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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【三族山編】作戦会議〜エルフ姉弟・幼馴染と集会〜

「アダムくん、敬語じゃなくていいからね! それより、このお茶、美味しいね。何が入ってるんだろう?」


 第7王子のルパタは、俺に心を開いただけでなく、どうやら俺が用意した漢方茶をすっかり気に入ったらしい。


「じゃあ、お言葉に甘えて……。美味しいだけじゃなくて、10種類の生薬が入ってるから、食欲が落ちてる時にもいいんだ」

「へぇ……。あのさ、その10種類って、ちゃんと分かったりする?」


 どうやら、薬草園を管理しているだけあって、ルパタも興味津々のようだ。俺自身、生薬の話は大好物――。


「もちろん! 良かったら、詳しく教えようか?」

「ぜひ! ちょっと待って!」


 そう言うと、ルパタは素早くノートとペンを持ち出した。


(やる気満々だな……! 俺は前世、大学で講師もやっていたし、こういうのは燃えるッ……!)


「じゃあ、まずは生薬名から説明するぞ!」


 せっかくだから、ルパタのノートに文字を書きながら、1つずつ読み方も交えて解説を始めた。


人参(にんじん)蒼朮(そうじゅつ)黄耆(おうぎ)当帰(とうき)陳皮(ちんぴ)大棗(たいそう)柴胡(さいこ)甘草(かんぞう)生姜(しょうきょう)升麻(しょうま)の10種類からなる!」

「さすがだね、アダムくん」

「そんなぁー!」


 得意分野で褒められるのは、やっぱり嬉しい。せっかくだし、もっと語ってみるか。


「ルパタ、何か気になる生薬はあるか?」

「うーん……このショウマかな。ショウマって、確か……いろんな種類があるよね? これはどのショウマなんだろう?」

「これはサラシナショウマ。薬用に使うのは根茎だよ。同じ生薬名でも、使う部位が違うこともあるんだ」

「なるほど……。すごいなぁ。その組み合わせで、こんなに美味しいお茶になるとは……」


 俺の話に、ルパタは興味深そうに聞き入っていた。他の生薬についても、彼の疑問に答えながら、解説を続ける。


(あれ……薬草園に、どのぐらいいただろうか?)


 ふと時計を確認すると、ここに来たのは午前6時過ぎ。今はもう10時近くになっていた。


「うわっ! こんな時間……。ごめん、ルパタ。俺、語りすぎた……!」

「いいよ。有意義で楽しい時間だったし」


 2人で楽しく、のどかな時間を過ごしていたけど、薬草園の入り口から、大きな声が響いた。


「ルパタ――! おはよ! 2人で差し入れを買ってきたよー!」

「失礼します!」


 女性陣の声。もしかして……いや、間違いなく知っている2人だ。


「って、アダムくん?! どうしてここに?」

「朝からいなくて、心配したんだからね!」


 シンイさんとアンズだった。


「シンイさん、おはようございます。アンズ、心配かけてごめん。たまたま散歩してたら、この薬草園に着いたんだ……」


 しょんぼりと肩を落としてみせると、なぜかアンズはニッコリ笑う。


「さすがアダム、先手を打ってると思ったよ。ルパタさんに、お茶の差し入れができたんだね? 良かった、はい! アダムの好きなもの、ちゃんと用意してきたよ? ルパタさんの分も入ってるからね!」


 そう言って、アンズは俺に紙袋を渡す。

 手に取った瞬間、俺は、缶の形状にピンときた。


「もしかして、これは……!」


 衝動を抑えきれず、勢いよく缶を開ける。

 

 ――中に入っていたのは、俺の大好物!


「クッキー!」


 思わず歓喜の声を上げ、缶を掲げる俺。

 そんな俺を見て、フォレスト家の第5王女シンイさんと第7王子ルパタはポカーンとした顔で固まっていた。


「キミ、クッキーが大好きなんだね?!」

「まさか、アダムくんに生薬以外の大好物があるなんて……知らなかったよ」


 アンズは「アダムは、好きなことと興味がないことの境目が、はっきり分かれてるんです!」と俺の取説(トリセツ)をした後、すでにクッキーを頬張っていた俺に釘を刺す。


「アダム! 食べるのは全然いいけど、これから調査の打ち合わせがあるから、食べすぎて眠くならないようにね?」

「りょーかい!」


 俺たち4人は仲良くクッキーをつまみながら、調査の打ち合わせを始めることにした。薬草園の隣にある一室へ移動する。


 ちなみに、次男のエバスは、一酸化炭素中毒の症状が出たこともあり、今回の会議と調査には不参加だ。


 俺は机の上に、シンイさんが用意してくれた地図やメモを広げ、三族山内にある教団施設の情報を整理する。


「一体、何の目的でこの三族山を狙ったんだろう?」


 思わず独り言を漏らす。

 一方、アンズはソファに腰掛け、ルパタが淹れたお茶を飲みながら、気楽そうに足を揺らしていた。その隣では、シンイさんが肘をつきながら、俺の堅苦しい表情を見て励ましてくれた。


