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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第1章 聖なる子どもイクラウス

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第7話 大泣きする0歳児


 どれくらい時間が経っただろうか。何日経っただろうか……。

 背骨、腰、その周りの内臓や神経……。

 例の解剖図には載っていないことへの対処も含め、ようやく手術が完了した。


「…………」

「レストリアも、ありがとう」


 最後に母様――『聖女御座す(フルルーチェ・)安息の地(レストリア)』と抱擁を交わす。

 光の粒となって消える前に、彼女は温かく微笑んでくれた気がした。


「…………」

「ぐぅ……ぐぅ……」


 肝心のランドさんは寝息を立てて眠っている。

 よかった、生きてる。


「『聖女の癒し』」

「――んぐぉ!? こ、ここは!?」

「おはようございます、ランドさん。お加減はいかがですか?」

「聖子様……はっ! そうでした!」


 眠る前のことを思い出した様子のランドさんが、恐る恐るといった様子で立ち上がる。

 腰の痛みは、曲がった背骨は……大丈夫だろうか。


「これは……」

「…………」

「これは!」

「…………」

「これはぁぁあああっ!!!」


 何度も立ち上がったり座ったり、しまいにはジャンプしたり走り回ったり……。

 問題なかったとしても、まだ術後間もないので安静にしていてほしいのだが。


「大丈夫な――」

「イクラウス様ぁぁぁ!!!」

「はぶっ」


 ランドさんに思いっきり抱きしめられる。

 痛い苦しいそれに臭い。先ほどまでのレストリアのぬくもりを上書きされてしまった。


「見てください! 腰が! 背骨も!」

「ええ、見えております。僕も安心しました」


 背骨も腰の骨も内臓も、直接見まくったからね。

 しばらくは夢に出るだろう。


「これで……これでぇ! 泣く泣く(せがれ)に全て託した商売を……再び世界を飛んで回れますぞぉぉっ!!!」

「それはそれは……」


 正直こちらは手術の疲れで今すぐに眠りたい。

 だめだ、ランドさんのぬくもりで眠たくなってきた……。


「坊ちゃま! いかがいたしましたか!」


 まぶたが下りきる寸前、ドアを叩く音と自分を呼ぶ声に意識を無理やり浮上させる。

 僕を『坊ちゃま』などと呼ぶのはゲオルディクスしかいない。


「ゲオルディクス、どうぞお入りください」

「失礼――むぅ、これは……?」

「教皇様! これは……お恥ずかしいところを。つい舞い上がってしまい……」


 我に返ったと思われるランドさんが思い出したかのように抱きかかえた僕を放す。

 教会関係者に見られたら最悪打ち首だものね。


「ランドさん、もしや――」

「はい! ご覧ください!」


 術前と異なり、ピンと伸びた背筋。その動作に腰を庇う様子は微塵も感じられない。

 手術中には不在だったゲオルディクスと一緒に見ることで、改めて自身の成功を実感できた。

 僕は、やり遂げたのだ。


「いやはや……まさか本当に……」

「はい!」

「まさに奇跡……いや、最早神の御業(みわざ)……!」

「…………いいえ」


 それまで浮かれて飛ぶ勢いだったランドさんが、突如として落ち着いた顔でゲオルディクスを否定する。

 どうしたのだろうか。


「奇跡のような、まるで神の御業だというのは同意いたします。しかし、これを成したのはイクラウス様なのです。彼の努力の結果……ともすれば命を燃やすが如き苦難の道だったのではないでしょうか」


 本当にこの爺様は……。

 その言葉ですべて報われた気がする。自分のしたことが間違っていないと肯定された気がする。


「それは――そうですね。確かに坊ちゃまのお顔に尋常ではないほど疲労が見えます。たった1時間ほどでこれほどとは」

「はい。イクラウス様、あなたへの感謝を言葉にするには三日三晩かけても足りないほどです。ですが、今はお休みいただくのが何よりも優先すべきかと」


 1時間、か。体感としてはもっと長いと思ったが……まぁそれほど集中していたということだろう。


「そう、ですね。すぐにでも母様の傍で眠りたい」

「――ほっほっ!」

「奇跡の御業の使い手。ですが……くっくっく。まだまだお子様ということですな」


 そう、僕はまだまだ子どもだ。

 学ぶべきこともたくさんある。自分の行いが正しいか時々不安になる。

 そして今はただ――。


「母様、今御許(みもと)に向かいます」




 ◇◇◇◇◇◇


「ここは……? 僕は……確かあの後すぐに眠って……」


 周りを見渡すと、真っ白な、何もない空間。しかし寂しさは全く感じない。

 それどころか、かつてないほどの安心感を覚える。まるで母様と同じベッドにいるかのような……。


「はぁ~い、イクラちゃん♪」

「――――ッ!!!」


 この声は! そして僕をそう呼ぶのは……!


「か、さま……?」

「うふふ、そうよ~♪」

「そ――まさ――!」


 声が! うまく声が出ない!

 目も開かない! 滲んで前が見えない!?

 母様だ! 目の前に母様がいるというのに! 開けよ目! 開けよ口!


「そんなに泣かないで。大丈夫、ぜ~んぶ伝わってるよ♪ 頑張ってくれてることも、みんなに優しくしてることも!」

「うぐぅっ」

「お母さんにできなかったことも、やってくれたんだね。嬉しいな!」

「かあ、さま……」


 温かい。母様に抱きしめられているのを感じる。

 泣きそう。いや既に泣いているらしい。

 わからない、わからない。何が起こっているのかもわからないが、感情も思考も顔も色々ぐちゃぐちゃだ。


「よしよし。よ~しよし♪」

「かあさま……かあさま……」


 その後しばらく母様に頭を撫でながら、ひとしきり泣く。

 やがて、少し落ち着いてきた頃――。


「イクラちゃん」

「ひっぐ。はい、かあさま」

「その、ね。あの~……う~ん、何て言ったらいいかなぁ~……」

「か、さま?」


 どうしたのだろう。何かを言いあぐねているかのような様子。

 まさか、何かやらかしてしまったのだろうか。


「ん~と……そだ! あのね! お母さん、イクラちゃんにたくさん会いたいなぁ~♪」

「はい、ぼくもです」

「うん! それで、もしかしたらね、イクラちゃんが寝れば、またこうして会えると思うの~♪」


 いかん、嬉しさのあまり息を吸い込みすぎてむせてしまった。というのはどうでもいいとして。

 夢のような、しかし夢ではない不思議な場所。

 しかし寝ているときにこうして会えたのだから、その通りなのだろう。


「……ぐすっ、そのようですね」

「うん! だから、疲れたらお母さんのところにおいで~♪ 一緒にねんねしようね♪」

「はい」


 ……あ、そうか。

 母様の言いたいことがわかってしまった。

 今回みたいに、徹夜したり自分の身を削るようなことを心配してくれているんだ。

 僕の頑張りを否定せず、それでも休めるように気を使ってくれたんだ。


「……へへ♪」

「母様、やはりあなたは世界一の母様です」

「ん~? うふふ、ありがとう♪」

「必ずや、僕が母様を目覚めさせます。もう少しだけお待ちください」

「……うん♪」


 最後に視界に収めることが出来た母様は、以前と変わらず温かい笑みを(たた)えていた。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


よろしくお願いします!

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