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予言の紅星1 言い伝えの石板  作者: 杵築しゅん
レガート内乱 編

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言い伝えの石板 

【予言の紅星1 言い伝えの石板】は、主人公イツキが生まれる前の話が中心です。

イツキの誕生秘話や、レガート国について、また、イツキの親族について知ることができます。

2016年12月、【予言の紅星】シリーズ化に伴い、タイトルを【予言の紅星1 言い伝えの石板】と【予言の紅星2 予言の子】と変更しました。

初めて読まれる方は、【予言の紅星 外伝】も読んで頂けたら嬉しいです。

【予言の紅星3 隣国の戦乱】完結。【予言の紅星4 上級学校の学生】完結。

現在【予言の紅星5 ロームズの反乱】を執筆中です。

 1084年、ランドル大陸を救う【予言の子】が生まれる。

 その子の名はイツキ。これから始まる物語は、主人公イツキの父が、悪神教に操られた者たちと戦う物語であり、イツキ誕生の物語である。



 ランドル大陸の西、レガート国には、開国以来歴代の王が大切に守ってきた《言い伝えの石板》があった。


 王宮地下神殿の中央に、縦横2メートル、高さ1メートルの黒いカレガ石の台座の上に、それは立てて置かれていた。

 石板自体は、横50センチ、縦80センチ、厚さ5センチ程の謎の白い石で作られていて、文字は彫ってあり、朱色の顔料で色付けされている。

 遠くから見ると、石板には天井から光が差し込み、朱色の文字だけが浮かび上がって見える。

 それはまるで自分に警告しているようだと、王たちは感じるのである。


 その石板には、2つのことが記されている。


1、真の王でない者が王座に就くと、13ヶ月以内に死ぬであろう

  病であれば【偽王】であり、事故であれば【愚王】である


2、左から同じ数字が2つ以上並ぶ年、新しい王が即位すれば、国は栄える


 レガート王家に生まれた者は、6歳になった時、地下神殿に入ることを許され《言い伝えの石板》を初めて見ることができるのだ。

 王になった者は、何があっても13ヶ月以上在位しようと、健康とケガに注意して生活する。しかしどんなに頑張っても、13ヶ月在位できない王は何人もいたのだった。


 この13ヶ月以上在位の言い伝えは、国民も知っている。そのため、対外的な即位式とは別に、国民が祝う真の即位式は、13ヶ月後に行われることになっている。


 1080年秋、国王アナク・レガート47歳は、弟のクエナ・ルジ・レガート公爵44歳、姉のサキナ・ラギ・エルフ公爵夫人49歳の3人で、久しぶりに石板を見にきていた。

 国王アナクは、毎年誕生日の前日に姉弟で集まり、この地下神殿にやって来る。

 王として、これからのレガートをどう導くべきか、相談したり報告したりすることを目的として。


「兄上、地方の貴族たちが、かなり不満を持っているようです。領民からの租税を増やしたいのに、兄上が許可してくださらないからと、私の所に陳情に来てうるさいのです」


弟クエナは、グレーの瞳を曇らせ本当に困ったという顔をして、兄である国王に愚痴を言う。

 クエナはやや小太りで、グレーの髪は肩に着かない程度に短く、少しウエーブがかかっていた。服装は王である兄より派手目で、宝飾品が散りばめられている。顔は精悍な顔立ちとは言えず、丸顔で彫りも深いとは言えなかったが、それなりに整ってはいた。身長も平均的で、少し前に出た腹が貫禄だけはあるように感じさせている。  


「しかしクエナよ、昨年も今年も作物は不作だったではないか。民ばかりに負担は掛けられぬ。どうせ貴族たちの陳情は、贅沢することが目的であろう」


国王は、は~っと息を吐きながら精悍な顔を歪ませる。貴族たちからの上奏を見ないふりをして、民を思いやっているので、やたらと気苦労が多く太れない。自慢だった銀髪もやや艶を無くしているようだった。

 弟クエナに比べて細身で、神経質そうに見えるが意外とのんびりした性格である。

 

