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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ

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【王位戦エントリー編】結婚って、しないといけないものなのかな?

「アンズ、違うんだ。これは、将来の少子高齢化の研究で!」


 慌てて言い訳をした直後、俺は自分の失言を即座に後悔した。


(しまった……少子高齢化は、前の世界の概念だ。俺としたことが、うっかり口が滑った!)


 だが、幸いにもアンズは「アダムって、本当に勉強熱心なんだね!」とどこか引きつった笑顔で俺の顔を覗き込み、すぐさま栞を指差した。


「それよりさ! そのウサギの栞、かわいいね。サラが喜びそう!」

「今日、サラに渡そうと思っていたんだ」

「最高のアイデアだね! じゃあ、教室に行こ?」

「あぁ……」


 アンズが空元気に振る舞っているのが気になったものの、そのまま一緒に移動し、午前中の授業を受け終えた。


 昼休み。

 俺は左隣のサラに声を掛け、一緒に食事をすることにした。

 栞を渡すなら、早い方がいいと思ったからだ。

 右隣のケイも「アタシも一緒にしようかしら?」と身を乗り出したが、アンズが「ケイちゃん、学食に行こうよー!」と強引に誘って、そそくさと連れ去ってしまった。


 俺の昼食はサラダチキンにゆで卵、そしてバナナ。

 例の筋肉至上主義者――ダンさんに叩き込まれた、徹底した高タンパクメニューだ。


「すごい。ダン先輩と同じ筋トレご飯だね」


 サラはそう言って、ウサギのイラストが描かれた弁当箱を開けた。


「いや、サラのメニューも俺と大差ない気がする……」

「あっ! 言われてみれば、えへへ……」


 サラは楽しそうに笑いながら、玉子入りの照り焼きチキンサンドイッチをもぐもぐと食べ進めた。


(本当に、ウサギみたいに食べるな。よし、食べ終わったら栞の話をしよう)


 二人で他愛のない会話をしながら、食事を終えた。

 そこで、俺は本を取り出し、挟んでいた栞をサラの前に差し出した。


「実はこれ、サラが好きそうだと思って持ってきたんだ」

「えっ! ウサギさんの栞? かわいいね!」


 サラは目を輝かせ、吸い込まれるように栞を見つめた。

 だが、何か気掛かりがあったようで、首を傾げる。


「アダムさん。この栞、珍しいね。初めて見るデザインかも」

「そうか?」

「うん。だって、この黒いウサギさん、耳とお腹に白いダイヤの模様が描かれてるよ?」


 彼女の言う通りだ。そのウサギは、単なるイラストというより、どこか魂が込められているような実在感があった。特に耳とお腹のダイヤマークは、刻印のように白く浮かび上がっていた。


「本当だ。凝ってるなぁ……」

「目を閉じて寝ているみたいで、かわいい。この栞、どこで見つけたの?」

「園芸部の部室で見つけたんだ。シアンさんに教わった場所で」

「えっ……シアンさん……?」


 サラがぴたりと止まった。

 いや、彼女の全身から生気が抜けて、彫像のように凍りついた、といったほうが正しい。


(サラはシアンさんと面識はなかったはずだ。いや、それにしても、この反応は異常だぞ?)

 

「あぁ。俺と同じ研究取扱者で、この学校の卒業生なんだ」

「そっか……」


 サラは栞から視線を離せないまま、消え入るような声を出した。その瞳は微かに潤み、細かく震えていた。


「どうした? 気に入らなかったか?」

「だ、大丈夫だよ! 見せてくれてありがとう」


 サラは弱々しい笑みを浮かべる。

 そのまま、震える指先で栞を俺に押し戻すと、逃げるように視線を逸らし、机の上に置かれた本を指差した。


「それより、その本の内容、ぼくも気になっているんだ……」


 予想外だった。

 サラは栞よりも、俺が読んでいた本――『不老不死と結婚観について』に関心を示していた。

 その上、彼女は俺に意表を突く問いを投げかけた。


「ねぇ、アダムさん。結婚って、しないといけないものなのかな?」

「あぁー、まだそこまで読み進めてなくて……」


 なんと答えれば良いのか、返答に詰まってしまった。


 前世の俺は、結婚という選択肢に触れることなく、命を落としてしまった。

 だからこそ、サラの問いの真意がどこにあるのか、必死に思考を巡らせる。


 サラは貴族のお嬢様だ。政略結婚の話がいつ出てもおかしくない立場だろう。今の彼女は男装して「男子生徒」として過ごしているが、それは本来の運命から目を逸らしていられる、わずかな猶予なのかもしれない。

 

(そういえば、どうして彼女はあんなウェディングドレス姿の写真を撮ったんだ?)


 婚約者はいないけれど、いずれは誰かと結婚しなければならない運命が、彼女を縛っているのだろうか。

 

「どうしたの、アダムさん?」


 目の前で手を振られ、我に返った。


「あ、ごめん。なかなか良い答えが出なくて」

「ぼくもごめん、変なことを聞いちゃって。あのさ、アダムさんが読み終わったら、ぼくもその本を読んでみたいかも」

「もちろん構わないけど、終わってからでいいのか?」

「うん。ちゃんと、自分で考えてみる」

「わかった。あの……」


 この後、「もしよければ、先に【第5章|結婚しないという選択】の部分を読んでみないか?」と言いたかったが、昼休み終了のチャイムが鳴ってしまった。


 放課後。

 もう一度サラと話そうとしたが、俺たちの前に双子が現れた。


「お疲れ様ー!」

「アダム、サラちゃん! 剣術部の筋トレ鍛錬、一緒に行く?」

「あぁ、行くよ。サラは?」


 隣に座っていたサラを促したが、彼女の顔色は昼間よりさらに悪くなっていた。


「ごめんね……今日は休もうかな。ちょっと気分が優れなくて……」


 双子もその異変に気づいたようだ。


「サラちゃん、無理しないでね」

「お大事に! 部長には俺たちが伝えておくよ!」

「ありがとう。じゃあ、みんな、頑張って」


 サラは逃げるように教室を去っていった。

 

 残された俺は、双子と共に部室へ向かう。

 手にした本には、あの「眠るウサギ」の栞が挟まったままだった。


(この栞に、何か意味があるのか……?)

【※ご挨拶】

あけましておめでとうございます。


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次回は【アンズちゃん視点】のエピソードを予定しています。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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