閑話 さららのダンジョン入門講座
この閑話では前話までとは趣向を変え、この世界の学問「ダンジョン学」を通して、さららに本作の世界観を語ってもらいます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
ダンジョンについて知りたい?
……ふーん。
――さては、高校に入ってダンジョン学を選択したけど、授業を全然聞いてなかったから今度の定期テストが危ない――そんなところかな?
……うんうん。
わかったわかった。
じゃあ、一緒に勉強しよっか。
私もおさらいしたかったし、ちょうどいいや。
――まず、【大変革】については大丈夫かな?
……そう、それ。
25年前――2008年――に起こった、前代未聞の怪奇現象。
世界中で、何千何万というダンジョンが一斉に発生した現象のことだね。
それまでの世界史や科学文明を塗り変える、地球史上最大のミステリーとか言われてたりするね。
その原因は、まったくの不明。
別の世界とつながったとか、宇宙人の侵略だとか、色んな説が飛び交ったけど、今でも何1つ確かなことはわかってない。
――そして、世界に起こった変化はそれだけじゃなかった。
探索者――学術的には、〝魔素適合者〟と呼ばれる人たちが出現するようになった。
今日では、100人に1人の人がその適性を持つとされている。
今は、だいたいの国で全国民に対して一斉検査が行われてるから、これは割と確かな数字だね。
――え? キミももう受けたでしょ?
ほら、中学校に上がったときに――。……そう、アレよ。
私? 私は適性なかったよ。
最低ランクのF級ですらない、完全な一般人だね。
――お兄?
お兄は、E級だって言ってたけどなあ……
あり得ないよね? ――私もそう思う。
……あんなに強いE級がいるわけないし。
えーっと……、どこまで話したっけ。
あ、そうそう。世界中でダンジョンだけじゃなくて、探索者が現れるようになったって話ね。
それ以外の人がダンジョンに近づくと、魔素でやられて気分が悪くなったり、体調を崩したりするからね。
――うん、そう。「魔素中毒症」ってやつだね。
ダンジョンは〝未知〟の宝庫だった。
未知の物質、未知の現象。そして、未知の生物――つまり、モンスター。
モンスターの生態についても、まだまだ解明されてないことの方が多いみたい。
モンスターは、実体のない魔素のかたまりで出来ていると言われているの。だから、ダンジョン内ではモンスターの死体は残らない。
【大変革】以前のふつうの武器や兵器では、全く太刀打ちできなかったそうだよ。
ダンジョン内の魔素が飽和して「ダンジョンブレイク」が発生すると、モンスターは〝受肉〟してダンジョンの外に出て来る。
……そう。実体を持った存在になるってことだね。
――人をおそうこともあるよ。
ダンジョンが出現した2008年当初は、たくさんの探索者――適合者の人たちが亡くなったそうよ。
原因としては、もちろんモンスターにおそわれた人もいるけど、長時間ダンジョンにいたことで魔素に蝕まれたってケースが1番多かったみたい。
……うん。
「適合者」ってひと口に言ってもF級からS級まで段階があるし、ずっと魔素にさらされてると誰でもリスクはあるんだって。
今では「魔素中和剤」があるから、探索者は安全に探索できるようになったよ。
そうだね。前のお兄みたいなダンジョン内のインフラ工事の人も、同じ薬をもらってるって。実際に見せてもらったこともあるよ。
――とにかく、もしもダンジョンに近づく用事があるときは、絶対に中和剤を持っていくことだね。
もしも中和剤も飲まずにダンジョンに入るような人がいたら、その人はよっぽどの命知らずか、頭がおかしいってことだよ。
――え? そんな人いるわけないって?
……うん。全くもって、その通りだね。
まだまだ話はたくさんあるけど、そろそろ外が暗くなって来たから、続きはまた今度にしよっか。
定期テスト、がんばってね!
次話は1章の登場人物紹介です。




