メディカルルーム#1おかしな病院-3
『恐怖っていうかさ、目が覚めて知らない場所だったらどこだ?なんだ?ってびっくりするだろ。情報提供は本人の望むまま提供可。状況確認ができれば恐怖は徐々に軽減されるはず。それでも怖がるなら対応パターン変更を検討』
優奈が見える範囲にスピーカーらしきものは見当たらないが、スピーカーらしきものは見当たらないが、軽い口調で美人ナースに指示をする男性がいるようだ。
「了解。情報提供開始します」
美人ナースは仮面のように固い無表情のまま、凝視する視線の先を優奈に戻すと、優奈の額に手をかざす。
何をされるかわからないまま、優奈はかざされた手を眺める。
ほっそりとした長い指は手タレかマネキンみたいだ。
そのまま動かない美女の手の下から首を伸ばして、優奈は女性の顔を見上げる。
見た目は若く見えるが、堅苦しい物言いと正確な観察は経験豊富なナースを思わせるため、年齢は20代後半、もしかしたらもっと上かもしれない。
優奈がこっそり覗いているのがばれたのか、看護師とがっちりと目が合い、優奈は慌ててかざされた手の平を見つめることに専念する。
「集積回路片、検知不能。情報資料送信先がなく失敗。キャプテンの指示を仰ぐ」
目の前の手が離れていき、美女はまた天井を仰ぐ。
そういえば、先ほどから彼女はキャプテンに話しかけている。
病院でよく聞くのは院長とか、ドクターとか、先生だが、キャプテンとは珍しい。
『情報提供にデータ送信って人間相手にそれはないだろ。だいたい、集積回路片って、ICチップのままでいいだろ。ま、ICチップ埋め込んだ人間なんて当然いないでしょ。口頭で教えてあげてよ』
気安く話している感じの若い男性の声に院長やドクターの重みは感じられず、キャプテンと言っても、船長ではなく、部活の主将といった印象が一番近い。
「実行します」
キャプテンの言葉を受けて、看護師が頷く。
やっと情報が聞ける。