故郷
「リコ、着いたよ」
ハルが、リコの鞘をずらしながら言った。
「むにゃむにゃ、、、、」
ハルが刃の中のリコを覗くと、リコが眠たそうな顔をして寝ていた。
「着いたの、、、?」
「うん、着いた」
ハル達は、村の中にいた。
村といっても、土を固めただけの道の周りに、木造の質素な家がぽつぽつあるだけだった。
ハルはその中の一つの小さな家の横にバイクを停めていた。
「ここがハルの、、、故郷?」
リコが鞘とナイフの柄の間に顔を覗かせながら言った。
「そうさ、、、」
ハルは玄関の前に立っていた。
そして何も言わず、扉を開けた。
「ノックは?」
「いいの」
家の中には誰もいなかった。それどころか、部屋はぼろぼろだった。
部屋のいたるところに蜘蛛の巣が張られており、机やタンスの表面には埃がたまっていた。
「うわ、、、なんだここ、、、」
リコが、嫌そうな顔をして言った。
「ここがボクの家さ、、、」
「え?」
ハルは部屋の隅に置かれている小さな机に向かった。
そこには、写真があった。小さな写真立てに収められており、その表面は埃まみれだった。
ハルは、表面の埃を指で払った。
そこには、和やかな表情をした男と女と、女に抱かれた赤ん坊が写っていた。
「ボクだ、、、」
ハルはそう呟いて、目を閉じた。