Day1, Oct. Όποιος γίνεται πρόβατο τον τρώει ο λύκος.
久しぶりに、更新できた!
ベッドの上で目覚める。
けたたましいベルの音が止まる。
無意識のうちに制服に着替え、歯を磨く頃には、まどろみから抜け出している。
今日でオフ中の事務作業も終わり。学園は2週間ほどの休暇に入る。
つまり、私の次の仕事は船上使用人だということだ。
同室の人に軽く挨拶をして、食堂のある別の建物へと向かう。
10月の空は澄んでいて、高い。
そんな寒空から降り注ぐ日差しを、向こうに見える白い荘厳な円蓋が反射している。
私は無性に走り出したくなって、道を急いだ。
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昨日より少し小さめの船の中、私は清掃作業を行っている。
建前としてはこれから10日弱お世話になる船に感謝を込めて、本音としては乗客の学生から文句を言われないよう、丁寧に磨く。
――といった感じで、いつもの私なら仕事に専念していたのだが、今回に限っては目の前で同じ作業をする彼女が問題なのだ。上手く身が入らない。
「ねぇ、エマ、聞きたいことがあるのですけれど」
「なんすか、クリス先輩」
私の比較的狭い交友関係の中で、先月別の船にいた知り合いといえば......エマしか思い当たる人間がいない。
「私のこと、実はそこまで大事に思っていないですよね?」
「急に何言い出すんすか。先輩はフォーエバーにマイオンリーフィーリンハーっすよ」
「それはそれで気持ち悪いですね,、ではなく」
きっとそれぞれが特別なオンリーワン、のようなものなのだろうと心中で毒づきつつ、快活で社交的なエマに目を遣る。
ただ、切り出しが付き合って3か月目の彼女のような返事だったことは認める。
「カンディア島の――」
「あぁ! あの方というか学生さんのことですよね!」
テレーゼさん? と私を繋げてくれたことは感謝はしている。しているのだが――
「公子サマと私がまるでワンセットかのように語るのは止めてもらえないでしょうか?」
「手紙にどんな風に書いてあったかは知らないですけど、ただの言葉の綾っすよ」
「実際はどうなんだか......この部屋はもう終わりにして次に行きましょう」
「信じてくださいよ~」
騒ぐ後輩を置いて、またドアを開ける。
学生たちが来る時間は、もうすぐだ。
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陸の建物が見えなくなり、日が真上を少しばかり通り過ぎた頃。
食堂室からは徐々に人が捌け、久しぶりに感じた忙しさから解放され、ホッと息を吐く。
しかし、それに横やりを入れる不届き者がここに一人。
「ほらぁ、よそ見しないでこっち見ろ~」
「その鬱陶しい手を、どうかすぐそこにある食器の方へ向かわせてもらえると非常に助かるのですが」
と言って、視界を遮る目の前の手を払う。
「アンタが妙に目線キョロキョロさせてるから気になったのよ。その癖私の方向いても興味なしって感じだし」
「単に忙しくてあなたに気を配る余裕がなかっただけですよ」
さっさと仕事に戻ろうと、そばの食器を抱えようとした。が、不届き者はそれを搔っ攫い、不遜にもこちらの方をまじまじと見つめてくる。
「素直にならないアンタに向けて言伝」
「はぁ、内容は?」
「暇なときに一番奥の部屋まで来いって、公子様名義で」
まどろっこしい言い方をして、何がしたいのだろうか。
これ以上人をおちょくるようなら皿割りの余罪を追及、というか捏造しようと思う。幸い信用も地に落ちているだろうし、私の言い分が通ると思うのだが、どうだろうか。
「公子サマがここに来ればいいじゃないですか。まだお昼も召し上がっていないでしょうし」
「それはもう私が届けたわよ、って、何よアンタ」
そう言ってニヤける彼女に向けて、私は思わず眉間の皺を寄せる。
「何がそんなに面白いんですか」
「ちょっとしたサプライズがあるってだけよ」
昼食を摂っていないことを知っている理由を追及されるかと思いきや、何もなし。
それに気づかないほどのサプライズなのかもしれない。思わず身構えてしまう。
ちなみにその答えは、公子サマは会えば必ず私にウザ絡みをしてくるからである。普段のコイツが想像しているようなロマンチックな理由ではない。
彼女が去った後ほどなくして、ランチ・タイムは終了した。
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夜が更け、使用人用の宿泊部屋は、微かな寝息の音で満ちている。
そんな中で私は、ベッドに潜ってひたすらに目をつむっている。久しぶりの海のど真ん中での睡眠に慣れていないから、と言い訳することもできるけど、やっぱりアレは目を逸らしたくない問題だ。(目は閉じているのだけれど)
