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教育者は私の天職です!!

【あらすじ】


 教師として生きてきて十数年、私は生涯の幕を閉じました。

 転生させてもらえるらしいので「教育を受ける立場になりたい」とお願いしました。

 これで教え子たちのようなキラキラ輝くスクールライフを送れるのですねっ!!

……って思ってたのに、どうしてこうなった?


問題のある生徒は教育者として見過ごせません!

特別授業開始ですっ!!

 初めてその職に就いてから、交通事故で死ぬまでの十数年間。私は教師という職を全うしたと思ってます。

 周りと比べると若いながらも、生徒たちからの信頼を得ていました。不良たちを更正させたこともありました。

 いつのまにか教育の世界では有名になっていたし、私自身もこの仕事を天職だと感じていました。


 あの日、担任を受け持った生徒たちを無事卒業させました。まさにその直後です。私は卒業式の感動を引きずったまま、この世から旅立ちました。



 目が覚めたとき、私は真っ暗な空間にいたのです。


 そこで起きた出来事はまるで夢物語のようで信じてもらえないかもしれないですけど……。


 私、天使に会いました。

 本人が天使と言っていただけなので本当かどうかはわからないけれども。


 そして私はその自称天使に聞かれました。

  「もしその意識のまま転生するとしたら、どんな所がいい?」と。

 だから答えましたよ。

「もう一度、教育を受けられる立場がいい」とね。


 教育を受けさせる立場にずっといたから、教育者の意識を持ったまま、また教育を受けたら楽しいんだろうな~どうなるんだろうな~なんて軽い気持ちです。


 そしたら自称天使が私の頭に手をかざし、私は再び意識を失いました。



 次に目が覚めたとき、さすがに驚きましたよ。

 だって、若返っていたんですもん。見た目はピッチピチの高校生です。

 信じられなくて暫くの間、鏡とにらめっこしていましたが、母親らしき人に怒られました。

 ……お母様、前世の私と同じくらいの年ってどういうことですか。

 私は彼氏すらいなかったというのにっ!!


 …………おっと、取り乱してしまいました。


 何はともあれ、願い通りの学生生活を送るチャンスが巡って来たのです。自称天使に感謝しないといけませんね。

 これから私は、自分の教え子たちのように素敵なスクールライフを過ごそうと思いますっ!!!!




 って意気込んでいたのに、何故こうなった……。



 私を取り囲むのは四名の超絶イケメンさんたち。そして大きな瞳をうるうると潤ませた可憐な美少女一名。

 イケメンさんたちは表面上は表していませんが、確実に怒ってます。


 な ん で ?

 私、何か悪いことしましたかっ!?いや、してないです!!


「あの~、私は何故このような状況に置かれているのでしょうか?」

「ぁあっ!?テメー、自分のしたこともわかんねぇのかよ!!」


 下手に出て尋ねたのに、派手な色の髪をツンツンさせた、いかにも不良って感じの子に怒鳴られました。意味不明。


「わかるも何も、私は何もしていませんが」


 こういう時に自分の主張を曲げてはいけません。いくら相手が自分より強くても、目を見てはっきり真実を告げることが大事だと子供たちに教えてきました。

 でもそれがより一層彼らの怒りに火をつけてしまったらしいです。

 こめかみがピクピクしてますし。


「あなたが思い出せないのなら、教えてあげましょうか?」


 すると、金髪の紳士的な生徒がそう言ってくれました。

 他人に気を使ってフォローしてあげるなんで、よくできた子ですね!こういう場合は相手を責めるのではなく、自ら気付かせてあげることが大切です。


 私が内心誉めていると、金髪くんは私の髪を鷲掴みにし、グッと顔を近づけてきました。


「あなたは、僕らの百合を傷つけたのですよ」


 …………確かに、先程までの態度は合格点ですが、女の子に対して乱暴な振る舞いや、身に覚えのない濡れ衣を着せるのは許せませんよ。


 でも、彼らの様子を見ていればわかります。これは私が弁明しても聞いてくれないでしょう。

 私はただ、美少女こと百合さんにこの教室に呼び出され、何か用かと尋ねたところ、突然彼女は転びました。一人でに。

 たいした怪我でもないのに泣き出してしまった百合さんを宥めようとしているところに彼らが集合。

 百合さんはあろうことか、この人が暴力をふるってきたと私を指差すじゃありませんか。


 なぜ百合さんはこんなことを……。あぁ 確か、転ぶ前に「目障りなのよ!」とか言ってましたっけ?

 私の容姿は同学年の周りの子と比べても優れているほうのようですが……。

 それをひがんでこんなことしてるんだったら、教育者として見過ごせませんね。それに、こんなことしなくても百合さんは十分美人だと言うのに。


 でもまぁ、今の私は教育者ではありませんから。ただの一生徒ですから、こういう問題は本職の人になんとかしてもらいましょうか。


 私は百合さんの横に立っている先生を見上げました。


 彼は私のクラスの担任です。

かっこよくて、若くて、優しくて…

同じ職の私から見ても良い先生だと思います。


 先生!この状況を何とかしてください!


