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屋敷の外れの祠にて

かなり急展開です


 朝ごはんを終えて、私はアリアちゃんを連れられて庭に来ていた。アリアちゃんは私に見せたいものがあるらしく、庭の隅に私を案内した。


「昨日ここから外に出られる抜け道を見つけたんです。」


「抜け道?」


「はい、ほらここに。」


アリアちゃんは私の手を引くと生垣の小さな穴を見せて来た。


「この大きさなら私達が潜れると思うんです。」


「それは分かったけど、急にどうしたんですか。」


私はしきりに穴を潜ろうとするアリアちゃんに言った。


「たまには外で遊びませんか。ここにいても嫌な思いをするだけなので。」


アリアちゃんはカルタさんの事を思い浮かべているのだろうとても悲しそうな顔をした。私もそこそこ強い魔法を使えるようなのでスライムあたりが出たら対処できるだろうとぼんやりと考えてアリアちゃんに頷いた。


「分かりました。でも、あまり遠くに行かないようにしましょう。流石に貴族の子供が外に出歩いているなんて知れたら面倒なので。」


「ありがとうございます。私が先に行きますね。」


アリアちゃんは嬉しそうにそう言うとしゃがんで生垣の中を潜って行った。


 私もその後に続いて生垣をくぐると深い森の中に出た。


「アリアちゃん、はぐれないように手を繋ぎましょう。」


「はい、お姉様。」


私はアリアちゃんの小さな手を握ると森の中を探索し始めた。


「森ばかりですね。村とかは近くにないのかな。」


「この屋敷は近くの村から随分離れた場所にあります。馬車で来た時、二日ぐらい乗ってました。」


「そうなんですね。」


私は屋敷の外の世界を全く知らないでいたので、この場所が隔離された場所にあるなんて思わなかった。そう考えると私がここにいるのは父親に厄介払いされていたからではないかと勘くぐってしまう。


「お姉様、大丈夫?」


「大丈夫です。」


私はアリアちゃんと森の中を散策していると古ぼけた祠を見つけた。何か曰くありげのその祠には読めはしないが、勇者の剣っぽいレリーフが刻まれていた。


「何でしょうか、お姉様。」


アリアちゃんは物珍しそうに祠を観察していたが、ふと、扉に手が触れると扉は1人でに開いてアリアちゃんを扉の中へ吸い込まれて行った。


「アリアちゃん。」


私は急いで彼女の後を追い、祠の中に入ると中は明かり一つないのに妙に明るく神聖な雰囲気が漂っていた。


「お姉様。」


アリアちゃんは中に入って来た私に奥にある祭壇らしき場所を指差した。そこは1番明るい場所で何やら剣が地面に刺さっていた。


「あれって、もしかして勇者の剣的なやつか。」


「勇者の剣?」


「本にね、世界を救う本物の勇者が扱う事を許される勇者の剣があるんですって。それは、聖獣が守る祠にあって今でも勇者が来るのを待っているって書いてありました。」


屋敷をこっそり抜け出して見つけた祠でまさかの勇者の剣発見とは夢にも思わなかった。そうすると剣を抜けたら本物の勇者になれたいするのだろうか。


「ちょっと、試してみるか。」


私は勇者というワードに子供心くすぐられると祭壇に近づいて青い剣の柄を引っ張ってみる。だが、子供の力だからだろうか全くびくともしない。


「お姉様、何をされているのですか。」


「剣を抜こうと思って。」


私は全体重をかけて引っこ抜こうとしたが、ついにひっくり返しってしまった。


「お姉様。怪我はないですか。」


「大丈夫です。服が汚れただけです。」


私は軽く汚れを払って言った。


「やっぱり、私じゃダメですね。」


「そんな事ないです。お姉様はあんなものなくても強いし素敵なお姉様です。私はお姉様の事が大好きです。」


アリアちゃんは必死に剣が抜けなかった私を思いつく限り慰めてくれた。私はそこまで落ち込んではいないんだがなと思いながら聞いているとふとある事を思い付く。


「せっかくだから、アリアちゃんもあの剣抜いてみたらどうですか。」


「私がですか?」


「最初にこの場所を見つけたのはアリアちゃんだから、何か引き寄せられて来たのかもしれないですよ。それに抜けなくても記念だと思ってやってみて下さい。」


私はアリアちゃんの背中を押して剣の前に立たせた。


「私がやってもいいのですか。」


「いいんです。ほら手に持って。」


アリアちゃんの手に剣を握らせるとアリアちゃんは覚悟を決めたような目つきで握った手に力を入れて見事に剣を抜いてしまった。


「お姉様、抜けました。」


アリアちゃんは私に抜けた剣を見せた。


「すごい、本当に抜けた。アリアちゃんは世界を救う勇者なんですね。」


「私が勇者。」


「アリアちゃん魔法の覚えもいいし、剣術も覚えたらきっともっと強くなります。私、アリアちゃんの事を応援します。」


私は目の前で勇者誕生の瞬間を目撃して興奮していた。私の妹は勇者だ。私はこの事実に呆然としているアリアちゃん以上に浮かれていた。

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