問題――イレーネという少女との出会いを少し振り返ってみようと思う。その途中で寝落ちできたら儲けものだ。
呼ばれた通りの部屋に来たと思う。
思うのだが、どう見ても部屋の外装が大貴族向けではない。貧乏貴族か、下手すれば平民出身の生徒が泊るような部屋だ。
もし部屋を間違えていたらいけないし、不本意だがもう一度聞き直してからでもいいのでは? と思いその場から去ろうとしたとき、ふいに扉が開き、そこから一人の少女の顔がのぞいた。
「あなたは、誰ですか? 私は公子様に呼ばれてここにきたのだけれど」
ここにたどり着くまでの嫌な緊張の裏返しで、ついキツめな言い方になってしまった。
でも、そこまで反省はしていない。フレンドリーじゃないのはお互い様だったから。
「ヨハンはいません。あなたの期待に沿えないようで申し訳ないです。
が、紛いなくこれがヨハンの意思なので、そう私にカッカしないでください」
そう言って性悪そうに笑う彼女に妙に腹が立つ。
「あの、あなたは結局、誰なんですか? 公子様とは、どういった関係で?」
「私のことは、是非イレーネと呼んでください。それと、あなたが思うような関係ではないので、本当に落ち着いて」
口が言っていることと顔が言っていることが合っていない。
「では努めて落ち着いて質問申し上げると、本日は如何いたしましょうか?」
こういう輩にこそ、かえって冷静な返答が効くのだ。
同じヘマはしない。
「いえ、もう帰って良いです」
握りしめていた右手のこぶしが緩んだ。
「だから、もう結構ですよ」
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「おい、あれどこに隠したんだよ」
後ろめたいほどに晴れ渡った青空の下、二人の男は学生寮近くの通りの隅で話し込んでいた。
話題は、自然とケルソネソス=タウリケ到着からの不安の種―—飛行物体の残骸に向かう。
「ここだよ」
と言って自身の持つ革製のアタッシュケースを指さす。
「すぐにでも誰かに預けねーと! 居住区の人間に金を積むか? お前今いくら持ってる?」
「しれっと俺に払わせようとすんなよ。そして落ち着け」
宥めも効かないようで、興奮がちに迫る。
「今すぐそのカバンをよ、こ、せ! 今すぐ海に捨ててやるこんな爆弾!」
「よーく考えろ、これが一般人に見つかって何になる?」
「あ、そうか」
二人が大事そうに運んでいる残骸は、他人から見ればただのゴミである。
「だから、これを安心できる場所に預けるんだよ。公子様方でも見られないような場所に」
「やっぱり海底かぁ~」
「おい、アタッシュケースから手を放せ」
そう言って手を振りほどき、アタッシュケースに括り付けられた小冊子を取り出して、あるページを指さす。
「クリスティーナちゃんがいる船は抑えている、というか目の前に停泊しているわけなんだが」
「わが校の報道機関は優秀ですなぁ」
余談だが、この誌は既存の新聞社から融資を受けて発行されており、才能の卵たちがプロのメソッドを継受している。
至って健全なジャーナリズムが育まれているのだ。
決してピンク産業の温床であったりはしないし、カンディア島で本を取引する事業を展開していたりはしない。
「公子様が来ない! もう張り込んでから2時間は経ってるのに!」
「その冷やかし精神はもはや見習いたいまであるけど、それなら安全策を採って沈めた方が――」
「いくら学園船でも荷物を他生徒に見せたりはしねぇよ。仮にも貴族なんだから、よっぽどのことがない限り、俺たちの荷物を無理矢理見るなんて船長でもやらないわな」
寮長だとそうは行かないんだけどな、と呟いて、アタッシュケースを頭上に持ち上げ、言葉を遮る。
退屈さに耐えかねたのか、一人が双眼鏡を取り出して、景色を眺め始めた。
「下品かもしれねぇけどよ、俺は好きだぜ、こういう豪華なの」
「お前、そんなことして公子様が知らない間にどっか行っちまったらどうすんだよ」
「いや、どうするって、そこにいるじゃねぇか。お前がソワソワしてるからトイレにでも行きたいのかと思って放っておいたけど」
「いや、どこだよ?」
「ほら、そこ、そこ」
指した先は、ただの道である。
前回、船上で同じようなヘマをした。
しかし、人間とは成長する生き物である。
もう一人も双眼鏡を取り出して、指が向かう方をじっと見つめる。
すると、何ということだろう。別の船に乗り込もうとする公子の姿がある。
二人は目も合わせずに、うなずく。
公子の方へと、急いでかけていく。
しかし双眼鏡を覗いたままだった二人は、ぶつかる。
その衝撃で、アタッシュケースが放物線を描いて、海へと、落ちた。
二人は、出航時間も忘れて、沖の方へ流されていくアタッシュケースを見送っていた。
人間とは、失敗する生き物である。
タイトル詐欺シーズン、10月開幕。




