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とある道具屋の話

作者: 見た目は東南アジア

なんとなく投稿してみました

いったい何時からだろう商品を売る時に相手を見なくなったのは

見なくなったと言っても相手の姿を見ないと言う理由じゃなく買い手の人となりを見なくなったのは……


とある迷宮の入口からそう遠く無い、むしろここで最後の備品の補充をして行くような立地条件のこの店は流行らない訳が無い

先代から店を譲り受けて既に28年、駆け出しから熟練者 一流と言われるパーティや訓練の為に潜る騎士様の団体 はては勇者様御一行まで多種多様な相手に必要とされる物を適正な価格でを信条として買い手に合わせて買い手の足りな物を判断してから勧める

そんな商売を数年前まではやっていたと覚えている


しかし今では相手の事を見て足りない物を指摘して必要な物を用意するなど一切していない

欲しい物を言われただけ用意して値札の通りに売る……

子供の店番でも出来る事しかしやらなくなってしまった


3年と少し前だったと覚えている

まだ駆け出しも駆け出し、冒険者になって数日の3人組が2層まで行って帰って来るだけの、一般的な冒険者ならば数時間で余裕を持って往復できるようなお使い程度の難易度しか無い迷宮の雰囲気を覚えると言う名目の依頼で三人のうち1人が命を落とし2人は以後の生活に大きな障害を残す迷宮では日常茶飯事な出来事があった


その時にその三人組に売った物は今でも覚えている

数時間で終わる依頼でも堅実にこなす事が大切だと小言を言いつつ1日分余分に保存食 予備の松明 少し値は張るがいざという時のポーション 拾った魔石等を入れておく防水の革袋

値段は駆け出しでも負担にならないように、うちを贔屓にしてくれるならばと仕入れ値で渡したのも覚えている


冒険者の命は軽い


そんな事は迷宮近くに店を構えているのならば分かりきっている事で昨日話した相手が今日は布に包まれて迷宮から出て来るなんて珍しい事でも無いはずだった



運が悪かった、準備が足りなかった、警戒を怠った、たらればを言えば限りが無い


しかしあの時の三人組は、気付いてやれば違う結果になっていたと今でも思う

店を出て行く三人組をもう少し良く見ておけば良かったと今でも後悔し続けている

三人組のうち1人は武器と言える物すら持っていなかった、残りの2人も安物の包丁程度の物しか持っていなかったと後で聞く事になる

あの時に素材を剥ぐ為のナイフでも 下取りで買い取った安物の短剣でも それこそ箒の柄でも良いから渡しておけば良かった

危険と判断したら逃げてもう一度挑めば良いからと教えなかったのか

ほんの少し、ほんの少しだけ注意してやれば

いかに迷宮1階層なんてザコモンスターしか出ないと言っても冒険者になったばかりの少年達が武器も無く相手に出来るわけもなく、そしてろくな武器も無く迷宮に潜る等と気付いてさえやれば


あれ以来買い手と関わる事を出来るだけ避けて無難な商売をするようになった

これで良いのかなんて答えなんか出る訳も無く間違っているなんて言える訳も無く

既に60を7つも超えてしまうほどに歳も重ねてしまった

子供も商人を目指し今じゃ独自の行商ルートを持っている、孫も大きくなりもうすぐ曾孫まで産まれる

死ぬ時が引退する時だと若い頃に豪語していたが

もうここらでいいのでわ

そんな事を思うようになってしまった


迷宮の入口からそう遠く無い小さいが流行っている道具屋で

あとどれくらいの人間の生き死にが通り過ぎて行くのか

今日もカウンターの中から交差する冒険者達を眺めている

読んで頂いてありがとうございます

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