその様からもわかる。
「これ、どうやって読むんですか?」
「気合?」
それだけいって、ルキは本の世界へと戻ってゆく。
それを純粋に「すごい」と思えたのは、レオが幼かったからだろう。異常だというように映らなかったのは、純粋に彼女が世間を知らなかったからだった。
――――それからだ。レオがルキと言葉を交わすようになったのは。
そこに明確な意味はない。ただただ、ルキの読んでいた本が気になっただけのことである。
しかしそれでも、彼女と彼の関係性が、「ただのクラスメイト」から「仲の良いクラスメイト」に押し上がったのは、これが原因なのだった。
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ギド・アムセス・ウィリアムズにとって、ルキウス・アムセスは鏡の向こう側にいる自分なのだった。
鏡写しとは言っても、自分が天才で、ルキが無能だとか、だから鏡写なのだというわけではない。いっそ、むしろその逆。
ギドが無能だったからこそ、彼は同じ無能であるルキを嫌っていた。
そしてそれ以前に、ルキが日常で発する奇妙な違和感を、ギドは無意識の内に不気味に思っていたのだった。
「ルキウス・アムセスは異常だ。実際世間一般では確かに無能だが、しかしその実態は鬼才に近い」
それは、ギドが孤児院に入る直前、汚物溜めのようなスラム街生活から救われた後のこと。アムセスの孤児院と、そして彼がこれから生活を共にする第六十七班についての説明を受けていた時に、彼を死と隣り合わせの生活から救い出してくれた養父、エドワード・ウィリアムズから言われた言葉だった。
「んだそれ、どっちだよ」
今と全く変わらない、かつての生活で培った口の悪さをそのままに、純粋な疑問を口にしたギドだったが、エドワードはそれを聞いてか聞かずか、独り言のように続ける。
「彼はステータスが凄まじく低い。同年代どころか年齢が下の子供たちと比べても、随分と底辺をゆくステータスを持っている。―――そして、にも関わらず。にも関わらずだ。彼は、ルキウス・アムセスは、私でさえ理解できないことをやってのける」
「………はあ?」
例えば、戦い方なんて知らないはずなのに、どのようにか魔物を殺したこと。
例えば、本来ならば学者並の知能アビリティを持っていなければ読めるはずの無い、難読な書物を平然と読んでいたこと。
勿論、それは彼が転生者であるためだが、そんなこと知る由もないエドワードは苦いような笑みを浮かべる。
「ルキウス・アムセスは異常だ。もちろん、だからこうして、天才二人と、凡庸過ぎるハーフエルフの班に入れたわけだが。はてさてどういう結果が生まれることか…………」
そして、独り言のようにエドワードはギドに言った。
「…………まあ君も、君の聡明さならばいずれわかる。彼の得体の知れなさがな」
しかしそうは言われたものの、ルキと現実で合ってみて、その異常性はそこまでわかりやすいものではなかった。
ただ、その実で、同類であるはずの彼を、どこか不気味に思っていたこともまた、事実なのであるが。
何がどう、というわけではなかったが、彼から漂う雰囲気が、静かな口調の内に込められた達観さが、ギドに違和感を告げるのだ。
ギドは、母親の顔を知らない。父親の顔も知らない。
物心付いた頃から、ふらりとそこに訪れたエドワードに出会うまで、ギドは国から見放された無法地帯で生きていた。
強盗、殺傷、そんなものは当たり前。食べ物は皆腐っていて、街は汚れていて、男は酒に溺れていて、そこら中に餓死者達が転がっているような、そんな日常。
そこで、自分が無能なのだということを、ギドは知った。嫌でも知ることとなった。
彼には育ててくれる親なんていなかったから、自分の力だけで生計をたてるしかなかった。とはいえまだ小さな子供だったギドが職につけるはずもなく(ましてや貧民街だ。そもそもれっきとした「職業」なんて、無いに等しいものだった)、食料はゴミ溜めから漁るか、人のものを盗むしかないのだった。
