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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【三族山編】一子相伝〜お父様と初会〜

「アダム様! 背が伸びて、また一段と素敵な青年になられましたね……」

「アンズのお母様、今日もお綺麗ですね……」


 俺の返しに、アンズとアンズのお母さんは2人して、爆笑し始めた。


「今日()、だって! 久しぶりに会ったのに!」

「アダム様も全然変わっていなくて安心しましたよ」

「そうですか? あっ、娘さんを迎えにきたんですよね。じゃあ、俺はここで……」


 そう言って、今日のホテルを探しに行こうと思っていたけれど……。


「お母さん! アダム、今日帰るところがないみたいなの!」


 アンズが突然、大きな声で、まるで俺が家出したみたいな言い方をしてきた。


「アンズ、他の人に聞かれるわ?!」とお母さんはアンズを優しく注意した後、俺の方へ向き直る。


「あの……アダム様。我が家は普通の家庭ですが、もしよろしければ、一泊していきませんか? 一部屋空いていますし……」


 予想外の申し出に、俺は戸惑った。幼馴染とはいえ、女の子の家に泊まるのはさすがに気が引ける。心を鬼にして、「いえ。お気遣いは嬉しいのですが……」と断わる意思を表示したかったけど、アンズに発言を遮られる。


「お母さん! そのアイデア、いいかも! 私の家にはね、書斎があって、面白い本がいっぱいあるよ? 魔法や法律の研究好きなお父さんの趣味なんだけどね」


()()……?!)


「アンズ――今、研究って言ったか?」

「うん。研究! アダムの大好きな言葉だけど?」

「そうか……」


 俺は、覚悟を決めた!

 

「アンズのお母様――不束者ですが、俺を泊まらせてください!」


 そう言って、深々と頭を下げる。幼馴染の家に泊まるのだから、礼儀を尽くさなければ。それなのに、今の俺は何も手土産を持っていない。


「すみません。お家へお邪魔する前に、お菓子を買ってきます」

「お気になさらないで? それより、アダム様。私とアンズの3人で晩御飯を食べに行きませんか?」

「いいんですか?」

「もちろん。とりあえず、レストランに行きましょうか?」


 アンズのお母さんの提案で、3人でシーフードレストランへ。各々好きな料理を楽しんだ後、アンズの家へ向かった。


 家に着くなり、アンズは「お風呂入ってくるね!」と言い残し、直行。そのあと、自室へ移動し、眠りについたようだ。よほど疲れていたのかもしれない。

 

 一方の俺は、翌朝、シャワーを借りればいいかと思い、アンズのお母さんに客室用の部屋を案内してもらった。そして今、書斎にいる。


 しかし、アンズのお母さんは「普通の家庭です」と謙虚に言っていたが、どう見ても広い家だ。俺やニボルさんの家と比べても、一部屋の広さが段違いだ。


(本当に()()なのか……?)


 そう思いつつ本を探すと、さっそく気になる一冊が目に入った。


『エルフ視点で見たランプ市の歴史について』――監修者は『バロ・サターン』。


 王族の中に、歴史好きな人物がいるらしい。


「へぇ……おもしろそうだな」


 パラパラとページをめくったところ、気になるキーワードが目に入る。


『三族山だが、エルフ族で所有している土地は、魔法資源や貴重な鉱石、薬草などが豊富である』


(薬草――! 気になる……!)


 やはり、自分の興味がある部分しか関心がわかないけど……魔法資源や鉱石が豊富ということは、ある仮説が考えられる。


「宗教団体は三族山の資源を利用し、勢力を拡大しようとしているのでは? その際、悪魔や人間が数で押し切れば、人口の少ないエルフを排除できる。そして、誰にも邪魔されずに資源を独占できる……。普通なら独占を規制する法律がありそうだけど、この世界にはないのか……?」

「へぇ……。面白い着眼点だなぁ。その話、詳しく聞かせてくれないかい?」

「はい。俺が思うに……って、え?」


(どうやら、俺以外にも誰かがいたようだ……。男性の声だ。暗くて姿が見えない……)


 だが、その人物は、俺のところへゆっくりと近づいてきた。


「あぁ。実際にお会いするのは初めてだなぁ。我が愛娘がいつもお世話になっているようだね……」


 そう言って現れたのは、紫の髪に紫の瞳を持つ、紳士然とした男性。

 ……俺と似ている部分もある。お互い、天然パーマだ。


(彼は「()()」と言っていた。それって、つまり……)

 

「貴方はアンズの……?」

「そうだ。私はアンズの父だ。我が名はバロ。えっと、君は……」

「アダム・クローナルです。初めまして、お父様」


(バロって言ったよな? この本の監修者と同じ……?)


 ふと手に持っていた本に目を落とすと、その視線をアンズのお父さんは見逃さなかった。


「あぁ……。それは、私が学生時代に監修した本だ。エルフ族の友人が執筆してくれたんだよ」

「そうですか……」

「もしかして、読んでいて気になることがあったのかな?」


 鋭い……。それにしても、アンズとは正反対の性格のお父さんだな。俺は、聞くべきか悩む質問がある。最悪、怒られるかもしれない。でも、これだけは知りたい。なぜなら、俺自身の好奇心が「聞いてくれ」とウズウズしているから。


「率直にお聞きしたいことがあります」

「なんだね?」

「この本の監修者として書かれているお名前は『バロ・サターン』様。この場合、王族出身ということになります。しかし、貴方の奥様は、『我が家は普通の家庭』だと言っていました。どちらが正しいのですか?」


 アンズのお父さんの眉がピクリと動いた。そして、顎に手を当てた。


(うわぁー……。怒らせたかもしれない。ごめん、アンズ)


 俺はアンズ一家との関係が終わったかもしれないと、ショックを受けていた。だけど、返ってきたのは予想とは違う答えだった。


「アダムくん。君は誘拐事件でアンズを助けてくれた、命の恩人だ。だからこそ、君には正直に話しておこう――」


 そうして、俺はアンズのお父さんから、驚くべき事実を聞くことになった。

<余談>アンズちゃんのお父様の名前の由来

・バロ→インフルエンザの治療薬【バロキサビル】から。

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