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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【第9王子vs.実験部編】一難去ってまた一難退学ありえない〜実験部全員集合〜

 第9王子を倒した後、俺は男子更衣室に向かい、アンズとケイ、そしてパーカーを被ってBクラスの女子に変装したサラの3人を回収した。


 その時、アンズが動けなさそうだったから、抱っこして、4人で無事に部室まで移動できたのは良かったのだが……。

 

 サラは男子更衣室で戦った際に、胸の辺りを斬られてしまったようだ。

 

 怪我してなくて本当に良かったけど、男だと隠している彼女にとって、斬られた場所が悪すぎた――胸の谷間が丸見えだった。

 

 部室に到着した後、サラと俺の2人で、すぐ保健室へ向かえば良かったのかもしれない……。


『Bクラスの女の子が部室にいるのは気まずいんじゃない?』と気を回したケイが、親切心から、いつの間にか()()が被っていたパーカーのフードを外してしまった。


 もちろん、彼女はBクラスの子ではない。


 俺の指示で、サラが変装して、彼女になりきってくれたのだから。

 

 覆水盆に返らず。


 サラが()()()だと部員の女子2人にバレてしまった。


 サラはバレないよう、学園生活でずっと気を張っていたから、バレて、強いショックを受けたのだろう。


 みんなの前で、泣いてしまった……。


 サラは何も悪くない。


 むしろ、俺がサラに、Bクラスの女子生徒に変装してほしいと頼んだだけでなく、男子更衣室にいる敵を倒して欲しいと言ってしまったから……。


 だけど、ケイがフードを外さなければ、こんな事態にはならなかった。


 俺とケイで、どちらが悪いか言い争っている中、サラはずっと泣いていた。

 

 お先真っ暗かつ、地獄のような緊張感に包まれていた部室。

 

 その時、アンズが口を開いた。


「みんな無事だったんだし、結果オーライじゃないっ?!」と。


 全員がハッとさせられた。


(そうだよな。俺たちは勝って、無事に戻ってこられたんだ)


 彼女の明るい言葉で、みんなが落ち着きを取り戻したこともあり、俺の方からサラに「ニボルさんから聞いた話を伝えてもいいか?」と提案した。


 サラがすぐに「うん。大丈夫」と返事してくれたため、そのままアンズとケイに事情を話した。

 

 俺が話し終えた直後、2人はぎゅっと、サラのことを抱きしめていた。


「サラ、よく頑張ったね。私たちが味方だから、いつでも相談してね」

「アタシも貴女の味方! 女子同士、仲良くするわよっ〜!」


 俺はちょっと蚊帳の外だった。


 ……俺も輪に入りたかった。


 この後、4人で保健室に向かい、第9王子との間で起きた出来事について、オウレン先生に正直に話した。


 ハプニングが起きてしまい、サラが胸の辺りを斬られてしまい、アンズとケイがサラの性別を知ってしまったことも。


 その際、俺はオウレン先生に釘を刺されてしまった。


「サラちゃんは大切なお嬢様なのよ、強い子だけど無理させないで!」


 * * *


 さて、第9王子との対戦にサラの正体バレと、とんでもなく濃厚な一日が終わって翌日。


 担任は体調不良でお休みとのことだった。


 どうして女子生徒の健康診断の日付を間違えたのか、理由は謎に包まれたままだ。


 でも担任(コイツ)は、口では平等なんて言ってたけれど、本当は第9王子に加担してたのだろう。


(勝ったことだし……別にどうでもいいけどな)

 

 昨日と打って変わり、今日は平和に時間が経ち、あっという間に放課後になった。


 普段と変わらず、俺は部室で実験活動に励む。

 

 ここ最近の部活動は一人でいることが多かったのだが。


 今日は兼部(かけもち)組のアンズとサラだけでなく、ケイと――。


(あれ、初めてきたのではないだろうか?)


 ()()()()のニコもいた。


「ニコ、なんでいるんだ?」

「いいだろ。みんなサラのこと知ったんだろう? 本当は、()()()()だって」


(やっぱり。コイツ、サラの性別を知ってたのか〜)


 腑に落ちる。


 ()()、サラと距離が近いなと思ったことが多々あった。


 ただ、もしニコがサラのことを最初から女の子だと知っていたのなら、その距離感は不自然じゃなかったのかもしれない。


 むしろ、ニコがサラに恋心を抱いているのであれば、尚更、納得がいく。

 

(あっ、そういや思い出した)


 サラとニコに瓜二つな人物が出てくる同人誌は、ちゃんとBクラスの女の子――パーカー女子本人に返した。


 忘れられない。


 パーカー女子は顔を真っ赤にして、一言も発さず、大急ぎで去ってしまった。


 ちなみに、彼女も俺同様に無傷だった。


 その件で、今回、一番驚いたことがある。

 

 俺とサラがお互いに覚悟を決めて部室を出た後、サラは忘れ物を回収するために再度戻ったらしい。


 そこで、たまたまニコが部室に来ていたそうで……。

 

