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私の新しい家族

よろしくお願いします

 私の知るドラクエ魔法の半分を披露し終えるとライオスさんは屋敷を後にした。


 屋敷は私の放ったメラゾーマのおかげで応接間と隣の2つの部屋が使い物にならなくなった。カルタさんも他の使用人と思わしき人達も驚いてはいたが、怒られはしなかった。むしろ、みんな私の身を心配してくれて胸が熱くなる気がした。


「アンナ様は大奥様と同じく魔法の才がおありですね。」


私の魔法を見て誰よりも喜んだのはカルタさんだった。私がベッドに潜ってもテンションが上がっているカルタさんは私のおばあちゃんに当たる人についてたくさん話してくれた。


「大奥様は非常に優秀な魔法使いでいらっしゃって、一時期は王様の魔法の指南役をされていたのですよ。御心も美しい方で得体の知れない私をこの屋敷に迎え入れて下さいました。」


「そんなすごい人なんですね。今はどこにいるんですか?」


この屋敷には私以外、使用人の人達だけで家族はどこにもいない。その大奥様も家族と暮らしているのだろうか。


「大奥様はアンナ様が一歳にも満たない時分にお亡くなりになられました。」


カルタさんは表情を暗くして言った。


「すいません。」


「いいのですよ。アンナ様には大奥様のお話をした事がありませんでしたね。日を改めてアンナ様のお祖母様の大奥様についてお話ししましょう。」


そう言うとカルタさんは私に布団を被せると明かりを消し始めた。


「アンナ様、おやすみなさい。」


カルタさんは全ての明かりを消し終えると静かに部屋から出て行った。


 私が黒髪美少女になって2ヶ月が過ぎて、カルチャーショックを受ける事は度々あるものの生活に慣れてきた。何より、屋敷の人達はみんな私に優しくて心細い私の唯一の救いになっている。おまけに昨日、私の魔法の先生になる筈だったライオスさんがやって来て私の能力値の結果を持って来た。結果は大賢者級というどえらい結果で隣で聞いていたカラスさんは自分の事のように喜んでいた。その日の夕食はお祝いで誕生日並みに豪華だった。


 こんな至れり尽くせりな生活、元の私の生活とは月とスッポンだ。だが、もし元の生活になるか分かったものではない。私は浮かれそうになるとそう自分に言い聞かせて日々を過ごしていた。


 昨日のお祝いムードが抜けないまま次の日となったが、今朝はいつもと調子が違っていた。


「どうしたんだろ。」


いつも起こしに来るカルタさんとメイドさんが時間になっても来なくて私はものすごい不安感に苛まれる。この生活を始めて誰かに恨まれる事や嫌われる事をした覚えはないが、今までの生活は夢の夢で本当はみんなから嫌われているのではないかと考え出した。


 私は恐ろしくなりクローゼットから服を出して着替えると部屋を飛び出した。


 応接間は使えないので一階の客間に数人の使用人達が扉の隙間から中の様子を見ている。


「何かあったんですか。」


私はメイドのお姉さんの服を引っ張った。


「ア、アンナ様。どうしてここに。」


お姉さんはびっくりして私の方に向くとしゃがみ込んだ。


「目が覚めても誰も来なかったから。」


「申し訳ございません。実は。」


歯切れが悪そうに視線を逸らす。


 現状を飲み込めない私はメイドのお姉さんと同じように扉の隙間から部屋の様子を見てみる事にした。


 部屋の中には険しい顔をしたカルタさんが貴族のような出立ちの男の人と対照的にみずほらしい服を着た白髪の女の子と向かい合っていた。


「あの人は、誰ですか。」


「あちらは。」


その時、男の人が扉の方へやって来た。


 部屋から出て私の方を見ると男の人は何も答えず会釈をして行ってしまう。カルタさんもその後を追い部屋から出て行くと残されたのは連れて来られた女の子だけである。


 使用人の人達は部屋の外から女の子を見るだけで何もしようとしない。先程の状態からしてあの女の子はあまり歓迎されない存在なのだろう。私も特にする事もないだろうが、あの女の子の心細そうな姿に心を動かされて部屋に入ると声をかけてみる事にした。


「こんにちは。」


私が彼女に挨拶をすると女の子は驚いたように私を見ると「こんにちは」と小さな声で返して来た。


「私はアンナって言います。あなたのお名前は何ですか。」


「アリア。」


アリアはオドオドしたように青い瞳に涙を滲ませながら言った。


 私はアリアの隣に座って話をしようとすると見送りを終えたカルタさんが部屋に戻って来た。


「何をしている。」


怖い形相のカルタさんが走って私を抱きしめると震えているアリアを睨みつけ出した。


「アンナ様に指一本触れてみなさい。あなたを八つ裂きにします。」


「待って。アリアちゃんは何もしてないです。私が勝手に話しかけたんです。」


私は必死にカルタさんを説得するとカルタさんは渋々私を下ろした。


「ごめんなさい。怖がらせちゃいましたね。」


私はアリアちゃんに頭を下げた。

 

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