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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【部活設立編】銭あり男はオプションありバイクの如し

【※速報?】研究者のOさんが久しぶりに登場します。

 俺は幸運だった――何故なら、あっさりと5人目の部員を集めることができたからだ。しかも、前世の自分の趣味に救われるとは思っていなかった。その運命的な一日を振り返りたいと思う。

 

 いつものように授業が終わり、お昼休みになった。日々の部員集めで疲れていたため、今日は珍しく、『気分転換したいから、放課後どこか遊びに行ってもいいなぁ〜』と思っていたところ、左隣に座っているサラが俺に話しかけてくれた。

 

「アダムさん! ぼくのお友達でバイクを買いたい子がいるんだ! 放課後、一緒にバイク屋へ行かない?」

()()()! 俺はまだ……年齢制限で乗れないけど、見に行きたい! てか……バイクって16歳からだけど? その友達って先輩?」


 久しぶりにバイクと聞き、前のめりになって話をするが、バイクに乗れるのは16歳からなのだ。俺は誕生月が2月だから、後10ヶ月ほどは乗れない。


 「ぼくのお友達は前の席に座っている子だよ! 彼は4月生まれで16歳になったんだ〜。ほら、挨拶して!」と言って、サラは目の前に座っている男子生徒の背中をトントンと両手でタッチする。彼は耳にイヤホンをしていたが、外して後ろを向く。


「ん? どうしたんだ、サラ?」


 そう言いながら、ガタイの良い彼はサラの机に肘をついて、ぼんやりとサラを見つめていた。


「ニコくん、バイク見に行きたいんでしょう? アダムさんは詳しいんだよ。聞いたら、一緒について来てくれるって。お互いお話ししたことないでしょ? ご挨拶(あいさつ)して〜」


 さすがサラだ。彼女は人見知りを全くしないから、いつの間にかたくさん友達ができている。彼女はすでにこの学校で、100人ぐらい友達がいるかもしれない。彼の方から名乗ってくれた。


「オレはニコ。よろしく」

「俺はアダム。よろしく、ニコ」


 お互いあまり(しゃべ)るタイプではないため、簡略的な自己紹介で終わったが、ニコの方から今日のことについてフォローしてくれた。


「そうだ、アダム。今日は貴重な時間をもらってすまないが、よろしく……」


 そう言って、彼はまたイヤホンを付けようとしていたが、サラは思いついたことがあったようで、俺の心配をしてくれた。


「アダムさんって、作ろうとしてる実験部の部員……全員(そろ)ったの?」


(うぅ……今日は忘れようと思っていたが、彼女はしっかり覚えていたようだ)

 

「ソロッテナイヨー」


 俺は顔を無にして、片言で正直に伝える。すると、サラが「実はニコくん、幽霊部員で入れる部活を探してるんだって」と、まるで猫のような表情でニコを見つめた。

 その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。このチャンスを逃すわけにはいかない――。

 気がつけば、入部届の紙を手にニコへ差し出していた。


「ニコ! 今日、俺がちゃんとバイクのアドバイスをする。だから、幽霊部員でもいい……部活に入ってくれないか?」


 我ながら、かなり強引だ。だが、これが俺の精一杯だ。コミュ障な俺には、これ以上うまい言い方なんてできない。ダメ元で聞くしかない。


 「いいよ……その部活にサラもいるのか?」とニコは彼女の方を見ている。


(驚いた。いつの間にか、ニコはサラとかなり仲良くなっていたようだ……)


 「ぼくも入るよ! 兼部(かけもち)だけど」と、サラがニコの目をじーっと見つめる。どうやら彼女も、この機会を逃せば俺が王位戦に参加できなくなることを理解しているらしい。

 その視線に押されるように、ニコはふーっと息を吐き、覚悟を決めたように答えた。


「わかった、書くさ。人数が必要なんだろ?」


 「やったー!」とサラがすぐさま歓声を上げる。ニコは名前を記入し、入部届を俺に手渡してくれた。


 バイク屋でのアドバイスに付き合う条件で、入部してくれる――そんな良い取引が成立した。


 (良かった。なんやかんやで全員揃ったし、俺は本当にラッキーだ……サラがまるで幸運の女神様のように動いてくれたおかげだ)


 こうして俺は、実験部の最低人数である5人を集めることに成功し、その足で職員室に入部届を提出した。担任の先生から「新入生でここまで頑張るなんて偉いね」と褒められた。



 そして、待ちに待った放課後がやってきた。


 3人でバスに乗り、近くの街にあるバイク屋へ向かう。この辺りは以前、車やバスといった公共交通機関がまったく通っていなかったが、この5年で開発が進み、利用できるようになったらしい。この開発には、同じ研究取扱者けんきゅうとりあつかいしゃであるオオバコさんが関わっていると聞いた。

 

(あっ。オオバコさん、元気だろうか?)

