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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ

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【王位戦エントリー編】知らなければ良かった ※アダム→ケイ視点

※物語の中盤から、アダム視点からケイ視点に切り替わります。

「そういうことか。王位戦で勝ち進むためには、この『認識の齟齬』は必ず改善した方がいい……」

「あの……バロさん?」


 さっきから考えをまとめるようにブツブツと独り言を繰り返していたバロさんだったが、不意に、鋭い視線を俺に向けた。


「アダムくん。すまないが、その防護メガネを少し貸してもらえないかな?」

「あっ、これですか……」


 この防護メガネは、オオバコさんからいただいた大切なプレゼントだ。

 思わず手に力が入り、躊躇してしまう。


「大丈夫さ。制作者であるオオバコちゃんのところで改造して、従魔が見えるように調整してもらうよ。王位戦の1回戦までには間に合わせるからね」

「えぇっ、どうしてわかったんですか? このメガネがオオバコさんのお手製だって……」


 最初から全てお見通しだと言わんばかりの淀みない言葉に、俺は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。


「彼女は形から入るところがあるからね。以前会った時も『防護メガネは研究者のマストアイテムだよ!』と力説していたよ」

「そうですか。ところで――」


 俺は、もう一人の、消えたバロさんについて聞こうとした。


 だが、別の人物が入り口から現れた。


「アダム! お父さん! ご飯ができたよー!」


 アンズだ。

 

 しかし、彼女が次に取った行動に、俺は驚愕する。


「あっ、メンメンもそこにいたの〜?」


 アンズは笑顔でしゃがみ込み、俺には見えない()()を、愛おしそうに腕の中へ抱え込んだ。


「アンズ! 今、何を抱き上げたんだ?」

「この子? メンメンっていうんだよ!」

「メンメン……?」

「ほら、可愛いでしょう?」


 誇らしげに腕の中を覗かせるアンズ。

 だが、俺の目には、虚空を抱えているようにしか見えない。


(な、何が起きている……?!)


「アンズ。先にリビングへお行き。私とアダムくんも、片付けを終えたらすぐに向かうよ」

「はーい! 今日の晩御飯は唐揚げだよ! すぐに来てね?」


 バロさんの言うことを聞いたアンズは、俺には見えない「メンメン」を抱えながら、スリッパをパタパタさせて廊下へ消えてしまった。


「メンメンは、そのタブレットが示している通り『猫の従魔』だよ。従魔というのはね、一定以上の魔力を持つ者でないと視認できない。通常、()()には見えない存在なんだよ」

「ん? アンズは俺と同じ人間のはず……」

「そうだね。あの子は人間だけど、悪魔族である私の血を半分引いているからね。うっすらとだが、見えているらしい」

「へぇ、面白い話ですね。ちなみに、そのメンメンはどんな見た目なんですか?」


 どうしよう。晩御飯を食べないといけないのに、質問したいことが山ほどある。


「白猫だね。雰囲気は……そうだな。どこかアダムくんに似ているよ」

「尚更、気になりますね……」

「それは後日、お楽しみに。明日にはオオバコちゃんのところに郵送するから、預かるよ」

「わかりました。お願いします」


 俺は防護メガネを外し、バロさんに託した。

 そして、俺もバロさんと一緒にリビングへ向かい、アンズ一家と仲良く唐揚げを食べた。


(サラとニコも、どこかで修行しているのだろうか。そういえば、ケイは今頃、何してるんだ?)


 * * *


「ハックションヌッ! あれ、誰かアタシの噂でもしてるのかしら?」

 

 アタシは第4王女、ケイ・クマリー。

 授業が終わって少し仮眠を取ったアタシは、ちょうど目を覚まし、大きく背伸びをしたところだった。

 

「はぁーあ! アンズがいないと、話し相手がいなくて退屈しちゃうわね?」


 なんだか口寂しくなって冷蔵庫を開けたけれど、大好物のコーラはすっかり底を突いたところだった。


「あぁー……買いに行くしかないわね」


 残念ながら、学校内の自販機には、アタシのお気に入りの銘柄は置いていない。

 アタシは女子寮を飛び出し、徒歩十五分かけてお決まりのスーパーマーケットに向かった。

 

 店内に入ると、アタシは一直線に飲料コーナーへ突き進み、お目当てのコーラを見つけた。

 

 迷わず右手を伸ばした瞬間、隣にいた女性も同時に左手を伸ばしてきて、お互いの手が触れてしまった。

 

「あっ、失礼……」

「こちらこそ……って、ケイさん? どうしてここに」

「えっ?! げっ! キハダ理事長!」


 アタシは気まずくて、後ずさりした。


 だって、アンズから聞いたホルム先生の不穏な話について、真相を確かめに理事長室へ突撃したまでは良かったのだけれど……。


「ケイさん、ゲテモノ王子について調査したいとはよく言った。だが、君は第4王女様だ。これ以上、危険な目に遭わせるわけにもいかない。首を突っ込むのも許さない。外出も控えなさい」


 NO(ノー)の一点張りで、全然話を聞いてくれなかったんだもの。


「そんなに険しい顔をしなくても。もしかして、コーラを買いに?」

「えぇ、もちろん!」

「そうか。この銘柄、学校の自販機で取り扱ってないからなぁ……」

「じゃあ、アタシはこれで!」


(もう気まず過ぎ!)


 カゴにコーラを六本放り込み、逃げるようにレジに向かおうとしていたアタシを、キハダ理事長が片手を上げて制した。


「待って。そんなにたくさん重いものを持って歩くのは大変だろう?」

「大したことないです。歩くといっても、たった十五分ですし」

「私は車で来ているんだ。送るよ」

「へぇ……じゃあ……」


 アタシは、その申し出を受け入れた。

 さらに、「お食事もご一緒にしませんか?」と図々しく食い下がった。

 

 このままじゃいられない。

 

 アダムたちを傷つけたあの担任を、放っておくわけにはいかない。

 今日こそキハダ理事長から情報を引き出して、クマリー家の力で対策を練ってやるんだと、意気込んでいた。


 けれど、のちに、アタシは激しく後悔することになる。

 

 知らなければ良かった。

 あの時、送迎のお誘いも――断っておけば良かったとね。

<余談>

今回登場した、アダムには見えない猫の従魔「メンメン」

実はこの白猫の名前、ハッカなどの香り成分である【L-メントール】が由来になっています。

前回の話で「鏡像異性体」について触れましたが、L-メントールはその一種で、光を左に回転させる性質(左旋性=levo-rotatory)を持っています。

前回の鏡写しシーンで、メンメンが「左側」に立っていたのは、ここから来ています!


<ご挨拶>

「メンメンの名前の由来、そういうことか!」「キハダ理事長とのドライブ、不穏すぎる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークと、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけますと、大きな励みになります!


メンメン「にゃんにゃんにゃんにゃーん(またねー!)」

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