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<第一部番外編>ザダ校合格発表 ※アンズちゃん視点

【※注意】アンズちゃん視点です。

 アダムが遠くに引っ越してから、5年後。

 15歳になった私はザダ校を受験した。アダムも受けていると信じて。

 

 アダムは頭がいいから、受かってそう。

 私はずっとC判定だったから、合格してるかどうかは半々ぐらい。

 

(正直、自信ないや……)

 

 でも、今日はその合格発表日。

 お母さんと一緒に、ザダ校の門をくぐって、体育館に入る。

 

 合格掲示板の前には、人だかりができていた。

 案内の先生から、「受けた本人だけが、掲示板の近くまで行けます」と声を掛けられる。


「お母さん……。一人で見に行くの、ちょっと怖いけど、行ってくるね」

「大丈夫よ、アンズなら受かってるわ。行っておいで」


 冬の冷たい空気。

 緊張で、ブルブル体が震えてしまう。

 

 だけど、私、ここまで頑張ってきた。


 覚悟を決めて、受験票を取り出す。

 私の番号は「73」。


 見るのが本当に怖い。

 震える手で、掲示板の番号を追っていく。

 

 68……69……71……72――そして。


 73。

 

「あった! 私の番号!」

 

(私、受かったんだ!)


「やったあああ!」


 腕を勢いよく上げて叫ぶ。

 その時、隣にいた子の手に当たってしまい、その子の受験票が私の足元に落ちた。


「あっ、ごめんなさい! つい嬉しくて……」


 慌てて拾い上げた受験票に、見覚えのある名前が記載されていた。


『アダム・クローナル』


「えっ……アダムの名前だ!」


 受験票を渡す前に、つい名前を言ってしまった。

 だって、アダムのフルネームだったから。

 

 けれど、目の前にいたのはアダムではなかった。


「大丈夫? 怪我してない?」

 

 青い瞳に、アダムと同じ黒髪。

 だけど、髪質は、アダムの天然パーマと違って、サラサラのストレート。

 色白で整った顔立ち。一言で表すと、白馬の王子様みたい。

 

 私は、彼の顔をじっくり見つめてしまった。

 それでも、彼は怒らず、むしろ、ほのぼのとした雰囲気で私を見つめていた。


「無事だよ! 怪我してない! むしろ、ごめんなさい。アダムのことを知ってるの?」

「謝らないで。試験、受かったんだよね? おめでとう。ぼくの名前はサラ。アダムさんとは友達で、お隣さんなんだ。ぼくたちも合格したよ。よろしくね」


 なんと、私が話した相手はアダムの“新しいお友達”だった。

 自己紹介をしていなかったことに気づき、私も笑顔で返す。


「あっ、私はアンズ。サラ、よろしくね!」

「よろしく! あぁ……君がアンズちゃんなんだね!」

「えっ! どうして、私の名前を知ってるの?」

「えっと……アダムさんは、アンズちゃんが書いた手紙を今も大切に持ってるよ」


 手紙――それは10歳の時、アダムと別れるのが寂しくて書いたもの。

 アダムが大切に持っていてくれてるなんて……嬉しすぎる!

 思わず、顔が真っ赤になってしまった。その上、サラから「すごく素敵だったよ〜」と笑顔で言われて、私は恥ずかしさでいっぱいになった。


「アダムさんもアンズちゃんに会いたいと思ってるよ。本当は今日、会えたら良かったんだけど……風邪を引いて、熱を出してしまったんだ。それで、ぼくがアダムさんの分も見てたんだよ。いやぁ、こんなに大勢いる中で、アンズちゃんに会えて良かったよ。また入学式で会おうね!」

「うん! ありがとう! また会おうねー!」


 サラにバイバイと手を振って別れた後、私はお母さんの元へ駆け寄った。


「お母さん、受かったよ!」

「アンズ、よく頑張ったわね!」


 お母さんが抱きしめてくれて、その温かさに、私は涙が溢れる。

 でも、嬉しかったから、すぐに泣き止んで、一緒に大喜びした。

 

「アダムも合格したんだって! アダムのお友達が教えてくれたの」と伝えると、「これからの学校生活、楽しみね」と笑ってくれた。

 

 その日の夜は、家族三人でステーキハウスへ。

 お父さんが「アンズ、よく頑張ったね。寮だから離れ離れになるのは寂しいけど……変な男には気をつけてね!」と涙顔になっていた。お母さんは「大丈夫、アダム様がいるから」とお父さんを励ましていた。


(アダム、大きくなったのかな? サラっていう子は、なんだか貴族っぽくて、上品だったかも。入学したら、どんな毎日になるんだろう。楽しみっ!)


 私はとにかく1日でも早くアダムたちに会いたくて、毎日カレンダーをめくりながら入学式の日を心待ちにしていた。

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