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予言の紅星1 言い伝えの石板  作者: 杵築しゅん
キシ公爵領奪還 編

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17/23

2 上官タイガ

◇◇◇ クラーのグループ ◇◇◇

 

 1083年11月24日、クラーたちはミノスの街に到着した。ミノスの部隊は、中心地から東へ少し離れた、レガートの森へ続く街道筋に基地を置いているため、残念ながら街は素通りしてミノス基地へと直行する。

 その街道は、ずっと進んで行くとレガートの森を横断して、隣国カルートのルナの街へと続いている。


「いいかお前ら、必ずバルファーを見付け出して、トップの成績で優勝するぞ!たかが金貨2枚の賞金なんて興味はないが、コーズやマルコのグループに負けるわけにはいかない。分かったか?」


「オーウ!必ず勝つ!!」


 クラーは最後尾から叫びながら、全員に気合いを入れる。2人を除き殆どのメンバーが自分のパシリ兼手下なので、ある意味統率がとれていた。


「やれやれ、バカ坊っちゃんの子守りは疲れそうだ」


教官のワートル35歳は、クラーの後ろを歩きながら小声で呟いた。

 毎年1人は上級学校を中退や退学して軍学校に入校してくるが、その中でもクラーは自己顕示欲が強く、人を下に置かねば気が済まないタイプだ。典型的なプライドだけが高いバカ貴族なのだが、体術と剣の腕がたつので、力でものを言わせる面倒な教え子でもある。

 ワートルが担当教官になったのは、伯爵家の次男だからで、自分より上位の貴族でないと横柄な態度をとるクラーに、でかい顔をさせない為だった。




◇◇◇ アルダス ◇◇◇


 目的地のキシの街まであと少しになった所で、3つに分かれていたグループ(アルダス組・意地悪組・クラーの手下組)は、ちょとずつ打ち解け始めた。

 軍学校を出発して5日目、いろんな雑談をしたり、ふざけあったり、グループに関係なく歩きながら会話するようになっていた。


「おいアルダス、賞金は1人金貨2枚だったよな?俺、金貨見たこと無いわ……どうしよう優勝したら何買おう……」


僕のファンであるドグは、未だ見ぬ金貨を想い幸せな気分に浸っていた。


「おいドグ、お前優勝狙いか?そりゃ無理!このメンバー見てみろ。だいたいお前が1番ダメそうじゃん」


そう言うクラーの手下であるヤレバは、クラーの威を借る狐くんだけど悪い人じゃない。入校したての時は僕に優しかった。クラーのパシリになってから狐くんになっちゃたけど。


「僕は優勝する気満々だよ。金貨2枚あったら母さんに新しい服と靴をプレゼントできるし、友達の女の子にも髪飾りをプレゼントしたいしね」


にこにこしながら楽しい、夢のある作り話しを皆にしてみる。


「あっ、俺も母ちゃんに何か買ってやろう!きっと喜ぶなぁ」


「俺は、妹と父ちゃんに靴をプレゼンするぞ。俺の妹はまだ7歳だけど、めちゃくちゃ可愛いんだ」


と、みんな家族の喜ぶ顔を想像して、家族自慢を始めた。


 軍学校に入校すると、卒業するまでの間に連休は夏休みの8日間しかない。だから家族の話をして寂しくならないように、学校ではできるだけお互い家族の話はしない。

 でも、卒業間近の今なら、学校ではない他所の土地なら、家族の話をしても寂しくならない気がする。

 僕はひとり一人の隣へ行き、これからの人間関係を円滑にするため、それぞれの家族構成や出身地、経済状態などを上手く聞き出しながら歩いた。


 聞き出す時のコツは「へ~っ、そうなんだ」とか「すごいね」とか「大変だね」で、だいたいオッケイ。途中で「さすがだね」を入れておけば、ほぼ何でも話してくれる。

(実際は、背の低いアルダスが質問すると、上目遣いの可愛い女の子に話し掛けられているような、そんな錯覚を起こすからである)


「相変わらずのたらしだな・・・」


幼馴染みのヨムが隣に来て、人聞きの悪いことを言う。


「何のこと?僕は情報収集と親睦を深めてただけだよ」


隣のデカイ男の顔を見上げながら、さらりと答える。ヨムは身長178センチ、珍しい黒髪に茶色の瞳、色白の美男子だ。町に出れば女の子の方から寄ってくる。

 同じ幼馴染みのフィリップも凄い男前で格好いいので、2人ともモテモテだ。

 

 僕をいじめる軍学校の学生の半分は、このモテ男2人のせいでもある。

 せっかく声を掛けて仲良くなった女の子たちが、ヨムとフィリップを見て、あっさりと乗り替えようとするらしい。そんな2人をいつも左右に連れている僕が、とばっちりを受けているのだ。(本当は可愛い?アルダスを、単にからかっている者の方が多い)

 なんでも、僕をいじめるとヨムとフィリップが怒るので、その姿を見ると気晴らしになるらしい。迷惑な話だ!