「アダムくん! まあ、そんなに難しく考えなくてもいいからね~?」


 次いで、ルパタは部屋の片隅の方で静かに座り、慎重に言葉を選びながら話し始めた。

 

「この教団には裏がある――まずは、僕が確認できた情報から話すね」

 

 ルパタは穏やかだが、芯のある声で切り出す。シンイさんとアンズも高い関心を持ちながら、耳を傾ける。


「教団の『奇跡』は、本物じゃない。どうやら、科学の技術を使って演出しているらしいんだ」

「やっぱりね~。毎回花火を打ち上げているなんて怪しいと思ってたわ!」

「それに、信者たちは皆、『神の声を聞いた』と言っているけど……僕は違和感を覚えていたんだ。耳の奥に妙な感覚があった、って話を何度か聞いたから」

「それって……()()()()による幻聴の可能性が高いな?」


 俺は顎に手を当てながら、興味深くルパタの話を聞き入る。


「そうなんだよ。アダムくんの言う通り、薬物が使われている線が濃厚だ。『神の祝福を受ける儀式』の後、信者たちが恍惚とした表情になっていた。あれは、精神に作用する何かが投与されているはずだよ」


 ルパタの鋭い指摘に、相槌を打ちつつ提案してみる。


「じゃあ、潜入作戦を立てないか?」

「えっ! どうやって潜入するの?」


 アンズが身を乗り出して、確認がてら聞き始めたため、ルパタが地図を指しながら説明する。


「そうだね。作戦を立てよう。三族山内の教会は厳重に守られている。でも、信者向けの『神聖な奉仕活動』に参加すれば、内部に入り込めるよ」

「へえ~! じゃあ、私が新入り信者を演じます! 歌手活動もしているので、任せてください!」


 アンズが楽しそうに言う。そんな能天気な彼女をみて、俺はため息をつく。


「アンズ、危なすぎる。それに、目立ちすぎるとすぐバレるんじゃ……」

「じゃあ、アダムがやれば?」

「いや、俺はそういうの向いてないから……」

「確かに、アダムくん。キミは信者っぽくないわね~。無表情で浮いちゃいそう!」


 シンイさんは、俺の姿を想像して、愉快気に笑う。


「シンイさん、俺は信者にならないですよ。ルパタと一緒に、裏で仕掛けを探って証拠を集める予定です」

「じゃあ、私が信者になりきって、儀式の最中にどんな薬を使ってるのか実際に確かめてみます!」


 アンズが意気揚々に言うと、ルパタが慌てて制した。


「ちょっと待って! アダムくんも言ったけど、それは危険だよ。薬の効果が強かったら、精神をコントロールされるかもしれない!」

「え~、大丈夫です! もし変になったら、アダムがなんとかしてくれるでしょ?」

「……全く信用できない言い方だな」


 アンズが俺のことを信頼してくれていることはわかっているが、ついレモンのような渋い顔をしてしまった。


「まぁ、怪しまれない程度に情報を集めるのはアリね~。ワタシもアンズちゃんと一緒にいるわ」


 シンイさんがアンズのフォローに入るようだ。それならば、一安心できる。


「じゃあ、決まりだね。アンズちゃんと姉さんは信者になりきって内部を探る。アダムくんと僕は裏で儀式の動きを観察する」


 ルパタがまとめた後、シンイさんが最後に一声かける。


「潜入は明日の夜、決行だね! 各々、準備をしっかりしようねー!」


「オッケーです! 私、頑張ります!」とアンズが拳を突き上げる。


 ――こうして、4人の潜入作戦が幕を開けた。

<余談トーク>

サラ「みんな、お久しぶり! アダムさん、ぼくの名前を出した?」

アダム「いや、サラシナショウマっていう植物の名前を出した」

サラ「そっかー! ぼくの勘違い?! ちなみに、何の漢方茶なの?」

アダム「正確に言うと、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)が該当する。服用するときは、お医者さんや薬剤師さんに相談してね」

サラ「了解、アダムさん。調査、頑張ってね?」

アダム「ありがと」

サラ「ちなみに、ぼくは別作品で主人公をやってるから、もし良かったら読んでみてね〜!」

アダム「りょーかい。サラも頑張って。変な男に捕まるなよ?」

サラ「うん……」

アダム(大丈夫か?)

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