表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/132

【三族山編】君と私の炎色反応 ※第三者→アンズ視点

【※注意1】第三者視点からのアンズちゃん視点回です。

【※注意2】一部、自作歌詞シーンがあります。(音楽作成について、ド素人です。ご了承ください)

 日曜日 午後8時57分――三族山内、公園にて。


 ピュルルル――。


 教会近くで、多くのジェット風船が夜空に舞い上がる。

 その様子を見て、公園のベンチに座っていた一人の婦人が立ち上がる。

 

「花火師さん! 派手に打ち上げてくださいね。あの子たちのパフォーマンスに、ぴったり合うように」

「あぁ、アンズちゃんのことだろ? 歌詞もちゃんと読んだし、ほら、俺の耳には……ミニモニ? ちげぇや! イヤモニがあるからよ!」

「ありがとう。じゃあ、私は教会に戻りますね」

「おぅ! 元気でな……クローナル夫人」

 

 花火師は、すでに花火玉の準備をし終えていた。

 あとは、打ち上げるだけ。


「アンズちゃん、頑張れよー!」


 武者震いして、思わず大声を出す花火師。


「へへっ、楽しみで待ちきれねぇや……!」

 

 何せ、今日は7種類もの花火を打ち上げるのだから――。


 △▲△△▲△


 私は、アダムと交代で、教会のステージに上がる。

 さっき、「花火が見たいな」って言ってた女の子は、この前、自傷行為をしていた。未来に絶望していたあの子が、今は目を輝かせている。


(そうだ……私の歌で、みんなの気持ちを明るくしなくちゃ! でも、前よりずっと大きなステージのせいか、緊張で足が震えちゃってる――!)


 とにかく、心を落ち着かせたくて、マイクを強く握りながら、自己紹介を始めた。


「初めまして! アンズです! 今、研究者であるアダムが、炎色反応の実験を行いました。実際に、花火でも再現できるんです。その情報をアダムから教えてもらって、曲を作ってみました。聞いてください――『君と私の炎色反応』」


 本当は、観客のみんなとアイコンタクトを取ったり、もっと声を掛けたかった。でも、緊張でそれどころじゃなかった。そのような状況でも、最前列の人たちが鼓舞してくれた。


「いっけー! アンズちゃーん!」

「バイトで、いつも素敵な笑顔をありがとう! アンズちゃん!」


(えっ、バイト……?)

 

 なんで、私のことを知っているのかなと疑問に思っていたら、フードを外して、顔を見せたのは――シンイさん。そして、バイト先の仲間たちだった。


(うそ……! 本当に? みんな、来てくれたんだ……嬉しい!)


 その上、みんなの手に握られていたのは、ケミカルライト。前だけでなく、横をチラッと見ると、アダムもケミカルライトを持っていた。


(うん。大好きなアダムがいるから、大丈夫)


 OKサインを出す。


 すると、曲が流れ始めた。


(一人じゃない……! 後ろには、花火師さんが私の背中を押すように、空に想いを打ち上げてくれるから、心強いじゃない。歌うのよ――私!)


『乙女の心は 赤色』

「あかいろー!」


『万能な君は リチウム』

「リチウムー!」

 

『どうして抑えられないの、助けて!』


『同心協力!』

「どう・しん・きょう・りょく!」

 

 私の後ろで、赤色の花火が打ち上がる。

 その赤い光に照らされながら、観客席を見渡すと――。


(あぁ……ちゃんと、私の歌に合わせて、赤いライトを振ってくれてる。それに、信者の人たちも――合いの手だけじゃなく、オタ芸まで……! みんな、本当に楽しんでいる!)


 よし……この勢いに乗って、もっと――もっと届けるのよ、私の想い!


『私の瞳は 黄色』

「イエロー!」


『勇気をくれるあなたは ナトリウム』

「ナトリウムー!」


『私たちの出会いは、起爆剤!』

『一期一会!』

1(いち)5()1(いち)()!」


『ストロンチウム!』

「しんくー!」

『強がりも抱きしめて!』


(どう)は!』

「あおみどりー!」

『涙も宝物だよ?』


『バリウムは!』

「きみどりー!」

『いつもそばにいるよ!』


『カリウムー!』

「むらさきー!」

『悩んでも大丈夫!』


『カルシウムー!』

「オレンジー!」

『笑顔の魔法をあげるよー!』


 次々と、曲に合わせて、歌詞と同じ色の花火が打ち上がる。

 そして、花火の色に合わせて、ライトも同じように変わる。


(花火とライトが一致していて、本当に綺麗。花火師さん、そして、みんな――ありがとう)


 次の歌詞は、みんなへの感謝の気持ちも込めて、問いかける――。


『あなたの好きな元素を教えて〜!』


 そう言って、マイクを私は、前ではなく、横にいる大好きな研究者へ向ける。

 すると、彼はこう答えた。


「君の瞳の、()()()()()――!」


 マイクを使っていないのに、彼の声は不思議と響き渡った――魔法のように。

 

 その声を花火師さんは聞き取ったのか――黄色の花火が打ち上がる。


(あれ? いつも静かで大きな声を出さないのに、力強い声……。しかも、ケミカルライトで、ちゃんとリズムまで取ってくれて……。こんな幸せ、あっていいの?)


 そう自分に言い聞かせて、次の歌詞に入る。


『光ることができる君も 光ることができなくても

 支え合っていけばいいの あなたが今ここにいるから』


 最後に――アダムから、教えてもらった台詞を思い出す。


「炎色反応って、全ての元素で見えるわけじゃないんだ。アルミニウムとか、鉄は見えない」

「そうなんだ」

「あぁ、でも、炎色反応じゃなくても、何かしら反応はできるからなぁ……」

「なんだか……(ひと)みたいね?」

「そうだな。だから、アンズ。やりたいことをやれたら、それが一番だ」


(貴方との会話で浮かんだこの歌詞。誰かの心に灯をともせたら……。そう願って、私は歌う――)


『元素のように 自分の好きと強みがあれば あなたは輝いているよ!』

『十人十色!』

「じゅう・にん・と・いろ!」


『きみが好きなコトで、世界を照らそう!』

『千載一遇!』

「せん・ざい・いち・ぐう!」


 最後にみんなの掛け声が入って、無事に歌い終える。


(やったー! 完全に歌い切れた……! あぁ……最高! 夢みたい――でも、これは私の現実……!)


 前を向くと、ルパタさんは号泣していて、シンイさんたちバイトのメンバーは全力で振ってくれたのか、額に汗がにじんでいた。右隣のエバスくんは、教祖の監視役として動けないはずなのに、それでも――片手でライトを振ってくれた。


 最後に、左隣にいるアダムを見つめる。

 すると、親指を上げるジェスチャーをしながら、ニヤリと笑ってくれていた。


「ありがとうございましたー!」


 気を抜かずに挨拶をする。

 すると、私の名前を叫んでくれる人までいて、拍手と歓声が波のように広がっていった。


(良かった、みんなを笑顔にできたみたい!)


 私は、今日という日を一生忘れない――。


(ありがとう、アダム。あなたに出会えて、本当に幸せ……。ずっと、そばにいてね)

アンズちゃんは、無事に歌い切ることができました!(お疲れ様)

次回は、主人公視点に戻ります。

引き続き、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