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Silver Soul Online~もう一つの物語~  作者: 藍澤 建
一階層・始まりの街
51/89

《51》壱の杭【紅】

 《ポーン! エリアボス・魔の使いを討伐しました。2500経験値を獲得しました》

 《ポーン! レベルが上がりました》

 《ポーン! MVP討伐報酬を受け取りました》

 《ポーン! ソロ討伐報酬を受け取りました》

 《ポーン! 初討伐報酬を受け取りました》


 《ピコンッ! 第一階層の北のエリアボスがプレイヤーによって討伐されました。よって、現時点でのリザルト集計結果を発表します。メールボックスからご確認ください》

 《ピコンッ! 一階層の全エリアボスが討伐されました。以上を以て一階層ボス攻略におけるインフォメーションを停止し、明日の正午、第一階層のフロアボス攻略戦を開始いたします》


 そんなインフォメーションを聞きながら。


「死ぬかと思ったぁぁぁぁぁ!!」


 叫びながらその場に倒れ込む。

 いい感じにかっこつけてみたものの、内心はもうそりゃあとんでもないことになっていた。恐怖、不安、緊張、恐怖、シロ飛び出してきたらどうしよう等々、三リットルくらいは冷や汗を流した気分である。

 足音が聞こえてそちらを見れば、瞳をキラキラと輝かせたシロが僕の前にしゃがみこんでいる。


「ははー、どうだ、スゴイだろ」

「……」


 彼女は口元をむにむにとしながら何度も頷いている。

 その姿に少しだけ口元を緩めながら、大きく息を吐いて光となって消えゆく奴の体へと視線を向ける。


「なぁシロ、知ってたか? お前と出会う少し前に、このミノタウロスも一撃でやられちゃうんじゃないかって程に強い奴と会ったことあるんだぞ」

「!?」


 驚きに目を見張る彼女。

 ――禍神。

 ミノタウロスと戦って見てわかった、あれはA+なんてランクに収まっている器ではない。正しく格が違う。

 Sランク……S+ランク、いや、それ以上も有り得る。


「向こうにいた頃の僕でも手こずるんじゃないのか、アイツ」


 倒せはしただろうが、それでもそれなりに手は焼いたんじゃないかと思う。それほどまでにあの小さなモンスターは圧倒的にして絶対的な力を誇っていた。

 最悪と災悪を撒き散らす――禍の神。

 勝てる日なんて来るのかなと、思わず苦笑しながらも何とか上体を起こし、立ち上がる。


「さて、と。倒したはいいんだけれど……流石にこれ、放置するってわけには行きそうにないよな」


 先程までミノタウロスが背にして戦い続けていた場所には、巨大な『なにか』が突き刺さっていた。

 ミノタウロスの体よりもはるかに大きいソレは、形だけでいえば【杭】の様でもあり、透明な外角の中で渦巻く赤色の光は見ているだけで危険感を煽られる。

 イベントリに収納……は、出来るはずもないか。そもそも触れただけで即死なんてこともありそうで不安である。

 と、そんなことを考えていた――次の瞬間。


「……!」

「お、おいシロ!」


 その杭目掛けて走り出したシロ。

 咄嗟にその肩を掴もうと一歩踏み出したが、途端に膝がカクリと折れ、その場にとどまってしまう。

 流石に限界で無茶しすぎたか……。

 思わず歯を食いしばりながら、その杭を前にしゃがみこむシロへと視線を向けて――



「――――はいっ?」



 次の瞬間、杭が跡形もなく消失した。

 先程まで杭の突き刺さっていた地面は陥没したままだから、なにか幻覚を見ていたという訳では無いのだろう。

 ただ、あの禍々しい杭だけが消失したのだ。


「い、一体何を……」


 思わずそう呟き――次の瞬間、ある可能性に気が付いた。

 脳裏を過ぎったのは彼女が今まで一度として使ってこなかった二つのアビリティのうち一つの名前。

 慣れた手つきでイベントリを開き、最下層に存在するキングゴブリンやらミノタウロスやらの討伐報酬を眺めながらもその名を探す。


 ───────

 :

 ○上級ポーション[MVP]

 ○ミノタウロスの巨角×2

 ○ミノタウロスの黒皮

 ○換装の指輪[初討伐]

 ○ミスリル鉱×3[MVP]

 ○黒の破弓[ソロ]