 そう祈りをこめて見つめたのですが……

 私を見つめ返してきた彼の目には侮蔑の色が浮かんでいました。

 その居心地の悪い視線に、ほんの少したじろいでしまいます。

 挙げ句に先生、なんて言ったと思います?


「お前は優秀で素直な生徒だと思っていたんだが……残念だよ」


ですってよ!!


 これにはさすがの私もショックを隠しきれませんでしたよ。良い教師だと信じていたのに、まさか生徒の証言を聞かず、勝手な偏見で決めつける人だったなんて。裏切られた気分です。


 さらに追い討ちをかけるようにハニーブラウンの髪をした可愛らしい男の子が


「そーだそーだ!百合ちゃんに謝れ~」


と囃し立ててきました。



「…………………あっきれた」


 はい、ぶちギレました。


 私は彼らの前を横切り、教卓に手を付きました。

 呆然とする皆さんを尻目に、胸を張って話し出します。


「皆さんは学校というものがどういうものかわかっていらっしゃらないようですね?だから私が特別授業をして差し上げます。とりあえずそこに正座して頂けますか」

「はぁ?誰が正座なんて…」


 不良くんが抗議しますが、ここで引いてはなめられてしまうのでNGですよ。


「聞こえなかったのですか?私は正座しろと言いました。これはお願いではなく、命令ですよ」

「なぜあなたに従わなければ…」


「黙れっ!!教師が正座しろと言ったら素直に従えっ!!意義は認めん!!」


 おっと……。イラついてついつい厳しい口調になってしまいました。

 彼らも私の変化には驚いたようですね。目を丸くしています。


「さぁ、正・座。してください?」


 今度はにっこりと笑顔で言ってあげましたよ。そしたら皆さん、渋々ですが座ってくださいました。

 これでやっと授業が出来ますね。



 私は皆さんの顔を見渡し、話始めます。


「学校は、皆さんが青春を過ごす場所です。基本的に自分が良いと思うならば何をしてもいいと考えています。しかし、優先順位を間違えてはいけません。1に勉強 2に友情!3.4がなくて 5に恋愛!これが私の教える優先順位です。今の皆さんは明らかに五番目である恋愛を何より優先させてしまってますよね?」


 そう問いかければ、生徒たちは神妙な顔つきになりました。

 真面目に話を聞くのはとってもいいことですよ。


「特に百合さん」

「は、はいっ!」

「あなたは己の欲望の為に友達を売りましたね?それは決して褒められた行為ではありませんよ」


 優しく説くと、百合さんはまた瞳に涙を溜めて、ごめんなさい…と 弱々しく呟きました。


 誰しも間違えることはあります。

 問題はそれを反省し、次に生かせるかどうか。

 きっと今の百合さんなら大丈夫でしょう。


「そして、先生」


 呼び掛けると、まさか自分が言われると思ってなかったのか、先生はビクッと肩を揺らしました。


「教師が自分の偏見で物事を勝手に決めつけるなんて、絶対にダメです。先生は私の言い分を聞こうとしましたか?なぜ私が否定するのか確かめようとしましたか?」

「い、いや……」

「なんでも自分の偏見で決める。真実は違うけど俺が悪いと思ったからお前が悪い。……こんな教師に誰が相談したいと思いますか?誰が本音を打ち明けようと思いますか?先生という立場は、生徒の本当の声を聞き、状況を打開する手助けをしてあげる仕事でしょう」


 私が言い終わると すまなかった と頭を下げてくださいました。


 先生に続き、皆さんも頭を下げて出します。



「わかればいいのです。今日は私の特別授業に付き合っていただき、ありがとうございました」


 私も彼らに一礼し、晴れやかな気持ちで教室をあとにしました。




 あの騒動から一週間。


「先生、私昨日今まで解けなかった問題が解けました!」

「センセー!俺昨日宿題やったんだぜ!!」

「先生のアドバイスのおかげで生徒会長に就任することができました。そこで、先生は今後の学園はどうあるべきだとお考えですか?」

「せんせ~いっ!今週の土曜 一緒に図書館デートしませんか~」

「これが職員会議で問題になったんだが…お前はどう思う?」


 ……………なんか、なつかれました。

彼らには先生と呼ばれ、本職の先生には何かと頼られます。


 あれれ?私が思い描いていた生活とは少し違うような…



 まぁでも、これはこれでいいですかね!!


「はいはい、私の耳は二つしかないので順番に喋ってくださいね」


 わたしは思わず笑顔になりました。

 やっぱり教育者は私の天職ですっ!!

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