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マタタビ戦記  作者: 海星
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 転生は良い。

 既に覚悟済みだ。

 「何で転生せにゃいかんのだ?」とは思ったが、死ぬ人だって「何で死ななきゃいかんのだ?」って理不尽を感じるだろうし運命ってのは常に理不尽なモノだ、と僕は達観している。

 元々地球でそんなに恵まれていた訳じゃない。

 「あぁ、ここじゃないどこかへ行きたいなぁ」なんて感じた事は一度や二度じゃない。

 家族がいるなら地球への愛着や執着もあるだろうが、両親は僕が小学校の時に負債を抱えて蒸発した。

 どこかで生きているかも知れないし、夫婦揃って心中したかも知れない。

 どちらにせよ、僕を巻き込まず置いて行ってくれた事だけには感謝している。

 僕はそれから親戚の家を転々とした。

 あと数ヶ月で中学を卒業する。

 僕が親戚の家に住めたのは義務教育の間だけらしい。

 僕は数ヶ月後には路頭に迷う。

 そんな時に降って湧いた話が『異世界転生』だ。

 丁度良い。

 手に職もコネもない僕は「これからどうすべーかなー?」と思っていた。

 異世界の片田舎でスローライフを送るのも悪くない。

 スローライフを送るうちにやりたい事が見つかるかも知れない。

 散々差別的な扱いを受けてきたんだ。

 『王族になりたい』『貴族になりたい』『亜人はイヤだ』『非差別階級はイヤだ』なんて望みもない。

 出来る事なら、あまり人とは関わらずひっそりと生活していきたい。

 だから近くに街がない山の中にいるのは文句はない。

 狩猟採集生活を送ろう。

 原始人みたいな生活だな。

 それに文句があるんじゃない。

 女な理由も納得は出来ないが、理解はした。

 僕が気に入らないのは素っ裸だと言う事だ。

 ターミネーターでも未来から来たヤツらは素っ裸だった。

 そういうモノなのかも知れない。

 何せ他を知らない。

 

 寒い。

 日中ならまだしも夜中に素っ裸なんて有り得ない。

 いや、日が昇らないかも知れないが。

 ・・・と言うのも月が二つあるのだ。

 月じゃないよな。

 月みたいな星が二つあるのだ。

 言ってみれば今いる星から程近い衛星が二つある、と言う事だろう。

 『海の波は月の引力だ』って話を聞いた事があるが二つ衛星がある場合、波はどうなるんだろう?

 それ以前に海はあるんだろうか?

 太陽は昇らないかも知れないけど、昼間に近い現象は間違いなくあるだろう。

 だって日が照らず昼間がなかったら、この星は氷に閉ざされているはずだし、こんな山の中で植物が生い茂っている訳がない。

 異世界の植物が光合成しなくても生きていけるというなら話は別だが。

 楽観視している理由は"天の声"・・・便宜上そう呼ぶ・・・に"夜行性の生き物"と言われたからだ。

 つまり逆をかえせば"昼行性の生き物がいる"と言うことで、"昼間がある"という事だ。


 だから夜の寒さを何とか凌げは昼が来る可能性が高い。

 それに腹が減ってきた。

 狩りを行おう。

 そして狩った獣の皮で服を作ろう。

 ・・・そんな事出来るのか?

 そんな器用さがあるのか?

 わからないけどやるしかないんだ。

 やらなきゃここで凍えてしまう。

 狩りに出る。

 武器もない。

 防具もない、というか服もない。

 出来るだけ自分の裸を見ないようにする。

 別に自分の裸を見ても悪い事じゃないんだけど、何か見るのは疚しい事をしている気分だ。

 何かが尻に触れる。

 最初は気のせいかと思って気にしないようにしていた。

 だがあまりにも頻繁に尻に何かが触るのでさすがに尻に触った物をギュッと握る。

 イメージ的に尻に触った物は蛇のような生き物だと思った。

 人間だった時なら蛇なんて触りたいとも思わなかった。

 だが腹が減っていたからだろうか「蛇を捕まえて食べたい」と思った。

 尻に触っている紐状のモノを思い切り掴む。

 僕は蛇を捕まえ・・・たはずだった。

 紐状のモノを強く握った途端に激痛が走る。

 意味がわからない。

 僕は強く握っている紐状の"それ"を見る。

 "それ"は黒く毛の生えたクネクネと動くモノだ。

 僕の意志で"それ"はクネクネ動かせるようだ。

 僕は"それ"を軽く引っ張ってみる。

 "それ"はどうやら僕の尻に繋がっているようだ。

 情報を総合すると"それ"は・・・。

 「尻尾!?」

 どうやら僕の尻からは尻尾が生えているらしい。

 しかも、尻尾は自在に動かせるらしい。

 そうだった。

 僕は猫人族だったんだ。

 ・・・ということは。

 僕は頭を触る。

 やっぱりだ。

 頭に耳がある。

 じゃあ人間の耳があるところには何があるんだ?

 耳みたいな形の何かがついている。

 だが耳ではないようだ。

 耳みたいな何かを触っても耳を触った時のような雑音は聞こえない。

 逆に頭についている猫耳を触ると雑音が聞こえる。

 どうやら微妙に身体の作りが猫人と人間では違うらしい。

 「他に違うところはないかな?」

 僕はジッと自分の手を見る。

 特に違うところはないらしい。

 違うところはないんだけど、何か違和感がある。

 そうだ、爪だ。

 爪が伸びているんだ。

 爪を短くしなきゃ・・・。

 すると伸びていた爪がシュルシュルと短くなっていく。

 もしかして自分の意志で爪を出したり引っ込めたり出来るのか?

 僕は指先に集中して今度は爪を伸ばそうとしてみる。

 案の定爪は長く尖った。

 「もしかして爪が武器になるかも!

 武器がないのはなんとかなるかも!」

 僕はとりあえず素っ裸で森に入って行く事にした。

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