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予言の紅星1 言い伝えの石板  作者: 杵築しゅん
レガート内乱 編

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15/23

セバク・ドリル 

レガート内乱編はこれで完結です。

次は、【レガート内乱 キシ公爵領奪還編】がスタートします。

 1084年1月9日、私セバク・ドリルは久し振りに王都ラミルに来ていた。

 せっかく撒いたギラ新教の教えだが、ヤッデンが死んでしまってからというもの、どいつもこいつも私と会うのを敬遠するようになり、崇高な教えが貴族たちに布教できないでいる。

 このままいけば、バルファーが国王になってしまうだろう。

 この私の計画を知恵と運で覆した男だ、ギラ新教には興味を持つまい。

 まあバルファーの政権がはっきりしてから、また信者を増やせばいいことだ。


 ヒミ川に掛かる大橋を歩いて渡り、ラミルの中心地に入ってくると、バルファー軍が街を制圧しているのが分かる。制圧と言っても人々の生活には大きな支障は出てないようで、クエナ王の支援者でなければ街への出入りも自由である。他国籍の私など簡単に入ってこれた。

 私がこれまで動いた証拠など残ってはいないはずだが、生き残っているクーデター首謀者の内、口の軽そうだった貴族だけは処分しておこう。

 

『まあカワノを始めとしてクーデター首謀者たちには、随分と儲けさせて貰ったし、今となっては死人に口なしだ』


 先ず処分すべき人間は、軍学校の校長になったと聞いている男だ。

 2ヶ月前に会った時は、月に4日しか仕事をしなくていいと豪語していた。しなくていいんじゃなくて、出来ないんだろうと思わず口から出そうだったが、バカは使い道があるから生かしておいたがバカ過ぎたな。助ける振りをすれば容易に口を塞げるだろう。

 

 目的の男の屋敷に向かう途中、ブルーノア正教会(ラミル正教会)に続く長い石段の途中に、ポツンと座っている1人の若い女の姿が目に入った。


『あれは金の匂いのする上客のようだ。どうやらまた新しくレガート国で仕事をすることになるな』


 私はその娘にそっと近付き、いつもの台詞を口にした。


「やっと探し当てました。貴女は今、欲しいものがおありでしょう?しかしこのままでは手に入りそうもない・・・そうではありませんか?」と。


「えっ?あなたは誰?私を探していたの?」


娘は20歳位だろうか貴族特有のグレーの髪にグレーの瞳、一目で育ちの良さが分かる華美なドレスを着て、小さいが高価だと思われるアクセサリーを身に付けている。

 高位に登る運のオーラを放っているので、ターゲットとして申し分ないだろう。

 その顔は、泣いていたのであろう涙で濡れている。


「私は神のお告げにより、高貴な運命を持つ貴女を探していたのです。そして神は貴女の願いを叶えよと言われたのです」


私は正式な礼をとり、その後ひざまずいて頭を下げた。


「私の願いが叶う?いいえ、そんなの無理!私は王妃にはなれない・・・」


そう言うと、女はまた激しく泣き出した。


『王妃!この娘が欲しているのは王妃の座か!これは思わぬ拾い物だ』 


 私には、人の持つ強欲さが視える。欲深くあればある程、特有のオーラを放っているのが視えるのだ。そして同時に金の匂いがするかしないかが、勘のようなもので解るのだ。

 王妃とは、なんと強欲なのだ!しかし、この私の目に留まったということは、この娘を王妃にできるということだ。


「私はギラ新教という宗教の大師をしております。実は先日、開祖ハイヤーン様が神託を受けられました。レガート国の王都ラミルに高貴な運命を持って生まれたが、誤った選択で本来の地位に就けない娘がいる。行ってその者の手助けをせよとのご神託でした。私は貴女を一目見て直ぐに判りました。迷ってはいけません!貴女こそが王妃の座に相応しい人なのです。これは神の御心なのですよ」


