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異界の歌巫女  作者: Kuzaus
1/5

プロローグ

ほとんど人物説明みたいなものです。変人っぷりがあまり出てきてない。(汗)


 私、松本愛歌(まつもとまなか)は別に自分の世界そのものには不満を持っていなかった。そりゃ戦争とかテロ何かは起こってるし、自然災害なんか勝てる気がしない。不景気から中々回復しないし、クリーンで透明な政治なんてあったもんじゃない。でも私は数十億いると言われる人間の中で、かなり恵まれた方の生活を送っていた。治安のいい所謂(いわゆる)先進国に生まれ、良識のある両親に育てられ、大学まで問題なく進学できた。特にお金に困った覚えはないし、趣味も自分なりに楽しめるモノがある。


 だから、本来なら満ち足りてるはず…いや、満ち足りていないとおかしい。今以上に何かを求めるのは我が儘としか言えない。毎日世界のどこかで誰かが死んでいる世界にいながら、こんなにも恵まれた人生を送ってるんだから。


 「おーい、(まつ)ー。」

聞き慣れた呼び声で現実に戻る。いかんいかん、天気が良い日なのにネガティブ思考のスパイラルに陥る所だった。

「おう、たかっちゃん!やっほぃ。」

ベンチに座ったまま振り向くと、同期で一番仲良くしてもらってる男友達がこっちに小走りで近づいてきていた。

「お前、何してんの?」

「する事なくてなんとなく日光浴してましたー。今日は何用(なによう)で?」

「今日ヒマならカラオケ行かね?」

倉田高志(くらたたかし)、普通に良いやつなのに何故か不憫な目にばかり遭うその様は某バトル漫画の名脇役を思い出させる。しかも、そう言う星の下に生まれたのか、変人ばかりに絡まれるとか。自他認める変人の私が言うのもだけど、お前はいつになったら幸せになるんだ。

「…またバイトの先輩達が怖かったのか。そうかわかった、ならば喉潰しだ。」

「そんな事…あるにはあるけど、ここ最近行ってなかっただろうが!」

「あー、そう言われてみれば…二週間くらい行ってない?」

お互いカラオケ好きで良く一緒に3時間くらい歌いにいくけど、毎回たかっちゃんの喉が酷使される。本人が喉で歌っちゃってるのが悪いんだけど、私以外の人とだと無事ですむらしい。そりゃ熱いアニソンとかをノリノリで歌うやつは数が限られるだろうね。

「そろそろ行かねーとなまる。」

「腹式呼吸とかすーぐ忘れるもんねーたかっちゃんは。」

「お前と一緒にすんな。」

対する私は愛歌と名付けられたせいか、いくらでも歌っていられる。自分の音域とか歌い方とかに気をつけていれば、徹夜でカラオケボックスに居座る事も出来る。実際やったら達成感と爽快感でいっぱいになった。カラオケ万歳。

「ま、そう言う事なら行こか。どうせなら夕飯も食堂で一緒に食べる?」

「金大丈夫なら俺はいいけど。」

「よっし、レッツラドン!」

何かと一緒にいるからちらっと見たら〈そういう関係〉と勘違いする人がいてもおかしくはないと思う。でも、たぶん数分もあればすぐに違うと気付く。雰囲気に甘さなんてものは全くなく、言葉に遠慮らしい遠慮はない。ボケとツッコミの応酬も珍しくない会話のせいで、他の同期の人達にはそろそろ漫才コンビだと呼ばれかねない状況だ。

「しっかし、今日は本当に天気いいねぇ…。猫が縁側で昼寝してるんじゃね?」

「してんじゃねーの?」

「ぬこ…ぬこいいよな。もふもふしたいお。ぐるぐる言わせたいお。」

「わかるけど俺犬派。」

「犬も好きだよ!噛まれた事あってたまにビクッてなるけど!」

ケラケラ笑う私は心からこの会話を楽しんでる。友達とご飯食べてそのままカラオケに行ったりする私は、誰から見ても普通に幸せな一般人にしか見えないはず。



それなのに

それなのに、それなのに、


どうしてかな?


時々胸が空っぽに感じるよ

まるでぽっかり穴が開いたかの様に

冷えた風が胸を通っていく


どうしてかな?

どうしてかな?

満たされているはずなのに


無性に泣きたくなるよ



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