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【謎解き解明編】青天の霹靂〜美少年は男装少女〜

【※注意】生理症状表現あり

 やはりパソコンは文明の武器だなぁ……。

 

 前世ではデータ処理や論文作成で毎日使っていたが、この世界ではパソコンを見る機会すらなかったため、そう思わざるを得なかった。自分が知りたいことを調べるとすぐ出てくる。

 

「人間とそれ以外の種族で、寿命が違うのか……?」

「うん。ここに書いてあるね。人間は80歳ぐらいで、エルフとか他の人たちは200歳前後なんだって」

「へぇー、そうなのか。あっ、これ気になってたけど、出てきたな。なんで毎回、魔法の言葉を言わないといけないんだろうと思ってたんだ。『人間は魔法を使用する際、道具を持って口頭で言わなければなりません』と書いてある。他の種族は言わなくてもできるってこと? なんか人間に不利な社会だなぁ〜」

「それ、ぼくも思ってた。不便だよね。そうだ、さっきの話に戻るんだけど寿命が違うってことはさ。人間のおじさんはエルフであるオーちゃんの年齢と比べて……半分も生きられないってことだよね。悲しいよ……」


 ネットサーフィンに夢中だった俺だが、ふと考えてみる。確かにサラの言う通りだ。寿命差があるから、エルフ側は一人になる期間が長いってことか。(コク)な話だ。でも、ニボルさんのご両親はエルフと人間で違う種族だから、そういう問題も考えた上で覚悟を決めて結婚したってことになるよな?


 そうか、この世界では女性が少ないってこともあって……どんな種族であっても好きな人と結婚できれば幸せなのかもしれない。


(まぁ、俺んちは両方人間で仲が悪いけど、俺が離れて仲良くなったのかね? どうでもいいけど……)


「そうだ、気になったことがある。確かこの国って圧倒的に女性が少ないんだろう? 図書館で読んだことがあって……それは人間やエルフ以外の種族でも当てはまるんだよな?」

「そうだよ! この世界では、女性が圧倒的に少ないから男性は必死なんだって。結婚相手になってほしいという理由で女の子が誘拐されちゃったりすることもあるらしいよ、怖い世の中だよね……。そうだ! ぼくちょっとお手洗いに行ってくるね」


 そう言いながら、サラはそそくさとトイレに向かって行った。


(誘拐といえば、アンズが被害に遭ったもんな……この世界の女の子は大変だなぁ)


 アンズとのエピソードを思い出しつつ、ずっとパソコンにつきっきりだったため、目が疲れてしまった。一旦電源を落として、水分補給をしに冷蔵庫まで移動する。ニボルさんがオレンジジュースを買ってきてくれたみたいで、二人分取り出そうとしたところ、「うわあああ!」と大きな悲鳴が家中に響き渡る。俺は慌てて、声がしたトイレの方に向かう。


「どうした?」


 俺はトイレの外のドアから、サラに声をかける。

 

「ぼく、死んじゃうの? 股から血が止まらない。どうしよう……?」

「え……」

 

 これは驚いた……彼いや、彼女は女の子だったのか。聞きたいことが山ほどあるけど、まず冷静にこの場を対処しなければならない。

 

「サラ、落ち着いて。えっと……それは生理(せいり)だ、死ぬことはない。()()っていう言葉を聞いたことはあるか?」

「名前は……なんとなく。ぼく、どうしたらいいんだろう? もしかして……一生ここから出られない?」


 この状況――前世で妹が初経を迎えた時を想い出す。あの時は自分自身も女性であったため、生理について説明できたし、すぐに生理用品を渡せた。だが、今の俺は男だ。かと言って、このままパニックになっている彼女を見過ごすわけにはいかない。俺は……手伝えることをするのみ。眼鏡の両端を(つま)んで、叫んだ。


「女神様、生理用ナプキンとパンツを――!」

「えっ、急にパンツ?! なんでー?」

 

 ちょっと恥ずかしかったけど、言い切った。サラはパンツの話が出てきてドア越しで驚きつつ高い声をあげていた。眼鏡が光った後、すぐ俺の目の前に1パック分の生理用ナプキンと数枚のパンツが現れた。しかも、頼んでないけど、銀色のビニール袋も付いてきた――圧倒的大サービスだ。すごい……女神様は女性の味方なのだろうか。


(あっ。感心してる場合じゃない、当本人が困ってるから早く渡そう……)


「サラ! 俺が中に入るわけにはいかないから、ドアの近くに必需品を置いておく。そのパンツにナプキンを貼るんだ。パックに使い方が書いてあるから、読めばわかると思う……。それができたら、トイレから出て大丈夫。詳しいことはニボルさんに聞かないで、オウレン先生に聞けばちゃんと答えてくれるから」

「わかった! ぼく、頑張る!」

「俺はリビングにいるから、焦らなくていい。ゆっくりな」


 俺は一通りの説明をしてから、その場を去りつつ考えてみた。サラ本人から性別を聞いたことはなかったが、一人称が「ぼく」と言ってたこともあり完全に男の子だと思っていた。なぜなら、彼女の髪型はショートヘアで、服装は長袖のラグランTシャツにカーゴパンツといかにも少年にしか見えない男の子の恰好をしていたからだ。

 しかし、うさぎのぬいぐるみが好きってところはまさに女の子らしいし、ニボルさんは「サラちゃん」と呼んでいた。何かしらの事情があって、男の子として生きているのだろうか。


(なるほど。男にしてはかわいい顔や性格をしているとは思っていたけど、女の子ならば納得出来るな……。『男装の麗人』ってやつか、実在するんだ……異世界すごっ)


 次々と気になることが増えるアダムであった。

【とある女神界】

???「またアダムくんから依頼が来たわぁ〜。例の実験関連の試薬かしら? 相変わらず、研究オタクだね〜」


そう愚痴を漏らしながら、タブレットを見て、依頼を確認する。

すると、『生理用ナプキンとパンツ』と書かれていた。


???「えっ、もしかして誰か生理が来たのかしら? 今のアダムくんは10歳かぁ。じゃあ一緒にいるのは、私の娘と同い年ぐらいの女の子かもね。よし、決めた! 私は一応、王妃をやってたからね。女性の味方なのよ、大サービスしましょう! 捨てる用の袋も私が差し入れで出しとこう〜」


彼女はそう言いながら、かつてアダムが住んでいた人間界から依頼商品である生理用ナプキンとパンツを迅速に取り寄せる。

そして、その依頼商品に銀色のビニール袋を一緒に入れてから、アダムのいる異世界へ送るのであった。

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