同年代程度の少年少女、路頭に迷った孤児同士でグループ組んで、集団で生活する。そうでもしなければ生きていけない。大人の加護なんて受けられないのだから、子供同士助け合う他無いのである。
皆で共に食べ物を探し、時には他にも存在した孤児のグループから、物を奪うこともあった。
とはいえそうまでしても、仲間はすぐに死んでいった。当たり前だ。ゴミ溜めから漁ってきた腐りかけの食べ物なんで病を呼び寄せるだけだったし、こんな場所に薬もあるはずがない。身体の弱い者から順に、続々と死んでいった。そうでなくとも、他のグループや、大人たちからの強奪に失敗した者は、問答無用で殺された。
幸いギドはステータスも他の子供に比べて大きかったから、死ぬことは無かったが、同時に、同じ時を過ごした仲間の死を、まじまじと見せつけられた。
病にかかり、父恋し母恋しと咽び泣きながら衰弱死した少女。
精神に異常をきたして、自分の手で己の首を切り裂いた少年。
盗みがバレて、大衆の前で銃殺された捨て子の少年。
ギドは己の無能さを悔やんだ。仲間を守れなかった己の無力を、仲間を見殺しにした己の弱さを、それこそ憎悪とさえ呼べる程に、嫌悪したである。
故に、本来ならば同じ無能であるルキを嫌って然るはずなのに――いや、実際に、ギドはルキを完全に嫌っていた。それは他者もに認めることであり、ギド自身も、それが全てなのだと思っていた。
それにも関わらず、どこか違和感が残り続けている。
達観した態度、大人びた雰囲気、曖昧な微笑み。外見と行動がチグハグで、それを不気味だと、ギドは思った。
ルキが転生者だったから、本人は無意識なのであったとしても、前世によって培われた価値観は変わることがない。そしてそれによって生じた違和感こそが、ギドの感じた不気味さなのだった。
つまり、どれだけ酷い人生を歩んでいたとしても、あくまでギドは、まだまだ幼い子どもだったのである。人生そのものをもう一度やり直した少年とは、同じ無能であっても根本的に違っていて、だから「異端は嫌悪されるべき」という大衆思想に飲まれる他なかったのだ。
そういった違和感を、ギドという少年は「そういうものだ」と納得できなかったわけだけど。
結局、その正体が何なのか、ギドにわからないままだった。
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結論。
第六七班にとってのルキウス・アムセスとは、一概に、ただ「無能」と片付ける訳にはいかない存在だったのである。
だからといって「どう」というわけではなかったが――――どちらにせよ、彼を「無能だけではない」と信じていた彼らを、ルキ自身もまた、大切な存在として扱っていたのも確かなわけで。
故にルキは、自分の身を犠牲にして三人を救おうとした。
ゴブリンという最弱の脅威から逃げ延びるため、自分を囮とすることを選択した。
「――――まあ、端から見れば「勇気ある行動」なのでしょうが、貴方のそれは狂気の沙汰でしかない」
どこかで、声がする。声音は女性のもので、柔和な音を持っていた。しかしそこから感じ取れる感情は、一切あらず、ただ淡々と言葉を連ねているようでもあった。
「一度死んで転生者となった貴方は、死を肯定する。「もうすでに死んでいる」という固有思想は、「自分は死んでも構わない」という価値観へと変貌するから、だから己の命を晒すという愚行を、平然と行えるのでしょうね」
転生者であるルキのことを、どこか見透かしたような言葉だった。大衆思想とは根本から異なった固有思想。魔術と、それを用いる魔女の世界観。
「どちらにせよ、私の役目は貴方の監視です。貴方が我々に害を成すのか、少しでも可能性があれば殺す。それだけのことです――――」
「――――ねぇ、ルキウス・アムセス君」
女性の声が、どこかで響いて、そして消えていった。