第三話 フセイン王の気まぐれ
兵士「王様のおな~り~。」
ゴクッ。俺は大陸で一番偉い人と聞いていた王様とはじめて会うということですごく緊張していた。どんな人物なのだろうかとか、俺みたいな田舎者で大丈夫なのかとか、失礼なことして つまみだされやしないだろうかとか。
フセイン王「やあ諸君。このたびは遠くからご苦労であった。面を上げい。」
勇者達「はっ。」
顔をあげるとそこには、威風堂々とした、りりしく、いかにも立派な服装をした高齢の男性が王座に座っていた。
フセイン王「諸君らをここに集めたのは他でもない、少し前に復活した魔王を倒すためじゃ。知っているとは思うが、1000年前に世界を支配していた魔王は、その時代の勇者達 によって倒された・・・と思われていた。だが、完全には倒しきれていなかったのじゃ。勇者達に滅ぼされる寸前で魔王は自らの分身を作り出した。勇者達が倒したのはその 分身だったのじゃ。本体はどこかに身を潜め、逃げおおせていたのじゃ。そして1000年のときをへて、完全復活したというわけじゃ。 諸君らは、その勇者達の子孫の血を引いており、その技をも受け継いでいると聞く。どうか、その命をかけて魔王をたおしてほしい。 残念じゃが我が城の兵はだせん。魔王軍は少数じゃが協力じゃ、半端な兵では足手まといになるか無駄死にするじゃろう。 こちらも少数精鋭で行く。1000年前もそうじゃった。魔王を倒したのは5人の勇者達じゃ。諸君らは7人、1000年前より2人多い、 ぜひとも魔王を討ち取って世界を救ってくれ。」
サイトは王の話をきいていて、ふと疑問に思った。1000年前の戦いについてはなんとなく聞いたことがあったが、勇者の子孫?その技を受け継いでいる? そんなの初耳であった。各都市や村から1人ずつ代表が選ばれるのではなかったのか。
その答えはサイトの村の村長が握っていた。村長はわざと教えなかったのである。娘のメーリンをサイトにとられたくなく、サイトを追い出す口実にちょうどいいと 考えていたからだ。
サイト「(くっ、どうする?素直に聞いてなかったと謝るか?)」
村でのほほんと過ごしていたサイトの始めてのピンチであった。こんなときどうすればいいかなど当然サイトにはわからない。
王の側近「王様、リーダーを決めてはいかがでしょう。」
サイトの苦悩をよそに話は進められていた。
フセイン王「そうじゃな、ここにいるのは勇者の血をひいたつわものばかりなはずだが、はたしてだれが一番リーダーにふさわしいのか。」
王の側近「王様、そのようなテストをしている時間はありませぬぞ。もう出発の時間でございまする。」
フセイン王「まあよいか、だれがリーダーでも、ただの建前じゃ。そうじゃ、そこの若いの、おぬしリーダーをやれ。ふぉっふぉ、なかかないい顔立ちをしておる わしの若い頃を思い出すわ。」
サイト「え?俺?えーと、は、はい!喜んで!」
王様の言葉にさからえるはずもない。
そうしてサイトは実力も経験も超のつくド素人であったが、リーダーとして魔王討伐に参加することになった。
サイト「えーと、みんなよろしく、名前は?」
剣客風の男「タムラと申す。武器は刀だ。」
一流の剣客タムラ。刀の腕は超一流だ。戦闘力5000。
剣士風の男「リュウジだ。剣を使う。よろしくう。」
明るくさわやかな剣士リュウジ。超一流の剣士。戦闘力4500。
マリ「マリよ。サイトとは何度か話したわね。改めてよろしくね。武器は剣よ。」
女剣士マリ。戦闘力4400。
そのほかに、斧戦士ジグ、槍使いザグ、剣士ルークが軽く自己紹介をした。
サイト「よおし、さあいくか。」