私は、涙に滲む娘の瞳と視点が合ったその時、うん、とゆっくり頷いた。

 娘が自分こそが王妃の座に相応しいと、暗示に掛かった瞬間である。


 娘は、カスミラ・エダ・マローン侯爵令嬢と名乗った。そして父親は次期国務大臣に決まっているらしい。なんて美味しそうな《カモ》なのだろう。

 カスミラは、バルファーは既に婚約し、お腹に子供まで宿している女がいて、王座奪還後に結婚することが決まっているので、自分は王妃の座には就けないのだと泣きながら言った。


「しかし、神の神託は貴女だとお告げです。その女は望んではならない座に就こうとしています。神に逆らうと王の運命が変わってしまいます。バルファー様が城を追われたのも、その女のせいかもしれません・・・どうされますか?王の運命を正しく導けるのはカスミラ様だけなのですよ」


私はカスミラの手を握り、バルファーの為にと念を押す。


「私はどうしたら・・・どうしたらバルファー様をお救いできるの?」


カスミラはすがるように私を見て、その方法を訊ねてきた。


 後は私が命じればいい。そして少しだけ手を貸してやればいい。


「その女と、お腹の子供がこの世にいなければ、バルファー様は無事に国王になられるでしょう」


「・・・えっ?・・・そ、それでは殺せと・・・?」


カスミラは大きく目を見開き、震えながら小さな声で呟く。


「いいえ、人は不幸にも事故に遭ったりするものなのですよ」


カスミラは、ハッと目を大きく見開き、にっこり笑った。


『いいねぇ、その笑顔……強欲のオーラが一段と強くなった。はははっ、やっぱりこの国は面白い』



 それから間もなく、私が用意した傭兵2人が、カスミラの命令でカイの街に向かった。

 そして私は邪魔な軍学校の校長を、毒薬で楽に送って(葬って)やった。



 1084年1月12日、バルファーが王位に就く。

 1084年1月20日、傭兵から任務完了(バルファーの婚約者殺害)と連絡が入った。


 その後、バルファーは随分と婚約者と赤ん坊を捜したらしいが、死亡を確認したとして、カスミラと婚約。 


 1084年3月、カスミラはバルファーと正式に結婚し、王妃の座に就いた。

 1084年12月、王妃カスミラ王子を産む。


 これで私は、レガート国での活動がしやすくなった。

 王宮内には、私の顔を見た警備隊の者がいるため入れないが、王妃という後ろ楯があるのだ。

 新たな貴族の信者も増えてきた。残念なことがあるとすれば、カスミラの父親であり国務大臣のマローンが、熱心なブルーノア教徒だったので、会うことさえできないことだが別に問題ない。


 暫くは、大きく政情も経済も変化しないだろう。これ以上レガート国に来ても、楽しめることは無さそうだ。

 ぼちぼちハキ神国で、本部の強化でもしておこう。

 たまにはハイヤーン(教祖)の言う、一般人に対する施しもしてやらねばなるまい。

 実質お飾りでも、開祖とか教祖は必要だ。ハイヤーンには何の欲もないから、かえって手が掛かるが仕方がない。


『ランドル大陸中が混乱し、貴族のバカ共は、私の足元に平伏す、王族は絶え、民は路頭に迷う。そんな素晴らしい未来もそう遠くはない。そして私は、救いの神としてこの大陸を支配するのだ。はっはっはっ!』


 ハキ神国へと向かう豪華な馬車の中で1人、私は笑いを我慢できなかった。



 それから12年後、殺したはずのバルファー王の子供と、セバク・ドリルは初めて対決することとなる。

 この物語の主人公イツキ(キアフ)と、ギラ新教との闘いが始まるのである。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から軍学校の楽しい?話が始まります。

バルファーが王座を奪還する前後のストーリーですが、主人公イツキの将来に大きく関わる人たちが、たくさん出てきますので、ぜひお読みくださいませ。

仲間、友情、競い合い、公爵家の内情など、スカッとする結末にご期待ください。

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