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始まりの日

よろしくお願いします。

 私、井ノ原理恵子は目が覚めると巨大なベッドに横たわっていた。全く見に覚えのない寝巻きにベッド、これはどう言う事なのだろうか。


「アンナ様、おはようございます。」


私が困惑していると白髪の執事姿の男の人が部屋の中に入って来た。


「お、おはようございます。えっと、ここはどこですか。」


「ちゃんと1人で起きれたと思いましたが、お寝ぼけですね。ここはリーザン国のカラス邸です。あなたはご息女のアンナ様です。」


男の人は私の調子に合わせて言った。


「そうすると、あなたは?」


「私は執事のカルタです。お遊びはここまでにして、身支度をいたしましょう。今日は魔法の先生がいらっしゃいますので、しっかりして下さいね。」


カルタさんと言う人は優しく私に言うと一緒に来ていたメイド服を着たお姉さんに任せて部屋から出て行ってしまった。


 メイドさんにあれやこれやされていく中で、私は自身の姿を鏡で見て絶叫してしまう。


 ボサボサ頭のフリーターの姿はどこにもなく、目の前には黒髪の可愛らしい女の子が驚いた顔をして鏡の中から私を見ていた。


「お嬢様、どうされましたか。」


メイドのお姉さんが心配そうに私を見る。


「だ、大丈夫です。」


私は声が裏返りながらも返した。


 フランス人形かと思うくらいフリフリのワンピースに着替えられると大きなテーブルとたくさんの椅子のある食堂と思われる場所でこれまた豪華な朝食をいただいた。


「先程大声を出されていましたが、どうされましたか。」

「いえ、何も。」


流石に三十路のフリーターが目が覚めたらおとぎ話の女の子になっていて動揺しているなんて言えるわけもない。


「アンナ様はカラス家のご令嬢ですので、理由もなしに大声を出してはいけませんよ。」


「気を付けます。」


私は今まで食べた事のない位美味しいパンを口に入れた。あの世の食べ物はとても美味しいと言うが、私は死んだのだろうか。


「パンを持ったまま固まってますが、いかがされましたか。」


「いえ、朝ごはん美味しいなって。」


苦し紛れの言い訳を言うと黙々と用意された食事を平らげた。


 魔法の先生がやって来たのはお昼前であった。魔法の先生、つまり魔法使いなのだからかなりのおじいちゃんが来ると思ったが、やって来たのはまだ二十代半ばのお兄さんだった。


「お初にお目にかかります。私は王立魔法学園講師のライオスと申します。」


「アンナ・カルタと申します。」


「アンナさんは魔法を使うのが初めてと言う事ですので、最初に初級の魔法から始めたいと思います。」


そう言うとライオスさんはテーブルの上に小さな火の玉を出してみせた。


「アンナさん、早速ですが使ってみて下さい。」


「使う?」


私は思わず聞き返してしまった。

「大丈夫です。アンナさんには魔法の適性が備わっていますので、頭の中で火の玉を出すイメージを作ってテーブルの上に出して下さい。」


何言ってるんだこの人。私は半信半疑で普通の人間が火の玉なんて出せる訳無いじゃないかと思った。だが、私の後ろのカルタさんは「頑張れ」という視線を送るだけで打開は難しそうだ。私は腹を括ると竜王を倒す勢いでドラクエのメラゾーマを頭に浮かべた。すると目の前に巨大な火の玉が現れて目の前のライオスさんに放ってしまった。


「わぁぁ。」


ライオスさんは火の玉に飲まれてしまった。


「アンナ様、お怪我はありませんか。」


私を庇うように抱きしめるカルタさんは何が起きたか状況が掴めない私に言った。


「大丈夫です。でも。」


私はライオスさんが気になってライオスさんの方へ近づく。ライオスさんは即座にバリアのようなものを出して身を守ったようだが、かなりの大怪我を負った。


私は再びドラクエを思い浮かべてベホマを唱える。するとライオスさんの体は回復して火傷一つ無くなった。

「あの、大丈夫ですか。」


「ええ。あの、アンナさんは本当に魔法の勉強をされた事がないのですね。」


「間違いないです。アンナ様は魔法を見るのも今日が初めてです。」


答えられない私の代わりにカルタさんがいささか動揺しながら答える。


「アンナさん、もしよろしければ他に使える魔法がありましたら見せていただけませんか。今の攻撃魔法と回復魔法を見る限りだと僕に教えられるものは何一つないとは思うのですが、能力値を測る関係で必要なのです。」


カルタさんの方を見ると頷いているので、場所を変えて私の知るドラクエ魔法の全てをライオスさんに見せた。



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