《74》縁
めっちゃ短いです。
――Silver Soul Online。
通称、SSO。
一文字変えたらヤバイやつだな、著作権的に。
そのゲームの名前を聞いて、私が最初に思ったのはそんな事だった。
きっかけは同じクラスの友達に誘われたこと。
「ねぇ光葉、Silver Soul Online、ってゲーム聞いたことないかしら?」
「うん全く」
もちろん即答した。
最近の私は十数年前に起きたとある事件について調べてる最中で、あんまりゲームだったりそういうことには詳しくなかったし、当然の答えだと思う。
けれどその友人――呉松真里 は驚いたように目を見開いており、私の机をバンと叩いた。
そのせいでクラス中からほんのり注目が集まってしまったけど、すぐに興味を失ったか注目は霧散してしまう。
そんな中、真理は目を見開いたまま口を開いた。
「ほ、本当に知らないの!? テレビでもかなーり取り上げられてるかなりの有名作にして問題作にして最高傑作! 現代VRのいうなれば頂点に君臨する作品よ!」
「そ、そう言われても……」
そう苦笑する私へ彼女は困ったようにため息を漏らす。
見上げれば苦々しさを孕んだ彼女の表情には一握りの楽しさが浮かんでおり、その表情に嫌な予感を覚えた私へ――。
「私、そのゲームたまたま二つ手に入ったのだけど、ねぇやって見る気はないかしら? 鐘倉光葉」
☆☆☆
《ポーン! Rクエスト『空の王を討伐せよ』をクリアしました。報酬のアイテムがイベントリへと贈られました》
――と、いうわけで。
ギルマスを脅し……じゃなくて和やかに対談して報酬を受け取った僕は、そう言えばとあることを思い出す。
「……そう言えば、手紙届ける方の依頼報酬、受け取ってなくないか?」
「ん? よく分からないけれどハイこれ」
そうして彼が手渡してきたのは一通の手紙。
なんだか見覚えのある光景に嫌な予感を覚えていると……案の定。
《ポーン! Rクエスト『手紙を届けよ』の条件が更新されました。三階層のギルドマスターに手紙を届けるとクリアになります》
ハイハイ出ましたクソパターン。
二階層のギルマスに手紙を届けたらクリアになります、とか言ってたのに報酬もクソも出ないという現実。
アレですか。クリアになるとは言ったが報酬を与えるとは言ってないみたいなアレですかちょっと。
思わずそう頬を強ばらせていると、何を感じ取ったか少し焦った様子のギルドマスターが口を開いた。
「で、できればその手紙を第三階層のギルドマスターに渡してほしいんだ! も、もちろん手間賃として、グリフォン討伐報酬には通常にも増して色をつけておいたからさ!」
「……まぁ、いいけどさ」
これって多分最終階層まで続くパターンだろうけど、最後の最後、全部終わる時になったらそれなりにいい報酬が貰えるはずだろうし。そう考えたらほんのり色をつけてもらった分、ほんのり得したってものだろう。
「で、何なんだその報酬って」
ギルマスの前でメニューバーを開きながらそう問いかけると、自信満々に胸を張った彼はピンっと指を立てて笑ってみせる。
「実はこの階層、周囲を広大な大地に囲まれていてね! それを解消するためにとあるシステムを取り入れたのさ! その名も――」
かくしてビシッとポーズを決めるギルマスと、イベントリを開いてそのアイテムを見た僕が目を見開いたのはほぼ同時のこと。
思わず隣のシロへと視線を下ろした僕へ、ギルマスはジョ○ョポーズをしながらこう告げた。
「その名も『騎獣』! モンスターに乗り広大な大地を駆け抜けるこの街特有の超システム! 君にはその騎獣屋で優遇される特別チケッツを差し上げようではないか!」
――どうやら、三人目のパーティメンバーが増えるそうである。
見覚えのある名前だなぁ(棒)。




