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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第2章 奴隷の子

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第12話 騙される0歳児


 ゲオルディクスに連れられ、“聖癒(せいゆ)の間”へと戻される。

 いつもの張り付いた笑顔すら鳴りを潜め、静かに怒っているのが見て取れる。

 こいつのこんな顔、見るのは初めてだ。


「ふぅ……実はあの家族、とても裕福とは言えない状態のようでして。そちらのお嬢さんが冒険者として一家を支えていたようです」

「アイリンさんか。父親は?」

「寝たきりの奥様の介護で忙しいらしく」


 うむむ。

 奥さんはそんなに大変な状態なのだろうか。父親が働くことは叶わないと。

 よそ様の事情に口を出すのもどうかと思うが……。


「その治療費諸々で暮らしが厳しく、要は彼らに“聖癒(せいゆ)”を受けるための資金――ご寄付が足りないそうなのです」

「それは……」

「普段は先にお納めいただくものなのですが……ちょっとした手違いがございまして。まぁ、それはともかく……」

「今回は大目に見る、なんて訳にはいかないのだろう?」

「その通りでございます」


 先ほどの父親の様子。

 少し考えればわかる。これは確信犯だ。

 つまり、最初から寄付金を踏み倒すつもりで来たんだ。

 ()むべき事情があるのかもしれないが……。


「踏み倒すつもり、だけならばまだいいのです。そういう輩は少なくないのも事実」

「他にも何かあるのか?」

「やつは……やつは――」

「――奴隷として――高く――売れる」


 ゲオルディクスが言葉に詰まり、その言葉の合間を()うように。

 まるで汚物にまみれたような声が聞こえてきた。

 思わず、反射的に扉を開け放つ。


「足も治ったことだし、見た目も悪くないからな。これならお前だけを売ればご寄付も賄えそうだ」

「はい……」

「おかげでアイリンには引き続き冒険者をやってもらえそうだ!」

「……そう、ですね……」


 こいつ……!

 あろうことか娘を奴隷にしようとしていやがる!


「きさ――」

「貴様ッ! それが親のすることかッ!!!」

「ぬぐっ!?」


 しかし僕が声を上げるより先、ゲオルディクスが父親に掴みかかる。

 胸倉を掴み、壁に押しやってくっつきそうなほど顔を近づける。


「娘さんを……こんなに小さい子どもを……!」

「苦し――放し――」

「ちぃっ!」


 しぶしぶ、汚いものを払うように、父親の服を放す。

 それでも怒りは全く消えていないようで、ゲオルディクスの拳が小刻みに震えている。


「カハッカハッ……ふぅ。ひどいじゃないですか。それが聖職者のすることですか?」

「…………」

「……あなた方、恵まれた人たちにはわからないのですよ。我々かよわい貧乏人の苦労が」

「…………」

「何も珍しい話じゃない。子どもを売るなんてそこかしこで聞く話です」

「…………」


 そう、なのだろうか。

 この世界は……まだまだ貧しいということなのだろうか。

 元の世界でも、そういう話は大昔のものではなかった気もする。


「……確かに、そういった実情はありますな」

「でしょう? 仕方のないことなのですよ」

「しかしあなたからは酒の匂いがする。染み付いた酒の匂いが! 娘を売る前にできることがあったのでは!?」

「さ、酒くらい飲まないとやってられなかったんだ! 仕方ないじゃないか! 俺だって好きでこんな生活送ってんじゃない!」

「やめてください」


 ゲオルディクスと父親。

 尚もヒートアップしそうな口論を制したのは、他でもないマリンさんだった。

 笑顔を浮かべた彼女だった。


「い、いいのです。私も納得、しています、から……」

「しかし……」

「お父さんは……最後に、私のわがままを聞いてくれました。聖子様にお会いしたいという……」

「僕……?」

「はい! 私より、小さくても頑張り屋さんって有名な子に……どうしても会いたかったんです……! 本当に、会えて……良かった……」

「…………」

「ですから、最後の親孝行、です。聖子様に会わせてくれた、お父さんに……それと、今まで優しくしてくれたお姉ちゃんにも……!」


 どうしてこの子は……こんな顔ができるのだろうか。

 笑っている。笑っているのに……すごく苦しそうな顔だ。無理をしている笑顔だ。

 そんな笑い方……子どもがしていい訳ないじゃないか……!

 何でそんな笑顔ができるんだ……!


「ほ、ほら……娘もこう言っていることですし――」

「この子は僕がもらい受けます」

「え?」

「マリンは……僕の奴隷とする!」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


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