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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【三族山編】千変万化〜協力者と会話〜

 翌朝――フォレスト家に着いた俺はそのまま眠りに落ちた。

 ニカさんと一夜を語り明かしたこともあり、寝不足だ。


(あっ……調査しないと……でも、眠い。寝足りない、まだ寝る……)


 二度寝しようとしたその時、電話が鳴った。

 

(アンズからだ。出よう……)


「ん……もしもし、アンズ?」

「アダム! あのね、申し訳ないんだけど……今、図書館で()()()大事な話をしてるの。一緒に聞いてくれる?」

「えっ……? 図書館? ってことは、併設カフェの計画とか?」


 残念ながら、インテリアとか設計の知識はまったくない。唯一、俺がアドバイスできることといえば、この前の食中毒調査でオオバコさんから教わった食品衛生管理ぐらいだ。

 そのつもりで詳細を聞こうとしたが――アンズの返答は、俺がこれからやらなければならないことに関連していた。


「それが、図書館でたまたま、三族山の花火師さんを見つけたの!」

「なんだってー?!」


 ガサッ――。

 思わず飛び起きた。

 

 今後の調査で、『人の出入り』については、絶対に把握しないといけないから、寝ている場合ではない。


「……あっ、やっぱり寝てたんだね? シーツの音がした……」


 アンズは、俺が寝起きだと薄々勘づいていたようだ。

「ちょっと代わるね」と言いながら、誰かと話し始める。

 よく耳を澄ますと、アンズのほかにもう一人、女性の声が聞こえた。


「アダムくん、ヤッホー! シンイお姉さんだよ! これから話し合いをするから、よーく聞いてね?」

「わかりました」


 俺と挨拶を交わしたシンイさんは、すぐに花火師へ問いかけた。


「まずは花火師さんから。あなたは、週に1回、三族山で花火を打ち上げていたと。間違いない?」

「そうだよ。宗教団体の人から頼まれていたからな。毎週日曜日と、あと祝日だ。最悪だよ、来週の月曜は祝日だったから、二日連続で盛り上がると思ってたのに……」

「なるほど……」


「最悪だよ」の言い方が妙に引っかかる。


(もしかして、花火の打ち上げ予定がなくなったのか……?)


 気になった俺は、すぐさま聞いてみることにした。


「あの……その言い方だと、花火の打ち上げ計画自体がなくなった、ってことですか?」


 俺の問いに、シンイさんが答えた。


「なんとね、花火師さん、団体から『来週から来なくていい』って言われたんだって」

「ふーん……」


 つまり、その宗教団体は、花火を使ったパフォーマンスをやめた、ということか。


(そうだ。せっかくだし、この機会にもう少し聞いてみよう)


「えっと、花火師さん。俺から質問があります。花火玉の色って、毎回『この色にして』って指定されていましたか?」

「おぉ〜、なんでわかったんだ? 毎回、色の指定があったよ」

「そうですか、やっぱり……」

「ん? 『やっぱり』って、どういうことだ?」


 花火師のおじさんは、不思議そうに聞き返していた。


 そこで俺は、この前の儀式で録音していた教祖の声を流すことにした。


『こんばんは。今日、打ち上がる花火は……黄色だと神は言っている!』


 その音声を流した瞬間、花火師は大爆笑した。


「何言ってんだ?! 神じゃなくて、団体の関係者が前もって指定した色の花火を、俺が打ち上げただけだぞ?!」

「つまり、信者は騙されていたってことですね……。花火師さん、クビになったって言ってましたけど、来週、俺たちのために花火を用意してもらえませんか?」

「え?」


 俺の申し出に、花火師だけでなく、シンイさんたちも驚いていた。


「アダムくん、一体何をするつもり?」と、すかさずシンイさんがツッコミを入れる。


「俺が信者に真実を伝えます。神なんていない。ただの炎色反応だって。例えば、俺が『リチウム、赤色』って言ったら、赤色の花火を打ち上げてもらいたいのですが……」

「おぉ……なるほどな。確かに、あんな宗教団体のために花火を披露するより、あんたらのために打ち上げる方がマシかもしれねぇ。で、何色を指定するんだ?」

「それがですね……最低でも7種類……」

「7種類?!」

「来週は、()()()()パフォーマンスをやります。俺の幼馴染のアンズが歌う中、花火を打ち上げてほしいんです。彼女、歌が上手いので安心してください」


 俺の話を聞いて、アンズが思わず大声を上げた。


「アダム! 恥ずかしいこと言わないで!」

「いや、事実だから言っただけだ」


 俺とアンズのやり取りを聞いて、花火師は笑いながら「やってやるよ!」と意気込んでくれた。


「じゃあ、花火の色を指定してくれると助かるな!」

「アンズ、歌詞を見せてあげて」

「わかった! まだ全部はできてないけど、アダムと話してた炎色反応の部分は作ったから……」


 そう言って、アンズは花火師に歌詞を見せている様子だった。


 その間、俺とシンイさんはもう一人の人物から、話を聞くことに。


「えっと、あなたは、お友達が運送業をしていて、三族山への配送がなくなったって話を聞いたんですよね?」

「あぁ、そうだ〜。なんか、小麦粉とか片栗粉を運んでたらしいけど……先方から『もう送らなくていい』って言われたってさ」

「はぁ……」


 業者には『小麦粉』なんて原材料名で誤魔化して、実際には危険薬物を送らせてたってことか……。


「その、小麦粉とかって、どこから供給されてるのか聞いたことあります?」

「それがさ、先方が『守秘義務です』の一点張りで教えてくれなかったんだとさ。しかも、そのダチもクビになったしなー。また何か情報が入ったら教えるよ」

「わかりました……」


 俺はふと疑問を抱く。

 次回からは花火も打ち上げず、薬物も不要。

 それでも、信者の中には薬物依存のやつらもいるはずだ。


(どういうことだ……? 儀式自体をやめるつもりなのか?)


 気になったものの、この花火師のおじさんたちは信者じゃない。

 これ以上聞いても、答えは出なさそうだった。


 だから、俺は話を切り上げ、アンズとの電話を終えた。

【ご報告】

私事で大変恐縮ですが、8月に資格試験を受ける関係で、更新頻度がやや下がると思います……。

久しぶりの国家資格なので……ぼちぼち本腰を入れます……。


ちなみに、8月に受ける試験ですが、タイトル名の『イノベーション』に関連しています。

主人公は「研究所を設立したい」という壮大な夢があります。

夢を叶えることも大切ですが、その夢を叶えるためには、多くの手続きなど現実的なこと(資金調達、特許権など)も必要になってきます。

なので、私自身も知識として昇華しないといけないと思い、学ぶことにしました。


今後ともよろしくお願いいたします!

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