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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ

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【王位戦エントリー編】好きな人の前では女も度胸が必要よ! ※アンズ視点

【※注意】主人公アダムではなく、アンズちゃん視点です。

 お昼休み。

 ケイちゃんを半ば強引に誘った私は、学食でお昼ご飯を食べ終えたところだった。

 ケイちゃんも完食して、お茶をゴクっと飲み干すと、不敵な笑みを浮かべて口を開いた。


「アンズ、貴女どうしたの? アダムと何かあった?」


 ギクッ!

 

 誤魔化すこともできず、声を出す前に、全身がビクンと跳ねてしまった。

 そのあからさまな私の動揺を見て、ケイちゃんは大爆笑している。


「あっはっは! わかりやすいわね! 何か言われたの? アタシが後で、アダムに注意しとくわよ。どうやって問い詰めてやろうかしら?」

「ケイちゃん、違うの! アダムはいつも優しいし、今日も励ましてくれて……」

「そうなの?! じゃあ、なんでお昼休みになった途端、アタシを無理やり連れ出したの?」

「それは……」


 どこから話そうか、私は悩んだ。


(アダムのご両親の話、ケイちゃんは知らないだろうし。うん、ここは、私が一番気になってることを正直に話そう!)


「アダムが……結婚に関する本を読んでたの」

「あらっ! あの研究オタクのアダムが結婚に興味を持つなんて!」


 ケイちゃんはニヤニヤしていたけれど、私の浮かない顔を見て察したのか、私の右手をぎゅっと握りしめた。


「ケイちゃん?!」

「なるほどね! なんとなくわかったわ。そういう本を読んでいただけで、何も言ってなかったんでしょ?」

「うん……。少子なんとかっていう、よくわからない研究の話をしていたの!」

「へぇ。いかにも、あの研究オタクが言いそうな小難しい理屈ね。むしろ、その発言から答えが出たわ!」


 ケイちゃんは一度咳払いをしてから、ドヤ顔で結論を告げた。


「結婚に関する本を読む=誰かと結婚したい、とは限らないわ。アダムのことだから、気になったらとことん突き詰めないと気が済まないタイプでしょ?」

「えっ?! それって、つまり?」

「要するに、研究を進める過程で『結婚』っていう言葉がたまたま引っかかっただけよ。アダムは研究に夢中で、他のことなど眼中にないわ」

「でも、私が本を覗こうとしたら、物凄い勢いで隠したんだよ! 絶対に何かあるって!」


 つい大声で叫んでしまい、他の生徒たちの視線を集めてしまった。

 

(うわぁあああ! 私ったら、非常識なことしちゃった!)


 慌てて両手で顔を覆い、赤くなった顔を隠す。

 すると、周りの男子生徒たちが「あ、アンズちゃん気にしないで!」「大丈夫! その元気な声が聞けるだけで俺たちは幸せだから!」なんて、お馴染みの過保護なフォローを投げかけてきた。


「アンズ、貴女本当にモテモテね〜!」

「待って! 今はそれどころじゃないの!」


 ケイちゃんに茶化された私はヒヤヒヤしながら必死に首を振る。

 それでも、ケイちゃんは楽しそうにニヤリと笑ったままだった。


「でもさぁ……アダムが一番、熱心に応援してたのは誰だと思う?」

「え? サラじゃないの?」


 サラはアダムの幼馴染で、十歳の頃からずっと隣にいるって聞いていた。

 だから、この答えしか思い浮かばなかった。

 

 だけど、ケイちゃんは呆れたように首を横に振る。

 

「違うわ。あの子にとってアダムはお兄さんみたいなものよ。ほら、思い出しなさい? 貴女が歌っている時や困っている時に、いつも一番近くで支えてくれていたのは誰?」

「アダムが、隣にいてくれた……」

「そうでしょう。そこで、アタシにいい考えがあるわ!」


 ケイちゃんは満足げに腕を組み、いかにも自信満々な表情で話を続けた。


「悩んでる暇があるなら、今日の放課後にアダムを誘って、二人でお茶でもしなさいな」

「無理だよ! 今日はバイトがあるもん!」

「なら、明日は?」

「明日はお休みだけど……」

「それなら、明日の放課後に誘いなさい!」

「ちょっとタンマ! 私から誘うのは、デートのお願いをしているみたいで、恥ずかしすぎるよー!」


 急いで会話を止めようとしたけれど――。


「恥ずかしくないわ!」

「へっ?!」

「今すぐ告白しなさいとは言ってないわよ?!」


 ケイちゃんの勢いに圧倒された。

 まさに王女様らしい、有無を言わせない威圧感があった。

 

 その圧をひしひしと感じていたら、しまいにはケイちゃんが力説し始めた。


「考えるよりも、まずは行動! 男は度胸、女は愛嬌なんて言うけれど、好きな人の前では女も度胸が必要よ!」

「うん……」

「それに、アンズ。あのアダムが、誰かを傷つけるような王子様だと思う?」

「違う! アダムは絶対にそんな酷いことをしないもの!」


 どうしてなんだろう。

 アダムを否定されたわけでもないのに、自分でも驚くほどの勢いで、私は即答していた。


「でしょ! だったら、勝手に一人で不安になって、自分自身の価値を下げるような真似はやめなさい」

「ごめんなさい……」

 

 あまりにも正論すぎて、私は身を縮めて謝ることしかできなかった。

 しおしおと頭を下げようとした私を、ケイちゃんの鋭い視線が制した。


「謝っちゃダメ。大丈夫よ、貴女はモテモテだから、必ず幸せになれるわよ」

「そこなの?!」

「アタシ、羨ましいわ。貴女は好きな人と結婚できるだろうから」

「えっ?」

 

 ケイちゃん自身、あまり顔に出るタイプではないし、いつもは自信に満ちあふれているはずなのに、どこか遠い目をしていた。


(何か事情があるのかな?)


 今の私には、その詳細を聞く勇気はなかった。

 

 だから、私たちはそのまま、仲良く並んで教室に向かった。


 教室に戻ると、アダムがサラと一緒に話し込んでいたけれど、サラの顔色があまり良くなさそうだった。


(あれ。何かあったの?)

 

 みんなのことが心配で、心にさざ波が立つ。

 けれど、今の私はそれ以上に、明日の放課後のことで頭がいっぱいだった。


 この時の私は知らなかった。

 

 いや、知りたくなかった。

 

 明日が、私たちの運命を大きく変える日になるなんて――。

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