 いつもと状況が違うとすぐに察し、サラと作戦を共有した後、男子更衣室から抜け出したパーカー女子をニコが保健室に連れて行き、彼女はオウレン先生のもとで無事保護されたんだとか。


 俺のいないところで、完璧な連携ができていたなんて……感無量である。


(ニコって、意外と頼りになるやつなんだなー)

 

「ねぇ、アダムー! 聞きたいことがあるの!」


 アンズが「ねぇーねぇー!」と何度も呼びかけ、俺の思考をシャットアウトさせた。


「えっと、質問?」

「パーカーちゃんって、結局どうなったの?」

「トイレでサラと入れ替わった後、ニコが彼女をオウレン先生のところへ案内してくれて。つまり、保健室で匿ってもらった……ってことで合ってるよな、ニコ?」


 確認がてら、俺はニコに聞いてみることに。

 

「まぁな。たまたま部室に寄ったら、女の子の格好をしたサラがいたからさ。……ところでサラ、今日はあの(女子生徒の)格好じゃないのか?」


 ニコはしっかり答えてくれたものの、サラのことを茶化す。


「ニコくん、ぼくはもう着ないよっ! 昨日は作戦実行のために着ただけだからね? それより、アダムさん! どこで女子生徒の制服を手に入れたの?!」


 案の定、サラは話を変えたかったのか、頬を赤らめながら、俺の方を向いた。

 

 年頃の女の子らしい表情に、つい微笑ましいと思ってしまう。


「以前、オウレン先生に『実験部は服が汚れる場合もあります』と言って、制服を多めに用意してもらったんだ。運よく、アンズとサラ、そしてパーカー女子が同じサイズ感だったから、今回の作戦が成立したってわけで……」


 そうだ、()()()()一緒のサイズだったから、即時に作戦を実行できた。

 

「あんたって、勘が働くわねぇ。なんでアタシたちが男子更衣室にいると、分かったの?」とケイはドン引きしながらも、理由を聞いてきた。

 

「昨日の朝、Bクラスの女の子とぶつかってしまって。彼女が俺の教科書を持っていってしまったんだ……。当時は最悪だと思った。だが、俺は教科書に、盗聴器機能付き万年筆を挟んでいた。その万年筆の性能がすごくてなぁ。万が一に備えて、同じ研究取扱者の変人――オオバコさんが位置情報付きのアプリを入れてくれてたんだ」

「すごっ! アダムって強運だね!」

「そうかもな」


 アンズがワーイ! と両手をあげて大喜びした後、サラの方を向いて、質問し出す。

 

「サラの剣術技、すごかったよ! でもさ、あの時、どこに剣を忍ばせていたのー?」

「背中にこっそり入れてたんだよー!」

「わかんなかったかも!」

「そうだね。バレるわけにはいかないと思って、最初は木刀の形でパーカーに隠してたからね」

「じゃあ、相手にバレないように魔法で木刀から剣に変えた上、仕掛けも入れてたってこと?! すごいわね!」


 アンズだけでなく、ケイも興奮気味に食いつく。


「サラ。貴女はアンズと服のサイズが同じなのよね。身長はアンズより高いのに……体重ってどのくらいなの?」


(おっかない……。マジでケイは直球に物事を聞くなぁ〜)


「ぼくは……板チョコレート960個分ぐらいかな?」

「板チョコ――あっはっはっは!」

「ちょっとウケる〜!」

「……発想力豊かすぎるだろ」


 サラの斜め上過ぎる回答に、アンズも、ケイも、ニコもツッコミを入れる。


 その中で、俺は無言でありながらも、穏やかな時間を楽しむことにした。


(あぁ、これが青春かぁ……)


 だが、次の瞬間――。


 バンッ!


 勢いよく部室のドアを開けた理事長がドカドカと中に入ってきた。


 部屋の空気が一変する。


「アダム・クローナルはいるかァア?」


 やれやれ。俺たちが青春をエンジョイしている時に部室へやってくるとは、空気が読めない理事長先生だ……。

 

「なんすか?」

「君……研究施設用のプールを爆発させたんだろう? 校長が規則違()()て、退()()処分対象に()ると言ってるぞ?」


 早口すぎて、よく聞き取れなかった。

 

 いや、聞きたくない用語があったような。

 

「えっ。なんて? ハンシン(阪神)タイガースですか?」

「なんだ、その名前は――?! もう一度言う! 退()()だ!」

「なっ!」


 全員、稲妻のような衝撃が走った。

 

(何を言っているんだ?! 退学したら、王位戦に出られないし、学歴もなくなるっ……!)


「取り消してください!」


 思いっきり、俺は睨みつける。

 

「アダム、怖い顔をするな! まずは保健室で私と作戦を立てるぞ!」

「えぇっ……」


 昨日、オウレン先生に怒られて、ただでさえ気まずいのに、今日も保健室に行くなんて。

 

(むしろ、女の子を助けた救世主の俺が、なんで退学にさせられるわけ……?)


 一難去ってまた一難である。

 

 どうなる――俺?!

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