 国王アナクは、国民からの支持は高いが、領主たちからは、融通の利かない王だと疎まれていた。

 面倒な謁見を嫌い、農地改革や鉱山開発に力を入れ、地方に出掛けることも多く、中央の貴族からは『王都より田舎好き』などと、やゆされていた。


 王弟クエナは派手好きで、民より貴族を重んじる傾向にあり、しばしば国王への進言を、貴族たちから頼まれる役回りだった。

 そんな貴族の中には「クエナ様が王であられたなら、この国はもっと良くなるのでしょうに」などと、物騒なことを囁く者もいたが、「いやいや私など王の器にあらずですよ」と、まんざらでもない風だが、クエナは嘘偽りなく王位に興味などなかった。


「クエナ、私たち王族は、1に民のことを考えねばなりません。貴方が貴族たちを抑えなくてどうするのです?」

「分かっていますよ姉上……」


 クエナの姉のサキナは、美しい銀髪を結い上げ濃い青の天然石の髪留めをしている。決して高価な物ではなく、服装にしても華美なるを嫌い、他の貴族の贅沢を戒めるかのように、質素を心掛けていた。

 領地では、民にとっての良き母であり、その優しさで皆から慕われていた。


 しかしクエナは、そんな立派な姉が嫌いだった。常に正道を語り、兄である国王ばかりに味方する。

 夫であるエルフ公爵も、何かとうるさい嫌な奴だと思っていた。財務大臣である自分に、あれこれ難癖をつけ、義兄とは言え腹に据えかねることが多いのだ。



「しかしあれだな、左から同じ数字が2つ以上並ぶ年と言えば、早くて1100年だから20年後だな。私が67歳でバルファーが41歳。長生きできれば可能だろうか・・・」


アナクは夢見るようにグレーの瞳を瞑り、将来の息子と国を想いながら呟く。


「王様、そのような欲を出してはいけません。歴史を振り返ればお分かりでしょう。並び年が近付くと必ず国が荒れるのです。そのような時に新王になった者は、苦労をするだけです。盤石の守りを築いて置かねばならないのです」


サキナは過去の歴史を振り返り、並び年の前はレガート国や王家にとって、苦難が多かったことを例に上げ、姉として、王に誠意を持って忠告した。


「そうですよ兄上、名君と呼ばれた歴代王は、33年、228年、555年、775年の即位でしたが、国父と呼ばれた555年即位のルーベンス王は、大陸大戦争の中で、両親、兄弟、子どもまで殺され、国父と言う名の他に、悲劇の王とも呼ばれました」


「うっ、そうだな。バルファーに苦労はさせたくないな」


 そんな会話を姉弟が石板の前でしていた頃、レガート国第6の都市カワノの領主カワノ公爵は、数人の侯爵や伯爵、子爵を集めて、国王に対する不満をぶちまけていた。




◇◇◇カワノ公爵邸◇◇◇


「国王は、我々の苦労など知ろうとされない。民ばかりに目を向けて、民の機嫌をとる王など王の器にあらず。我々貴族が国を動かしていることを、もっと認識すべきなのだ。そして何よりも、大臣や高官に一般人を起用するなど、あってはならないことをした」


カワノ公爵は、長いグレーの髪を振り乱しながら熱弁を振るう。贅沢に刺繍された白い服を着て、靴は最高級の皮を使った物を履いている。貴族であることを全面に出し、プライドの高そうなグレーの瞳が怒りで吊り上がっている。


「そうだ!無能な王のせいで、我々が高官に就けないのだ」


「我々の祖父や父親が、どれ程国の為に働いてきたと思っているんだ!感謝して高位の仕事を任せるべきであろう」


20代、30代と思われるの無役の貴族たちは、怒りを露にして叫ぶ。




『いやいや、あんた等みたいな無能な坊っちゃんは、どうせ仕事なんてできないだろう?親が頑張ったからって、何故お前等が高位の仕事を貰えるんだ・・・くだらない!クズばかりだ!』


