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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【補習編】女心と夏の空(※一部微百合表現あり)

【※注意】一部、女性同士の絡み有り。

「じゃあ次は遊離残留塩素ゆうりざんりゅうえんそを測ります。殺菌力(さっきんりょく)のある塩素ですね」

「えっ! あんた、アタシたちをこれからどうするつもり!? 殺菌(バイバイキン)する気?」


 ケイが突然、俺のことを警戒する。一方、アンズとキハダ理事長はタブレットに夢中で、俺たちのやり取りには全く興味がなさそうだ。


「ケイ、むしろこれからやることは……プールの水が汚染されていないか安全性も踏まえて、確認するんだ」

「そうよ。アダムくんの言う通り。適切な塩素濃度があれば、細菌の増殖を防いで、死滅させることができるからね」

「ご名答です、先生。さぁて……測定しますか。ケイ、この試験管にプールの水を入れてくれないか? 俺はその間に魔法を使う」

「わかったわよ!」


 彼女はすぐに動いてくれた。俺は魔法の言葉を発する。

 

「女神様、DPDを――!」


 そう唱えると、試薬と比色板(数種類の色が並んだ板)が現れる。ちょうどそのタイミングで……。


「取ってきたわよ?」


 ケイが戻ってきた。俺はすぐに試験管へ試薬の粉を投入する。


「もしかして、それを飲ませるつもり――?!」

「いや、それは睡眠薬のエピソードだろ? 俺は真っ当な研究者だから、そいつらと一緒にしないでくれ。ほら……色が変わっただろう?」

「本当ね」


 オウレン先生が試験管を覗き込み、比色板の色と照らし合わせて数値を確認する。

「えっと……0.6だから基準値内ですな。オッケーです」と俺が言うと、ケイが鋭く指摘してくる。


「えっ! この2.0の最大値じゃなくていいの? アタシは0か100の女よ!」

「いい質問だ。だが、最大でも1.0以下の方が望ましいんだ。そうだな……。濃度が高すぎると、残留塩素が尿や汗に含まれるアンモニアと反応して、【クロラミン】っていう物質になる。そいつが厄介で、目や皮膚に刺激を与える。だから、プールの中では排尿(オシッコ)しちゃダメだ……」

「当たり前よ! だって、アタシは第4王女のケイ――」

「いや、王女とか関係なく、誰でもダメだ」

「ちょっとあんた! アタシがいい台詞を……」


 そのタイミングで、アンズがケイを呼ぶ。ケイはしぶしぶ項垂れながらも、アンズの方へ向かっていった。


「あとpHを測りますか〜」と言いながら、俺はpH試験紙を取り出し、プールの水に漬ける。


(この前、魔法で多めに出してもらったから、まだ余ってた。ラッキー)


 そんなことを思いながら、試験紙の色を確認すると――緑色に変化した。


「中性。基準値内なので、問題なしですね」

「あら、本当ね」

「せっかくオウレン先生にも手伝っていただいたので、少し説明を。酸性だとプールの配管が腐食(ふしょく)したり、コンクリートが劣化(れっか)しやすくなります。一方、塩基性に傾くと消毒効果が低下してしまう。だから、この状態がちょうどいいんです」

「ご丁寧にありがとう」


(さて、そろそろみんな入りたそうにしてるな……)


「じゃあ、入ってどうぞ?」と振り返ると――水着を着たアンズとケイ、そしてなぜかキハダ理事長の姿が……。


 アンズは、ビビッドなオレンジ色のクロスデザインビキニを身に着けていた。


(めちゃめちゃスタイルが良いし、豊満な胸……いや、役満では?)


 一方、ケイはネイビーのクロップトップとショートパンツの水着。


(彼女は、動きやすさを重視したのだな……)


 そして、理事長はハイネックのワンピースタイプ。カラーはオウレン先生の瞳の色を意識した緑色だ。


(理事長って、意外と乙女?!)


 つい、それぞれの水着姿に見惚れてしまい、キハダ理事長からピシッと指摘された。


「アダム! 紳士たるもの、ジロジロ見ないでくれ!」


 そう言いつつ、理事長はオウレン先生に向き直る。


「ということで、オウレン。君もお着替えしようね――」

「えっ……キハダ理事長?」

 

 理事長はいつの間にか、例のタブレットを左に抱えながら、右手でオウレン先生の手を握る。


 すると、ふわっと煙が立ち、一瞬視界が白くなる。魔法が発動したのだろう――さっきまで白衣を羽織ったワンピース姿だったオウレン先生は、いつの間にか小花柄でフリル付きのワンピース水着を身に纏っていた。


「 「かわいい……」 」


 つい、俺とキハダ理事長の2人でハモってしまった。それに、俺は見逃さなかった――その発言をした直後、理事長の目がギラリと光った。


「オウレンは私のものだ! 絶対に譲らない!」


 そう宣言して、オウレン先生を力強く抱きしめる。


「やだ……! キハダ理事長、学生たちに見られるのは……」


 オウレン先生は恥じらい、頬を薄くピンク色に染めていた。


 「あぁ……すまないね」なんてキザなセリフを残して、スマートにオウレン先生から離れた理事長は、腕を組みながらプールの水面を見つめる。そこへ、ケイが隣にやってきて、笑いながら、とある提案をする。


「理事長、監視? それとも一緒に泳ぐ?」

「監視だ。……いや、少し泳ぐのも悪くないか」


 ――なんかバトルが始まるのか?

 2人とも戦う顔(バトルフェイス)をしている。

 俺と同じことを思ったのか、アンズもワクワクした様子で、場を盛り上げるような発言をする。


「せっかくなら、泳ぎの速さ対決しよ! ケイちゃん VS 理事長先生、どう!?」

「アンズったら、いいアイデアね。やるわ!」

「ふっ、いいだろう。全力で相手をしてやる。私が勝ったら、オウレン! 私と2()()()ご飯を食べに行こう!」


 オウレン先生は、理事長のデートのようなお誘いに照れながらも、優しく微笑み、保健室の先生らしいフォローを入れる。


「みんな、準備運動はしっかりね? それから、水分補給も忘れないように。ケイちゃん、キハダ理事長……2人とも頑張ってね。よーい、スタート!」


 その合図とともに、2人の仁義なきバトルが幕を開けた。

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