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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ

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【王位戦エントリー編】アダムさんの夢を絶対に叶えたいんだ!

 担任は生気のない表情で、オウレン先生に追い打ちをかける。


「そうだ、オウレン先生。貴女がキハダ理事長と……職務を超えた()()()()にあることも、併せて報告書に添えておきましょうか?」

「なっ……!?」

「嘘っ! オウレン先生とキハダ理事長が!?」


 この事実を知らなかったアンズは目を大きく見開いた。

 

 重苦しい沈黙の中で、担任は震えるオウレン先生の顔を無言で見つめ、次第に歪な笑みを浮かべていく。


「いやよっ……! やめて!」


 オウレン先生が苦悶の表情で拒絶しているというのに、担任は耳を貸そうとせず、なおも彼女を追い詰める。

 

「あぁ、可哀想に。キャリアも、家族も、すべて失うことになる。嫌なら、分かっていますね?」

「……うぅっ、分かった……わ。お願いします。なんでも、言うことを聞くから……」


 オウレン先生が屈辱で唇を噛み、一粒の涙をこぼした、その時。


 ――パリンッ!


 扉の反対側、保健室の大きな窓ガラスが派手な音を立てて砕け散った。

 その直後、不可視の魔法(見えない力)によって俺たちの体はふわりと浮き上がり、気づいた時には扉の前まで運ばれていた。


「はぁっ?! なんだとッ――!」


 ただ一人、窓際に残された担任が悪態を吐きながら飛び退く。

 

 舞い散るガラス片の中、音もなく着地したのは、木刀を手にし、カバンを肩にかけた小柄な男子生徒――サラだった。


「オーちゃん、大丈夫。ぼくたちが味方だよ。だから、もう泣かないで」


 鈴を転がすような声。

 だが、その柔らかさとは裏腹に、サラは鋭い眼光で、寸分の狂いもなく担任の肩に木刀の先を突きつけた。


「どうして、俺の結界を……!」


 担任が狼狽している隙に、サラはカバンから封がされた茶封筒を取り出した。


「ホルム先生、この封筒を受け取ってください!」

「なんだこれはぁ?」

「王位戦のエントリー書類です。ぼくが出ます! だから、オーちゃんたちのことは、他のみんなには内緒にしてください!」

「サラちゃん、ダメよ! 王位戦に出るなんて、絶対――!」


 泣きすがるオウレン先生の言葉を遮り、担任は嘲笑いながら、差し出された書類を受け取った。


「いい子だ。本人の意思なら大歓迎だよ。そうだ、もっと良いこと考えた……」


 担任がサラの襟元に手を伸ばそうとしたところで――結界が完全に霧散したのか、扉が勢いよく開いた。


「そこまでだよ、ホルム先生」


 よく通る声と共に現れたのは、キハダ理事長。

 そしてその横には、不敵な笑みを浮かべたケイの姿もあった。


「理事長……!? なぜここに」

「ホルム先生。君が『教師の善意』で動いているというのであれば、私も理事長として行動しよう。謹慎明け早々、保健医を脅し、生徒に不適切な接触を試みた君。それに引きかえ、王族とも繋がりがある私や優秀な医師、そして教え子たち。世間がどちらを信頼するか、言うまでもないだろう?」


 キハダ理事長がプレッシャーを与えながら、冷ややかに詰め寄る。

 さらにケイも追い打ちをかけた。


「ホルム先生、また審議会でもやるつもり? あんたの味方なんて一人もいないわ。()()()()()()

「くそっ……」


 絶対優位を失った担任は、手元の書類を握りしめ、顔を引きつらせた。


「はは、俺も心強いですよ。アダムとサラが揃って王位戦に参加してくれるんですから。では、調査の時間ですので、これで……」


 さっきまでの余裕はどこへやら。

 担任は気まずそうに視線を泳がせると、逃げるように保健室を後にした。

 

 完全に蚊帳の外に置かれていた俺だったが、奴の去り際の言葉に、頭から水を浴びたように呆然としていた。


(王位戦に、サラが参加する……)

 

 当の本人のサラに、なんと声をかければいいのか。

 言葉に詰まってしまった。


(彼女は本当に王位戦に出たいのか?)


 王位戦で、もし他の王子に彼女の正体がバレてしまったら――。


 その不安を敏感に感じ取っていたのは、俺以上にオウレン先生だった。


「サラちゃん、どうして? 王子様たちが貴女の正体を知ってしまえば……ぁあぁっ……!」


 大変だ。オウレン先生が泣き崩れてしまった。


 アンズが慌てて「ごめんなさい! 私、さっき傷つける発言をしました……」とキハダ理事長に頭を下げた。

 

「ん? アンズさん、詳しく話を聞かせてくれないか?」


 キハダ理事長は眉間に皺を寄せ、訝しげに問い返す。

 

「その、私は知らなかったんです! オウレン先生とキハダ理事長がお付き合いしていたことを!」


 あちゃー……。

 アンズが正直に、腹の中をぶちまけてしまった。


 一瞬、シーンと静まり返った保健室。

 

「そうなのッ?! お似合いね!」


 沈黙を破ったのはケイだった。

 笑顔でグーサインを理事長と先生に見せつける。

 なぜか、サラもケイに倣って、一緒にグーサインを出した。


「オーちゃん、ぼくは王位戦に出場する。自分の意思で決めたんだ!」

「サラちゃん……」


 オウレン先生は目を擦りながらも、サラの顔を愛おしそうに見つめる。


「アダムさんには、立派な夢がある。病気で困っている人々を助けるために研究所を設立する――壮大で素敵な夢。ぼくは、アダムさんの夢を絶対に叶えたいんだ!」


 目頭が熱くなる。

 彼女は、自分自身の安全よりも、俺の夢を優先させたというのか。

 

 でも……俺は元来ネガティブ思考なんだ。

 

「本当に、いいのか?」


 最後に、もう一度だけ確認した。


「うん。ぼくはこれまで、この剣術で自分の身を守ってきた。これ以上、大切な人たちが傷つくのは嫌なんだ。だから、今度はぼくが自分の手で守り抜く。みんなのことも……」


 悲壮な決意。

 

 それでも、彼女は迷いなく、前を向いていた。

 

 こうして、予想外な形で、俺は最高の仲間を手に入れた。

【お知らせとお礼】

最後までお読みいただきありがとうございます。


本作は、Nolaノベル様で日間総合1位、

さらにカクヨム様公式特集「異世界で科学無双」にも選出されました!

皆様のおかげです。本当にありがとうございます。


「続きが気になる!」と感じていただけましたら、ぜひブックマークと、

下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】へクリックして応援いただけますと幸いです。


皆様の一つひとつの反応が、執筆の大きな励みになります。

科学と運命、そして王位を巡る物語は、ここからが本番です。

これからの展開も、どうぞお楽しみくださいませ。

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