 ○壱の杭【紅】

 ───────


「……あった」


 いや、件のブツの前とかその前とかめっちゃ気になるし、さらにその前とか見覚えありすぎるというか生前の僕の所有物だし、何考えてんだゼウスって感じするわけだけれど。


「採取しちゃったよこの子……」


 思わず地面に手をついて項垂れる。

 彼女のアビリティ――素手採取。

 直感的に『やばい』と感じていた【死の選定】は必要な時以外は使わぬようにと言い聞かせているが、それでも素手採取に関しては何も言ってこなかった。

 にも関わらず一度として彼女が使おうとしなかったそのアビリティが……なんとまさか、こんな所で役に立ってしまうとは。


「……?」

「あ、あぁ、良いんだよ。採取したかったんだろ? さすがシロだなー、助かったよ……」


 こてんと首を傾げている彼女に「何でもかんでも拾ってくるのはダメよ。ばっちいから捨ててきなさい」と言えるはずもなく、引き攣った笑い顔を貼り付けてそう返す。

 ……まぁ、アレだな。

 何だか後々に繋がってくる重要な伏線を思いっきりぶち壊した気もしないでもないが、シロがやらかした事だ、きっとゼウスだって許してくれるだろう。

 それでもダメだったら素直に土下座しよう。ゼウスならきっと許してくれるさ。あいつ優しいし。


「ま、なるようになるさ」

「……」


 言いながらも、あまりの疲労感に座り込んでいると、こくこくと首肯してくれていたシロが僕の股の間に座り込んでくる。

 もう毎度のことなんであまり驚いたりはしなかったが、それでもあれだけ怒鳴っても尚こうして一緒にいてくれるというのは……やっぱり嬉しいものだ。


「……ありがとな。助けてくれて」


 その言葉に、彼女は恥ずかしそうに顔を背ける。

 しかしながら真っ赤に染まっている耳までは隠せなかったようで、思わず顔をほころばせ、くしゃりと頭を撫で回す。


「でもま、もう少し素直になってくれてもいいんだけど」

「……」


 小さく、彼女が僕へと体重を預けてくる。

 それはどういう心境の変化だったろう。

 今までなら「ぷいっ」とかそんな感じで顔を背けられてたような気もしたが。

 まぁいずれにせよ、一歩前進したことには変わりない。

 吐息混じりに丁度いい位置に来た彼女の頭へと顔をのせると。



「あぁ……疲れた」



 思わず眠ってしまいそうになる疲労感の中。

 シロからは不機嫌そうな、それでいて少し嬉しそうな視線が送られてきていた。



 ☆☆☆



【name】 ギン

【種族】 吸血鬼族

【職業】 盗賊

【Lv】 10

 Str: 16 +26

 Vit: 10 +7

 Dex: 13 +2

 Int: 10

 Mnd: 10

 Agi: 43 +9

 Luk: 21

 SP: 3


【カルマ】

 -73


【アビリティ】

 ・吸血Lv.1

 ・自然回復Lv.9(↑2)

 ・夜目Lv.4(↑1)

 ・モンスター博士

 ・執念(new)


【スキル 8/8】

 ・中級剣術Lv.2(↑1)

 ・隠密Lv.7

 ・気配察知Lv.8

 ・心眼Lv.1(new)

 ・中級魔力付与Lv.1(new)

 ・軽業Lv.7(↑2)

 ・危険察知Lv.5(↑2)

 ・糸操作Lv.3


【称号】

 小さな英雄、月の加護、孤高の王者、最速討伐者、ウルフバスター、生への執念(new)


【魂の眷属】

 ・従魔:ヴァルキリー


 ───────────────


【name】 シロ

【種族】 ヴァルキリー

【職業】 選定者

【Lv】 7

 Str: 17 +9

 Vit: 12 +10

 Dex: 7

 Int: 15

 Mnd: 9 +8

 Agi: 12

 Luk: 7

 SP: 6


【好感度】

 +35


【アビリティ】

 ・死の選定Lv.1

 ・素手採取Lv.3(↑2)


【スキル】

 ・下級槍術Lv.4(↑1)

 ・下級盾術Lv.2(↑1)

 ・気配察知Lv.4(↑1)

 ・見切りLv.3(↑1)

 ・下級光魔法Lv.3


【称号】

 なし

アビリティ【執念】

HPが0になる攻撃を受けた時、1度だけHPを『1』だけ残してそれに耐える。HPが全快される度に効果が適用される。

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