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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第1章 聖なる子どもイクラウス

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第2話 おっぱいが恋しい0歳児


「では帰りましょうか」


 魔王の側近を倒し、目に見える範囲の敵も既にいない。

 これにて“聖女代理”の任務は完了として問題ないだろう。

 ゴレイヌの方を見てみると、同意するようににっこり笑いながら頷いている。


「ちょっ! もうちょっと余韻に浸らせてくれても!」

「そうだぞ! こっちは何度も死ぬかと思いながらなぁっ!」

「はぁ……」


 相変わらずの温度差。

 しかしこちらとしてはやることは終わったはずなので早く帰りたいのだ。


「……はん。“聖女代理”といってもしょせん子どもだな。そんなにママのおっぱいが恋しいのか」

「ちょっと! あんた何言ってんのよ!」

「おい貴様っ! 命を救ってくださったお方に何てことを!」


 冒険者の男性の1人がこちらを挑発するような言葉を発する。

 魔法使いの女性や足を負傷していた筋肉の男性がたしなめようとしてくれているが……。


「構いませんよ、彼の言葉通りですので。早く母様の元に戻りたい」

「お、おう? おいおい……いくら何でもそんな年じゃないだろう」

「いえ、こう見えて生後半年とちょっとですから」

「はぁっ!? 冗談も大概にしろよ! どうみても5歳くらいだろうが!」

「本当なのですが……」


 いかんいかん、余計怒らせてしまった。

 まぁ例え見た目通り5歳だとしても、こんな戦いの後にはすぐに親元に返すべきだと思う。

 というかこんな戦いに繰り出すなと思う。大教皇め。


「冒険者パーティ『果てのない旅路』様。イクラウス様のお役目は終わりましたので」

「ゴレイヌ殿……そう、ですね」

「ちぇっ、かわいい救世主様ともう少しお話したかったのにぃ~」


 ゴレイヌが間に入ってくれたため彼らも納得してくれたよう。

 しかしこの短時間で魔法使いのお姉さんの心を掴んでしまうとは……なんと罪深い。主と母様よ、お許しください。


「ゴレイヌ殿、少々よろしいでしょうか」

「はい、いかがいたしましたか?」


 冒険者のリーダーに呼び止められるゴレイヌ。彼を放って、自分は馬車に乗り込む。

 が、しまった。子どもの体では乗ることが出来ない。段差が高すぎる。


「ん」


 と思っていたところ、体を誰かに持ち上げられて馬車に乗せられる。

 いつもその役目を担ってくれるゴレイヌとは違い、優しい手つき。さらにそのまま、その人の膝の上に座らせられる。

 これは……お姉さんも一緒に来たくなっちゃったのだろうか。心なしかいい香りもする。


「イクラウス様、先ほどは足の治療をしていただきありがとうございました」


 予想よりも野太い声にがっかりしながら振り返ると、最初に足を潰された男性だった。


「原型を留めないほどの大けがが瞬く間に……まさに奇跡のような御業、わたくし感服いたしました!」

「……ん」

 

 そう、男性だ……否、男性であるということに罪はない。

 なんとか無表情を維持していると、ゴレイヌがこちらに向かってくるのが見えた。


「イクラウス様。今回の魔王軍幹部との戦闘の報告をするからと、『果てのない旅路』の代表の方を近くの冒険者ギルドまでお連れすることになりました」

「あぁ、うん」


 その代表の方とは、僕を膝に抱えている人だろう。

 ゴレイヌも馬車に乗り込んできたため、非常にむさくるしい。心なしか酸っぱい匂いが充満している気がする。


「……他の方は? 魔法使いの――」

「他の方々はここにのこるそうです。我々聖騎士団と彼だけの帰還となります」

「そう、ですか。できればあの魔法使いの方に、魔法についてのお話を伺えればと思っていたのですが――」

「なんと! それほどまでに卓越した魔法の技術を持っていながら尚も学びの姿勢を崩さないとは! 私、いっそう深い感銘を受けました!」

「は、はぁ」

「私の足のことも恩着せがましくすることもなく、恥ずべき態度を取った相手に対しても怒るでもなく……本当に素晴らしいお方だ!」


 とても真っすぐな瞳、決して社交辞令で言っているのではないというのは感じる。

 背中がむず痒くなってくるが……まぁ、いやな気持ちはしない。


「ありがとうございます。しかし僕などまだまだ未熟な子ども、あなたがそう感じてくださっていることは全て母様――聖女様のお導きの賜物なのです」

「イクラウス様……!」


 実際にそうだ。

 聖属性の魔法を使えることも、人に優しく接することが出来るのも、自分の足で動けるのも……全て母様が愛情をたっぷり注いで育ててくれたからなのだから。


 だからという訳ではないが、僕は“聖女代理”として母様の素晴らしさを世界に広めることを第一に心がけている。

 謙虚に慈悲深く。母様最高。


「私決意いたしました! この任務が終わったら、ぜひともあなたの元で微力を尽くしたい!」

「おぉ、それはそれは。我ら聖イルミナス教会はあなたのような志あふれるお方を歓迎いたしますぞ」

「ゴレイヌ殿! はい! このヴァスティーユ、粉骨砕身(ふんこつさいしん)の思いで聖女様とイクラウス様のために尽力していきます!」


 今日もまた迷える魂を母様――じゃなくて主の教えへ案内することができたようだ。




 その後、馬車で舗装されていない道を進み、科学のかの字も感じさせない町――まるで中世ヨーロッパのような光景が広がる世界、その町の1つにたどり着くまでゴレイヌとヴァスティーユさんは教会騎士団への加入について話し合っていた。




 ◇◇◇◇◇◇


 数日後の夜。

 ようやく聖教会神殿にある母様と自分の部屋に戻ることが出来た。


「ただいま、母様」


 真っ先に、この世で1番愛している人に帰還を知らせる。


「………………」


 返事は、ない。


「母様、この遠征で僕は初めて魔物と出会い、その命を奪いました」


 実は少なからず動揺していたこと、母様なら何と言ってくれるか。

 よく頑張ったね、とか。偉いね、とか。それとも何も言わずに抱きしめてくれるかな、とか。


「………………」

「……母様」


 そのどれでもない。

 当たり前だ。母様は……。


「……」


 母様はもう1か月以上寝たまま、目覚めないのだから。

 暗殺されかけ、傷つけられた母様はそのまま深い眠りについたまま、目覚めない。


「……」

「………………」


 静かに母様の手を握る。

 その温かさは、かつて頭を撫でてくれたそれと同じ。


「……母様」

「………………」


 泣き言は言っていられない。

 僕がやるべきことは、何とかして母様をこの長い眠りから覚ますこと。

 たくさんの愛情を注いで僕を産んでくれた母様を、今度は僕が救うんだ。


「…………」


 もっとたくさんの魔法や知識を身につけなければならない。

 聖女代理として、母様の代役を果たすためにも。母様を救うためにも。

 そして――。


「母様、もう少しだけ待ってていてください。必ずや僕が……!」


 絶対に暗殺の黒幕に報いを受けさせてやる。

 例えそれが、主や母様を裏切ることになろうとも。

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