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Silver Soul Online~もう一つの物語~  作者: 藍澤 建
二階層・マーレの街
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《79》情報収集

あけおめです。

今回はちょいと短めです!

 北の霧の森を攻略するのに、まず情報が足りない。

 そもそもいつまで卵が残っているかわからない。なるべく早く奪還に向かいたいところなのだが、それでもまた無策に突撃して言っては先程の二の舞になるだけ。どころかバッドステータスが解けなければ戦闘もままならない。


「どうしたもんか……」


 まず、持っている情報を整理しよう。

 場所は情報屋から歩いて少しのところにある喫茶店。

 通りに面した窓際の席に座り、正面で料理をかきこむシロへと視線を向ける。

 ――北の森。

 一階層と同様に考えればこの二階層における最も高い難易度を誇るエリアであり、霧が周囲を包み込んでいるため視界も悪い。

 出てくるモンスターは、森の木に化けて奇襲を仕掛けてくる木の化け物『トレント』に、一切の気配なく背後から忍び寄ってくるオカマの化け物。

 どちらもかなり厄介だが、個人的には後者の方がずっと恐ろしい。

 なにせ、トレントならばまだ動いてからも対応ができる。たとえ『擬態している間は気配完全遮断』とかいう能力があったにせよ、相手が動き、察知してから動けるだけのステータスは持ってる。

 問題は後者、一切の気配を掴ませることなく背後に忍び寄り、一撃でこちらの急所を握り潰してくるオカマの方だ。


「気配……なかったよな」


 まだ気配察知のスキルレベルが低いとはいえ、リアルでの能力を元にし、その上で強化しているわけで……今の僕が気づかないとなると、それはつまりあのオカマはリアルの僕すら偽れる気配遮断の持ち主だという事だ。

 しかも、そんな化け物が複数存在する事実。


「……これは、『霧』の方を疑うべきか」


 オカマの方が特殊なのではなく、霧の方が特別である可能性。

 そう言えば霧の中で気がついたらシロともはぐれていたし……気配遮断を強化する――ってよりは『気配察知を妨害する』って方が近いか。


「だから気配察知に頼ってたせいで接近に気づけなかった。視界が奪われ、姿を見失ったが最後、気配を探ることも出来ずにはぐれてしまった……とか」


 有り得る……が、確信はない。

 憶測の上に推測を立てて可能性を打ち出してるに過ぎない。


「……情報が足りないんだよな」


 頭をガシガシと書いて吐き捨てると、椅子から立ち上がる。

 もしも今回、気配察知能力が完全なる無意味となるのなら、まず間違いなく今までにない難易度を誇るエリア攻略となるだろう。

 なにせ、伊達に今までを生きてない。

 下手に熟練し、気配遮断とか気配察知とかの練習をしてきたからこそ、いざそれが奪われるとものすごく困る。今まで出来てたことが出来ないってだけで手も足も出なくなる。なにせ今はまで『基本』としてた土台が消えてしまったんだから。


「全く、嫌なステージだ」


 小さく苦笑いを漏らして遠方を見る。

 そこには、霧がかったステージが外壁の向こうに見えていた。




 ☆☆☆




 その後。

 落ち着くのを待って情報屋……アスパの店へと向かった僕は、げんなりとした合法幼女を前に情報収集に勤しんでいた。


「で、どうよ今のところ所感は」

「どうもこうもないよ……」


 ぐったりとしたアスパはジト目をこちらに向けている。

 まぁ、さっき来た際はついつい流れに応じて声を上げちゃったからな。明らかにバレてたっぽいし『あれっ、人間違いじゃありません?』みたいなすっとぼけしたら逆ギレされたっておかしくない。

 ということで。


「で、どうよ今のところの所感は」

「なにその同じ受け答えしかできないNPCみたいなスルーは」


 とりあえず、同じ単語を並べてみた。

 なおさらにアスパからのジト目が強まったような気がしたが、直ぐに彼女は色々と諦めたようなため息を漏らして口を開いた。


「まぁ、もういいよギン君は。色々と諦めてたし。……で、今回は何が知りたいって?」

「端的に言うと霧の森について。どういう原理であの森が成り立ってるのか。確実な答えとはならずとも、情報が欲しい」


 情報が多ければ多いほど予想が正解に近づいてゆく。

 今の僕の推測が『霧が気配察知を邪魔してる』ってモノで、多分僕も知らない情報がこの女の所には嫌ってくらい来てるはず。

 そう思っての相談だったが、どうやら考えは的中したらしい。


「……そうだね、かなり情報としては集まってるし、私なりに今回のイベント、その事実に近いところにまで近づいていると思ってる」


 だろうと思った。

 そんな内情を察したか、アスパはつまらなさそうに頬を膨らませると、頬杖をついて交渉に移る。


「で、幾ら出す?」


 彼女はあくまでも情報屋。

 金をもらって情報を売り、情報を買って金を渡す。

 その関係が壊れてしまえば、彼女は生活すら成り立たなくなる。

 まぁ、ゲームの中で生活がどうのこうのって言うのも変な話だが。


「5万? 10万? ギン君は攻略組トップだし、本来であればもうちょっと出してもらわなきゃ――」

「ん? あぁ、100万出すよ」


 アスパの声にかぶせ、手持ちの金額を提示する。

 途端にアスパが完全停止したが……まぁ、100万だもんな。『二号店』の売上がとんでもないのか、デスペナ食らっても尚100万が小銭に見えるくらいには金がある。こっちからしたら小銭でもアスパからしたらかなりの大金に違いない。


「ひゃ、ひゃひゃひょ、100万っ!? ちょ、ちょっとギン君!? 私は店でやってるから100万とかいう金額もある程度知ってるけど、個人でその金額持ってるって……ギン君、運営にコネでも持ってるの?」

「失礼な。ちゃんと正々堂々と商売して得た金だ」


 まぁ、正々堂々と言うのは自分でもどうかと思うが。

 そんなことを思いながら、メニューから札束を取り出し、アスパへと放る。

 100万を受け取ったアスパは驚いたようにあたふたしていたが、僕は咳払い一つ、早速本題へと切り込んだ。



「アスパ、お前の持つ情報の全て、そしてお前の考え。ついでにあの北の森を踏破できるスキルか防具か……それらの情報を全て売ってくれ。情報によりけりだが、場合によってはその三倍払う」



 その言葉に、彼女の目が大きく煌めいたのが分かった。

 ……さすがは商人、金さえ与えとけば扱いやすい。



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