 

 そうこうしているうちに、キシの街が見えてきた。

 キシの軍基地は街の手前にある。それは王都ラミルへの侵攻を防ぐためである。

 キシの街はホン、マサキ、カワノの街と大街道で繋がっていて、王都ラミルに行くには、キシの街を通るのが1番早いので、交通の要所としての役割が大きい街である。


「よーし、全員整列。これからキシ部隊のタイガ上官(大佐)に挨拶に行く。リーダーのアルダス、代表で挨拶しろ」

「はい、了解しました」


僕はレポル教官に軍礼をとりながら答えた。

 緊張するなあ……噂のタイガ様はどんな方だろう。

 タイガ様はこんなチビの僕がリーダーで、怒ったりされないだろうか・・・


 基地本部の建物まで来ると、背の高い屈強な男3人が出迎えてくれた。ちょっと怖くて目を合わせられないが、大佐の軍服を着てショートの金髪の人がタイガ様のようだ。 


「よく来たな。私がキシ部隊を預かるタイガだ。ビシビシしごくからそのつもりでな!バルファー捜索については、探しに行く必要などない!王都ラミルへ向かうなら、この道を通るしかないのだから、見張りは充分足りている」


タイガ様のびっくり発言に、数人がざわついてしまった。


「軍学校より卒業試験にやってきましたアルダス以下15名、本日よりお世話になります。ご指導よろしくお願いいたします」


僕の挨拶に合わせて、「よろしくお願いします!」と全員が軍礼をとった。

 そしてタイガ様と目が合った。


『・・・』

『え~っと、この人は確か・・・』


お互い絶対に会ったことがあるぞと、記憶をフル回転させる。


『あっ!!あの時の坊主』

『あ~っ!!あの時のおじさん』


タイガ様と僕は、お互いキョドりながら視線を泳がせた。


「オホン、とりあえずお前たちがすべきことは情報収集だ。そして、国民の真実の声を聴かなければならない。これから卒業試験の仕事として、街道から枝のように延びている道の整備をして貰う。今回の評定に大きく左右する仕事になる。心して励むように!」


 先程に続くビックリ発言に皆がざわつくけど、試験課目であればやるしかない。良かったぁ、ガチムチ筋肉系がいっぱい居て助かった。僕は自分のグループのメンバーを見回して、にっこりと笑った。


「はい、全力で頑張ります」


僕の返事の後で、他の皆も「全力で頑張ります」と続けて返事した。


「詳しいことはレポル教官と、道路整備責任者のモスリブ大尉が説明する。以上。ああリーダーのアルダスは私に付いてくるように」


タイガ様の命令に、ヨムともう一人の幼馴染みのソウタが、心配そうに視線を送ってきた。僕は右手の親指を立てて大丈夫だと合図を送り、タイガ様の後ろを付いて行った。


 キシ基地の建物は思っていたよりも新しく大きかった。タイガ様の指令室は、どうやら1番奥の部屋のようだ。

 途中で兵たちが「お疲れ様です」とタイガ様に元気よく挨拶してくる。

 

 

 辺りに人の気配が無くなった頃、振り向かずにタイガ様が話し掛けてきた。


「で、どうして君がこんな所にいるんだい?」と。


 それは遡ること約1年。僕たち幼馴染み5人組(ヨム・ソウタ・シュノー・フィリップ・僕)は、いつものように街の見回りに出ていた。

 悪名高い領主レイモン公爵が、キシの領民に無理難題を押し付けて、苦しめていないかを確認するため、日課のように警戒して街をウロウロしていたのだ。

 

 レイモンは、自分の意に沿わない者を、貴族であれ、商人であれ、領民であれ理不尽に罰する最悪の領主だった。今でこそ殆ど王都ラミルにいるが、去年まではキシの街に度々帰ってきていた。




 あの日、レイモンの息子が乗った馬車の前を、友達の妹が横切ってしまった。馬車の速度が落ちたと腹を立て、逃げた娘を連行するようバカ息子が命令を出した。

 その時命じられたのが新しく赴任してきた軍の部隊だった。

 

 僕たちは一計を案じた。友達の妹の服を着てカツラを被った僕が、町中を華麗に?逃げ回ったのだ。

 そしてわざと捕まった。その時僕を取り調べたのがタイガ様だった。


「何故馬車の前を横切った?」


「私が道を横切っているところに、凄いスピードで突っ込んできたのは、あちらの方ですが何か?」


僕は軍人も警備隊の人間も、結局レイモンに逆らえないことを知っていた。領民をかばったりしたら自分たちが処罰されるのだから。

 だが、タイガ様は今までの軍人とは違っていた。


「親がろくでなしで、息子はバカか・・・やれやれ。見付からなかったことにするから帰って良いぞ」


と、斬新な発言をしたのだ。明らかにバカ息子は僕に向けられた発言ではなかった。


「いや、でもそうしたら貴方が処罰されてしまいますよ?」

「処罰?ああそれはいい!ここではない街に行けるなら大歓迎だ」


『はあ?』変わった人だなあ……僕は相手の顔をまじまじと見ながら、ある提案をしてみた。


「私をこのまま、そのバカ息子に引き渡してください。あいつの目的は分かっています。若い娘に難癖つけて、処罰と称して乱暴する。これまでにあのクズ親子に乱暴されて、自ら死を選んだ女性は何人もいます」


 僕は身近な女性の死を思い出して、怒りがこみ上げてきた。そしてこのチャンスに、あいつを痛い目に遭わせてやろうと決心していた。


「まるで、復讐にでも行くかのような殺気だな」

「・・・」


 意外な指摘に、僕は言葉を失った。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、教えてください。

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