廊下に立って話しを盗み聞きしていたドリルは、開け放ったドアの中から聞こえてくる会話に、心の中で唾を吐いた。

 この男、怪しげな気を放ち、人ならぬオーラを身に纏いながら、バカな人間たちを嫌悪しているのがわかる。



 カワノ公爵は「まあまあ、これでも飲んで」と言いながら、全員に極上のワインを注いでいく。ボトルのラベルを見て「ひゅう」と誰かが口笛を吹く。

 首都ラミルにある、カワノ公爵の屋敷に集まっていたのは11人。無役か役職無しの文官や警備隊の貴族の者ばかりだった。


「今日は皆に、紹介したい者がいて来て貰った。私がこの偉大な計画を立てる、切っ掛けを与えてくれた友人だ」


そう言って、カワノ公爵は廊下で控えていた男を、部屋の中に招き入れる。

 カワノ公爵の隣に、真っ黒な布地に金糸の鮮やかな刺繍を施し、独特な服を着た、20代前半と思われる若い男が近付いて来た。

 グレーの髪に銀色の瞳、整った顔立ちは、一目で知的な人間だと知らしめす。色白の長身で物腰は優雅である。

 そしてその男は、皆の方を見て軽く微笑みながら挨拶を始めた。


「友人とは恐れ多い、私はただの大師です。皆様はじめまして、ギラ新教のドリルと申します。以後お見知りおきくだされば、有り難いのですが」


ドリルと名乗った男は軽く頭を下げた。


「えらく軽い挨拶だな。公爵様や他の貴族の方々に対して、敬意が足らない気がするが」


子爵の1人が、失礼な態度ではないかと、気を悪くしたのか見下した物言いをする。


「まあ君たちは、ギラ新教を知らないようだから仕方ないが、今、大陸全土で新しい宗教が拡大している。あと30年、いや20年もしたら、ブルーノア教と並ぶ信者の数になるだろう。彼はそこの大師、分かり易く言えば、ブルーノア教のシーリス(教聖)のような立場にいる。君たちが信者であれば、むしろ礼をとる方なのだがね」


カワノ公爵はそう言いながら、隣に立つドリルにもワインを注ぐ。


「さあ、改めて乾杯しよう!我々の新しい未来に、そして新王クエナ様に!」

「乾杯!」


『私の手駒となる兵隊たちに、そしてギラ新教に乾杯!』


ドリルは、心の中で全員をバカにしながら、表の顔はにこやかに微笑みながらグラスを合わせていく。

全員でグラスを軽く合わせ終えてから、1杯目を一気に飲み干す。


「ところで、ギラ新教とはどういう宗教なのだ?」


1人の侯爵が、興味を持ったようで大師ドリルに質問する。


「ギラ新教とは、皆様のような高貴な人々が、本来あるべき地位につき、能力を存分に発揮できる世界を創り、人々を正しい方向へと導かれる為の、お手伝いをする宗教なのです。現在信者の多くは、他国ではありますが、王族や貴族の方々、大商人の皆様で、民は優秀な者だけを集めています。私の仕事は、教祖ハイヤーン様が示された、真のリーダーとなられる方に、お声を掛けさせて頂き、伝言をお伝えすることなのです」


ドリルは、全員の顔をゆっくり見ながら話しを進めた。


「それでは、カワノ公爵は教祖に選ばれたということなのか?」


今度は他の伯爵が質問してきた。緊張と期待に満ちた視線がドリルに集まる。


「そうです。教祖ハイヤーン様は、レガート国のカワノ公爵を訪ねよと命じられました。ハイヤーン様はギラ新教の教会で、神の声を御聞きになり、真のリーダーの名を授けられたのです」


 カワノ公爵は、自分が神に選ばれた特別な存在だと皆に知って貰い、この場に居る全員の協力を得るために、ドリルを同席させたのだった。

 カワノ公爵の屋敷に集まった11人は、ドリルの話を聞いた後、じきに自分たちが、大臣や高位の役職に就くことになるだろうと確信し、ほくそ笑んだ。

 そして、欲に目が眩んだ全員が、仮の信者としてギラ新教に入信したのだった。



『どうして貴族や金持ちは、バカばっかりなんだろう。どこの国でも同じだ。能力は無いがプライドだけは高い。お前等は、せいぜいこの私の手駒として働いてもらうよ』


 会合の途中で退席し、カワノ公爵の屋敷を出た所で、「はっはっはっ」と笑い、全てが順調すぎて少しつまらないなと思うドリルだった。

 懐には、新しい信者たちが差し出した、金や宝石がたんまり入っていた。



「次の真のリーダーを、王弟クエナに演じて頂こう」

 

そう呟いて、ドリルはレガート国を後にした。


 1082年、ドリルは再びレガート国に戻ってくる。クーデターを起こすために。


初めて書いた作品です。つたない文章力ですがよろしくお願いいたします。


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