第15話 少女を使う0歳児
「いいですか坊ちゃん。一般的な奴隷の相場は金貨10です」
「ふむ」
「“聖癒”のご寄付、このうち3割は坊ちゃんのものとなります。今まで3度の“聖癒”を行いましたので、現在坊ちゃんのお小遣いは金貨9枚です」
「ほう!」
「足りない分はいくらでしょう」
「…………」
「足りない分は、いくらでしょう」
「…………」
おお、主よ。我に奇跡を……足りない金貨1枚を我にお恵みください……。
「神に祈っても金は降ってきませんよ」
「おまえ、本当に教皇か……?」
「事実ですので。まぁ、今後は後先のことを考えた行動をお願いします」
「わかったよ」
子どもだから仕方がない。
目先の誘惑に抗えないものなのだよ。
「して、これからどうされるおつもりで?」
マリンを奴隷にした日の翌日である今日。
もちろん奴隷としてこき使う、つもりはない。
だからこそどうするか。昨夜は来客用の宿泊部屋で眠ったらしいが……。
「いつまでも来客として扱う訳にはいきませんからな。彼女が奴隷の身分だと広まるのも時間の問題でしょう」
「そうだな」
「ですので、当初の予定通り“聖癒”の手伝いをさせるということでよろしいですな?」
「うむ、仕方がない。彼女にも働いてもらおう」
「では1度彼女を呼んで説明しましょうか」
ゲオルディクスが外に控えていたらしき神官に声をかける。
昨日はここに戻った後、疲れていたこともあり早めに眠ってしまったため彼女のその後の様子がわからないのだ。
大丈夫だっただろうか、歯はちゃんと磨いただろうか。いじわるじいさんに何かされなかっただろうか。
「こちらを見てどうしました? ――おや、来たようですね。どうぞお入りください」
「は、はい……あの……おはよう、ございます……」
「おはようございます、マリンさん。あなたのこれからのことをお話したいのですが」
「は、はい……!」
そんな緊張しなくても取って食いやしない。
しかし、昨夜はよく眠れたようで安心した。髪や肌もきれいに整っているし、顔も髪の毛もツヤツヤしている。薄水色の髪がまぶしい。
粗末な服ではなく、質の良い服に着替えさせてくれたようだ。メイド服だが。
「マリンさんには、僕の“聖癒”を手伝っていただこうかと思います」
「はい!」
「基本的にはこちらの指示で動いてもらいますが、難しいことはないので安心してください」
「はい!」
「それ以外は――」
それ以外。“聖癒”の時以外。
特に何もないな。
「自由にしてくださって結構です。好きにお過ごしください」
「はい! ……はい?」
「僕は空いた時間は読書をしています。マリンさんもいかがですか?」
「……はい!」
うむうむ、いい返事ではないか。
これなら何の心配もいらないな。
「坊ちゃん、失礼ですが……」
「なんだ?」
「あー……いえ、そうですねぇ……そうだ、これを機に口調を正すトレーニングでもしてみては?」
「口調?」
「はい。以前から聖子として威厳を高めるために偉そうな口調をするようにとお伝えしておりますが、全然なっておりません」
「…………」
「そもそも奴隷に対して“さん”付で呼ぶのもおかしいですし、マリンさんで訓練してみてはいかがでしょうか?」
「……お前も“さん”と呼んでいるではないか」
「それは……坊ちゃんの所有物のお方ですから。敬意を示すのは当然でございます」
本当だろうか。
こいつの張り付いた笑顔からは、真意を見て取ることはできない。
何か隠しているのは確かなのだが。
「イクラウス様、どうぞ……マリンとお呼びください」
「マリンさん……そんな」
「……マリン」
「マリン――さん」
「マリン」
この子、案外押しが強いな。
「わかった、マリンさ――マリン。これでいいだろう?」
「はい!」
「くっくっくっ……奴隷に許可を求める主がどこにいますか――ここにいますねぇ。くっくっくっ」
こいつは本当に、何かにつけて腹が立つ。
そもそも0歳の子に偉そうな口調も何もないだろうに。
「ではそろそろ“聖癒の待ち人”様がいらっしゃる時間ですので、ご準備願います」
「わかった。マリン、最初は見ているだけで構わない。僕が――余が何をするか把握することに努めよ」
「はい!」
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