ちなみにサイトの戦闘力は50であった。一般人と戦士の実力差ははてしない。無駄死にするか足手まといにしかならない。だからこその少数精鋭なのだ。
そうして7人は旅立った。
ここで時は少しだけさかのぼる。
王の間から解散したあと、サイトだけが1人ある研究室に呼ばれていた。
ドクターマルコ「よくきた勇者よ。わしは長年魔王の研究をしておる。おまえに話しておかなければならないことがあるのだ。」
サイト「なんだよ、これから魔王討伐にむかおうってときに、そんな大事な話なのか。」
マルコ「うむ。そうじゃ、この話を聞かねば魔王は倒せん。」
サイト「なんだって!」
マルコ「魔王はな、不死身なのじゃ。いくら傷つけても即座に回復してしまう。首を切り落としてもじゃ。そうでなくても最強の強さをもっておるのに その上不死身なのじゃ。ちなみに魔王の戦闘力は6000。1000年前の勇者達も強力でのう、6000以上の戦闘力をもつものも何人かおったが、 その不死身さの前に何人もが倒れた。そして最終的に5人になってしまったのじゃ。」
サイト「おいおい、そんなやつどうやって倒すんだ。」
マルコ「魔王の不死身を無効化する魔法を使う魔法使いが現れたのじゃ。伝説の魔法使いと呼ばれておる。」
サイト「じゃあその魔法使いを仲間にすればいいのか?」
マルコ「ダメじゃ。魔法使い自体滅んでしまって今では存在せん。」
サイト「そんな、じゃあ勝てねえってのかよ。」
マルコ「じゃが安心せい、魔法と同じ効果をもつマジックアイテムが受け継がれておる。これがそうじゃ。じゃが使い方に少々難があってな。」
サイト「うんうん」
マルコ「魔王の背中にはクボミがある。それはその伝説の魔法使いが魔法によってつけたクボミじゃ。そのクボミにこのマジックアイテムをセットして、 このボタンを押せば、魔法が発動して魔王を完全消滅させることができるのじゃ。」
サイト「なんだってえ、そんな簡単な方法があるならなぜ当時やらなかったんだよ!」
マルコ「うむ、その魔法使いは魔王の背中にクボミをつけたあと魔王に瞬殺されてしもうたのじゃ。簡単に説明すると、こうじゃ、魔王不死身、勇者達死んでいく、 魔法使い現る、魔王の不死身打ち消す魔法使う、魔法使い魔法で魔王にクボミつける、魔法使い殺される、勇者達が魔王の不死身がきいている間に魔王を倒す。じゃ。」
サイト「なんだか魔法使い無駄死にしたみたいじゃねえか。」
マルコ「そうでもないわい。実際勇者達も満身創痍だったようだしな。どっちが勝っていたかわからん。魔法使いが命をかけて後世に魔王を倒す方法を残したのじゃ。」
サイト「なるほどな。たしかにそのおかげでこの時代にも魔王を倒す手段が残っているってわけか。」
マルコ「ただし言ったように魔王は不死身がなくとも強い、身体は鋼鉄のように硬く、そして素早く攻撃をあてられん。このマジックアイテムをクボミにセットしている 余裕などないじゃろう。アイテムを使うのは魔王を十分に消耗させて、動けなくしてからじゃ。十分に消耗させれば、魔王も回復のために動きをとめるはずじゃからな。」
サイト「へえ、戦いながら回復はできないのか。完全無欠ってわけでもないんだな。」
マルコ「ああ、じゃが今の勇者達の実力は1000年前の勇者達の実力に及ばんじゃろう。戦いの中で多少は成長するじゃろうがな。くれぐれも気をつけるようにな。」
そうしてサイトは魔王を倒す切り札のマジックアイテムを受け取った。だが、一番最初に死んでしまいそうなのがサイトだとは、マルコは夢にも思っていなかった。」
マルコ「ふう、なかなか物分りのいいやつじゃったな、さすが王様がリーダーに任命するだけのことはある。」
そうして人類の命運をかけた戦いは始まった。
to be continued