第79話 準備をする0歳児
魔法。
己の体内の魔力を使って様々な現象を起こす。
その効果を強くするにはいくつか方法がある。
「魔道具や遺物の使用、それに……」
勇者襲撃から数日が経った。
勇者それに、国レベルの勢力を仮想敵として対策を考える。
今すぐ思いつくところとしては魔道具だ。
これにはすぐに取り掛かれそうである。
もう1つの方はおいおい取り掛かるとするか。
「まずはベースとなる物を決めないとな」
遅れて戻ってくるはずのゴレイヌ。
彼が『古代文字の翻訳書』を持ってきてくれるはず。
これを用いれば、魔道具を作れるはずだ。
「イクラウス様、失礼します……!」
「おっそよー! ごほーしのために呼ばれてきました! 優しくしてねっ☆」
「ぴょん! ついにこの時がぴょん♡」
「マリン、クゥ、ロロップ。よく来てくれた。しかしまだその時ではない」
取り急ぎ実験もかねて3人を呼び出す。
ロロップは積極的な戦力として、2人は彼女ら自身の保護のため。
2人とも先日みたいな無茶をしでかしかねないし。
「では、買い物に行こう」
◇◇◇◇◇◇
疑問符を浮かべた3人を連れて、以前買い物に来た店にやってきた。
ロロップのゴスロリ服を買った店だ。
別にここではなくてもいいんだが、質もいいしかわいいしでここを選んだのだ。
「ほ、本当に何でも買っていいんですか……? イクラウス様破産しちゃいますよ……?」
「え、えっと……いいんですか?」
マリンはいつも通りおずおずと。
クゥも意外と控えめだ。控えめか?
「構わない。それにクゥには元から買う約束をしていただろう?」
「そ、そうですけど……あれは……」
「ん?」
「い、いえっ! そ、それじゃあ遠慮なく選んじゃいます! 後悔したって遅いですからねっ!」
「待って! クゥちゃん!」
覚悟を決めたらしいクゥと、それに釣られてマリンも選び出す。
僕の方も適当に選んでおこう。
この悪魔の翼が生えているブレスレットなんかいい感じだ。
「……ロロップは? お前も選べ」
「ぴょん? 私はこの服があるぴょん♡」
「それはそうだが……靴も選んだらどうだ?」
「ぴょん! いいの?」
「もちろん。約束しただろ」
先日破損した靴、今は代わりの物を履いているが、せっかくなのでかわいいものを履いてほしい。
「ぴょん……そうぴょん、そうするぴょん!」
「ん?」
ロロップが何かを納得したように靴を選び始めた。
一体彼女は何を考えているのだろうか。
それを知る術は、僕にはない。
「む、この三日月のような飾りがついているステッキ、素敵じゃないか」
これにしよう。
くっくっく、奴らの喜ぶ顔が目に浮かぶぞ……!
このかわいらしい装飾のついた腕輪やステッキが聖剣と同類のものになるのだからな。
僕がゲオルディクスのような笑いを浮かべていると、2人も選び終わったようだ。
「イクラウス様! 私たちこれに決めましたぁ!」
「に、似合う、でしょうか……!」
「おお、2人ともいいものを選んだな」
2人が選んだのは、ロロップのようなフリフリしたドレス。
腕の部分は白いブラウスのようなもので、胴体からスカートはそれぞれ水色と赤色になっている。
ロロップの物よりは子ども用向けに作られていることもあり、派手な装飾が多い。
首元のブローチ付きリボンなど、前の世界で見た魔法少女のような見た目だ。
「マリンは水色、クゥは赤なのか」
「そうです! 2人の髪の毛と同じ色! 属性の色ですよぉ!」
「私たち、魔法はあまり……ですが……」
以前学校で魔法の適性を測ったようだが、残念ながらそこまでの才能はなかったらしい。
「大丈夫だ、僕が何とかしてやる」
「へ? イクラウス様が?」
「まぁな。期待して待っていろ」
「……はい!」
もしかしたら2人が思っているようなことではないが、まあいいだろう。
「旦那様! 私、2つ欲しいぴょん!」
「…………」
最初遠慮していた気がするが……。
まあいいか。
ロロップは膝上まであるブーツと、おしゃれな厚底のかわいい靴を選んでいた。
◇◇◇◇◇◇
そしてその夜。
自室にて、今日買った物を広げる。
「問題はどうやって古代文字を素材に落とし込むかだが……」
2着のドレスを眺めながら、1番の問題について考え込む。
グラシェルノと話したように、魔力の籠った糸があればいいのだが、そんなものはない。
そもそもまだ『古代文字の翻訳書』が手元にない以上、すぐにはできないのだが。
「イクラウス様、失礼します」
「む! その声は!」
ちょうどいいタイミングでゴレイヌらしき男が扉を叩く。
「グラシェルノ様から内密にイクラウス様に渡すよう、これを預かってまいりましたが……」
「助かる。これで……」
扉を開け、部屋の前で彼から分厚くなった封筒を受け取る。
これで魔法陣を刻めるぞ。
しかし依然としてそれを落とし込む方法が見つかっていないのだが。
腕輪とステッキに関しては直接刻んでもいいか。
「むっ! 何奴!? ――と思ったらゴレイヌ殿でしたか。こんな時間に聖子様のお部屋でいかがしました?」
うんうん悩んでいると、見張りらしき神官の声が聞こえた。
先日の勇者襲撃の件で見張りを強化したらしい。
「む、すまない。実はグランデシャイン特産のサソリを使った料理がおいしかったと、どうしてもイクラウス様に伝えしたく」
「はぁ……そんなにですか?」
「うむ。まるで体の悪い部分が流されていくようなスープだった」
「それはそれは」
ゴレイヌがごまかすように、見張りの神官と会話をしている。
しかし、その言葉を聞いたときに閃いてしまった。
「それだ!」
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