 

 彼女のことをふと思い出しながらもバスの中で何気なく話をしていると、驚きの事実が明らかになった。ニコは、誕生日を迎えた数週間の間に、バイクの免許を取ったらしい。(うらや)ましい気持ちを抱きつつ、俺たちはお店の中へ入り、バイクを見て回る。

 サラは俺が倉庫で所有しているバイクこと愛称『ニンニン』以外に初めて他のバイクを見たのだろう。ワクワクしながら、「これ、かっこいい〜!」といろんな感想を俺たちに述べている。一方、ニコは冷静に「オレは性能重視だから、派手なのは要らない」と回答している。

 

「えー。でもさ、せっかく買うなら、ちょっと目立ってもいいんじゃない? こう、道を走ってたらみんなが振り返る感じとかかっこいいじゃないか!」


(面白いことを言っている。彼女の言い方はまるで、ニコがモテるように気を使っていそうである)


 彼女はデザイン性にこだわるタイプなのだろうが……俺も今回に関しては、ニコと同じ意見だ。

 

「サラ。それもいいことだけど、ニコの言う通り、メンテナンスのしやすさとかを考慮した方がいいかも」

「そうなんだ〜。あっ、気になるのあった?」


 ニコは店に入って、最初から気になっていたバイクがあったようだ。じーっとそのバイクを見つめている。

 

 すると、俺たち以外にも誰かが入店したようだ。俺は尚更驚く。


 何故(なぜ)ならやって来た人物は――オオバコさんだった。俺は彼女に気づいて、軽く会釈(えしゃく)するが、サラとニコは全く気づいていない。オオバコさんはニヤリと笑って、シーっと口に人差し指を当てている。そして、後ろからサラのことを思いっきりギュッと抱きしめた。


 「ひゃあ!」と悲鳴が響く。その声に俺だけでなく、ニコと店員さんも驚いてきた。オオバコさんは爆笑しながら、サラの顔を(のぞ)き込んで、話しかけている。

 

「サラちゃんー! 久しぶり! 相変わらずかわいいね〜」

「オオバコお姉ちゃん! 久しぶりに会えて嬉しいよ! でも、いきなりのハグは恥ずかしいよぉ……」


 そうか。サラとオオバコさんはお(となり)さん同士だった時期もあって、顔見知りなのか。

 

「本当だ。照れてるねー!」と言いながら、オオバコさんはサラのほっぺたを人差し指でぽんっと当てている。

「うわー! もっちもち。何の化粧水を使ってるの?」とオオバコさん恒例(こうれい)の質問タイムが始まり、サラは丁寧に答えている。


 俺は彼女たちが会話で盛り上がっている間にニコが欲しいと思っているバイクの性能を確認し、値段も踏まえて、これがいいんじゃないかと提案する。値段について、ニコは「お金はいくらでも大丈夫だから、気にしていない」と言いはじめた。


(こいつ、ブルジョワか?)


 それにしても、どうやって親からバイクを買う許可をもらったのだろう? 気になった俺は、どんな理由で両親を説得したのか尋ねてみた。すると、まさかの答えが返ってきた。


「親に『第一王女を探すためにバイクが必要』って言ったら、あっさりオッケーもらえたよ」


 まるで、指名手配の犯人を探すぐらいのノリで言って、了承を得たってことか。すごい家族だな。それにふと疑問に思ったことを彼に聞いてみることにした。


「ニコは例の第一王女様が生きていると信じてるのか?」

「いや、だって15年前に行方不明なのだから、流石(さすが)に生きてないんじゃないか? 言い訳で使っただけ。でも『買っていい』って言われたから、買う。これにする」


 彼は即決(そっけつ)だった。迷いがない……。店員さんが在庫を確認したが、「あー。在庫ないんで、取り寄せときますね」とのことだった。

 ちょうど同じタイミングで、サラはオオバコさんと会話を終えたようだが、俺は突然オオバコさんに手首をギュッと握られてしまった。

 

「えっ? オオバコさん?!」


 予想外な行動に俺は珍しく声をあげる。


「サラちゃん! アダムを借りてもいい? 同じ研究者同士、話したいことがあるんだ」

「オオバコお姉ちゃん、りょーかい! アダムさん、ぼくとニコくんは先に帰っとくね! ごゆっくり〜」


 そう言って、サラたちはお店を出て行った。俺はオオバコさんと二人っきりになった。どこへ連れて行かれるのだろうか?

 

 オオバコさんはバイクに乗り、「アダム! 私の後ろに乗って! 行くよー!」と言いながら、俺にヘルメットを差し出す。


(二人乗りなんて……前世で妹と一緒に乗った時以来だな……)


 そんなことを考えていたら、いつの間にか中華屋に到着していた。

【余談:新キャラの名前の由来】

ニコ→ニコランジル(Nicorandil)から

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